Hightension School Jo×Jo   作:尾河七国

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こんにちは、尾河です。

TVアニメにようやく吉良吉影が登場しましたね! 満を持してってやつです!

しかしゲーム版とTVアニメでのCVチェンジが吉良にも適用されているとは……小山力也さんではなく森川智之さんになっていたのは意外でしたね。


そんな興奮状態の中執筆した第27話、どうぞ。



第27話《聖剣来訪と一触即発》

 

「…寝られやしねーよ、あんな状態じゃ……」

 

 

 一旦部屋の外へ避難した丈城は、外の柵にもたれ掛かってうなだれていた。

 慣れてはいるものの、やはり同じ年頃の男女が一つ屋根の下で寝るとなるとやはり、邪な気持ちに苛まれる。そして性欲をもて余す。丈城と言えど年頃の男の子なのだ。

 

 まずリアは就寝早々に寝返りをうつ振りをして寝間着を脱ぎ、アーシアは元々の寝相の悪さで自然に寝間着が崩れ、オーフィスに至っては堂々と脱ぎ捨てる始末。いっそ清々しい。

 そして朝になれば全裸と半裸の同居人が2:1の割合でいるわけである。丈城の理性がなければ捕食(意味深)は確実といっていいだろう。

 

 そんな邪な気持ちを散らすために、丈城は毎晩こうして外に出て、夜空を見上げることが多くなった。最も本心は朝までグッスリと寝ていたいのだが。

 

 

「ハァ…俺が間違っているのか? 腹括って三人の誰かを抱かないといけないのか? 一体どうすりゃこの状況を脱出できるのやら……」

『まさにゴールの見えないマラソン、ってやつだな。相棒』

「悔しいけど座布団やりてぇわ畜生」

 

 

 ドライグの例えに頭を抱える丈城。

 

 

『相変わらず頭の中はゲスい事と同居人の事でいっぱいだな。何なら相談にのるぜ?』

「三日三晩と片手にドリンク必要になるからやめておくわ」

『そこまで深刻なことかよ……。まぁいい、グレモリーとその眷属は悪魔の中でも特別情愛を持つ者達だ。勿論相棒の契約主と眷属も例外ではない。リアス・グレモリーは相棒に対する愛情が深いようだが……随分と可愛がられているじゃないか』

「俺はペットじゃねぇっつーの」

 

 

 確かに彼も思い当たるフシは幾つかあった。どれもライザー・フェニックスとのゲーム戦後に限られるのだが、眷属達や学校内でも人目を気にせずに抱きついてきたり、稀にキスもしてくる。それも心底嬉しそうに。

 

 

「でもその理屈でいくと…あれか? リアは"契約者の人間"として俺を見ているわけではなく、"伴侶にしたい異性"として意識してるっつーことか?」

『あれをみている限りでは、十中八九そうだろう』

「oh…」

 

 

 どう反応していいかわからない丈城だった。

 

 

『まぁ、相棒もそろそろ色を知ってもいい時期だ。そういうのは早め早めに体験しておいたほうがいい。いつ"白い奴"が目の前に現れるかわかったものではないからな』

「白い奴……確かバニシング・ドラゴンだったっけな」

 

 

 ……かつて神と天使・堕天使・悪魔の三大勢力が大昔に戦争をしていたことがあった。それには人間を始めとした様々な種族が三大勢力に加担していたとか。

 そんな規模の大きい戦いの最中、ただ一種族だけ三大勢力のどれにも加担しなかった種族が存在した。

 

 

 それが、生前のドライグの出身である『ドラゴン』である。

 

 

 なぜ力を貸さなかったのかは定かではないが、とにかくドラゴンは力が強く、自由気ままでフリーダムな者達ばかりだった。中には神や悪魔に味方するドラゴンもいたという。

 

 ところが上記の大戦中、この種族に関するある事が勃発した。

 

 ドラゴン内でも屈指の実力を持つ二体のドラゴンが、些細なことから喧嘩を始めたのである。

 

 

「……んで、その馬鹿ドラゴン二匹がお前とバニシング・ドラゴンだったというわけだ」

 

 

 神にも匹敵する強さを誇る二天龍は、三大勢力を蹴散らしながら争い続けた。もうこれでは戦争どころではない。そこで一旦休戦した三大勢力は同盟を結び、喧嘩を続ける二天龍を打ち負かした。肉体は1cm四方の肉片…とまではいかないが細切れにされ、残った魂を神器(セイクリッド・ギア)として人間の体に封印された。

 

 

「そして21世紀の現代になっても、宿った人間を媒介してドライグとバニシング・ドラゴンは喧嘩を続けているってか……なんつーかはた迷惑な話だぜ」

『まぁそうなる運命にあったわけだ、相棒は。今回俺の宿主はお前だった。しかも妙な力をもった人間にな。これは長い年月の中で初めてのことだ。だから楽しみにしているんだよ。今回はどうなるのかがな』

「クククッ、安心しなドライグ。俺が本当のワンサイドゲームってやつをみせてやるからよ!」

 

 

 どこぞの吸血鬼のごとく、悪意に満ちた笑みを浮かべる丈城。もし彼が先の戦争に加わっていたとしたら……考えただけで恐ろしい事になる。

 

 

『もう見せられているんだがな…そんな悪意だか好戦的な本能だかわからん塊の宿主も初めてだ。まっ、たまにはこういう相棒もいい。改めて宜しくな、相棒』

「グレート! こっちも宜しく。ドライグ」

 

 

 月明かりが辺りを照らす中、一人と一匹(?)は決意を新たにするのだった。

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 その翌日。

 

 

「…落ち着いたかしら?」

「ハイ、スミマセン。チョーシニノリマシタ」

「イリナもどうしたんだ? お前らしくもない…」

「いやぁ~、昔のノリというか…アハハ…」

 

 

 オカルト研究部の部室では、実にシュールな光景が広がっていた。

 正座をする丈城ともう一人、白のローブを羽織った栗毛のツインテールの少女。その前には呆れ顔のリアに青髪と緑のメッシュが入った女性。一体全体どうしてこうなったのか、話しは数十分前に遡る。

 

 

 

(━回想━)

 

 

 

「こんちゃーっと……ってあれ? お客さんいんの?」

 

 

 いつものように丈城とアーシアが部室へやって来ると、いつものメンバーの他に二人の女性がいた。格好のイメージ、そして首から下げている十字架からみて、彼女らは聖職者のようだ。

 

 

「えぇ、少し私に用があるみたいでね。まぁいいわ。とりあえずジョジョもこっち来て頂戴」

「? ジョ…ジョ?」

 

 

 リアが丈城のあだ名を口にすると、女性の一人が怪訝な表情を見せた。丈城も気がついたらしく、彼女に視線を向ける。

 

 

「紹介するわ。私の契約者としてオカルト研究部に身を置いている二年の兵藤丈城君よ。学校や眷属内では『ジョジョ』ってあだ名で親しまれているわ。ジョジョも挨拶しなさい」

 

 

 リアが丈城にそう促した時だった。

 

 

「…………フフッ」

「「「「「?」」」」」

 

 

 突如、丈城が不敵に笑いだした。それに応えるように女性も立ち上がると

 

 

「………まさか、ね。こんなところで…貴方と出会うとは……」

 

 

 女性は対照的に、明らかな敵意をもった眼差しで丈城の前に歩み寄る。そして…

 

 

 

 

 

「生きていたわねディオォォォッ! 今度という今度は歴史の闇に永遠に沈めてやるわぁぁぁっ!!」

「時を隔てた邂逅というわけだなイリナァァッ! 逆に沈めてくれるッ、地獄の底へェェ━━ッ!!」

 

 

 お互い飢えた野獣の如く、取っ組み合いのプロレスが勃発。周囲のメンバーの存在をものともせずにブレーンバスターやフロント・スープレックスなどを繰り出してゆく。

 結局我に戻ったリアにハリセン制裁がされるまで、二人は謎の勝負を続けていたのである。

 

 

 

(━回想終了━)

 

 

 

「全く…いくら幼馴染みとはいえ、もうちょっとマシな挨拶は出来ないのかしら?」

「つったってこれが俺達の通過儀礼みたいなもんだし…これ以外は流石にねぇぞ?」

「とにかく、今後はお互い気をつけて頂戴。わかったかしら?」

「「はーい」」

 

 

 リアの説教はひとまず中断し、ここで本題に移る。

 

 

 因みに丈城と共に奇行に及んだこの女性、実は丈城が幼稚園の卒園と共に別れた幼馴染み「紫藤イリナ」なのである。彼女は「ジョジョ」というあだ名で気がついたみたいだが、丈城は顔を見てすぐにわかったようである。あのプロレスは、彼らの再会の挨拶…だったらしい。

 

 

 ソファに座り直し、事を最初に切り出したのはイリナだった。

 

 

「先日、カトリック教会本部ヴァチカン及び、プロテスタント側、正教会側に保管、管理されていた聖剣エクスカリバーが奪われました」

「奪われた? ちょい待ち。エクスカリバーってあのゲームとかにあるやつの元ネタだろ? それって元々一本じゃねぇかよ?」

「聖剣エクスカリバーそのものは現存していないわ」

 

 

 丈城の疑問に、リアがすぐ解決の一言を発する。現存していないというのは、どういうことなのだろうか。

 

 

「ゴメンなさいね。その事については彼に話してないの。エクスカリバーの説明込みで話を進めてもいいかしら?」

「別に構いません。ジョジョ君、エクスカリバーは大昔の戦争で折れてしまったの」

 

 

 イリナの説明に、丈城は目を丸くした。

 

 

「折れたァ? エクスカリバーっつっても、耐久はフツーの剣と変わらないもんなのか?」

「そういうわけではない。長年使い古されていたせいなのか、それとも巨大な力によって致命傷を負ったのか、いずれにしろそう簡単に折れる代物ではない。━━━━そして、これがそのエクスカリバーだ」

 

 

 丈城の言葉を緑メッシュの女性が返す。すると傍らの布に巻かれた長い何かを手に取ると、それをほどいて中身を全員に見せた。

 

 

 それは、一本の長剣だった。

 

 

「大昔の戦争で四散したエクスカリバー。折れた刃の破片を拾い集め、錬金術によって新たな姿となったのさ。その時七本作られた一本がそうだ」

 

 

 見ると、眷属はその長剣をまるで汚物でも見るかのような視線を送っている。本能的にわかるのだろう。触れれば終わりなのだと。

 

 しかし人間である丈城は顎に手をやり、興味深そうにしげしげと観察している。

 

 

「こいつがそうなのか……確かにすげぇオーラだ。人間の俺でも感じ取れるぐらいだから、鍛え直したものでもちゃんとした聖剣なんだな」

「これは『破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)』。七つに分かれた聖剣のひとつだよ。管理下はカトリック。そしてイリナも一本持っている。自在な形を持つ『擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)』で、こちらはプロテスタント側が管理している」

 

 

 緑メッシュの女性…ゼノヴィアはそう言って、長剣を元に戻す。よくよく見ればその布には何やら呪式のようなものが書き込まれている。力の強いエクスカリバーを封じるためのものなのだろうか。

 

 

 その後の話をかいつまんで要約するとこうである。

 

 

 今回二人がリアに接触した目的は「盗まれたエクスカリバーを、最悪破壊してでも回収するまで手を出すな」という、何とも上から目線の依頼だった。さらに二人はヴァチカンからの使徒で、死ぬつもりで今回の聖剣奪還に身を投じるつもりらしい。

 聖剣を強奪した犯人はなんと堕天使の組織『神の子を見張る者(グリゴリ)』の幹部・コカビエル。そして彼とその配下がこの駒王町に潜んでいるというのだ。

 

 彼女らや教会の考え方からいって、悪魔であるリア達に協力を求める気はないらしい。粗方話終え、二人はこの場から去ろうとする。地味に長く感じていた丈城はやっと終わると思っていた……だが次の瞬間、彼の怒りに火をつける出来事が起こる。

 

 

 それはゼノヴィアが去り際に放った、この一言から始まった。

 

 

 

「━━兵藤丈城の家で出会ったとき、もしやと思ったが、『魔女』アーシア・アルジェントか? まさか、この地で会おうとは」

(ッ!?)

 

 

 その言葉に素早く反応したのは彼だけでなく、視線の先のアーシアもそうだった。『魔女』。それは現在のアーシアを示唆する言葉である。

 

 

「あなたが一時期内部で噂になっていた『魔女』になった元『聖女』さん? 悪魔や堕天使をも癒す能力を持っていたらしいわね? 追放され、どこかに流れたと聞いたけど、悪魔になっているとは思わなかったわ」

 

 

 イリナもゼノヴィアの言葉に反応し、アーシア観察し始める。

 

 

「……あ、あの……私は……」

「大丈夫よ。ここで見たことは上には伝えないから安心して。『聖女』アーシアの周囲にいた方々に今のあなたの状況を話したら、ショックを受けるでしょうからね」

「……………………」

 

 

 複雑極まりない表情を浮かべるアーシア。あまりにも上から目線の態度を崩さない彼女らに、丈城の中に怒りの業火が広がりを見せる。アーシアの人生を狂わせるだけ狂わしておいて、どの口が何をほざくか。つまり二人の言動は、知らず知らずの内に怒らせてはいけない人物の怒りを買ってしまっているのだ。

 

 

「しかし悪魔か……『聖女』と呼ばれていた者。堕ちるところまで堕ちるものだな。まだ我らの神を信じているか?」

「ゼノヴィア。悪魔になった彼女が主を信仰している筈がないでしょう?」

 

 

 しかしそれに気がつかず、ゼノヴィアは目を細める。

 

 

「いや、その子から信仰の匂い━━香りがする。抽象的な言い方かもしれないが、私はそういうのに敏感でね。背信行為をする輩でも罪に意識を感じながら、信仰心を忘れない者がいる。それと同じものが彼女から伝わってくるんだ」

「そうなの? アーシアさんは悪魔になったその身でも主を信じているのかしら?」

 

 

 イリナの問いに、アーシアは今にも泣き出しそうな表情で口にする。

 

 

「……捨てきれないだけです。ずっと、信じてきたのですから……」

「そうか。それならば、いますぐ私達に斬られるといい。いまなら神の名の下に断罪しよう。罪深くとも、我らの神ならば救いの手を差し伸べてくださるはずだ」

 

 

 そう言ってゼノヴィアがあの布に巻かれたエクスカリバーをアーシアに突きだそうとした……刹那

 

 

 

 

 

(メギャン! ガウンガウンガウンッ!!)

「「「「「!?」」」」」

 

 

 突如銃声が鳴り響き、ゼノヴィアの手元から火花が散った。エクスカリバーは音を立てて床に落ち、さらに三人の足元にも火花が。

 

 

「……調子に乗んのもいい加減にしやがれエゴイストが…!」ゴゴゴ…

 

 

 銃声の正体は『皇帝(エンペラー)』をブッ放した丈城だった。その目は完全に血走っており、今にも二人を殺し兼ねない勢いだ。

 

 

「さっきから聞いてりゃ『自分達が正しい』みてぇな御託並べやがって…聖職者だからって何でも許されるとでも思ってンのか?」

「━━ッ…そ、そうだよ。少なくとも今の彼女は『魔女』と呼ばれるだけの存在であると思うが?」

 

 

 ゼノヴィアは一瞬たじろぐ動作を見せるが、すぐさまいつものペースに戻る。

 

 

「『聖女』だからって友達いらねぇってのか? 『聖女』だからって誰かを愛したり、守っちゃあいけねぇのか? 冗談じゃねぇ……アーシアはれっきとした人間だ。人間なら…人間ならッ、最低限そのくらいの自由があってもいいじゃねえか!! それを縛り付けといて勝手なこと抜かしてんじゃねぇ!! アーシアはお前らの玩具じゃねぇんだよ!!」

 

 

 怒りを込めた声で畳み掛ける丈城。その覇気に二人は愚か、その場にいた全員が慄く。

 

 

「……君はアーシア・アルジェントにとっての何なのだ?」

「家族ッ、友人ッ、そして失いたくない仲間だァッ! そのフザけた考え方が通用しねぇことを証明してやるッ! 今すぐ表へ出ろォッ!!」

「「!? ジョジョ(さん)!?」」

 

 

 完全に怒りのメーターが振り切っている丈城は、ゼノヴィアとイリナに対しなんと決闘発言。いくら懐かしい幼馴染みであろうと、仲間を貶すとあらば話は別なのだ。

 

 

「いいだろう。だがいくら人間とて、容赦しない。

 アーシア・アルジェントの前に貴様を神の名の下に断罪してくれる!」

「まぁ…テメェが喧嘩を蹴っても俺は殺ると言ったら殺るつもりだがな……聖剣でこのジョジョを切れるモンならやってみろッ!」

 

 

 丈城の挑発に乗ったゼノヴィアは決闘を承諾。そして二人が外へ出て決闘を始めようと外へ出ようとした時だった。

 

 

 

「……ちょうどいい、僕も交ぜてもらっていいかな?」

 

 

 

 ゼノヴィアとイリナを睨み付けていた祐斗が割って入ってきたのだ。

 

 

「誰だ、キミは?」

「キミたちの先輩だよ。最も━━失敗だったそうだけどね」

 

 

 うっすらと憎悪が籠った笑みを浮かべる祐斗。直後…部屋中を埋め尽くすほどの魔剣の刃が飛び出した。

 

 

(←To Be continued…)

 




次回、ゼノヴィアに悲劇が!?


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