一撃目ー参上、ハゲマント/Visitー
「ゑ?はくれいじんじゃ?」
彼は尋ねる。
「ああ、そこで最近不可解な事件が多発しているんだ。」
「?」
「人が怪我したり、誰もいないはずなのに人影を見たり、とか」
「へぇ~」
彼はどうでもいいような顔で適当に返事した。
実際、彼はそういう話はあまり好みじゃないし、好みでもない。彼はとてつもない至極な面倒くさがり屋である。弟子(自称)が長い話をした際も『20字以内でまとめろ』といったほどだ。
「そこを調査してくれないか?」
「え?俺に?」
「ほかに誰かいるとでも?どうせ暇なんだろう?」
「ヘイヘイ、行けばいいんだろ」
彼はめんどくさそうに立ち上がると部屋を出て行った。
「頼むぞ、『ハゲマント』・・・。」
「めんどうくせぇなぁ・・・」
俺はつぶやいた。
俺の名前はサイタマ。趣味でプロヒーローをやっているものだ。あと25歳。
俺はヒーロースーツも着ずに博麗神社というところに向かっている。どうせすぐ終わるだろう。俺はガムを噛みながらそう思った。
俺は到着すると階段を上った。この先にあるのだろう。
登り切るとそこには少し古ぼけた神社の屋敷があった。相当手入れされていないことが素人目の俺から見てもわかる。俺はいろいろと境内を見てまわることにした。
どうやら無人らしい。俺はそう思って神社を見た。そして帰ろうとする。
しかし、帰れなかった。目の前に女がいるからだ。明らかに胡散臭い。さすがの俺も少し警戒する。
「初めまして、ハゲマント。・・・いえ、サイタマさん」
俺の名前知ってんのか?ますますうさんくせぇなぁ…。いや、俺の知名度が上がってるのかもしれんが…。今はどうでもいいか。
「で、お前は?」
「私の名前は八雲紫。ここの管理人よ」
俺が訊くとその女は返した。
「で、俺に何の用だよ」
「サイタマさん、あなた、暇だと感じてない?」
「は?」
「自分が強すぎて手ごたえがない、とか」
「・・・!・・・まあ、感じてるな」
なんなんだ、こいつ。なぜそこまで知ってるんだ?
「あなたのことをずっと見てたのよ」
ストーカーか。俺はそう思い、ケータイを開けようとする。
「何してるの?」
「警察に電話しようと思って」
「それはやめてほしいわね」
「なんでだよ」
「ここの管理人がいなくなるじゃない。それに、この世界ではそれどころではないでしょう?」
・・・まじでなんなんだ、こいつ。ますます怪しく感じる。
「それを一撃でつぶしていく、最強の男。それがあなたなのね」
「知らん」
「幻想郷に興味はないかしら?」
「は?なにそれ?」
「私が管理している世界よ。」
中二病か精神異常者か?怪人が最近多くなって精神異常者も増えていると聞くが…。
「信用してない?」
「誰がするかよ。そんな胡散臭い話なんか俺は興味ないぜ。それに俺は今忙しいんでな、あんたと無駄口たたきあってる時間なんかねぇんだよ。じゃあな」
そういって俺は背を向ける。
「じゃあ、教えてあげるわ」
え?と思って振り向いた瞬間、俺は地面の感覚を失った。
「は?」
俺は何が起こったのか理解できず、その穴に吸い込まれるように落ちて行った。
俺が目覚めると草むらの中で寝転がっていた。
なんか空気がおいしい。そう思いながら俺は起き上がると、近くに人里が見えた。
「・・・村か?」
俺はつぶやくと町へ向かって歩き出した。
しばらくして到着するとそこは人でにぎわっていた。
気になるのは皆が和服を着ていることだが、今はどうでもいい。腹がすいた。どこかに飲食店ねぇかな。そう思いながら俺は少し立ち止まってあたりを見渡すと蕎麦屋が目についた。・・・あそこにしよう。俺は店の中に入り、クルミそばを頼むとすする。
あいつ、何だったんだ?割とマジで理解できん。
俺がすすり終わるといつの間にか店ががらんどうになっていた。
「あれ?」
なんで誰もいないんだ?というかさっきから外が騒がしいし、祭りか?
そう思って店から出るといきなり人が目の前に転がり込んできた。
「あ?」
血まみれである。そして傷口が再生しつつある。ゾンビマンみてぇだ。
「ん?なんだ、君は?」
そいつは立ち上がると急に訊いてきた。
「俺?俺の名はサイタマ。で、どしたの?その傷」
「ああ、これか。あれだ」
「?」
そいつが指さした方向を見ると怪物がいた。かなりでかい。
「ぐわっ!」
なんか青い服着たやつが叩き落されていた。
「慧音!」
赤い服着た白髪の女が駆けだそうとしたその時、怪物はその青いやつを踏みつぶそうとしていた。
俺は駆け出した。
だめだ、間に合わない・・・!すまない、妹紅!人里の者たち…!
私が目をつぶった瞬間、急に浮遊感に襲われた。そして地面の感触がした。
私が恐る恐る目を開けると禿男がいた。見たことがない。外来人だろうか?
「大丈夫か?」
彼は私にそう訊いてくる。私は大丈夫だと答えると再び立ち上がろうとする。
しかし、彼はそれを制止した。
「お前はいまケガしてんだ。無茶すんな」
「しかし・・・!」
「俺に任せろ」
そう言って彼は立ち上がると怪物の目の前にまで歩いていく。
怪物は叫んで男に鉤爪を振り下ろす。
「!」
私は声にならない叫び声をあげた。
ドゴッ
鈍い音が響いた。そこには、
胴体に大穴を開けられた怪物とその目の前で平然と左拳を突き出した男の姿があった。
「・・・。」
男は何も言わずその場を立ち去ろうとする。
「待ってくれ!」
と私は叫んだ。
「?」
男が振り返る。
「ぜひ名前を教えてほしい!」
「え?サイタマだけど?」
「ぜひお礼がしたい!」
「え?別にいらねぇけど・・・。」
「そんなこと言わずに!頼む!」
私がそう懇願すると、サイタマ君は少し考えたような顔をした。
「・・・仕方ねぇなぁ」
そう渋々と了承した。
続く