「着いたな。ここが『天界』か?」
あたりを見回しながらサイタマが言った。
「はい、そうです」
鈴仙は少し疲れたような表情で言った。
「しかし、まさか雲に乗れるとはな」
「確かに外の世界ではこうはいかないでしょうね」
「そもそも俺のいた世界じゃ雲乗れないからな」
「「HAHAHA」」
二人が笑っているとフランが声をかけてきた。
「ねえ、おじさん。」
「ん?なんだ?」
「誰かいるよ?」
フランが指さした方向を見るとそこには人がいた。
「あれ人か?」
「・・・比那名居天子ですね。」
「え?」
「
「あ、こっち気づいた」
「え?マジですか?」
「ちかづいてきてるよ?」
「どうするの?」
「どうするって・・・、どうしようもないだろ・・・」
天子はサイタマたちの目の前で止まる。
「・・・」
彼女は無言でじろじろと全員を見始める。
「あら」
そして鈴仙を指さして言った。
「あなた、どこかで見た顔ね」
「忘れたとは言わせませんよ?」ムカッ
「・・・?」
天子は少し首をかしげる。
そして何か思い出したようにはっとした顔で言った。
「ああ。あの時の」
「思い出してくれて何よりです」
「いや~、最近暇だったから平和ボケしてたわ。ハハハ~」
頭をかきながら天子は言った。
「・・・で、この子たちは?」
「この羽のついてる子はフランドール・スカーレット。レミリア・スカーレットの妹です」
「ああ、あの吸血鬼の…」
「で、この子が古明地こいし。地霊殿ってわかります?」
「うんうん」
「そこの妹さんです」
「へぇ~、初めて見たけどかわいらしいわね~」
天子は小石の頭をわしゃわしゃとなでる。するとこいしは気持ちよさそうに目を細めた。
少し撫で続けた後、天子は立ち上がって言った。
「・・・で、このハゲ男は?」
「誰がはげだ」
「あからさまにはげてるじゃない」
「・・・」
サイタマは何も言い返せないこの状況がすごく悔しかった。キングとのゲーム以外で久しぶりに悔しいと感じた。
「この人はサイタマです。あなたぐらいなら知ってるはずでは?」
鈴仙は少し攻撃的なあおるような感じで天子に質問した。
「・・・ハッ。ああ、最近世間を騒がせてる外来人か」
それに対して鼻で笑いながら天子は言った。
「「・・・」」
鈴仙と天子はお互い黙ってメンチを切った。
「やんのか?あ“ぁ?」
鈴仙はこめかみに血管を浮かばせながら言った。月の兵士だったころの名残が今ここで出てきていた。
今のどこにここまで怒る要素があったのだろうか。
サイタマはそう思いながらこいしとフランを誘導していた。
「は?なに勘違いしているのかしら?あんたとやる気なんてさらさら起きないわよ」
中指を立てながら天子は言った。顔には笑顔が張り付いている。不良天人の本領発揮である。
お互い女子がしてはいけないような表情をしながら視線を飛ばしあう。
サイタマは思った。
ああ、今ここで仲介に入ったらどうなるかわかったもんじゃなぇな。
すると天子が先に提案してきた。
「なら、ここで勝負しましょう」
「はぁ?」
「ルールは簡単。ただ相手を致命傷になるような攻撃を寸止めさせればいいだけ。簡単でしょう?」
「・・・いいでしょう。今ここで貴様は殺す!」
「女子が殺すとかいう言葉使うんじゃねぇよ」
「サイタマさんは黙っててください!」
「・・・おう」
サイタマはそこら辺にあった石の上に座った。フランたち二人もそれに続く。
「審判は?」
「ならあの外来人でいいじゃない。いいわよね?」
「ああ」
ああ、これめんどくさいことになったぞ。サイタマはそう思った。
続く