Hightension School Jo×Jo 作:尾河七国
大学のレポートが粗方終わったので投稿させて頂きます。
ついでにあのキャラに名前がなかったので、小説家仲間と話し合って名前を決定致しました。
それでは、どうぞ。
「聖剣計画…? そんなもんが実際に過去にあったってのか?」
「そう。数年前までキリスト教内で聖剣エクスカリバーが扱える者を育てる計画が存在したの。裕斗は、その計画の唯一の生き残りなの」
球技大会、そしてソーニャの説教後、丈城達がアパートに戻って来たのは7時を大きく過ぎた頃である。
夕食を手早く済ませ、入浴を終えた丈城とアーシア、オーフィスはリアからある話を聞かされていた。それは眷属の『
実は説教直後のオカ研緊急召集に、その答えがある。午後より降り始めた大粒の雨の中、突如リアは口を開く前に裕斗へ平手打ちをかましたのだ。理由は今回の競技について非協力的だったため。丈城もリアも外道戦法に走りながらも、彼の状態異常には気が付いていたのだ。
いきなりの平手打ちにも関わらず、裕斗は相変わらず無表情のまま。流石に気になった丈城は彼に対し、それまで抱えていた疑念を投げ掛けた。
すると独り言のように、丈城へ顔を向けた裕斗はこう口にしたのだ。
「自分は何のために戦っているのか」と。
丈城はすかさずリアの為ではないのか? と返したのだが、彼はそれをすぐに否定。次の瞬間思わぬ言葉を発した。
『全く違う。僕は復讐のために生きている。聖剣エクスカリバー━━。それを破壊するのが僕の戦うたった一つの意味さ』
☆☆☆
「……聖剣計画の生き残り、エクスカリバーの破壊、そして裕斗の腹の底に燻っていた本心……成程、大体事情はわかった」
リアの話と裕斗が見せた本性。大方の予測がついた丈城は腕を組んで納得する。
「……初めて知りました」
アーシアは元聖職者だったが、このことについては知らされていなかったようだ。まぁ聖女という立場にいたこともあって、知らされる筈もないだろう。
「…聖職の、影の顔」
『ニャア~?』
今回の件には絡んでいないが、オーフィスも神に仕える者達の愚業については把握していたようだ。その彼女の膝には、先日丈城が冥界の森から連れて帰ってきた新生物『
「聖剣は悪魔に対しての強力な武器。私達悪魔が聖剣に触れればあっという間に身を焦がし、斬られればその場で消え失せる。神を信仰し、悪魔を敵視する使徒達からすれば究極とも呼べる兵器よ。一番有名なのはやはり…エクスカリバーかしら? 日本でも様々なメディアで取り上げられているわね。神の領域に達した者が魔術等を用いて作り上げられた『勝利を約束された剣』。━━でも聖剣は使う者を選ぶの。使いこなせる者は数十年に一人出るか出ないかくらいと聞くわ」
「明確な意思…というわけじゃねぇが、持ち主が限られる刃っつーわけか」
「裕斗みたいな剣を創り出す
「…マジか」
『神滅具』。言うまでもなく丈城の左腕に宿るドライグも、その内の一つである。
「エクスカリバー、デュランダル、日本の天叢雲剣等の聖剣があまりにも強すぎて、匹敵する神器は今のところないのよ。魔剣も同様ね。裕斗はその内のエクスカリバーに適応するために、人為的な養成を受けた一人なの」
「じゃあ事実上、裕斗は聖剣を使えるって事か?」
「いいえ。彼は聖剣に対応できなかった。それどころか同時期に養成された者達も全員適応できなかったようなの」
「そいつらは、まさか……」
「ええ。適応できなかった彼らは教会関係者の判断で、『不良品』のレッテルを張られたまま処分されてしまったの。つまり……殺されたというわけ、ただ適応できなかったというだけで━━」
「えげつねぇ…んなけで大量殺戮とはな」
裕斗の他にも、聖剣計画に組み込まれた者達はいたという。しかし可哀想なことに、誰一人として生還した人間は存在しないらしい。
「……そ、そんな、主に仕える者がそのようなことをしていい筈がありません」
アーシアに至っては泣く寸前だった。それもそうだろう。彼女もまた、神に仕える聖女だったのだから。
「彼ら教会の者達は私達悪魔を邪悪な存在だと言うけれど、人間の悪意こそがこの世で一番の邪悪だと思うわ。……そう。人間の悪意こそが、ね」ジー
「そこで俺を見ないでくれよ…まぁ否定はしねぇが。でもあれだ、『自分が"悪"だと気付いてない、最もドス黒い悪』ってやつか。あながち間違いではなさそうだな」
…ジョジョ第6部『ストーンオーシャン』においてのラスボス、エンリコ・プッチ。彼もまた聖職者の身でありながら、自覚できない悪行を行った人物だ。そんなプッチもウェザーに同じような台詞を吐かれている。
「私が彼を転生させたとき、あの子は瀕死のなかでも強烈な復讐を誓っていたの。生まれたときから聖剣に狂わされた才能だったからこそ、悪魔としての道を有意義に使ってもらいたかった。裕斗の持つ剣の才能は聖剣に固執するには勿体ないもの。でも彼は忘れられなかった。聖剣を…聖剣に関わった者達を、そして何より教会の人間達を━━━」
「恨み、未だ晴れずっつーわけか…確かに気持ちはわからんくもない」
「とにかく、暫くは見守るしかないわね。今はぶり返した聖剣への怨恨で頭がいっぱいでしょうし。普段のあの子に戻ってくれるといいのだけれど……」
「あぁそうだ。リア、これアイツが聖剣への恨み辛みをぶり返させる切っ掛けかもしれねぇんだ。ちょっと見てくれるか?」
丈城は事の始まりとなった、あの幼馴染みとのツーショットをデスクから取りだしてリアに差し出した。こんなこともあろうかと、彼は予めアルバムから抜き取っておいたのだ。
「ジョジョ、貴方の知り合いに教会関係者がいるの?」
「いや…身内にはいねぇな。ただ俺の記憶が確かなら、その写ってる幼馴染みの家系がクリスチャンだったような気がするんだ。あと木場はそのアンティークの剣を聖剣っつってたんだが…」
「そう、貴方の近くに━━いえ、十年以上も前に聖剣がこの地にあったなんてね。恐ろしいことだわ」
「するとこの剣は…」
「ええ、聖剣のひとつよ。さっき説明したようなものとはいかないけれどね」
写真を手に取り、リアは一人物思いにふけ始めてしまった。それを尻目に、丈城は敷いた布団の上に寝転がって
「…しっかし、普段から神様だー信仰だーっつってる連中が極悪非道な事を裏でしでかしてるとは。神様が知ったら腰抜かすだろーな」
とボヤいた。そしてアーシアもまた
「どうしてこんな酷いことを…。悪魔の中にもいい方は大勢いらっしゃいますのに、それを全て否定するなんて…」
打ち沈んだ様子で嘆息する。しかし彼女や丈城が言ったところで、連中の考えがすぐ変わるわけではない。今はそう口にするしかないのだ。
「まぁいいわ、もう寝ましょう。あまりあれこれ考えていても裕斗の機嫌がおいそれと直ってくれるわけでもないわ」
「ここで寝るのかよ…。まぁ明日も早いわけだし、さっさと寝ちまoh!?」
復帰したリアの言葉で締め括られ、ひとまずの話し合いは終わった。だが就寝準備をしようとしたそのとき、いきなりリアが衣服を脱ぎ始めたのだ。驚いた丈城はすぐさまその手を止めさせ、脱衣を防ぐ。
「HeyHeyHeyHeyHeyHey! お嬢さん!? 寝るのになんで服を脱ぐんですかい!?」
「なぜって、私は寝るとき裸じゃないと眠れないってジョジョも知っているでしょう?」
「知ってるけどもッ! だからって脱いでいいもんじゃありません!! 女の子なんだからもうちょい羞恥心をもちなさい!!」
オカン状態の丈城は先日購入したリア用の寝間着(半ば強引に丈城が購入)を押し付ける。と、今度は……
「なら、私も寝ます! ジョジョさんと寝ますぅ!」
「我も、脱ぐ。抜け駆け、させない」
『ニャア!』
アーシアとオーフィスまでも脱ぎ出す始末。こうなったらもう笑うしかない。
結局三人と一匹を説得し、就寝についたのはそれから一時間後のことである。
「勘弁してくれ……」
☆☆☆
『…ニャー?』
「…リーフ、気付いてた?」
『ニャッ』
「そう。流石に我、言わなかった。じゃないとアーシア、傷つく」
『ニャア~』
「…ありがとう。あの事実だけは、黙っていようと思う。恋敵でも傷つくの、見たくない。……おやすみ」
『ニャ…』
(←To Be continued…)
はい、というわけで『猫草』の名前は"リーフ"に決定致しました。言いやすさと植物に引っ掛けた事が決め手となりました。
そして、オーフィスが布団の中で漏らした言葉の意味は一体何なのでしょうか?
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