Hightension School Jo×Jo   作:尾河七国

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こんにちは、尾河です。
今回と、もう一つの投稿作品の計二話でひとまず年内最後の投稿になると思われます。来年はもっと投稿ペースを上げていきたいと考えています。

でも就活との両立が難しいそう……。

では皆様、良いお年を……



第43話《白、現る》

「あ〜っぶねぇあぶねぇ。何気にあの攻撃ガチだったな……」

 

 

『D4C』やケニーGのスタンド『ティナーサックス』でリア達の追跡を撹乱。どこぞの黒服ハンターもギブアップ並の逃走劇を繰り広げている丈城は、現在校門近くの水飲み場に身を潜めていた。

 

 流石に水着で動き回るわけにはいかず、予備で持ってきていたナランチャコスに着替えた彼は周囲の様子を確認。いない事を判断して立ち上がった。

 

 

「大体俺のやることに慣れてきた感はあるな。連携取りやすいのはいいけど、逆に敵に回った時の対処に困るなァ……どーすっぺ」

 

 

 頭をポリポリと掻きつつ、複雑な心境のまま移動開始。遠くの方、主にプール周辺では未だに爆音が轟いている。沸点低いなとボヤきつつ校門前に差し掛かると

 

 

「……ん?」

 

 

 彼の視界に、一人の少年の姿が映る。

 

 後者を見上げる濃い銀髪の美少年。黒のワイシャツとパンツの出で立ちの彼は、うっすら微笑を浮かべながら佇んでいる。女子なら確実に一目惚れは避けられないだろう。

 

 

 しかし丈城は気付いた。この青年の正体に。そして思った。

 

 

 コイツは、白いヤツだと。

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 白龍皇…ヴァーリは、先の事件のきっかけに開催される会談に出席する堕天使総督・アザゼルの付き添いとして、ここ駒王町を訪れていた。

 

 目的は二つ。一つは前述の通りで、もう一つは対となる力『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』を持つ男・兵藤丈城がどんな人物であるのかを確かめる事。そのため彼は暇潰しを兼ねて、丈城の通う駒王学園へ足を向けていた。

 

 

(赤龍帝…ジョジョ、か。神器(セイクリッド・ギア)の方はそこそこだけど、彼の場合主力となるのは……やはりあの力)

 

 

 丈城に惹かれた理由は神器の因縁だけではない。決め手となったのはコカビエルを倒したスタンドという力。神器とは全く異なり、見たこともないような個性的な効能が目立つ。成程コカビエルが敗北したのも頷ける。予想外な変化球のオンパレードとそれを放つ人間を侮った。あの戦いはコカビエルが負けて当然だったのだ。

 

 

『お前も気になるようだな。奇妙な力を持つあの男が』

「あぁ、そうだねアルビオン。本当なら前面に出ていてもおかしくない赤龍帝の力よりも、未知なる力を主軸に戦うイレギュラー。今までの使い手とは全く違った趣向の彼を、無視できるわけがない。あの時の彼のレパートリーはまだまだ氷山の一角に過ぎない。早く…早く彼と拳を交えてみたいんだ」

『珍しい。そこまでお前が戦闘意欲を掻き立てるとはな』

 

 

 丈城と同様に、ヴァーリの左手甲が青白く発光。もう一体の二天龍の一角・アルビオンが彼に話しかける。

 

 

「当然。いずれ運命で殺しあう仲に更なる楽しみが拍車をかけているんだ。どんな戦いになるのやら……フフッ」

 

 

 一部ヤバーイ思考が見え隠れするヴァーリ。仇敵が通う学び舎を見上げつつ、来たる戦いに想いを馳せる。

 

 

 そこへ、彼に近づく影が。

 

 

(フ……来たね? ジョジョ…)

 

 

 感じる赤き気配。それを感じ取ったヴァーリは口角を上げ、まずはご挨拶とその人影に顔を向けた。

 

 

「────────やぁ、いいg……?」

 

 

 が、彼の眼の前にいたのは……

 

 

 

 

 

 

 

「ようこそ白龍皇君。我々は君が来るのを待っていたんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 某宇宙人7に出てくる、ちゃぶ台と一緒に括られることが多い異星人の着ぐるみを着た仇敵の姿だった。

 

 

「『…………………………』」

 

 

 ☆☆☆

 

 

「歓迎するぞ。なんなら、アザゼル総督も呼んだらどうだ?」

「……一応確認するけど、赤龍帝ジョジョかい?」

「ハッハッハッ。それ以外一体誰がいるというのかね」

 

 

 肯定とも取れる返答をし、小脇に抱えたちゃぶ台をヴァーリの前に起き、その前に座る丈城。発光器官や声色まで本家に似せているものだから、本当に幻覚の別名を持つ異星人と対話しているような気分になる。

 

 それはともかくとして。

 

 

「今日はどォした? 二天龍の決着つけにきたわけじゃねぇだろ?」

「それが本当だったとしてもこの時点でその気が失せているよ」

「だろーな。こっちもプール掃除とかで相手している暇がねぇから、戦闘意欲を下げるために一芝居打ったんだよ」

 

 

 手際良く異星人の着ぐるみをキャス◯オフしてゆく。再びナランチャの姿に戻った丈城は軽く伸びをしながら、彼に笑いかける。

 

 

「さってと…改めましてだな。俺が赤龍帝こと、兵藤丈城だ。ジョジョと呼んでくれ」

 

 

 スッと手を差し出し、その笑みに不敵さを滲ませる丈城。ヴァーリは予想していた展開と違った事に戸惑いつつ、彼の握手に応じた。

 

 

「あ、あぁ。……ヴァーリだ。白龍皇でもある」

『声が震えているぞ、ヴァーリ』

「いやね……こうも早く場の主導権をとられるとは思っていなくてね。ちょっと動揺してしまったよ」

 

 

 明らかに動揺した表情を見せ、ぎこちない反応を見せるヴァーリ。本来は殺しあう仲の筈なのに、構図が完全にいじめっ子といじめられっ子のそれである。

 

 

 と、そこへ

 

 

「…お、一足遅かったな。皆」

「大丈夫……のようね。この有様なら」

 

 

 不機嫌なのか安堵なのか、微妙な表情でリアが現れた。後ろには朱乃をはじめとしたリア眷属が集結しており、気配を察してかそれぞれの得物を手にしているも、目の前の勢力図を見て下げた。

 

 

「ハァ…少し取り乱したけど、本題に入ろう」

 

 

 頭を振って気分を改め、ヴァーリは丈城に向き直ってこう尋ねる。

 

 

「ジョジョ。君はこの世界で自分が何番目に強いと思う?」

 

 

 その問いに丈城はフム、と腕を組んだ。

 

 確かにこれまで彼は数多くの戦いに身を投じてきた。しかしどれも強い相手ではあったが、レベル的に見ればまだまだ底辺といえる。コカビエルこそ強敵ではあるが、彼の口振りから察するに大した実力ではないのかもしれない。

 

 一拍置いて、丈城は結論を出した。

 

 

「うーん…なんとも言えねぇけど、まだ下ら辺じゃねーかな。強い強いって言われてる上級悪魔とか堕天使共には食らいつけるけど、そこまで自慢できるレベルじゃないし。俺だってまだまだ発展途上だ。そこまで自惚れてない」

 

 

 意外にも彼の答えは謙虚だった。数多のスタンドを扱える彼だが、それ以上の実力を誇る強者はごまんといる。友人のゼクスやその妻フィーア、堕天使総督のアザゼルにオーフィスやグレートレッド……。候補を挙げたら挙げたでキリがない。まだ目覚めていない『(タスク)』ACT4や『ゴールド・エクスペリエンス・レクイエム』、『赤龍帝の籠手』のさらなる段階などが使えるようになれば、多少勢力図は変動するかもしれないが。

 

 

「────成程、それなりにわきまえているわけだね。僕の見解だと…ジョジョはまだ禁手には至っていない。上から数えれば四…いや千から千五百の間ぐらいかな。何せこの世界には強者が多い。『紅髪の魔王(クリムゾン・サタン)』と呼ばれるあのサーゼクス・ルシファーでさえ、トップ10には入らない」

「……………………」

 

 

 否定も肯定もせず、ただじっとヴァーリの推論に耳を傾ける丈城。

 

 

「だが、一位は決まっている。───不動の存在が」

「……不動の存在、ねぇ。悪いがヴァーリ、最後だけちっと否定させて貰うぜ」

「?」

 

 

 ここで丈城が待ったをかけた。

 

 

「不動っつーのは、まずありえない。時が流れりゃ動くもんは動くんだよ。日本の武将だってそうだ。誰一人今日まで長続きする統治を成し得た奴はいない。お前の言う一位に大体察しはつく。けどそいつだって衰えない筈がない。トップが衰えて、それに反比例して他の奴が強くなり、そいつがトップに成り上がる。そしていつか衰え始める。ちょっとしたループさ。そんな循環が昔っからずーっと今まで続いている。だから不動だろーが不変だろーが絶対にありえねぇ」

「……………………」

「今の一位が現時点でどーなのかは知らねぇが、近いうち追い越してやるさ。テメーが辿り着くよりも速く。そして衰え始めるそん時まで、この俺がてっぺんに居座り続けてやらぁ」

 

 

 不敵な笑みを浮かべ、ヴァーリに拳を突き出してそう言い放つ丈城。この先強い相手は泉の如く湧いて出てくる。彼とて油断するわけにはいかないのだ。

 

 

 留まることなく進撃し続ける人間の証明。

 

 

 嘲笑う人外を蹴散らしながら頂きを目指す生物。

 

 

 その最果てに、彼は何を見るのか。

 

 

 同じようでそうでない道を進み続ける彼の姿に、ヴァーリはますますその興味を強めていった。

 

 

「────────それが聞けただけでもいい収穫だった。いつかはわからないけれど、君の歩みを止められる日を楽しみにしているよ」

「やれるもんならやってみやがれ。俺は誰だろーと容赦しねー」

 

 

 互いに一瞬纏わせた異質な殺気。それを感じ取って、リア達の表情が強張る。

 

 

「──『二天龍』と称されたドラゴン。『赤い龍(ウェルシュ・ドラゴン)』と『白い龍(バニシング・ドラゴン)』。過去、関わった者はろくな生き方をしていない。──あなたはどうなるんだろうな?」

「それならお気遣いなく。現在進行形で振り回されてるから」

「アハハ…どうやらそのようだね」

 

 

 ジト目でリアに睨まれる丈城。遠目で口笛を吹いて誤魔化す様は最早見慣れた光景である。

 

 

「今日は先日訪れた学舎をちょっと見てみたかっただけだ。アザゼルの付き添いで来日していてね、ただの退屈しのぎだよ。それにこっちもやることが多いからね……それじゃあ、また」

 

 

 そう言い残して、ヴァーリは去っていった。

 白龍皇の実力は自分達よりも遥かに上の筈。にも関わらずそれほど畏怖の念を感じなかった。強者の猛威を日頃から見慣れてしまった影響からか、それとも別の要因か。

 

 

「永遠のライバルって奴か…。ククッ、面白そうだねぇ。あの余裕めいた面をボッコボコに出来る日が待ち遠しいぜ」

『お前ほんっとブレないのな…。俺初めてだぞ? 白いの心の底から心配したの』

「ハッハッハッ! じゃあそれまで白龍皇の名前彫った墓石でも買っとくか?」

『どうでもいいが、早く逃げないとその暮石の名前が相棒の名前になるぞ?』

「え?」

 

 

 ドライグの言葉に引っかかる丈城。だがその意味はすぐにわかることになる。

 

 

「……そうね。ドライグの言う通りよ」

「………あ、忘れてた」

 

 

 逃走劇の途中だったことに。

 

 

「散々トラップや偽物や身代わりやら使ってくれたわね……。もう逃がさないわよ? ジョジョ……」

 

 

 再び各々のオーラを纏い、臨戦態勢に入るオカ研女子ーズ。……だが

 

 

 

 

 

 

「────────フ、残念でした……下へ参りま─────っす!!」

 

 

『オアシス』を即座に纏って、丈城が地中に消えた。地面をぬかるみにしながらその場を離れ、再び逃走を図る。

 

 

「あっ、また! しれっと未確認のスタンドを使わないで頂戴!」

 

 

 それを弾かれたようにリア達も追跡を開始。ポツンと残されたゼノヴィアと裕斗は得物をしまい、考えていたことを話し始める。

 

 

「例え白龍皇であっても、対抗策として有効なスタンド能力をジョジョが持っていればひとたまりもないだろうな。まず彼は負けない」

「うん。本当に人間かどうか時々怪しくなるけどね」

 

 

 遠くから響き渡る爆音を耳にしつつ、先の決戦で丈城が勝つヴィジョンが垣間見える二人だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………覚えてろよ、ジョジョォ……ガクッ」

 

 

 その一方で忘れ去られた哀しき被害者(サジ)が一人、ここにいた。

 

(←To Be continued…)




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