Hightension School Jo×Jo 作:尾河七国
駒王町のはずれにある、とある廃工場。
1990年代まで稼働していたとされるそれは、閉鎖されてから時間が流れ、今ではすっかり荒れ放題となっていた。雰囲気でいかにも心霊スポットに見え、ここに潜入する若者が年々急増している。しかし増加しているのは潜入する人間だけではなく、それに伴い行方不明者も急増しているのだ。
中で一体何が起こったのかはわからない。何故なら無事に帰ってくる人間があまりの恐怖に記憶を失ってしまったからだ。都合がいいと言おうか何と言おうか。そんなこともあってか、次第に『あの世の入口』だとか『神隠しの舞台』だとかの異名までつく羽目になった。
実はここ、丈城が特訓山に行く時によく通る道なのだ。しかもあろうことかショートカット目的で中に入ったことも。よく生きて帰ってこれたものだ。
そして今現在……
「こいつはクセェ!! ゲロ以下の臭いがプンプンするぜ!!」
「…丈城先輩、うるさいです」
「んな冷てー事言うなよ、竹達○奈ちゃん」
「…中の人なんていません」
丈城とリアスの眷属はそこに来ていた。何でも悪魔側の大公からの命令で、この廃工場に潜むはぐれ悪魔を討伐してこいとのこと。夜は悪魔のゴールデンタイム。そのため深夜にも関わらず丈城達ははぐれ悪魔狩りにでかけなくてはならないのだ。
「小猫、はぐれ悪魔の位置わかるかしら?」
「…奥の方から血の臭いがします」
「付け加えて、現在位置はここから100m地点先。敵は一体のみ。こっちに向かって移動しているぜ」
小猫の見解に加え、丈城が敵の位置を正確に把握した。
「ジョジョ、敵の位置がわかったの?」
「あぁ、バッチリだ」
「ひょっとして、さっきから右眼につけているスカウターがそうなのかい?」
「ここに入る前に外へ放った奴とセットでな。ちなみに能力は二酸化炭素レーダーで敵の位置を特定することだ」
裕斗の質問に対して簡潔に話す丈城。そして
「皆、来るわよ」
リアスの言葉に全員が足を止める。すると、闇の奥から上半身が女性で下半身が巨大な四本足の獣のような怪物が姿を現した。その手にはギラリと光る槍状の獲物が。
「不味そうな……いや美味そうな臭いがするぞ? 甘いか不味いか……食べて確認してみようかな?」
「初めまして、はぐれ悪魔バイザー。私はリアス・グレモリー。大公の命により、貴方を消し飛ばしにきたわ」
おぞましい化け物の前でも、いたって涼しい顔でそう口にするリアス。対するバイザーは口元をニヤつかせると、
「こざかしいィィィッ! 小娘如きがァァッ! 貴様の髪の色のように鮮血で染めてやるゥゥゥッ!!」
奇声をあげて襲い掛かってきた。それに対抗して神器とスタンドで迎え撃とうとした丈城を静止し、リアスは裕人に指示を送る。
「ジョジョ、見ていなさい。私達の眷属達の力を。行きなさい裕斗!」
「はい部長!」
指示を受け駆け出した裕斗は手に剣を召喚させ、バイザーに素早く斬り掛かる。
「私達眷族にはチェスの駒に合わせた『悪魔の駒』にあてはめられているわ。裕斗の役割『
リアスの説明を聞きつつ、丈城は裕人の動きを読んでいた。この時丈城は彼の動きに多少、一定のリズムがあることに気がついた。自分が言えた立場ではないが、まだまだ甘い点があるといったところだろう。
「あらあら、それじゃあお仕置きの時間ですわ!!」
裕斗がバイザーの足をあらかた斬り伏せると一旦距離をとり、後方にいた朱乃が前にでた。
「朱乃は『
(雷……そうか、姫島朱乃。チリ・ペッパー事件の女の子だったのか……。てか歳上だったのか、知らなかったや)
バイザーを雷で攻撃し続ける朱乃を見た丈城は、数年前自分が関わったチリ・ペッパー事件の女の子が目の前の先輩だということに気づいた。雷を中心に使う所を見ると父親ゆずりなのか、はたまたチリ・ペッパーの影響なのかどうかまではわからないが。
「ギャァァッァァァァァァッ!」
足を全て切断され、しかも雷直撃を食らったせいでバイザーは大量のダメージを負った。
さらに追い討ちをかけるが如く
「……ふっ飛べ」
小猫が小柄な身体からは想像もつかない力でバイザーを殴った。
「小猫は『戦車』。その特性はシンプルで、バカげた力に屈強なまでの防御力。それに元々の小猫は仙術と呼ばれる術式で身体能力を高めて闘うのを得意としているから、相性は抜群よ」
『星の白金』よりかは若干劣るが、それでも体力を削るには十分な拳を叩き込んでゆく小猫。暫くたってバイザーは至るところから血を流し、ボロボロになった。そこへリアスがツカツカと歩みより
「さて、バイザー。何か言い残すことはあるかしら?」
と聞いた。その時、
「ケケケ…かかったなアホがぁッ!!」
バイザーの切断された足やら手離した槍やらが、リアス目掛けて飛び掛かったのだ。しかも運悪く咄嗟に避けられない位置に転がっていたため、彼女は完全にバイザーの罠にかかってしまったのである。
バイザーは計画通りと口元をニヤつかせた。しかし忘れてはいけない。この男の存在を……
「『
バイザーの罠を見切っていた丈城は『世界』の時間停止能力を発動。ギリギリでリアスへの直接攻撃を防ぐことが出来た。この10秒間は有効に使わなくてはならない。まずリアスを安全圏内へ移動させ、さらに『星の白金』と『世界』で静止している足や槍を素早くバイザーに向けて、時間を再始動。
「そして時間は動き出す…ッ!」ブゥン!
時間が再び動き出したことにより、向きを変えられた足や槍がリアスではなく、バイザーへ突貫。しかも上半身と下半身の付け根にクリティカルヒットしたため、大量の血しぶきをあげてバイザーは二つに分断された。
「グギァアアアァァァ━━━━━━━━ッ!!」
「フゥーハハハハハッ!! 最ッ高にハイッてやつだァ━━━━━━ッ!!」
「……なんか段々とジョジョ君が悪役に見えてきたんだけど」
「あらあら、ウフフ♪」
調子が乗ってきた丈城はこめかみを人差し指でぐりぐりと押し、不敵にそして高らかに笑う。
「はぐれ悪魔バイザー! 貴様との闘いにカタをつけるッ!! 『エアロスミス』だぁァァ━━━━ッ!!」
その叫びが言い終わるや否や、廃工場の窓ガラスを突き破って、第5部のナランチャ・ギルガが使役する模型飛行機型スタンド『エアロスミス』が乱入。搭載された機銃でバイザーに射撃を開始した。
「ボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラ、ボラーレ・ヴィーア(飛んでいきな)!!」
最後の台詞と共に『エアロスミス』がミサイルを発射し、バイザーに見事命中。断末魔の叫びをあげることなく、バイザーは爆散した。
「後片付けもしておかなくちゃあな……『クリーム』!」
そして『クリーム』を出した丈城は、バイザーの死体を暗黒空間へと葬った。
「うし、討伐完了!」
「……ジョジョ、また新しいスタンドが三つ出て来てたのだけれど、説明してくれるかしら?」
「OK. んじゃまずは最初にチラッと言った、時間停止能力を持つ方から。大アルカナ21番目のタロット・完全、宇宙の意味合いをもつ『世界』の暗示、『世界』。時止めは最大で10秒。続けて『エアロスミス』はさっきの二酸化炭素レーダーの能力を持ち、このスカウターと模型飛行機の二つで一つのスタンドだ」
そして説明の途中に『クリーム』を側に戻し、
「最後は『クリーム』。こいつの口の中は『暗黒空間』になっていて、飲み込んだ物質を全て粉微塵になって消滅する。最も本体である俺は無害だけどな」
試しに工場内を移動させた。クリームは自身の手足を飲み込んで球体になると、ガオンという音を立てて次々と工場内の床と壁にポッカリ穴が空いてゆく。
「成程…考えただけでも寒気がする能力ね。私、ジョジョが味方についてくれて助かったわ」
「敵にまわしたら間違いなくクリア不可能だろうな、うん」
穴ぼこだらけの廃工場を背に、丈城達はその場を後にした。後に裕斗があの時の心境を尋ねたところ、彼曰く「世界を支配せんとする最凶の吸血鬼気分だった☆」と言っていたという。
それも心底楽しそうな、満面の笑みで。
(←To Be Continued…)
皆さんこんにちは、尾河です。
とりあえずの報告ですが、来週は投稿することが出来ません。理由は期末テストが迫ってきており、それに集中しなくてはならないのです。
楽しみにしている皆様には大変申し訳ありませんが、ご了承下さい。
誤字脱字、ご意見等ございましたら、コメント欄にご一報下さい。