ISー天廊の番竜ー   作:晴れの日

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遅くなりましたっ!
申し訳ない!


第四話:憤怒

 

「……ん?」

 

 目を覚ました鈴音は、若干の汗臭い匂いを嗅ぎとった。

 目の前には制服のまま寝ている一夏の胸板が、その視界一杯に飛び込む。まだ寝惚けているのか、鈴音は一夏の体に顔を埋め、一杯一杯の息を吸い込む。

 一夏の匂い、一夏の香り、一夏の体、一夏の筋肉、一夏の鼓動。

 彼女の頭を一夏が統べていく。幸せすら感じるこの一時を、鈴音は清々しい気持ちで享受していた。そう、この時までは。

 

パシャッ

 

 携帯の作られたシャッター音が、静かに鳴る。鈴音の意識は一瞬で覚醒し、ガバリと自分の後ろを振り返った。ソコにはニヤリと底意地の悪い笑顔を浮かべ、シャルロットに抱き枕代わりにされているラウラと、同じくニヤニヤした表情で足を組んだ形で椅子に座っているドゥレムの二人が、鈴音を見守っていた。

 

「ッッッ……⁉?!⁉」

 

 一気に赤面していく鈴音と、静かにかつ素早く、撮影した画像を保存し、保護登録するラウラ。そしてドゥレムは、そっと両耳を塞ぐ。

 

「ニャァァアアァァァァァァァァッ!!!!!!」

 

 羞恥からか、人語ではなく猫語で悲鳴を上げる鈴音。部屋に響くどころか、学生寮ごと震わせるようなその叫びに、一夏の部屋にいた全員が飛び起きる。

 

「何っ⁉」

 

 一夏の第一声に、ギギギと音が鳴りそうな怠慢な動きで振り返る鈴音。

 「な、ナンデモナイヨ」と語る彼女の顔は、真っ赤に染まっていた。

 

「なんでもなくはないだろう、どうしたんだ?」

 

 鈴音の両肩に手を置き、心配しきった表情で彼女に詰め寄る。だが鈴音は事の由来を彼に悟られる訳にはいかないのだ。「えぇと、えぇと…!」と答えを考えるが、真っ赤な顔をして目をグルグルと回している。

 

「一夏、鈴音はきっとおかしな夢を視ただけだ。余り詮索するものではない。」

 

 鈴音に助け船を出したのは、とても良い笑顔を浮かべるラウラである。鈴音からしたら、彼女の狙いが読めず不気味な援護なのだが、今のこの状況を脱するには、彼女に話を合わせるより他はない。

 

「そ、そうなのよ!実は台所でGが大量発生する夢を見て…!」

 

 彼女の説明に、「それは悲鳴を挙げるな」と深く納得する一夏。他のメンバーはそれで良いのかと内心突っ込みを入れるが、敢えてそれを口にしないのは、彼に再び昨日のような料理(修羅道)スイッチが押される危険性があったからであった。

 

ブー、ブー、ブー…ブー、ブー、ブー…

 

 不意に、マナーモードだった鈴音のスマートフォンが着信する。彼女は、顔を真っ赤にしたままその画面を見る。発信元は、日本にある中国大使館からの番号だった。彼女の顔はみるみると素面に戻り、大真面目な表情で電話に出て中国語で話始める。それとほぼ同時刻に、ラウラのスマートフォンもメールを受信した。ドイツ軍からのメールには、ドイツ語で簡潔な一文が記されていた。その文章は以下の通りである。

 

『中国のラオシャンロン、消息不明』

 

「何?」

 

 怪訝な声で呟くラウラ。

 

「どうしたの?」

 

 そんな彼女に問い掛けるのは、いまだにラウラを抱き抱えたままのシャルロットだ。ラウラは、一瞬黙して考え込む。コレは公開しても大丈夫な内容なのか否かだ。

 彼女は、ひとまず鈴音の電話がおわってからと判断し、「後で話す」と短く告げて、メールを即座に消去する。五分と経たずに、鈴音の通話も終わり、神妙な面持ちで全員へと視線を動かす。

 

「ラオシャンロンが消えたって。」

 

 鈴音が伝えたその情報は、正にラウラがドイツ軍から伝えられた物と同一だった。

 中国国内では、ラオシャンロンが新たに出現するモンスターを討伐しているという状況を利用し、ラオシャンロンを偶像化し商売をしている者が多くいた。それは一定の成功を納め、国民感情にはラオシャンロンとの共存共栄という風潮が、広く浸透していた。

 そのため、ラオシャンロンの行方が分からなくなったという情報は、いまだに国内には公表しておらず、極秘情報の扱いを受けている。

 

「ラオシャンロンが消えたって……あの巨体だぞ?」

 

 一夏の疑問は最もだった。

 全長は百メートル。全高十五メートルという、ゲームに出てくるものよりもかなり巨大な体躯を持つ中国に出現したラオシャンロン。それが、一晩の内に姿を眩ませたのだ。信じられないと、一夏を含む全員が息を飲んだ。

 

「だが問題は他にもある。」

 

 不意にラウラが呟く。

 

「中国で、新たにモンスターが出現した場合だ。運良く砂漠の真ん中に出現し、人の生活圏からも離れた亀裂だが、ラオシャンロンがしたようにソコを縄張りにするとは限らない。バルファルクのように、長距離移動で人里までやって来る可能性だってある。」

 

 ラウラの懸念事項は、中国当局の不安と合致していた。対モンスターの防衛機構を、人類の手で早急に建造する必要があるのは間違いない。

 

「それで、なんで鈴音さんに電話が?」

 

「それが……」

 

 セシリアの疑問に、鈴音が答えるため口を開こうとした時、扉がノックされる。

 いまだ、朝の七時である。一体誰だろうかと、一夏は疑問に抱きながらも扉を開ける。

 

「あれ、千冬姉?」

 

「織斑先生と呼べ。……全員いるのか?ちょうど良い。」

 

 千冬が一夏の脇を通り抜け、部屋の中へと侵入する。慌てて一夏も、千冬の後を追って部屋に戻る。

 

「ラオシャンロンが消失したという話は聞いたな?」

 

 全員が頷き肯定したのを見て、千冬は満足そうに頷くと続ける。

 

「ついては、中国は有事の際に向けての対策会議を開くらしい。そこでモンスターに対して知識のある人物を、特別アドバイザーとして招きたいと要望があった。鳳は、本国の対策会議に出席せよと、電話で伝えると話していたが、学園からも知識のある人物の参加を打診された。そこで……」

 

「私と誰かもう一人、鈴音ちゃんと一緒に中国に行ってくれる人を探します。」

 

 いつからソコにいたのか。何故か一夏の隣に楯無がちょこんと座っていた。

 千冬とドゥレム、ラウラ以外が『いつの間に』と驚いているが、彼女は扇子を開いて不敵に笑うだけだった。ちなみに扇子には『NRS ニンジャリアリティショック』と書かれている。意味は不明だ。

 

「楯無は、ロシア政府からの要望で、オブザーバーとして会議に参加することが要請された。中国政府もモンスター戦経験もあり、IS学園生徒会長である彼女の参加を受諾。そして鳳の連れ添いとして、もう一人モンスター戦経験のあるIS学園パイロットの参加をを希望している。」

 

「では、私が行きますわ。」

 

 千冬の説明を受け、真っ先に立候補したのはセシリアである。彼女が所有するモンスターへの知識は、かなりのものがある。それもこれも、狙撃手として吸収してきた様々なデータの賜物である。ある意味、モンスターハンターを知ってるだけの一夏よりも、適格者であると言えよう。

 

「ふむ。では鳳、更識、オルコットの三名で今から三時間後に中国へ出向する。私も保護者とした同席するが、もしも学園上空の亀裂から、新たにモンスターが出現した場合の指揮権は、山田先生に任せてある。そして一夏、分かっているとは思うが、無断で白式を起動するなよ。」

 

「……分かってる、善処する。」

 

 善処では困るのだがなと、千冬は頭を抱えそうになる。だが、今はそれで妥協するしかない。

 

「それから……本題なのだがな。」

 

 腕を組み、千冬は神妙な面持ちで言葉を区切る。全員が頭に疑問符を浮かべるなか、青筋を浮かべた笑顔の千冬が続きを口にする。

 

「貴様ら、朝から男女が同じ部屋で何をしていた?」

 

「あっ。」

 

 自分達の状況を、教師であり寮長の千冬に見付かった。

 その事実に、彼等は今さら気がついた。ドゥレムとラウラは、何の話だか今一つ理解できず小首を傾げる。気が付けば、楯無が座っていた場所には『アデュー』と書かれたカードがそっと置かれていた。

 

「こんの……馬鹿者共があぁっ‼」

 

 早朝から、学生寮全体に響くような絶叫が響く。鈴音の悲鳴と合わせれば、これが二度目であった。

 

 

 

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

 

 

「でだ。」

 

 食堂。

 鈴音とセシリア、そして楯無の三人が日本を発ってから二時間。時刻は丁度昼の十二時。ドゥレム、一夏、シャルロット、ラウラ、現の五人が各々の昼食を前に話し合っている。

 

「この後はどうする?」

 

 ドゥレムが訊ねる。というのも、この土日は一夏と鈴音の『スパルタ式お料理教室』で潰れる予定だったため、講師の片割れである鈴音がいなくなり、そして一番教えなきゃならないセシリアも居ないのだ。平たく言えば、手持ち無沙汰になってしまったのだ。だが、そんな中現が発言する。

 

「私は、白式の解析を続けたいな。だから一夏君を借りたいんだけど。」

 

 現には、白式のデータロック解除の妙案が浮かんだわけではない。ただ、試してみたい裏技を思い付いたのだ。

 当然だが、全員が現の意見に賛成した。一夏自身も、自分が一緒であるならば反対する理由もない。というわけで一同は、現と共に白式解析の手伝いを行うことになった。

 

 場所は移り、IS格納庫。そこで現達五人は、学園所有の打鉄と待機状態の白式を繋ぎ、データのサルベージ作業を行っていた。

 ISには、全てのコアがリンクするISネットワークというものがある。そのネットワークを介して、無線での通信や、現在位置など様々な情報をやり取りしている。しかし現が語るには、ISネットワークで飛び交う情報はかなり膨大で、まだ人類の知らない情報もやり取りしているらしい。多くの技術者、研究者がそれこそがISコアのブラックボックスを開ける、鍵になると考えているのだとか。

 今回現が試そうというのは、ISとISを物理的に繋ぐことで、ISネットワークのサポートをしながら、打鉄を介して白式のデータをサルベージしようと云う試みだ。一夏とドゥレムは、ちんぷんかんぷんだと云う表情で彼女の話を聴いていた。

 

「さて……じゃぁ始めるよぉ。」

 

 空中コンソールを操作し、打鉄と白式のISコアを同期させていく。

 すると、膨大な量のデータが打鉄に流れてきた。一見、意味も持たないアルファベットと数字の羅列が、約八千万文字。これが何を意味するものなのか、理解できる者はいなかった。一人を除いて。

 

「やった!」

 

 思わずガッツポーズを見せる現。しかし、彼女以外はこの羅列が意味するものを理解できない。シャルロットが一体これは何なのかと、現に訊ねる。

 

「これは、業界でIS語って呼ばれる文章体型だよ。アルファベットの二十六文字と、0から9までの数字で作られてて、まだ完全な解読は完了してないんだけど、それでも八割がた完了しているって言われているの。」

 

 後は、この文章を倉持技研のスーパーコンピューターに掛ければ……と、彼女は瞳の色を輝かせている。

 

「つまり、白式の状態が解るかも知れないって事か?」

 

 ドゥレムが訊ねる。そうだ、ここの誰もがそれを気にしている。一夏のモンスター化という、全く想像だにしていなかった事態に、僅かな光明が差すのか?彼等に取って何よりも重要なのは、その一点である。

 

「まだ何とも言えないけど、間違いなく全身はしてるハズだよ……。この文字数なら、解読和訳すればある程度の情報は手に入るハズたから。」

 

「結局解読した結果が、これまでの白式が提示していた内容と同じものであるという可能性は?」

 

「無い訳じゃない。」

 

 ラウラの疑問に即答する現。余りにもキッパリと返されたものだから、事態が好転した訳ではないのだと、現以外の全員の表情は晴れない。

 

「まず文字量が少ないし、そもそもIS間でどこまで情報を共有しているかも分からない。どこまでの範囲が公開されて、どこまでが非公開かも、正直な話期待はそこまでしない方が良いけど、私はこれが鍵になると見てるわ。」

 

 それでも現の瞳には、真っ直ぐな光が灯っていた。落ち込んでいた他の面々も、その彼女の表情に感化され、俯き気味だった表情を直す。そうだ。スタートラインには立てたのだ。まだ、ここから先がある。落ち込むのはまだ早いのだと。

 不意に、専用器を持つ一夏、シャルロット、ラウラの表情が変わる。それは戦士の目だった。ドゥレムと現は、どうしたのかと三人を観る。

 ラウラが、重く口を開く。

 

「正体不明のISが、学園上空七千メートル地点にいる。ISは、光通信により織斑一夏、並びにIS白式を要求している。それを三十分後に要求が果たせなければ、高出力兵器による攻撃を開始すると脅迫してきた。」

 

 来たか。

 ドゥレムは、その目を細める。恐らく、これがラ・ロの言っていた『ちょっかい』とやらなのだろう。IS学園そのものを攻撃目標にした脅迫。なるほど、一夏の人となりを理解すれば、正に最善の手と言える。

 

「山田教諭は、私とラウラの二人による敵ISの拘束を指示してた。そしてドゥレム。君には一夏達、学校周辺にいる全ての人を守って欲しい。勿論。攻撃の余波で、街に被害が出ることも含めて。」

 

「了解した。」

 

 ドゥレムの返答は、真っ直ぐだった。それに満足気に頷いたラウラも、再び口を開く。

 

「校内放送は使えない。ドゥレム、一夏、佐山さん。三人には、足でこの情報を広げて貰い、『IS学園緊急時要項第二項』に習い、本校舎一階東にある緊急避難用地下鉄道で、日本国本土への避難誘導報道陣には教師が事情説明をするそうだ。」

 

 一人、納得できていない顔をしている者もいる。一夏だ。シャルロットとラウラを置いて、自分だけが逃げ仰せるなど、彼にはとてもではないが我慢できるものではない。

 

「一夏。お前は、最後の切り札だ。現在IS学園には、専用機持ちは私達含めてたった三人しかいない。他の専用機持ちは、皆学園から離れてしまっている。そして、いくらドゥレムと言えども、全員を完全に守るなど不可能。お前は、最後の矛であり盾だ。無闇に突進するな。でなければ、勝てるものも勝てない。」

 

 ラウラは、職業軍人の顔をして一夏に釘を指す。一夏は理解はしている。敵の目標が自分自身である以上。自分が前に出ても、『負ける』リスクが上がるばかりで良いことなど一つもない。彼女達は、『勝つ』ための最善手を打っているのだ。一夏は、大人しく頷くしかなかった。

 

「今から十分後に、私達は上空目標へと攻撃を開始する。それまでに、学園内を走り回ってくれ。」

 

 ラウラの言葉を最後に、皆が一斉に駆け出す。現は「そうだ!」と忘れる前に、USBメモリをコンピューターに差し込み、打鉄を介して白式から送られてきたデータを記録し始める。

 ドゥレムが、それを横目で見ていた。瞬間、ゾワリと総毛立つ気配を空に感じた。これは、モンスターの気配だ。ドゥレムは地を蹴る。現に向かって。体が紺碧の氷に包まれていく。早く、早く。

 自身の体をより早く、本質に戻すのだ。でなければ、間に合わ

 

 

 

 

 

 ドッ

 

 

 

 

 

 ドゥレムの視界が、紅蓮に染まった。

 自身の纏う氷が砕け、ドゥレムディラ本来の姿を取り戻した彼が見たのは、無惨に破壊された格納庫だった場所。至るところが燃え上がり、焼け落ち、鉄やゴムの焼ける臭いが鼻につく。ドゥレムは、現を探す。彼女がいた場所には、焦げ付き、半壊した打鉄が転がり、彼女が操作していたコンピューターは跡形もない。

 そんなハズはない。失って良いハズがない。彼女は、自分に色んな事を教えてくれた。ドゥレムは必死に探す。壊れた天井の下。捲れたコンクリートをひっくり返し、現を探す。

 

「ドゥレムっ!」

 

 一夏達が戻ってきた。彼等は、十分に離れていたのか、大怪我を負った様子はない。だが、ドゥレムは三人に気が付かない。見付けたのだ。現を。

 

「ぐぅう……」

 

 呼び掛ける。力なく伸びるその手に鼻先を付ける。

 起きてくれと。早くここから離れようと。どうして、答えてくれない?

 ドゥレムは、彼女の顔を舐める。ここを離れよう。ここは危ないと、彼女を急かす。現は、うっすらとその瞼を開ける。

 

「……やっぱり、綺麗だね。」

 

 紺碧のドゥレムの体に、その手を乗せる。ドゥレムは、彼女の体を優しくくわえ、背に載せる。大丈夫だ。なんてことはない。

 

「冷たくて……気持ちいい。」

 

 あぁ。ここは熱すぎる。だから離れよう。皆をここから早く逃げさせよう。

 

「ありがとう……。」

 

 ドゥレムは、半分近く軽くなってしまった彼女の重量を感じながら一夏達の元にゆっくりと歩いていく。一夏達は始めて、現の状態に気が付いた。右足が無い。ドゥレムの紺碧の体を赤黒く染めていく。かなりの出血だ。

 シャルロットは目を見引き口元を両手で抑える。現実を、認識したくなかったのだ。ラウラは逆に、現実を正しく理解した。目を伏せ、悔しそうに歯を噛み締め、拳を握る。

 一夏は、空を見据えた。アソコにいるのか。彼は、無意識だった。いや、怒りに飲まれていたのかもしれない。白式を纏い空へと飛ぶ。言葉にならない思いを叫びながら。

 

「ねぇ…ドゥレム。」

 

「……ぅ。」

 

「………」

 

 燃え盛る格納庫から離れ、ドゥレムはそっと現を下ろす。

 どうすれば良い?あぁ、このまま血が流れ続けるのは良くない。取り敢えず氷で止血しよう。そうだ、俺が怪我をした時はどうしてた?学園の診療室だった。あぁ、そうだ。前教えてもらった。街には赤い十字マークの『病院』があるって。そこならきっと現を助けて貰える。

 ドゥレムは、現を再びくわえて優しく飛ぶ。それは直ぐに見えた。目立つ建物で、多くの人の気配がした。

 街の人々や報道陣は半ば混乱していた。空から赤い光の筋がIS学園に降り、その後にフルフルやティガレックスを撃退した蒼い竜が、病院に向かい飛んだのだから。

 優しくゆっくりとした飛行でも、ドゥレムは直ぐに病院の前に降り立った。駐車場は狂乱染みた様相を見せ、人々は恐怖に怯えている。ドゥレムは、病院の正面入り口にそっと現を寝かせる。やがて、医者だろうか。一人の男が慌てた様子で現の元に駆け寄る。

 

「っ佐山さん⁉手術室直ぐに用意して!それから輸血準備!血液型はB型‼」

 

 病院の中へと声をあげる男性。運の良いことに、彼は現と知り合いのようだ。ドゥレムはその様を見届け、男に頭を下げる。

 男は、それに驚き目を見開く。同時にドゥレムも翼を広げ空へと飛び上がっていった。

 その瞳は、一夏以上の憤怒に濡れていた。





気が付いた現ちゃんがヤバイ事に……どうなる⁉

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