一撃男が幻想入り   作:海棠

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二十二撃目-サイタマはヒーロー(救世主)である/He is Hero.-

フランと鈴仙とサイタマは今お空に案内されていた。

「で、その『さとり様』ってどんな奴なんだ?」

「へ?どういうことっすか?」

「つまりですね・・・、サイタマさんはこう言っているのです。『古明地さとりとはどんな人物なのか』と!」

「ああ、そういうことっすか!」

お空はそうかそうかと相槌を打つ。

((いや、それ以外に何があるんだよ…))

鈴仙とサイタマは飽きれながら思った。

そんなことを思われたのも知らずに空は説明し始めた。

「えっとですね……、『古明地さとり』と言いまして、さとり妖怪なんすよ!人の心を読むことができるんすよ」

「つまりその妖怪だっけ?そいつには嘘をつくことができないってわけか?」

「そういうことになるっすね」

「でもよ、それって逆に不便じゃねぇか?」

「え?どうしてそう思うんすか?」

「いや、だってさ、人の嫌なところも見えちまうわけじゃん?それってよ、自分も嫌な気持ちになっちまわないか?それに人の心を見れるって気味悪がられるだろうしさ」

「・・・そういう風にさとり様を評価したのはあんたが初めてっすよ」

「お前らで言う外の世界では世間から嫌われてるからな、俺って。まあ、別に気にしないけど」

「そうなんすか」

お空は少しだけうれしそうに笑った。そして言った。

「勇儀さんに殴られてぴんぴんとしてたから一体どんな人かなって思ってましたけど、意外といい人そうで安心しました!」

「あ、そう」

サイタマはそっけなく返した。しかし、その時の表情は少しうれしそうだった。

「・・・ということは、何か理由があってこの地下都市に?」

「はい、詳しいことは聞いてないんすけどどうやら嫌なことがあったらしいということは聞いているっす」

「そうなんですか・・・」

「ほら、着きやしたよ。ここが地霊殿っす!」

そんなことを話しながら歩いていると大きな建物の前に来た。お空の言うにはここが地霊殿のようだ。

「で、案内しやすね」

「おう」

「はい」

「うん!」

案内されている間にもサイタマ達はあたりを見渡していた。それもそのはずである。装飾が豪華だからである。紅魔館では赤以外に装飾など見当たらなかったので目が痛いだけのただ質素な建物だったのだ。ただ大きければいいという風な感じだった。

しかし、地霊殿は違う。大きいのは確かだ。しかし、紅魔館とは比べ物にならないくらい装飾が豪華なのだ。いたるところにステンドガラスが張られている。さすがのサイタマでも一目見てしまう。フランなんかはかなり興味津々だ。鈴仙も息をのんであたりを見渡している。

「で、ここがさとり様のお部屋っす!」

そんなことをしているうちにサイタマ一同は古明地さとりがいるという部屋のドアにたどり着いた。なんとなく暗い雰囲気がしている。

コンコン

『どなたかしら?』

「さとり様!サイタマさんと他二人を連れてきやした!」

『それはご苦労だったわね。ありがとう、お空』

「はい!」

『・・・サイタマさんはそこにいるの?』

「はい!いますよ!」

『だったらサイタマさんだけをこの部屋に連れてきてくれるかしら?』

「はい!」

お空はサイタマ達に向き直る。

「サイタマさん!」

「?」

「さとり様がサイタマさんだけ入ってほしいとのお願いがありやした!」

「「え?!」」

「そうか」

「じゃあ他二人はどっか行っていてください」

「それはできn「鈴仙」・・・ういっす」

「お姉さん、どっかいこー?」

「ええ、そうね」

「ありがとうございやす~。ささ、どうぞ中へ」

「せかさんでもいいだろ」

サイタマは部屋に入る。

「あら、あなたがサイタマという人なのね?」

「ああ、その通りだが?」

「私の名前は古明地さとり。さとり妖怪よ」

「ああ、さっきあいつから聞いたぜ」

「それなら話が早いわ。あなたとお話がしたかったのよ」

「そっか」(なんで俺と話がしたいんだ?)

「何故かって?それは、あなたに純粋に興味があったからですよ」

「そうか」(あれ?声に出してねぇよな。ま、いいか。・・・ちっさいな)

「よく言われます。小さいな、って。フフフ・・・」

「おう、そうか」(さっきからなんで俺が話したいことへの返答が出てくるんだ?・・・ま、別に手間が省けるしいいか)

「あら、珍しい。そういう風に思ったのはあなたが初めてです」

「・・・」(もしかして心読めたりするというのは本当のことか?)

「そうですね、私は人の心を読むことができます。フフフ…、不気味でしょう?」

 

「え?まじで?!すげぇじゃん!」(え?まじで?!すげぇじゃん!)

 

「え・・・?」

「だってよ!それだったら人の悩みとかに完全に同意できるわけじゃん!それって超便利じゃね?!」(それって人の悩みとかに完全に同意できるわけだろ?それって超便利じゃね?!)

「・・・私を、不気味に思わないんですか?」

さとりが恐る恐る訊くとサイタマはきょとんとして言った。

「え?なんで不気味に思う必要があるんだよ?」(純粋にすごいと思うけどな。だって・・・)

 

「人の感情を読み取るって結構難しいことだぜ?」

 

(人の感情を読み取るって結構難しいことだろ?)

 

古明地さとりは涙した。彼の度量の広さに絶句した。そして同時に嬉しさがこみあげてきた。今まで自分を認めてくれたのは妹のこいしと、お空にお燐、そして水橋パルスィに星熊勇儀、そして黒谷ヤマメとキスメだけだった。しかし、人間にもこんな人がいるのだと今わかった。理解した。目の前の禿男の発言がどれだけ自分を救ったことか、今救われたか。泣くことを忘れた目から涙がこぼれた。温かい涙だった。

「あり・・・がとう・・・」

「別に感謝しなくていいぜ。困った人を助けるのがヒーローなんだからな」(そんな泣くほど大層なことしたっけ?俺)

「世界中の人間があなたみたいな人だったらいいのに!」

「それ世界が崩壊するぜ」(それはそれで気持ち悪いな)

古明地さとりはそういう意味で言ったんじゃないのに、と思って苦笑いした。

 

続く


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