Hightension School Jo×Jo   作:尾河七国

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第2部『エンカウント・ディアボロス』
第5話《丈城に迫る影》


「「「「「コラ━━ッ!! 待て━━━━━━ッ!!」」」」」

 

 

駒王学園に響く大勢の女子達の怒号。そしてそれから猛スピードで逃げ回る二つの影があった。

丸刈り頭と眼鏡が特徴的な男子生徒二人。一体何があったのか。

 

 

「ヘッヘッヘッ、今日の剣道部の女子更衣室は最高だったぜ!!」

「だな! 一眼レフも持ってきて正解だった! 早速帰って現像だ!!」

 

 

……実はこの二人、覗きである。今から遡ること数分前、剣道部の女子更衣室に侵入した彼ら・松田と元浜は覗き目的のためロッカーに隠れた。しかし女子達の野性の勘というやつか、部員達に早々にバレてしまい、現在進行中で彼女達から逃げている最中である。

逃走開始から2分が経った頃、二人の目の前にT字の分かれ道が現れた。

 

 

「よし松田! 二手に分かれるぞ!」

「合点承知!」

 

 

元浜は女子部員達を撒く作戦として、松田に案を持ち掛けた。それを承諾し、二人は分かれ道へ差し掛かる。そこへ……

 

 

「WRYYYYYYYYYY━━━━━━━━ッ!」

 

 

奇声と共に目の前の開いていた窓から突如人が飛び出し、その人物は丁度両サイドへ逃げようとした元浜と松田にダブルラリアットをお見舞いした。当然不意討ちだったため避ける間もなく、二人はモロに食らい仲良く仰向けに転倒。

 

 

「「タコスッ!?」」

「性懲りもなくまた覗きとは………マヌケがぁっ!」

「ぐっ、ゲホゲホッ!! な、何をするだぁ! ジョジョォッ!!」

「つーかジョジョ! ここ4階だぞ! どうやってここに!?」

「このジョジョに出来ぬ事など何もないッ!」

「「一般人の芸当じゃねぇだろ!!」」

 

 

元浜と松田に強襲を仕掛けていた人物、それは言わずと知れた兵藤丈城だった。彼は『ストーンフリー』の糸で校舎の壁を駆け上がり、覗きを働いた二人を成敗しに来たのである。

 

 

「それはともかくとして…こんな所でのんびりしてていいのか?」

「「あ」」

「あーんーたーたーちー!!」ゴゴゴゴゴ…

「「「「「覚悟ォ━━━━━━━━━━ッ!」」」」」バシーン!

「「ギャ━━━━━━━━━━ッ!?」」

 

 

丈城に気をとられていた二人は背後に迫る修羅達に気が付かなかった。その結果すぐに追手の彼女達に囲まれ、暫くの間竹刀で滅多打ちにされることに。彼らの悲鳴が校舎に響き渡る。

 

 

「しっかしまー、なんであれだけやられても覗きを繰り返すのやら…。気持ちがわからねぇな」

「あ、あの…ジョジョ君」

「ん? どったの?」

「いつもいつもあの変態二人をやっつけてくれてありがとうね」

「いいっての。またあいつらがなんかやらかしたら、いつでも俺に言ってくれ。地獄の果てまで追っかけてぶん殴ってやるから」

 

 

丈城はニョホ♪と言わんばかりに笑って見せた。

 

 

☆☆☆

 

 

兵藤丈城が駒王学園に入学してから丸一年が経ち、今は進級して二年生となっていた。そしてこの学園は様々な有名人が存在する。

 

まず『駒王学園二大お姉様』と称される、三年のオカルト研究部部長『リアス・グレモリー』と同じく副部長で、実家の神社で巫女をしている『姫島朱乃』。

その他にもイケメン枠として二年の『木場裕斗』、マスコットキャラクターの一年『塔場小猫』が例として挙げられる。次に先程の二人、元浜は性格と写真部に所属していることから『セクハラパパラッチ』『エロ坊主』とかいう異名をつけられ、松田も眼鏡で女性のスリーサイズを測れるという破廉恥極まりない妙技を持っているため、『スリーサイズスカウター』や『エロメガネ』等と言われており、二人まとめて"駒王学園二大変質者"と称されている。

そんな二人の活動を厳しく取り締まっているのが、『駒王学園ご意見番』『秘密警察』の異名を持つ丈城だ。元々この二人とは中学時代に知り合ったのだが、上記の理由により二人の監視役として行動するようになったという。そのため二人が何か良からぬ事を企てようものなら、こうやって制裁に現れるのだ。そしてこの後はいつも通りメッタメタにされた変質者二名を回収して教室に戻り、授業にでる。といった具合だ。

 

 

(ガラッ)

「すいません、変質者二人を拘束していたら遅くなっちゃいました」バァーン

「おージョジョか、相変わらず効果音の似合う男だな。ご苦労」

 

 

学園の教師陣も丈城の生業は知っているので、授業の遅刻は特に咎めたりはしない(その代わり元浜と松田の成績から丈城の点数が引かれる)。二人を席に座らせた後、自分の席に着いて教材を出そうとしたとき

 

 

「……ん?」

 

 

机の中から一枚の封筒が落ちた。丈城はそれを拾って封を切り、中を確認する。

 

 

『放課後、南校舎で待っています』

 

 

入っていた紙にはそう書いてあった。これはどうみてもラブレターである。普通の人だったら天にも昇る気分になるのだが、この時彼は何故か不信感を抱いた。

 

 

(何だ…この胸騒ぎは? まるで罠か何かに誘われているような……)

 

 

丈城は暫く考え込んでいたが、とりあえず今は授業中なので、一旦頭の片隅に置いといて授業に集中することにした。

 

 

☆☆☆

 

 

その日の放課後、手紙に書かれていた通りに丈城は校舎裏へ向かった。到着してみると……

 

 

「あっ、兵藤先輩…ですよね?」

 

 

そこにいたのは手紙の差出人と思われる、同年代でロングヘアーの少女だった。彼女は丈城に本人かどうか尋ねてきたので、彼は「あぁ。俺がジョジョだ」と返す。

 

 

「すみません、突然呼び出してしまって…」

「別にいいっての。えーっと、君は?」

「あっハイ! 2年の天崎夕麻です!!」

「夕麻ね、よし覚えた。…んで用件は?」

「あの…私と付き合ってください!!」

 

 

夕麻と名乗った少女は予想通り、頭を下げて丈城に告白した。彼は多少の不信感はあったものの、こうもハッキリ告白されたら断りづらいので

 

 

「…あぁ。こちらこそよろしく」

 

 

と答えた。

 

 

「ほ、本当ですか!! ありがとうございます!!」

 

 

夕麻は満面の笑みで去っていった。夕闇が迫る校舎を見上げ、丈城は一人静かに呟く。

 

 

「……天崎夕麻…調べてみる必要があるな」

 

 

その右手には、『隠者の紫(ハーミット・パープル)』が蠢いていた。

 

 

☆☆☆

 

 

帰宅後、丈城は早速『隠者の紫』を使っての調査を開始。押し入れから引っ張り出してきたポラロイドカメラを机の上に準備し、『隠者の紫』を右手に出現させた。

 

 

「…ジョジョ、何するの?」

「天崎夕麻の正体とその目的を探る。危ねーから俺の後ろに隠れてろ」

 

 

そう言って気合いを入れると、右手でポラロイドカメラ目掛けて

 

 

「チェストォォォ━━━━━━━━━━ッ!」バキャン

 

 

空手チョップを繰り出した。当然の如くカメラはぶっ壊れてしまったが、一拍置いてジーッと写真を吐き出した。一応説明しておこう。『隠者の紫』の念写方法は特殊で、カメラがぶっ壊れるほどの勢いの衝撃を与えないと念写をすることができないのだ。そのため本作でも原作でもこうしないと念写が出来ない。カメラは後で『クレイジーダイヤモンド』が直しておくとして、『隠者の紫』が念写した写真は2枚だった。まずは一枚目を確認。

一枚目は天崎夕麻が写っていた。しかしあの無邪気な笑顔ではなく、明らかに邪悪な意志が宿った笑みを浮かべていた。そしてその背にはカラスの様な漆黒の翼…。

 

丈城の予感は的中した。

 

 

「やっぱりな。天崎夕麻は人間じゃねぇ、堕天使だ」

 

 

目を細めてそう口にする丈城。次に彼は二枚目を手に取った。

 

 

「こいつは…3年のリアス・グレモリーか?」

 

 

後ろ姿のため顔は確認出来なかったが、彼はその特徴的な髪の色から3年生のリアス・グレモリーと判断。そして背には堕天使のものではない別の形状の翼を見つけた。

 

 

「形からして…悪魔の羽か? これは…」

『そのようだな。しかしその後ろにも何かあるみたいだが…よく見えないな』

「んだったら『星の白金(スタープラチナ)』の正確な視力で書き取らせてみるか」

 

 

ドライグの問いに丈城に『星の白金』を出し、紙とペンを持たせて後ろに写る何かを書き取らせた。星の白金はその写真を見て素早く紙にペンを走らせてゆく。数秒後、何かを書き終えた『星の白金』は紙を丈城に手渡して消えていった。

 

 

「……成程、リアス・グレモリーの他にもいるって訳か」

 

 

紙に描かれていたのは三人の姿、姫島朱乃・木場裕斗・塔場小猫と思われる者が悪魔の翼を展開したスケッチだった。つまり現時点で5名の人外が駒王学園にいることになる。

 

 

『相棒、この先荒れるかもしれんな……』

「へっ、上等だ。襲ってきたらその時は大空に輝くファイアフラワーにしてやるぜ」

『…証拠は?』

「皆消し飛ぶ!!」ビシッ

『ま、まぁ…程々に、な?』

 

 

☆☆☆

 

 

丈城が天崎夕麻と付き合い始めて、早一週間が過ぎた。

 

しかし彼女は今のところこれといった動きは見せてこない。いつ来るのかと丈城は警戒していたが、それは意外に早く訪れた。ある日、夕麻の方からデートの誘いが来たのである。デートと称しての暗殺だと見抜いた彼は騙されたフリをしてこれに乗った。当日それなりに楽しい時が過ぎて、気が付けば辺りは真っ暗になっていた。

 

 

(さぁ~てと、そろそろ動き出す頃合いか……?)

 

 

夜道を歩く二人。自分のすぐ先を楽しそうに歩く夕麻。その様子は心底、丈城とのデートを楽しんでいるように見える。しかしその本性を見抜いていた彼は刻一刻と迫る襲撃を待ち構えていた。すると

 

 

「ねぇ…丈一君、一つお願いしていいかな…?」

 

 

ふと夕麻がそう告げた。

 

その瞬間彼の中に稲妻が走る。そう来たのだ、彼女の襲撃が。

 

 

 

 

 

「死んでくれないかな?」

「だが断る」

 

 

突如飛んで来た光の槍を軽々と避け、スタンド『ホルス神』の能力で生成した氷のミサイルをカウンターで発射した。

 

 

「うわっ!?」

「貧弱貧弱ゥッ!! この俺を殺すだとォ? 笑わせんな!!」

 

 

続けて刀状のスタンド『アヌビス神』を召喚し、戦闘体制に入る。本性を現した夕麻はボンデージ姿になり、堕天使としての正体を明かして丈城を睨み付けた。

 

 

「くっ、聞いていないわよこんなの! あなたの神器は『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』じゃなかったの!?」

「敵の下調べを十分にしなかった、てめーの負けだッ!」

 

 

勝ちを確信した丈城がそう言い放った瞬間、またもやあらぬ方向から光の槍が飛んで来た。

最も当たるよりも先に丈城が反応して『アヌビス神』で切り払ってしまったが。

 

 

「おおっと、増援か?」

 

 

槍が飛んで来た方向に目を向けると、そこには別の堕天使がいた。黒のスーツと体格からして男の堕天使とわかる。

 

 

「レイナーレ、一旦退こう。彼は今の我々が太刀打ちできる相手ではない」

「くっ、ドーナシーク。今回ばかりは感謝するわ」

 

 

二人は闇夜の中へと姿を消した。一人残された丈城は『アヌビス神』をしまってドライグに語り掛ける。

 

 

「……ドライグ」

『どうした相棒?』

「決めた……俺あいつらを必ずぶち殺してやる。徹底的に……」

『今更!?』

「しゃーねーだろ!? あんにゃろ高けぇレストランやら高けぇ服屋やら散々俺の財布にダメージ与えやがって!! お陰で生活費の10万円が一気に消えちまったじゃねぇかよ!! このツケはぜってー払ってもらうからな……夕麻いや、レイナァァァレェェ━━━━━━━━━━━ッ!!」

 

 

怒りの雄叫びをあげて激昂する丈城。その光景を見たドライグは静かに思うのだった。

 

 

 

レイナーレ、南無と。

 

 

(←To Be continued…)




こんにちは、尾河です。

何とか原作一巻に突入できました。ここから丈城は一体どのようにしてレイナーレをぶっ飛ばすのでしょうか?


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