Hightension School Jo×Jo   作:尾河七国

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お久し振り、尾河です。

前回から間が空いての投稿になります。なのでやり方だったりとか文章構成とかがぐだぐたかも知れませんのでご了承下さい。

そういえば今更ですが、第4部遂に始動しましたね。康一の声優さんが梶裕貴さんになっていたのは、個人的にちょっと驚きました。


それでは第22話、ライザー戦後のお話です。



第22話《魔王様と友達になろう》

「な…何てことだ……!」

「フェニックスが……不死鳥が人間に劣るなどありえん!」

「……………」

 

 

 その頃、グレモリーとフェニックス両家が観戦している会場は騒然としていた。無理もない。彼ら悪魔は人間に対して全くと言っていい程良いイメージを持たず、自分たちよりも格下と見下している。それは今回のゲームもまた例外ではなかった。口先だけの名上がり者がしゃしゃり出てきただけ、悪魔達は当初丈城の事をそう判断していた。

 

 だが蓋を開けてみればどうだろう。『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』だけならまだ理解出来る。しかし神器(セイクリッド・ギア)ではない未知なる力『スタンド能力』は彼らにとって、想定外の存在かつ実力だった。

 

 これまで似たような神器は発見されていた。けれど生物を老朽化させたり、ジッパーをとりつけるといった神器など聞いたこともない。そんな力をさも当たり前のように使いこなす人間に、会場の悪魔達は隕石級のショックを受けていた。

 

 

『ヤッダーバァァァァアアアアアア━━━━ッ!!』

「ッ! ラ、ライザーが!!」

 

 

 モニターには丈城と『ゴールド・エクスペリエンス』の無駄無駄ラッシュで殴り飛ばされ、柵の奥へ押し込まれたライザーが映っている。だが次の瞬間には屋上から転落し、モニターから姿を消した。

 

 

「何なんだ……何なんだあの人間は!!」

「おのれェ…ッ、人間の分際で悪魔に歯向かうなど!」

 

 

 観戦している悪魔達は丈城に対して歯を剥き、怒りを露にする。だがそんな不穏な空気の中、約二名だけ冷静にこのゲームを観戦する人物がいた。

 

 

「……サーゼクス、リアスの報告にあった例の契約者とは彼…だったかな?」

「えぇ、父上。先程グレイフィアに確認したところ間違いありませんでした。彼こそリアスの契約者である兵藤丈城君です」

 

 

 二人ともリアと同じ紅の髪。似た顔立ちの若い男性と、貫禄のある初老の男性。彼らはグレモリー側の悪魔であり、リアの兄・サーゼクスとその父・ジオティクスであった。

 

 

「スタンド能力……我々にとっては全くの未知なる力だ。それらを駆使し、フェニックスを圧倒する実力を秘めた人間……。私も長く生きているが、あれ程悪魔に食らいつける人間は見たことがない。彼にはそういった才能があるのかもしれないな…」

「………………」

 

 

 モニターに映る丈城の姿を見て、サーゼクスはあることを思い返す。事はちょうど、はぐれ悪魔バイザーを討伐した次の日に遡る。

 

 

 

(━回想━)

 

 

 

「(コンコン)失礼致します、お兄様」

「ん、リアスか。入っておいで」

 

 

 悪魔達が暮らす、人間界とは異なる地に存在する"冥界"。この日リアはとある一件を報告するために一旦冥界へと帰省していた。

 

 

「事前の連絡にもあったが、急にどうしたんだい? いつもみたく通信魔法で報告してくれればいいのに」

「それが、どうしてもお兄様と直接会って報告しなければならない事があるのです」

「よし、わかった。立ち話もなんだし、そこへかけて聞こうじゃないか」

 

 

 グレモリーの屋敷で仕事をしていたサーゼクスは一旦手を止め、リアに自室のソファへ腰掛けるように促す。彼女の対面に座り、本題に入る。

 

 

「それで、報告したい事というのは?」

「はい、先日新たに契約を結んだ人間の事です」

 

 

 リアはサーゼクスへ、そのとある一件の資料を提出した。

 

 

「これが資料か。どれどれ…」

 

 

 彼は手渡された資料に目を通してゆく。そこには、その人間の驚愕の実体が記されていた。

 

 

「……リアス、これは一体…?」

「仰りたいことはわかります。しかしその資料にあることは全て事実です。現に私や下僕達も、この目で確認しています」

 

 

 サーゼクスもそう長くではないが、様々な種族や能力を見て体感してきた。しかし二天龍の一角の力だけでなく、複数の能力を一つの体に宿している人間など聞いたことがない。しかもまだ未確認の能力が多数あるという。

 

 

「赤龍帝…そして『スタンド能力』……か。彼は自身の力をそう称しているのかい?」

「はい。本来スタンド能力は一人につき一つだけ宿るものらしく、彼の場合はどういうわけかそれが複数扱えるとそう言っていました」

「フーム……いわゆる能力を持つ者の『変異種』というケースだろう。稀にこういった異種が生まれてくることはあるが、彼の場合は異例中の異例だ。私でも見たことがない」

 

 

 サーゼクスはそう見解を述べるが、その顔はいつになく険しい。

 

 

「わかった、とりあえずこの件は父上にも報告しておこう。リアスは引き続き彼との契約を続けなさい。何か決まり次第、こちらから『女王(クイーン)』を通じて連絡する。リアスも彼についてわかったことがあれば、ほんのささいなことでもいい。随時報告してほしい」

「わかりました」

 

 

 

(━回想終了━)

 

 

 

(兵藤丈城君……我々悪魔やその他の人外達に対して『自らという人間の証明』のために戦う男…か)

 

 

 何故かカメラ目線で人差し指を突きだし、鋭い眼差しを送る丈城(本人には見えていない。念のため)。そして彼がライザーを再起不能にさせる前に放った一言。

 

 

『テメーのように人間を見下す人外共が存在する以上、俺はこの歩みを止めるつもりはないッ!!』

 

 

 その言葉で、サーゼクスが彼に抱いていた興味がより一層深まった。

 

 

「……フフッ、面白いな」

「…?」

「彼に……会ってみたいな」

 

 

 彼が浮かべた微笑は、まるで楽しさを隠しきれない子供のように見えた。

 

 

 ☆☆☆

 

 

「お兄様ァ!」

 

 

 一方の決戦地、屋上。丈城と『ゴールド・エクスペリエンス』の渾身のWアタックによって、強敵ライザー・フェニックスは柵の向こうへと消えていった。

 

 思わぬ巻き添えを食ったにも関わらず、レイヴェルは炎の翼を展開。兄の元へ飛び立とうとする。が、

 

 

「ハイそこまでー。諦めが悪いデスヨー?」

 

 

 それよりも速く丈城が『隠者の紫(ハーミット・パープル)』でレイヴェルの体を拘束。素早く引き寄せて彼女の襟首を鷲掴んだ。

 

 

「嫌ッ! 離して!」

「オイオイ、俺ァ親切心でオメーを助けてやってんだぜ? それともなにか? オメーもライザーと同じ目(・・・・・・・・)に遭いたいてェのか?」

「えっ……?」

 

 

 暴れて拘束を逃れようとするレイヴェル。しかし丈城が意味深な事を口にすると、急に大人しくなった。同じ目に遭うとは一体どういうことだろうか。

 

 

「この先は……柵の向こうの地面には、何がある? そこで俺はさっき何をしていた?」

「…ハッ!! まっ、まさか! この先って……ッ!!」

 

 

 その一言でいち早く真意に気がついた裕斗が、慌てた様子で駆け出す。そして柵から身を乗り出し、下を覗き込む。小猫も裕斗の行動で全てを理解。彼と同様に柵の下を見た。

 

 

「「!!」」

「どうしたの二人共!? まさか…ライザーはまだ仕留めきれて……!?」

「いや…焼き鳥を仕留めた手応えは確かにあった。二人は気付いて当然だったろうな……何せあの現場に一緒にいたんだから。この先は、"運動場"だ」

 

 

 残りのメンバーも裕斗と小猫のもとに歩み寄って下を確認。そして二人と主犯を除いた全員が、その先の光景に戦慄を覚えた。

 

 

 

 

「A……A、Ah……」

 

 

 

 

 屋上からでもハッキリわかる程朽ち果てた人影。それは紛れもなく丈城に倒されたライザー本人だった。

 

 

「……ジョジョ君、『偉大なる死(グレイトフル・デッド)』の射程距離は?」

「正確にはわかんねーけど、列車一本の頭からケツまでは余裕で届くぜ」

「な…何…? どうしてライザーがミイラみたいに干からびているの……!?」

「多分…ジョジョ君は『偉大なる死』のスタンド能力を解除せずにここへ来たんです。立ち込めているあの煙は『偉大なる死』が発したもので、生物を体温次第で老朽化させてしまうんです。ライザーはさっきの戦いで体温が上昇し、さらに炎を多く活用していた…だから落下して煙に触れた瞬間にああなったんです……」

「ヤローはかろうじて生きているってトコだ。火を司るっつーわけだから、当然体だって温まる。枯れ枝みたいに老朽化するのに1秒も掛からなかった筈だ。……あー、地面に激突して全身の骨が粉々になってるな、ありゃ。放っとくといくら不死鳥でも死ぬぜ」

 

 

 丈城はパチンと指を鳴らして能力を解除。すると煙がサァーッと晴れ、ライザーは徐々にもとの姿へ。そして光の粒子と化して消えていった。

 

 

『ライザー・フェニックス様、再起不能。よってリアス・グレモリー様の勝利です』

「…勝っ…たの? 私達……」

「みてぇだな。本人含めライザー眷属は全員再起不能。完勝だぜ」

 

 

 リア眷属の勝利アナウンスが流れても尚、勝った当人達はポカンとしていた。まぁ「王」の予想外な敗北の仕方が一番影響していると思われる。

 

 

「テメーの敗因は…たったひとつだぜ……ライザー・フェニックス…たったひとつの単純な答えだ………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『テメーは俺を怒らせた』」

 

 

 ライザー・フェニックス…完全敗北、再起不能(リタイア)

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 それから三日後の放課後。

 

 

「それでは、私達の初陣に輝かしい勝利が飾られたことを祝して、乾杯!」

「「「「「かんぱ~い!!」」」」」

 

 

 オカ研の部室では、リア眷属の初レーティングゲーム勝利の祝賀会が催されていた。テーブルにはリアと丈城が腕によりをかけて作った料理やスイーツがズラッと並んでいる。それぞれジュースを注いだグラスを当て、眷属の勝利を祝う。

 

 

「いや~、初陣を華々しい勝利で飾れて気持ちがいいぜ!」

「あれを華々しい勝利と言い切れるジョジョ君の方がいっそ清々しい気がするよ…まぁでも、今回のレーティングゲームは勝つことが出来て良かったですね」

「ええ、そうね。ジョジョがいなかったら私達勝つことなんて出来やしなかったもの。改めて礼を言うわ、ジョジョ」

「気にすんなって、俺は大したことはしてねぇ。向かってくる敵は殴る・蹴る・ぶっ殺す! それだけだぜ」

「『ぶっ飛ばす』はどこへいったんだい…?」

 

 

 裕斗の突っ込みを余所に、グラスのジュースを一気飲みする丈城。よくよく考えてみれば罠でやられた眷属とユーベルーナを除けば、彼が再起不能にさせた人数は半数を軽く越している。ほぼ丈城の一人勝ちに等しいだろう。

 

 

「そうですわね…私は唯一再起不能になってしまった身なので、眷属にあまり貢献出来ませんでしたわ」

「まぁそう落ち込むなよ。あんなモンを持ってるなんてフツー思わねぇんだから。分が悪すぎただけだぜ、今回は」

 

 

 しょげる朱乃をフォローし、丈城はよしよしと頭を撫でる。

 と、その時だった。

 

 

(カッ!)

 

 

 突如部屋の床が輝き、魔方陣が展開した。紋様はグレモリー眷属のもので、それを見たリアは思わず呟く。

 

 

「! まさか……」

「なんだァ…? またあの銀髪メイドか…?」

 

 

 この場にいる者以外のグレモリー関係者といえば、真っ先に思いつくのはグレイフィアだろう。約一名殺気立つが、次の瞬間予想外の来客が現れた。

 

 

「やぁ、リアス。祝賀会の途中だが、失敬させてもらうよ」

「おっ、お兄様!!」

 

 

 そこに立っていたのは、なんとリアの兄・サーゼクスだった。その声に反応して裕斗達はその場に膝まづき、新人悪魔のアーシアも若干遅れて膝まづく。一方の丈城に至っては平然としていた。

 

 

「まぁそう固くならなくていい。くつろいでくれたまえ」

「お兄様…今日はどうなされたのですか?」

「なに、可愛い妹の初勝利を私も祝いたくてね。早々に仕事を終わらせてやってきたんだ。それに……」

 

 

 言葉を切り、サーゼクスは丈城に目を向ける。

 

 

「個人的に……彼とも話をしてみたかったんだ」

「…まぁ、そんなことだろーとは思ってたけどよ。まさか魔王様直々に会いに来るたぁ……な」

 

 

 顔には出していないが、彼も魔王自ら来ることに驚いていたようだ。朱乃にソファへ案内されたサーゼクスはそこへ座り、丈城も対面に掛ける。

 

 

「お互い、お初にお目にかかるね。まずは自己紹介といこう。私はサーゼクス・ルシファー。リアスの兄で魔王を務めている」

「こりゃご丁寧にどうも…。俺は兵藤丈城。駆王学園の二年で『俺という人間の証明』のために戦う人間だ…」

 

 

 残りのメンバーはソファの側に立ち、二人の対談を見守る。

 

 

「丈城君…でいいのかな?」

「ジョジョでいい。周りにはそう通している」

「ではジョジョ君、今回のレーティングゲームについてどう感じたか…聞かしてもらえるかな?」

 

 

 そもそも今回のレーティングゲームは、グレモリーとフェニックス両家の政略結婚を巡るものだった。リアが拒んだために勝負が行われることとなり、丈城は完全な飛び入り参加。人間の身である彼には全く関係のない話の筈だったのだが……

 

 

「……はっきり言おう。俺はあんたら、上級悪魔共の頭を疑ったよ」

「ジョジョ!」

「まぁリア、落ち着きなさい。ジョジョ君、続けてほしい」

「俺ァ今まで政略結婚ってのは、ドラマや小説の中だけの話だと思ってた。目的は大抵御家の血を継ぐためだとか、そういった由緒ある家系を廃れさせない為にとる方法だからな。でも今時そんなデカい家柄は数少ねぇし、あったとしても本人の自由が尊重される……あんたらも両家を潰さない為に話を進めてたんだろ?」

「…そうだね。君の言う通りだ」

「話に聞けば、あんたやリアみたいな純血の悪魔は希少らしいな。今は転生悪魔が大半を占めているし、先の大戦で多くの純血悪魔が死に絶えた。だからそれを増やすためにはあの縁談を進める他なかった。リアは次期当主にならなきゃいけねぇし、ライザーもライザーで家を背負わなくちゃならなかった。……でも」

 

 

 丈城はサーゼクスの目を真っ直ぐ見据え、言葉を繋ぐ。

 

 

「本当にそれが、『互いにとっての最良の方法』…だったのか?」

「最良の…方法?」

「答えはNOだ。例えばあのレーティングゲームするしない関係なしで婚約したとする。それで純血の子孫が生まれて誕生したら、あんたらやライザーは喜ぶかもしれない。でも自らの意志を聞き入れてもらえず、無理矢理御家に動かされたリアは喜ぶのか? 好きでもない奴の子を産んで嬉しいのか? 何一つリアにとって不利益かつ不条理じゃねぇか。娘の人生踏み荒らしてまで、そんなに純血の悪魔が欲しいのかよ」

「………………」

「大事なのは伝統や歴史を『守る』ことじゃねぇ。『伝える』ことだ。今あんたらがしなければならないのは種族の伝統を守ることではなく、リアやライザーに自分たちの種族の未来を託すこと。いつまでも昔のやり方や意志に固執するのではなく、どんどん新しいものを取り込んで新風を巻き起こす……。それが本当の『繁栄』ってやつじゃねぇのか?」

 

 

 持論を述べ終わった丈城。すると

 

 

 

 

「……素晴らしい。素晴らしいよ、ジョジョ君」

 

 

 意外にもサーゼクスは怒りなどせず、彼を賞賛した。

 

 

「やはり君と話せてよかった。決意のあるその眼差し、何事にも恐れを持たぬその強靭な意志…私は君のような人間にずっと会いたかったのかもしれない。役職上、私はどうしても丁寧語や控えめな表現で話されることが多い。"対等"で話す相手が少なかったんだ。ジョジョ君、実を言うと私もこの縁談には異を唱えていたんだ」

「「「「「ええっ!?」」」」」

 

 

 思いがけないサーゼクスの一言に、リア達は驚きを隠せない。

 

 

「リアスには…悔いのない人生を歩んで欲しいんだよ。私からも口出しは出来る。だが旧家の者達のことも考えなくてはならない。歯痒い思いで……いっぱいだったんだ」

「お互いリアを想う気持ちは一緒…ってことか。じゃあ逆に聞くが、俺がもしあのゲームで負けていたらどうしていたんだ?」

「披露宴に乗り込ませて、往年の花嫁奪取を陰から手助けする……こんなところかな?」

「オイオイオイ…魔王様がそれやっちゃあ不味くねぇか? バレりゃあ一大事だぞ?」

「ハッハッハッ。バレないための工作ぐらい、赤子の手を捻るように楽な作業だよ」

「言ってくれるじゃねぇか……気に入ったぜ」

「私もだよ……ジョジョ君、『私と友達にならないか』?」

「なら俺からも……『俺と友達にならないか』?」

 

 

 一拍置いて、二人はパンッと固い握手を交わす。

 

 

「「『Yes,I am(喜んで)』!!」」

 

 

 丈城とサーゼクスの笑みは、全く同じだった。

 

 

「……さて皆、祝賀会を邪魔して悪かったね」

「い…いえ、そんなことは…それよりもお兄様、先程の言葉は…?」

 

 

 対談を終えたサーゼクスに、リアは恐る恐る尋ねる。そりゃそうである。渦中にいた人間がイキナリ反対でしたと言われれば、動揺せざるを得ないだろう。

 

 

「そのままの意味だよ、リアス。生きるのなら悔いの残らないように生きなさい。私は個人を尊重するタイプだからね」

「しッ、しかし!」

「いいじゃねぇかリア。俺だったら実力行使で阻止すっけど、そうしなかっただけでもセーフじゃんか。なぁ諏○部○一!」

「ハッハッハッ、中の人などいやしないよ?」

 

 

 先程の魔王らしい雰囲気は何処へいったのか、サーゼクスは朗らかに笑う。

 

 

「ジョ、ジョジョ君……流石にあだ名は…」

「つけるとも。異論は認めん!!」

「やっぱり……」

「そういえば、ジョジョ君は歳上にあだ名をつけているそうだね。一つ、この私にもつけてもらえないだろうか?」

 

 

 サーゼクスにそう頼まれ、丈城は顎に手を当てて彼のあだ名を考案する。

 

 

「そうだな……サーゼクスからとって、『ゼクス』ってのはどうだ?」

「Good! これからもよろしく頼むよ、ジョジョ君!」

「グレート! 仲良くしようぜ、ゼクス!」

 

 

 悪魔の頂点に立つ者の一人と史上最凶の人間。出会っても結託してもいけないコンビが今、ここに誕生してしまった瞬間だった。

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 …とまぁ予期せぬ来客があったものの、祝賀会は予定通り行われることに。それぞれの反省や次に生かす点、互いを客観的に見て良否を交わす等、様々な意見交換がなされた。

 

 おっと、少し話し忘れた事がある。この場を借りて少し話しておこう。

 当然の事ながら、今回の縁談は破談。ライザーの下僕達の殆どは『偉大なる死』によって老朽化させられていたが、ライザーを再起不能にさせた直後に丈城が能力を解除したために復活。一命を取り留めた。

 

 だがライザー自身はそういかなかった。全身の骨が粉々な上に、直前の記憶が断片的に残っていたのだ。そのため『見下していた人間に敗北した』という事実を知り、そのショックで再び失神。今日まで眠ったままである。

 またフェニックス側の上級悪魔達は『フェニックスの恥を作った原因』として丈城を抹殺しようとしていた。しかし直前でサーゼクスのstopがかかり、暗殺は未然で防がれた。というか、襲撃したとしても返り討ちにされる未来しか見えないのだが……

 

 

 で、件の本人は…

 

 

「『F-ME○A』で俺に勝てると思うなよゼクスぅ! 最初のコーナーを頂くのは、このジョジョだ!」

「なんと!? □ボタンを連打してパワーを溜めている! スピードダッシュをさらに加速させるためか! …しまった! こうなれば……こうだ!」

「何ィッ!? わざと失敗してスピンをかけ、俺のスタートダッシュを妨害しただとォッ!? 下手をすればコースアウトしてしまうというのに……ゼクス! 貴様このゲームやり込んでいるなッ!!」

「ハーッハッハッ! 答える必要はないぞジョジョ君!!」

「……なんというか、楽しそうですね。二人共」

「お兄様は昔から人間界のゲームに夢中でね……前に勤務中に隠れてやってた程なのよ。最もその時はグレイフィアにバレて、しこたま怒られたらしいけど……」

 

 

 二次会と称してサーゼクスを自宅に招き、二人でTVゲームを楽しんでいた。リア達はその様子をただただ見ているしか他なく、口出しできる空気ではなかった。

 

 

「のわあぁぁッ!! タッチダウン差で負けたァァァッ!?」

「よっしゃあァァ━━━━━ッ!ゲームで魔王に勝ったァァァ━━━━━━ッ!!」

「二人共! もう夜中の3時だから静かにして頂戴! 近所迷惑でしょ!」

 

 

 現時刻午前3時。アパートの住民はもう寝静まっている。こんな大声で騒げば眠りを妨げてしまうだろう。

 

 

「あぁ済まないリアス。久々に白熱してしまって、つい騒いでしまったよ」

 

 

 リアの注意を受けて、サーゼクスは笑って誤魔化そうとする。丈城も目線をそらして口笛を吹いている。泥棒かヘビが来るのだろうか。

 

 

「あ、そうだ。少しやんちゃをしてしまったお詫びとしてはなんだが、一つ君達にある場所へご招待しよう」

 

 

 するとサーゼクスは手を叩き、こんな提案をするのだった。

 

 

「招待……? 一体どんな…?」

「なぁに、君達も行ったことがある場所さ。

 

 

 

 

 

 

 モンスター達の巣窟、冥界の森だよ」

 

(←To Be Continued…)

 

 




次回、丈城とアーシアの使い魔が登場!


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