Hightension School Jo×Jo   作:尾河七国

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はい、三ヶ月後の投稿でございます。尾河です。

実はこの度 (といっても夏休み入る前くらいに遡る) 本城淳さんの執筆する『やはり俺の奇妙な転生はまちがっている』とクロスオーバーすることになりました。本城さんの方にはもう上がっていますが、こちら側視点の方は展開上もう少し進んでから投稿する予定です。

それではプール第4回目、スタートです。



第42話《プールでのお約束事 その④》

「ハァ…ハァ…あ、あんニャロ〜共ォ〜…後でぜってぇー覚えとけよ…」

 

 

 散り散りに避難し、一人更衣室隣の用具室へと逃げ込んだ丈城。一方的にヒドイ目に遭わされた彼は息を整えつつ、ポツリと毒づいた。

 

 

「ったく……あれじゃ想い人の取り合いって絵面じゃねぇぞ。ぬいぐるみ取り合う姉妹そのまんまだよ」

『何処ぞのチャッ〇ー顔負けの外道なのにな』

「一言余計だっつーの。第一ぬいぐるみじゃねぇだろチャッ〇ーはよ」

 

 

 ドライグに冷やかされた彼は長椅子にどっかと腰を下ろし、どうしたもんかと項垂れる。リア達と出会った当初から、今までに経験したことのない困難や壁にぶち当たる事は大体予感していたし、それなりの覚悟もしていた。だが全く違うジャンルでこうなるとは流石に丈城自身も予想だにしていなかった。故にどう対処していいか判断に悩み、未だに正解がわからないのが彼の現状である。

 

 まだ外では爆発音が尾を引いている。どうやって収束という名の反撃に出ようか考えていると

 

 

(ガチャッ)

「ん?」

 

 

 更衣室の戸が開かれ、誰かが入ってきた。薄暗くて一瞬分からなかったが、その髪の色から丈城はゼノヴィアだとわかった。

 

 

「物音がしたので来てみれば、君だったか。赤龍帝」

「ゼノヴィア! あいつらまだやってるのか?」

「あぁ、よくわからない単語を連発していたよ。(自主規制) だの (自主規制) だの……」

「言わなくていいっつの。もうっ!」

 

 

 話がわかる人物 (かどうかは怪しいが) と出会った事で、丈城のSAN値は一気に引き上げられた。安堵のため息をつき、彼女に歩み寄る。

 

 

「ちょうどよかった。初めて水着を着たんだが、是非君から感想を聞かせてほしい。似合うかな?」

「おう、悪くないと思うぜ。初対面ん時からあの黒いボディスーツと制服姿しか見てなかったから……ちょっと新鮮な気がするぜ」

「まぁ、私自身がこういったものしか着てこなかったっていうのもあるな。最も教会にいた頃の周囲の修道女や戦士達は触れられなくて不満を漏らしていたよ」

 

 

 髪の色と同色のスタンダードなビキニを身に纏うその姿は、モデルと勘違いしてもおかしくない程整っていた。

 

 

「しかし似合っていて良かった。リアス部長や姫島先輩とは体格が違うから自信がなくてな……機会があれば少し話をしてみようかな」

「だからって不用意にリアや朱乃っちに変なこと聞くなよ? まともそうに見えてタチが悪いからさ」

『よく言う……。俺からすればお前の方がよっぽどタチが悪いぞ?』

「私は一向に構わん!!」

『構えよちったぁ……』

 

 

 顔にシワを寄せてドヤる丈城に、彼の左手甲を光らせて呆れるドライグ。その声に反応したゼノヴィアは驚いた様子を見せ、辺りに視線を配る。

 

 

「ッ、誰だ!?」

「…あーそっか、ゼノヴィアは何気にお初なんだったっけな。こいつは俺の『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』に宿ってる二天龍の一角・ドライグだ。人外共が口々にしている赤龍帝本人だよ」

『よろしくな、デュランダル使いの娘』

 

 

 ゼノヴィアに手甲を差し出し、相棒であるドライグを紹介する丈城。彼女も彼女で納得した様子でその手を握り、まるでドライグと握手するように自己紹介を返す。

 

 

「これは失礼した。元ヴァチカン司教所属の聖剣使い・ゼノヴィアだ。今はリアス・グレモリーの眷属『騎士(ナイト)』として籍を置いている。こちらこそよろしく頼む」

 

 

 ゼノヴィアが手を離すと、発光していた手甲の光がフェードアウトして消えた。どうやらドライグの気は済んだ様子。

 するとゼノヴィアがいつになく真剣な眼差しになると、ぐいっと丈城に顔を寄せてきた。

 

 

「赤龍帝、折り入って話がある」

「ジョジョでいいっつーの。周りにはそう通してるんだから」

「ではジョジョ、改めて言うが

 

 

 

 

 

 ───────────私と子供を作らないか?」

 

 

 その瞬間、丈城の中の時が止まった。

 別に『世界(ザ・ワールド)』を使ったわけでもなければ『スタープラチナ・ザ・ワールド』を使ったわけでもない。『クラフトワーク』で固定させてもいない。というか無理だ。

 

 硬直する彼の姿を見て言い回しがダメだったのかと、ゼノヴィアはもう一度言い方を変えて意を伝えた。

 

 

「…あ、あの……私と、えっ…エ「アカ──────ン!!」ムグッ!?」

 

 

 これ以上言わせたらまずいと0フレームで口を塞ぎ、放たれそうになったトンデモ天使声(エンジェルボイス)を再び喉の向こうへ無理矢理押し込ませる。

 

 

「何言っちゃってんのねぇ!? チミ! 数秒前までの俺の安堵を返して! ちょっとばかしまともな人種だって心の底から安心した俺の心を返してよォッ!!」

 

 

 涙を滂沱と流して訴える丈城に若干引き気味のゼノヴィアだったが、すぐさま彼の手の拘束を解き、その真意を語った。

 

 

「ま、待ってくれ。訳を聞いてほしい。……知っての通り、私は今までヴァチカン司教所属のエクソシストとして生まれ育ち、長いこと主のためといって様々なことに励んできた。やる事なす事、自分の全てが神や信仰に関わっていた」

「そりゃ……まぁ、そうだったな。けど先の事件でオメーは……」

「全て無意味に等しかったと一蹴されてしまった。教会からは異端として追われ、ヤケクソで転生悪魔となって今まで滅ぼしてきた者達と同じ境遇に身を堕とす始末。完全に先を見失ってしまった」

「(言葉の要所要所にトゲがあるのは気のせいか…?) それで模索した結果がコレと……」

 

 

 丈城の察しに彼女は肯定の頷きを返す。

 

 

「リアス部長からは「悪魔は欲を持ち、欲を叶え、欲を与え、欲を望む者。好きに生きてみなさい」と言われ、それまで自分を封じていた鎖が無いことに気付かされたんだ。そして全てを解放した私は先を見つけたんだ。"女としての本能に従い、堪能しよう"とね」

 

 

 話を聞く限り、一通りの筋は通っている。どっかの欲と本音ダダ漏れの姫と巫女とは大違いだ。方向性は一緒だが。

 しかしそれをなぜ丈城に頼み込む必要があるのだろうか。

 

 

「君でなければならないのは言わなくてもわかるだろう。私はこれでも簡単に男に肌を見せるほど軽い女じゃ無い。こうして君に子を宿してくれと言うには……」

「俺に宿る赤龍帝の力、そして……スタンド能力を見込んでってことか」

 

 

 恐らく彼女は強い子供を産みたいらしく、その適任として一番当てはまったのが丈城だったようだ。

 

 

「私は子供を作る以上、強い子になって欲しいと願っているんだよ。父親の遺伝子に特殊な力を望む。だから君にしたんだ。伝説の赤龍帝の力にスタンドの力。どちらも受け継がれなくとも、オーラぐらいは受け継がれるかもしれない。これは好機だ。ちょうど人気はないし、早速一度試してみよう。何事も早め早めがいい」

「オーケーオーケーちょっち待とうか。はいビキニにかけた手ェ離そうか種田◯沙サン!?」

 

 

 とりあえず『クラフトワーク』でゼノヴィアの手を固定し、これ以上ビキニを下ろさせないように先手を打つ。我ながら下に関わることに対して過敏になってきた事を喜んでいいものか悪いものか悩みどころだが、それはさておき。暴走を抑制した上で丈城はゼノヴィアの肩をガシッと掴み、節度とは何かを丁寧に説かす。

 

 

「あのなゼノヴィア。俺たちはまだ高校生という学生なんだ。学生っちゅーのはお勉強をして、社会人になるための下準備をせにゃならん」

「そうだ。だから今の───」

「話を最後まで聞きんしゃい。別にね、俺はそういう事に興味を持ち始めても何とも思わないよ? だから根本までやめろとは言わない。けどそういうのを公共の場だったりとか野外で大っぴらにしちゃダメなの。子供とかいるし。この学園だとアーシアとか小猫とか、環境的に考えて下の知識はまだ早いの。しかもちゃんと教えなくちゃいけないことだってじぇんじぇん進んでない。何故だかわかる?」

 

 

 丈城の問いにゼノヴィアは首を傾げる。

 

 

「…さぁ? 見当もつかん」

「……今オメーが俺に頼んだこととか、ウチの脳内ピンク一色の悪魔二人が俺にしてほしい下に関わる事だよ。オメーらが自重しねぇでバンバン大っぴらにするもんだからアーシア達が対抗して真似しちゃうの。そういうのはモラル的にも周りの目からしてもよくないの。このままだとあの三人がまともに成長しない可能性が高い。だから自重してくれっつー話なの。オーケー?」

 

 

 それを言うなら丈城の敵の倒し方についても同じことが言えると思うのだが。

 ともかく彼の言い分は以上のとおりだ。今ならまだ然程影響を受けていないゼノヴィアから外堀が埋められる。それでもってリア達の暴走を抑制していき、自分の望む方向へ誘導させる。健全を盾に野望を推し進めるという丈城の考えた抜け目のない策である。

 

 

 

 

 

 

 ……が、抜け目がないのは彼だけではないようで。

 

 

 

 

 

 

「………そうか。なら二人きり、つまり今のような状態なら子作りできるな。さぁジョジョ、遠慮はいらない。邪魔が入る前にさっさと終わらせてしまおう」

「何の解決にもなってねェェェ───────────────ッッ!!」

 

 

 〔駒王学園プール取り決め その⑧『用具室内での男女の営みはやめましょう』〕

 

 

「? なぜだ? 誰もいないのだからいいだろう?」

「誰もいねぇからヤっていいとは一ッ言も言ってねぇだろがアアアッ! 学生がどういうもんか俺最初に言ったよねぇ!? 結婚すらしてねぇのに子供作ってどないするんじゃァァァッッ!!」

「落ち着け、ジョジョ。子供の方なら問題はない。基本的に私が育てるから。あぁ、ただ父親からの愛を子供が望んだら、その時だけは遊んでやって欲しい。やはり子に父と母は必要だからね」

「あぁ、それなら……ってなるかァァァ──────────ッッ!!」

 

 

 某日常系BL同人漫画家のようなテンションで荒ぶり続ける丈城。言っていることはまともそうに聞こえるが、結局中身は"やらないか♂"といった内容。これじゃ完全なる堂々巡りだ。

 

 このままでは埒が開かない。そう判断した丈城がいよいよ行為に走ろうとするゼノヴィアを拘束しようとしたその時

 

 

(ガチャッ)

「!」

 

 

 用具室内のドアを開け放ち、『ナット・キング・コール』を出して固まる彼の前に現れたのは……

 

 

「……ジョジョ? これはどういうことかしら?」

「あらあら。ずるいわ、ゼノヴィアちゃんったら。ジョジョ君と (自主規制) するのは私が先ですわよ?」

「うぅ、ジョジョさん……。酷いです……。わ、私だって言ってくれたら……」

「……油断も隙もない」

「……ジョジョの、浮気者」

 

 

 表で姉妹喧嘩をしている筈のリアと朱乃、更にはサジと共に避難した筈の小猫、アーシア、オーフィスの計五人が揃って目をすわらせて佇んでいた。

 

 

「まッ…! ま、待て! 俺ァ無実だ! それに知ってるだろ!? こーゆー下関係の話題はご法度だって!」

「どうした? ジョジョ。さぁ、子供を作ろう」

「火事現場にグレネード放り込むような事してんじゃねぇよコルァッ!!」

 

 

 必死に弁解する丈城だったが、ゼノヴィアの一言によってあえなく瓦解。誤解が誤解を呼んだ。

 

 

「何か申し開きはあるかしら……?」

「あらあら、うふふ……」

「むぅぅ〜……!」

「……有罪判決」

「我、許さない」

(オオオ…Oh my god! なんてこった……この兵藤丈城が追い詰められているだと!? 切り抜けられないトラブルなどないこの俺に…!?)

 

 

 袋の鼠、四面楚歌、詰み……彼の状況を表すならそんな共通ワードが浮かんでくる。しかもただでさえこの用具室は出入口と窓が一つずつしかなく、前者は修羅五名が立ち塞がり、窓は小さ過ぎてつっかえる。退路が断たれた。

 

 

 滅びのオーラや雷やらを醸し出しながらジリジリと距離を詰めてゆくリア達。徐々に壁際に追い込まれてゆく丈城であったが……

 

 

「……フッ、フフフ」

 

 

 その行為は、彼の十八番へバトンを繋ぐ演技だった。

 

 

「オイオイ…まさかこの期に及んで俺がおめおめとお縄につくとでも思ってんのか? 相手が勝ち誇った時(・・・・・・・・・)そいつはすでに敗北しているんだぜ(・・・・・・・・・・・・・・・・)?」

「「「「「ッ!」」」」」

 

 

 その一言でリア達の思考が一致。そして丈城が思いついた策はやっぱりこれだった。

 

 

「逃ィげるんだよォォォ────────ッ!」

 

 

 〔駒王学園プール取り決め その⑨『用具室の出入口が塞がっているからといって出入口を作ってはいけません』〕

 

 

 速攻で取り付けた『スティッキィ・フィンガーズ』のジッパーを開き、外へ逃走。リア達も策に気付いてすぐに攻撃するも、閉じられた壁に阻まれてしまいミスヒット。空いた穴からは瓦礫と外の景色が見えるだけで丈城の姿はない。

 とどのつまり、すんでのところで逃げられてしまったのだ。

 

 

「くっ、一足遅かったわね! 皆追いかけるわよ!」

「「「「 (……) はい!」」」」

 

 

 追撃のため、一同は用具室を飛び出してその後を追う。そして暫くして遠くの方から一際大きい爆発音に落雷、打撃音が連続で響き渡る。どうやら見つかったらしい。

 

 

「……フム、次は邪魔が入りづらい場所にしよう。二人っきりなら効果的なみたいだし、今度は媚薬成分を含んだお香か何かでも使ってみよう」

 

 

 一人残されたゼノヴィアは一人、今回の反省を生かして再び丈城との営みを目論む始末。この様子では暫くの間、丈城の女難…もとい悪魔難は続きそうだ。

 

 

 〔駒王学園プール取り決め その⑩『プールで起こった喧嘩を校内にまで持ち込まないようにしましょう』〕

 

 

(←To Be continued…)

 




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