ISー天廊の番竜ー   作:晴れの日

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因みに、俺はランスと太刀、スラアク中心でやってます。

あっ、後今回独自解釈多目です


第十話:狩人

「ふむ……俺もそこまで詳しいわけではないが…それでも良いのか?」

 

 翌日の放課後に、ドゥレム、一夏、セシリア、鈴を含んだ生徒十名と、千冬、麻揶を含んだ教師五名が会議室に集まり、モンスターハンターというゲーム。及びモンスターについて話し合いを始めていた。

 先に口を開いたのはドゥレム。それに千冬は

 

「構わない。それに、この中で一番奴らを知っているのは、間違いなくお前だからな。」

 

「了解した。ではどこから話すか……」

 

 ドゥレムが語るのは、まだドゥレムディラと名を冠する前。まだ、天廊に人がいた。時代の話。

 

 

 

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 そもそも俺は、気が付いたときから成体としての姿を持って生を受けた。とある部屋での番を天廊に住む者達から命じられ、必要な時以外は眠って過ごした。

 それこそ、最初のうちはかなりの頻度で侵入者は現れ、天廊を侵略しようとしていた。だが、それの大多数は人であり、モンスターは人に使役されるか、もしくは迷い混んだ小型のモンスターのみ。

 侵入した人間は、みな言っていた。邪法に手を染めた人の仇敵を討つべし、魔竜の子らを廃滅せよと。

 それが意味することは、俺には分からなかったが、命に従い俺は侵入者との戦いに明け暮れた。

 だが、ある日それがピタリと止んだ。人間達が諦めたのか、それとも別の闘争を始めたのか、俺には分からなかったが役目がないなら眠るのみ。俺はしばらくの眠りに沈んだ。俺が記憶する中で、一番最初の長い眠りだ。

 次に目が覚めた時、侵入者はまた人間だった。しかしその装備は変わり、おそらく、より殺傷性を高めたものだったハズだ。だが結局彼等も、俺を討伐することは叶わず、敗走を繰り返すのみだった。どれ程の期間か覚えてはいないが、連日行われた二度目の襲撃の後、ピタリと人の襲撃が止んだ。不自然な止み方だった。まだ、戦力は相当数温存していたハズなのに、急に進行を止めたのだ。

 だが、番をする部屋から出るわけにはいかない俺は、侵入者がいないなら眠るのみ。これが俺の記憶する二度目の長い眠り。その後も以前話したように、四人の人間に打ち倒され、ここに現れた。

 

 

 

 

 

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 ドゥレムは一拍置き、「これが俺のこれまでの話だ」として、話を区切る。

 これに、モンスターハンターを知る者は、皆一様に首を傾げ、それぞれが話し合っている。その様子を見た千冬が「ドゥレムに質問のある者は、挙手しろ。ドゥレムも分かる範囲で構わない答えてくれ」と伝え、挙手した一人の生徒を指名し、彼女はそれに答え、立ち上がりドゥレムに質問する。

 

「あの、いきなり話の腰をおるような疑問で申し訳ないんだけど、多分ここにいるほぼ全員の疑問だと思うから質問させて下さい。ドゥレム君は、人に飼われていたの?それに、人に使役されていたモンスターもいたんだよね?」

 

「その表現が、適切かどうかは分からないが、俺自身も含め、あの部屋で戦ったモンスターの大多数は人と主従関係にあったハズだ。」

 

 ざわっ

 生徒達の空気が伝わる。これは、混乱と言えば分かりやすい。彼女達は、自分達が持つモンスターハンターの常識と、ドゥレムが持つ記憶に大きな差があることに対し、大きな困惑を抱いたのだ。そんな中、一人の女子生徒が再び挙手をする。

 

「確認したいんですが、大きく分けて三回の襲撃と相対したという訳ですが、その時の大まかな装備を教えて下さい。」

 

「装備か……つまり武器で良いんだな。一回目二回目の時は、人の装備は皆同じようなものだ。威力に差はあるが、銃火器が殆どだな。だが三回目のそれは、個人により多種多様だった。大きく厚い剣を振るう者や、一夏の武器のような、長く鋭い武器を使う者。剣や槍、槌に巨大な鈍器兼楽器。それに己の拳を包むような変わった武器の者もいた。だが、近接ばかりではなく、弓矢や、セシリアが使う武器とは違い、物理的な威力を持つ銃のような武器。種類は豊富だったな。」

 

「じゃぁやっぱり……。」

 

 質問者である少女は納得したように呟く。それはほとんどの生徒が同じような反応を示すが、ドゥレム、セシリアと教師陣は何がなんだか分からない。何を彼女等は納得したのか、教師の一人がそれを訊ねた。

 

「じゃぁ俺が。まず最初に、ドゥレムを倒した四人の人類は、恐らく『ハンター』と呼ばれる、ゲームにおいて主役であり、俺達プレイヤーが操作するキャラクターだと思われます。」

 

 一夏が立ち上がり、質問に答える。

 

「そして、ゲーム内には詳しい設定は公開されてませんが、高度な文明を持ち発展した旧文明があることが明言されています。おそらく、ドゥレムの言う天廊に住む人々と、過去に侵入してきた人類は、敵対し合う関係の旧文明人であると思われます。」

 

「旧文明?ということは、それは一度滅んでいるのか?」

 

 教師の一人が質問する。先程とは違う教師である。

 

「はい。理由はしっかりと公開されているわけではありませんが、おそらくモンスターによって、旧文明は破壊されています。」

 

 教師達がざわつく。モンスターの有する力を再認識したからだ、文明を1つ崩壊させるほどの力。戦慄を覚えずにいられるだろうか。だが、

 

「しかし、その旧文明の戦闘能力がいかほどだったのか……分からないのであれば、モンスターの総合戦闘能力も分からない。」

 

「モンスターによってもその力は千差万別です。以前のフルフルは序盤の方に出てくるモンスターですし、ティガレックスも中盤程度のモンスター。二体とも、ゲームではそこまでに苦になるモンスターでもないのですが……逆に、文字通り天災や災厄と称されるモンスターも存在するので……。」

 

 一夏と言葉に頷く生徒達。

 対して、セシリアと鈴を含んだ教師陣の表情は青ざめたものだった。フルフル、ティガレックスがゲームの中での難易度の低さのせいだ。もし、IS学園の上空に現れた個体が、ゲームのステータス通りの存在なのだとしたら、今後はより強力な個体が現れることになる。そうなった時、ISで太刀打ちできるのか、ドゥレム一人の負担は増し、もしかしたらドゥレムが敗北する可能性も高い。そうなった時、自分達に未来はあるのか、不安は会議室全体に広まりかけていた。

 

「仮説だが。」

 

 不意に千冬が口を開く。

 一同は、彼女に視線を向け何を話すのか興味深く耳を傾ける。

 

「確証のない仮説なのだが聞いて欲しい。結論から言って、私はモンスターには、そのモンスターハンター内での武器に該当する装備でしかダメージを与えられないのではないかと考えている。」

 

 会議室がどよめく。

 この反応は、千冬も想定していた。しかし今は、話を続ける。

 

「まず、その仮説を思い至った経緯から話そう。まずはこれを見てくれ。」

 

 千冬は、手元のリモコンを操り、会議室のディスプレイに映像を灯す。投影されたのは、ティガレックスにブルーティアーズのスターライトブレイカーMK-IIの光弾が発車され衝突する瞬間のスローモーション。

 しかし、全員が一目で気が付いた。光弾が衝突する直前に、不自然にその攻撃が消失しているのだ。

 

「見ての通り、オルコットの放った光弾は直撃の前に不自然に消失している。が、直ぐに反応したのを見るに熱量は感じているようだ。これは、おそらくだが鳳の空間圧縮砲でも同じ現象が起きていると思われる。そして次にこれだ。」

 

 次いで表示されるのは、一夏が最大出力の零落白夜の一撃により、ティガレックスの尾が断ち斬られる様。これもスローモーションではあるが、抵抗もなく零落白夜のエネルギー刃は、ティガレックスの尾を切り裂いているようである。

 

「私は最初、遠距離攻撃では効果は薄く、接近戦攻撃しか有効打はないのではと考えた。だが、雪片弐型のような刀、太刀がゲーム上に存在したからそこ、モンスターにダメージを与えられたのではと、私は考えた。」

 

 千冬の仮説は一見突拍子もないものだった。だが、モンスターハンターを知る生徒達は、皆合点がいったように互いに「そうか、だからか」と頷きあう。

 

「多分、ちふ…じゃない、織斑先生の仮説は、案外辻褄が合うかもしれません。セシリアの攻撃は無効化されたのに、ドゥレムのブレスは効果があった。ゲーム上でも、他のモンスターの攻撃が別のモンスターに当たれば、ダメージはしっかりと出ます。可能性はあるかと。」

 

 一夏の言葉に反応したのはセシリア。

 

「待って下さいまし!もしその仮説が本当だとしたら、私のようにゲーム内で該当する武器の無い者は戦力にならないということになりますわ。」

 

「いや、そうでもありません。多分、オルコットさん、鈴さんの攻撃が無効化されたのは、ゲーム内の射撃戦は弓矢、ボウガンによるものが主流だったため。言ってしまえば実弾兵器ですね。だから、レーザーなどの非物量攻撃ではなく、実弾系の武装を中心にチューンすれば。」

 

「とにかく、一度ゲーム内の攻撃手段、モンスターの特徴を洗い出そう。ものは試しだ。可能性があるならやってみる価値はある。」

 

 会議は1つの方向性にまとまり始めた。

 実を結ぶかは、次の襲来の時。

 未だ闇は深く謎は尽きぬが、彼女達は歩みを進める。

 負けぬために。

 

 

 

 

 

 

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「まだ、ヒリヒリするな」

 

 ドゥレムは自分の頭をさする。

 会議を終え、ドゥレム、一夏、セシリア、鈴の四人が共に歩いている。これから遅めの夕食を摂るために、皆で食堂に向かっているのだ。

 

「当然よ!あんなこと皆の前で言うんだもん!」

 

 それを叱責するように、鈴は言う。

 ことは会議終盤、今後の予定としてゲーム内の武器をもとに、IS用対モンスター戦兵器の開発という話でまとまった時だ。

 その武器の実験の話になったとき、ドゥレムの放った発言が、千冬の逆鱗に触れたのだ。

 

「試すなら俺を使えば良い。同じモンスターだから、効果があるようなら一目瞭然だろう。」

 

 その直後、千冬の拳骨がドゥレムの後頭部に降り下ろされた。生半可ではない鈍痛と突然のことへの困惑が、同時に彼を襲っていた。

 

「馬鹿も休み休み言え。貴様は実験動物などではない。我々の仲間だ。私達は仲間にその銃口を、切っ先を向けることは決してしない!」

 

 怒鳴るように彼女はドゥレムに言った。会議室で同席した者達も、千冬の言葉に強く頷いていた。

 

「まさか、千冬があぁも怒るとはな……俺は、そんなにも常識外れなことを言ったのだろうか?」

 

「ふふ、そうですわね。以前私に話して下さった、仲間云々の話と一緒ですわ。ドゥレムさんは、私達に攻撃をなさいますか?」

 

 優しく諭すようにセシリアは言う。ドゥレムは「そんな事するわけがない。」と即答する。

 

「私達も同じよ。アンタに助けられて、一緒にご飯食べて、仲間だって思っているから、アンタを攻撃なんかしたくないの。だから、二度とあんなこと言わないでよね。」

 

 鈴とセシリアの言葉に、初めてドゥレムは合点がいった。仲間に攻撃などしない。自分が当然だと思ったことを、相手にさせようとしていた。

 拳骨を食らって当然だった。

 

「そうだな……済まなかった。俺が浅はかだったな。」

 

 ドゥレムは呟く。鈴は「分かれば良いのよ」と言い。セシリアは「ふふ」と笑う。

 

「ダメだ、出ないな。」

 

 しかし、一夏はそれとは別に呟き、自身の携帯端末を仕舞う。彼は、箒に連絡を取ろうとしていたのだが、応答がない。

 

「もう、夕食をすまされたのでは?」

 

「そうかもな、しょうがないこのまま四人で済ませるか。」

 

 一夏は、箒を招いてドゥレムと鈴に互いに謝罪をさせようと考えていたのだ。二人はそれを承諾しているし、後は箒本人のみだったのだが、彼女との連絡はつかない。それならそれで、しょうがないと一夏はドゥレム達と食堂への歩みを進める。まだ、時間はあると信じていたから。

 

 

 

 

 だが、その日の夜。自室に戻った一夏は箒の姿が無いことに気が付いた。荷物も何も残っていない。嫌な予感がして、千冬に連絡を入れた。

 

「千冬姉、箒が居ない。荷物も無いんだ!」

 

『…………一夏、落ち着いて聞いて欲しい。……箒は、自主退学した。』

 

 彼女の言葉を、一夏は飲み込めきれなかった。何故、どうして。疑問は尽きない。答えてくれる者もいない。だが、千冬は告げる。もしかしたら、最悪の事実を

『箒を引き取りに来たのは……束。アイツの姉だ。』

 時はどうしようもない程に、無慈悲に、不条理に進んでいた。

 




少しは動き出したかな?

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