Hightension School Jo×Jo   作:尾河七国

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第4部『リベンジ・エクスカリバー』
第24話《もう一つの派閥》


「チェストォォ━━━━━━━━━ッ!!」バキャン!

 

 

 駒王学園定期イベント・球技大会も近くなったある日。

 

 丈城は昼飯を早食いし教室を抜け出した後、持参したポラロイドカメラを持って今は使われていない空き教室へ向かった。そして机の上にカメラをセッティングし、『隠者の紫(ハーミット・パープル)』での念写をしていた。

 何でも、リア達以外にもこの駒王学園には"もう一つの悪魔勢力"がいるそうで、近々新人悪魔との初顔合わせがあるという。それに丈城も特別に顔を出すことになっているのだが、お互いに顔を知らない。

 

 そこでサプライズ(意味深)として、とある計画を企てた丈城は先にどんな人物が悪魔なのかを見極めるべく、人気のないここで念写を行っていたのだ。『隠者の紫』を纏った手刀で叩かれ、ジーッと吐き出された写真を確認してみると

 

 

「……支取蒼那。確か、生徒会長だったっけな」

 

 

 そこに写し出されていたのは、悪魔の翼を展開した駒王学園生徒会長・支取蒼那だった。その両脇や背後には現生徒会メンバー数名と最近追加されたという男子生徒が一名。つまり現生徒会メンバーは全員悪魔ということになる。

 

 

『支取……成程、シトリー家の悪魔か』

「シトリー家?」

『具体的に言えばグレモリーやフェニックスと同じ位の家柄だ。そして現四大魔王の一角・レヴィアタンはシトリーの出身。支取蒼那とやらはそのシトリー家の次期当主とみて間違いなさそうだ』

 

 

 左腕からドライグが分かりやすく解説する。流石長く生きているだけあって、彼は人外の関係について博識だった。……最も一回殺されてはいるが。

 

 

「まぁ生徒会長の人柄は俺も知っているし、多分人間を見下すような真似はしねぇと思うがな。それよりも重要なのは初顔合わせのサプライズだ。ただコンニチハするだけじゃ面白味に欠ける。こういうのは俺式のGO☆A☆I☆SA☆THUをするのが礼儀ってもんだ」

『それは礼儀と言うよりかはただの嫌がらせだ……。今回は何を企んでるかは知らんが、グレモリーの娘に大目玉を食らっても知らんぞ?』

「んな事を恐れているようじゃ人間の名が廃るぜ。さーて、今回はどんなのを仕掛けてやろーかなー? ケケケ━━ッ♪」

「お前本当にトラブル起こすの好きだよな……」

 

 

 薄暗い教室の中、スタンド使いは邪悪な考えと笑みを浮かべるのだった。

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

「それじゃあ始めましょうか。私の新しい下僕、アーシア・アルジェント。駒は『僧侶(ビショップ)』よ」

「アーシア・アルジェントです。今後もよろしくお願いします!」

「はい、こちらこそよろしくお願いします。こちらが我々シトリー眷属の『兵士(ポーン)』、匙元太郎です。新人の悪魔同士、仲良くしてやってください。匙、ご挨拶を」

「あ、はい会長! 匙元士郎です。 よろしくねアーシアさん!!」

 

 

 それから数日後の放課後。旧校舎のオカ研部室には丈城を除いたリア眷属メンバーと生徒会、もといシトリー眷属が初顔合わせ会を行っていた。

 シトリー眷属の転生悪魔・匙元士郎は、アーシアを前にして張り切っている。気持ちはわからなくもないが、少なくともこの後起きる悲劇に気づく様子はなさそうだ。

 

 

「…サジ、何鼻の下を伸ばしているのですか?」

「え!? いいいいえいえっ! そ、そんなことないっスよ!?」

 

 

 今更誤魔化してもバッチリ全員に見られていたのだが。この場にいるリア達にそして……

 

 

 

 

 

「ほほう、ウチのアーシアにいやらしい事をしようと企んでいたのか? この俺の前で堂々とやるとはいい度胸だなァ~!!」

「「「「「!?」」」」」

 

 

 潜んでいた第三者に。

 

 

「…やれやれ、まさかスタンド能力を使って部室の中に隠れていたのかしら? ジョジョ」

「Excitly(そのとおり)。普通じゃインパクトに欠けるんでな、数分前にコッソリ忍び込んでいたのサ。今なら不意をついてそこのスカタン野郎を再起不能(リタイア)にできるぜ!!」

「やめなさい。というか姿が見えないと会話がしづらいから出て来て頂戴」

「しょ~がねぇ~なァ~、ちょっと待ってろ」

 

 

 初顔合わせ早々に強襲を仕掛けようとした丈城を止め、頭に手を当てて嘆息するリア。その会話を聞いていた蒼那は恐る恐る、対話していた人物について尋ねた。

 

 

「…リアス、今ジョジョって……」

「ええ。神滅具『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』の保持者であり、件のスタンド能力を持つ人間・兵藤丈城、又の名をジョジョよ。初めに言っておくけど、彼に対して喧嘩を売るような真似をしてはダメよ? 彼殺すつもりで襲いかかってくるから」

「え、えぇ…善処しておくわ」

 

 

 これ以上厄介なトラブルを引き起こしてはいけないと判断したリアは、蒼那…ソーナ・シトリーに念を押す。彼女はそれで納得したものの……

 

 

「てめぇ! スカタン野郎って俺のことか! 人間のくせに偉そうにしやがって!! さっさと出てきやがれコノヤローッ!!」

 

 

 サジだけが理解していなかった。

 

 

「! サジ、今の言葉をすぐに撤回しなさい! 何をしているのです!!」

「大丈夫ですよ会長! 俺が人間なんかに負ける筈がありませんから!!」

「そういうことではありません! 彼はフェニックス家の三男を意識不明の重体に追い込んだ張本人なのですよ!? 悪魔になって日が経たない貴方が勝てる相手ではありません! 分が悪すぎます!!」

「えぇっ!? あれってリアス先輩か姫島先輩がやったんじゃ……!?」

 

 

 ソーナの警告に驚くサジだったが、時既に遅し、

 

 

「フフフフフフフッ! ならば死ぬしかないなァ? 匙元士郎ッ!!」

 

 

 丈城の怒りを買ってしまっていた。

 

 

「ジョジョもやめなさい!」

「心配すんな! 痛みはちゃんと感じるようにしてやるからよォ! 『スティッキィ・フィンガーズ』ッ!!」

 

 

 その言葉が言い終わるや否や、サジの前のテーブルの下にいつのまにか取り付けられていたジッパーが開き、中から上下逆さまのまま丈城がコンニチハ。その左腕には既に『赤龍帝の籠手』が展開しており、拳を握りしめて…

 

 

 

 

 

「アリィッ!!」

 

 

 

 

 

(チ━━━━━ン……!)

 

 

 

 

 

「アガタァァァァッ!!?」

「サジ!?」

 

 

 サジのせがれを、思いっきりブン殴った。

 

 

「伊達に人外共と殺りあったわけじゃあねぇんだよッ!! そして初めましてェ、生徒会長!! この俺がプレッシャーと常識を跳ね返す男・兵藤丈城だァッ!」

 

 

 全員が驚く中、テーブルの下のジッパーから飛び出した丈城は床に着地してご挨拶。因みにサジはフルパワーで股間を強打されたためにソファの上で悶絶中。そりゃ急所を狙われたのだから、仕方がないといえるだろう。

 

 

「……………」

 

 

 ソーナに至っては唖然としていた。

 

 

「先生が放課後の呼び出しがあるから、ジョジョ君は遅れるみたいな事を聞いていたけど……まさか先生もグルだったりするのかな?」

「Yes I am!!」チッ,チッ,

「……ハァ。とりあえず彼が眷属の協力者であり、私の契約者でもある兵藤丈城君よ」

「俺の事はジョジョと呼んでくれ。シトリー家の次期当主、ソーナ・シトリーさん?」

「! 何故それを!?」

 

 

 ソーナは初対面の丈城に、素性がバレていたことに動揺を隠せない。すると彼女を落ち着かせるために朱乃が助け船を出した。

 

 

「ジョジョ君は予め、念写能力を持つ『隠者の紫』というスタンドでソーナ様を調べたのですよ。そうでしょう? ジョジョ君」

「そうだったのですか……用意周到な性格は伊達ではないということですね」

「正直やられると心臓に悪いわよ。初めて会った時も念写されていた写真を見せられたし、あの頃から想像だにしない方法ばかり披露させられたりしたから……」

「このジョジョ! 何から何まで計算づくよォ━━ッ!」

「……胸張って言えることじゃない」

 

 

 丈城は全くもって反省する気はないようだ。

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

「『スティッキィ・フィンガーズ』…殴った物体にジッパーを取り付け、開閉する能力を持つ。ジッパー内の空間に侵入することもでき、腕に取り付けて打撃の射程距離を伸ばしたり、物体を切断する等の様々な用途がある……ということですね」

「しょゆこと」

 

 

 背後に『スティッキィ・フィンガーズ』を出現させて、丈城はソーナにスタンド能力を解説していた。

 

 

「スタンド能力が一体どういったものなのかを聞かせてもらいましたが、中々興味深いものでした。しかし…」

 

 

 そう言ってソーナは丈城からサジに視線を移す。

 

 

「私の眷属を実験台にするのは、いかがなものかと…」

 

 

 サジは真っ白になって床に倒れていた。

 実は解説中に丈城がアーシアでよからぬことを想像したサジにお仕置きといって、『スティッキィ・フィンガーズ』の実験台にしたのだ。首にジッパーを取り付けて呼吸を一時的に止めたり、『アリアリラッシュ』を浴びせかけられたり、全身をジッパーで切断されるなどされたサジは精神的にくるものがあったらしく、真っ白に燃え尽きてしまった。

 

 

「悪魔になって日が経ってないとはいえ、慢心しきっていた新人君に現実を見せてやっただけでも有り難いと思わなきゃ。経験を積ませてやるってのも、主の役目じゃねぇのか?」

「…それもそうですね。私が軽率でした」

「わかりゃあいいんだ。うん」

 

 

 丈城にたしなめられ、ソーナは素直に頭を下げる。

 

 

「く…くそっ、俺んところの生徒会メンバーはお前のところよりも強いんだからな」

「チッ、まだしぶとく生きていたか」

 

 

 ここで配色を取り戻したサジが復活。よろよろと力なく立ち上がり、まだ強気な態度を見せる。まぁ止めを刺そうと『キラークイーン』を繰り出してリアに叩かれたことは完全な予断である。

 

 

「私はこの学園を愛しています。生徒会の仕事もやりがいがあるものだと思っています。ですから、学園の平和を乱す者は人間であろうと悪魔であろうと許しません。それはあなたでもこの場にいる者たちでも、リアスでも同様のことです」

「…ま、言いたいことはわかるぜ。俺も同じだ。けど対立ってのは必ず起こりうる事だ。互いの正義の道がぶつかり合うことだってある。……そんときゃ、容赦しねーぜ?」

「対立する前から宣戦布告ですか、大した自信ですね。…でも負けませんよ? 絶対に」

 

 

 やはりというか、何かと年上に突っ掛かる丈城にソーナはその目を真っ直ぐ見据えて口に出す。ゴゴゴ…と迫力を出す二人を仲裁すべく、リアが話題を変えた。

 

 

「そういえば球技大会が近かったわね。私たちは結構前から練習を始めているのだけれど、あなた達は大丈夫かしら?」

「えぇ、問題ないわ。リアスには早々に負けて欲しくないわね」

 

 

 そう。球技大会が二週間後に迫っており、種目は

 

 男子:サッカー、バスケ、ソフトボール

 

 女子:テニス、バレー、フットサル

 

 となっている。そして目玉は部活対抗ドッジボール。オカ研や生徒会含め、のべ20の部活ぶつかり合う競技だ。

 

 

「リアス、球技大会が楽しみね」

「えぇ、本当に」

 

 

 リアとソーナは楽しそうに、そして不敵に笑う。一方こちらでは

 

 

「兵藤ッ! このツケは必ず払ってもらうからな!! 覚えてろよ!」

「貧弱貧弱ゥッ! 貴様がいくら努力したとしても、下級悪魔の力には限度がある! モンキーが人間に勝とうなどと……無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァッ!!」

 

 

 歯を剥いて敵対するサジと、どこぞの石仮面使用者の如く笑う丈城の言い合い合戦が早くもスタート。サジの背後から龍が、丈城の背後から『世界(ザ・ワールド)』が垣間見えたのは気のせいだろうか。

 

 

「お互いのルーキー紹介はこれで十分でしょうね。では、私たちはこれで失礼します。片付けないといけない書類がありますから」

 

 

 そう言ってソーナは、いまだ興奮冷めやらぬサジをつれて出ていった。

 

 

「ジョジョ、アーシア。匙くんと仲良くね。他の生徒会メンバーともいずれ改めて悪魔として出会うでしょうけど、同じ学舎で過ごす者同士、ケンカは駄目よ?」

「はい!」

「安心しろ! 野郎がどんだけムカつこうとも再起不能だけで勘弁してやる!!」

「それをケンカというのよ!!」スッパーン!

「タコスッ!?」

 

 

 リアお手製のハリセンを食らい、一応のところの丈城の暴走は収まった。

 

 因みにそのハリセンには、リアが若干滅びのオーラを纏わせていたとか何とか。

 

 

(←To Be Continued…)

 




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