Hightension School Jo×Jo   作:尾河七国

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こんにちは、尾河です。
聞くところによるとジョジョの第4部がアニメ化決定したそうですね。吉良吉影とキラークイーンが動いてTVに映るというのは、僕としては本当に嬉しいです。

では第2話、スタートです。


第2話《親子を救う電流》

救急車に轢かれ、思いもよらぬ死を遂げてしまった青年はジョジョのスタンド能力を手に入れ、別世界での転生を果たした。

 

だが転生して赤ん坊からスタートすることになったはいいものの、どういうわけか転生する前の意識がはっきりしている。そのため授乳するときなんかは妙な感覚になってしまうのだ。要はいい歳こいた十代が赤ちゃんごっこをしているわけである。彼にとってこれ以上の恥ずかしいことはないだろう。しかし栄養失調でもう一度死ぬわけにもいかず、結局彼は数年間ある意味の地獄を味わうことになった。

 

話を戻して、転生後青年は兵藤家の一人息子として生まれ、『丈城(ともき)』と名付けられた。数年間の地獄を経て、幼稚園へ入園した彼は目立たずひっそりと……なんてする筈がなく、事あるごとに自身の才能を発揮。瞬く間に幼稚園中の人気者となった。

 

だがやはりというべきか、それをよく思わない園児達に目の敵にされることもしばしばあった。が、そこは証拠を一切残さず成敗。勿論スタンド能力を使ったのは言うまでもない。不動の人気者の座を勝ち取った丈一は毎日多くの友人に囲まれ、特に『紫藤イリナ』という少女とは非常に仲が良かった。何故かというと……

 

 

「あらわれたなでぃお! こんどこそやっつけてやる!」

「ククク…マヌケがぁ! 知るがいい……我が『世界』(ザ・ワールド)の真の能力は…まさに! 『世界を支配する』能力だということを!」

 

 

……こんな風にヒーローごっこ(?)で戯れていたからである。配役はいつもイリナがヒーロー役で丈城が悪役。元々悪役テイストが強かった丈城はさほど気にしている様子はなかった(というか、むしろノリノリで演じていた)。とまぁ、そんなこんなで二人の楽しい幼稚園生活はあっという間に過ぎてゆき、やがてイリナは両親の転勤が理由で卒園を機に外国へ引っ越すことになった。

 

引っ越し前夜、二人は思い出として一本の剣を挟んでのツーショットを互いの両親に撮影してもらい、再び出会うことを約束。その翌日の朝、丈城に見送られてイリナは引っ越していった。………が

 

 

後にあの写真が再び彼とイリナを巡り合わせ、様々な因縁や陰謀が渦巻く大事件の引き金になろうとは、この時誰も思いはしなかった。

 

 

☆☆☆

 

 

「最近の気分はどうよ? ドライグ」

『まぁまぁだな。特に変わったこともないし、平和ボケしてしまいそうだ』

 

 

イリナとの別れから二年後、小学生となった丈城はスタンド能力だけでなく、『赤龍帝の籠手』(ブーステッド・ギア)と呼ばれる神器(セイクリッド・ギア)まで発現させていた。神器とは神が作った"システム"のようなものであり、様々な種類がある。しかし何も知らない人々からすれば『神の奇跡』というよりかは、『悪魔の業』とされて忌み嫌われていることが多い。要するに超能力だ。

 

丈城はスタンドを使いこなし、DIOや吉良吉影のような悪党に出くわしても十分応戦出来るようにするため、小学生の身でありながら日々のトレーニングを欠かさず続けていた。ところがある日を境に突如神器が発現。しかも自らの意志があり、自分は遥か太古に封印された龍帝だというからさらに驚きだ。

丈城曰く、『スタンドのACTと一緒で、一定のラインを越えたから出てきたんじゃないの?』とのこと。いずれにしろ彼はスタンド能力と赤龍帝の力の二つが身体に宿っていることになる。ある意味チートだ。

 

 

「そうならないように毎日こうやってトレーニングしてんだろ? ドライグの言う"白いあいつ"がいつ現れても簡単にやられないようにさ」

『へっ、用心深いことで』

 

 

対等に話している様子から、お互いの立場は理解しているようだ。そして丈城がチラッと言った"白いあいつ"というのは、また追々話すとしよう。今説明しても混乱するだけである。

 

気が付けばもう夕方。日は沈みかかり、丈城の後ろの空からは夕闇が迫ってきていた。どこか遠くの方からは豆腐屋のラッパが寂しく響いている。

 

 

「さてと…もうそろそろ家に帰るとすっか。あんまり遅いと門限に引っ掛かるし」

『腹も減ったし、だろ?』

「Exactly(その通り)」

 

 

腹の虫が鳴ったので、丈城はここでトレーニングを中止。帰路に着くことにした。

 

暫くして

 

 

「……ん?」

 

 

何かを感じ取った彼は一旦立ち止まり、周囲に耳を澄ませ始めた。

 

 

『? どうした相棒』

「今…かすかに悲鳴っぽいのが聞こえた気がしたんだけどな……」

『悲鳴だと? 俺には聞こえなかったが……』

「…何か嫌な予感がする。ドライグ、ちょっと寄り道するわ」

 

 

そう言って彼は2、3m先の左手にあった石段に向かって駆け出し、石段を登り始めた。それほど長くはなかったようで、ものの15秒弱で到着。彼が聞いたという悲鳴はどうやら石段の先にあった神社のようだ。

寂れてはいないが、それなりに貫禄のある本殿。この時間帯の参拝客はおらず、不気味な静けさに包まれている。まるで此処だけ時間が止まったかのような感覚である。丈城は何かに導かれるように本殿の裏手へ回った。裏手はどうやら居住区のようだ。

 

 

(何なんだ…この胸騒ぎ…。誰かが助けを求めているような…)

 

 

逸る気持ちを押さえ、彼は窓から室内をそーっと覗く。

 

丈城の予感は的中した。

 

室内にはローブを纏った怪しい集団、そして彼らに襲われ、部屋の隅へ追い詰められている母と子の姿。しかも集団の手には剣やら鎌やら物騒なものが握られている。これを事件と呼ばずして何と表現すればいいのか。

 

丈城視点で、まず手前に7人。その一歩奥に一人、そのまた奥に親子がいる。何やら言い争っているようだが、外からでは内容が聞き取れない。

 

彼は思った。マズイ、早く手を打たなければあの親子は殺されてしまう。どうにかして救出せねばと。

丈城は周囲を見渡して、自分もしくは遠隔操作型のスタンドが侵入出来そうな場所を探した。すると足元の外壁にこの家の電気メーターを見つけた。そのメーターのケーブルは家の中へと引き込まれている。

 

直感であのスタンドが思いついた。

 

 

「ドライグ、俺あの親子助けるわ」

『やめておけ。……と言っても助けるつもりなのだろう?』

「Yes, I am! 『レッド・ホット・チリ・ペッパー』!」

 

 

音石明のスタンド『レッド・ホット・チリ・ペッパー』を出し、丈城は電気メーターを経由して室内へスタンドを侵入させた。

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

「その子供を渡せ! 忌々しき邪悪な黒き天使の子なのだぞ!」

「嫌です! この子は大切な、あの人と私の大事な娘! 絶対に……絶対に渡しません!」

「母さま!」

 

 

一方、ローブ集団は今まさに目の前の親子を手にかけようとしていた。リーダー格とおぼしき男は一歩、また一歩と親子に迫る。どうやら狙いは子供の方らしいが、その真意は不明のままだ。

 

 

「仕方ない、貴様は黒き天使に心を汚されたようだ。先に貴様から始末してやる!」

「朱乃ォッ! 伏せてェッ!」

「嫌ァッ! 母さまァァァッ!」

 

 

痺れをきらしたリーダーは所持していた剣を母親に向けて振り下ろす。母親は子供…少女を庇おうとするが、少女は嫌がって逆に母親を突き飛ばそうとした。白刃が親子を捕らえようとした刹那、

 

 

「ギャアアアアアァァァッ!」

「「「「「!?」」」」」

 

 

後ろにいたローブ集団の一人が突如悲鳴を上げた。

驚いた全員がその方を見ると、一人が電流に包まれて後ろの壁のコンセント口に吸い込まれていった。いや『電気そのもの』となって引きずり込まれたと表記した方が正しいのかもしれない。

 

 

「な、なんだ!?」

「敵襲か!?」

 

 

突然の怪奇現象にローブ集団と親子が気を取られていた時、またしても

 

 

「うわああぁぁぁっっ!?」

 

 

今度はリーダー格の男が犠牲となった。同じ状態に陥り、先程のではなく彼の隣にあったコンセント口へと引きずり込まれる。姿なき恐怖が容赦なくローブ集団に襲いかかる。

 

 

「背中合わせだ! 円陣を組め!」

 

 

集団の一人の提案により、全員がお互いの背中を内側に向けて、円陣を組んだ。が、彼らの考えは襲撃者にとって思うつぼだった。

 

天井に吊るされている照明器具のほとんどは、天井にコンセント口から電気を供給している。それはこの部屋にもあり、丁度円陣を組むローブ集団の真上にあった。となれば、この後の展開はこうなるわけである。

 

 

(バチバチバチ! バチィッ!)

「「「「「ギャアアァァァアアアッッッッ!」」」」」

 

 

彼らは天井からの強襲に気が付かず、結局全員纏めて電流に捕まった。だが先程は一人一人だったためにものすごいスピードだったが、六人纏めてとなると流石に時間が掛かるようだ。じわりじわりとコンセント口へ引きずり込まれてゆく。

 

 

「「……………」」

 

 

親子は唖然としていた。いきなり襲ってきた怪しい集団が、これまた謎の襲撃者によって始末されているのだから。そして最後の一人の手がコンセント口に引き込まれ、ローブ集団は全滅という形となった。あとに残ったのは無事の親子と妙な空気だけ。

 

 

(バチバチバチィッ!)

「「!?」」

 

 

最初の一人を襲ったコンセント口から再び電流が走る。それは次第に数を増やし、ある形へと構成されてゆく。

やがて親子を救い、ローブ集団をコンセント口へ引きずり込んだ存在がその姿を現した。

 

一言で言うなら、その存在は『異形』だった。

人型だが、何処と無く恐竜のパキケファロサウルスを思わせる姿。宙に浮き、いまだに電流を纏うそれは親子の無事を確認すると

 

 

『よぅ、間一髪だったな。あんた達』

 

 

人語を話した。

 

 

『全く、数の暴力だよな。無抵抗でしかも武器すら持っていない人間に斬りかかるなんてよ!』

 

 

どこか軽い口調で話す異形の存在。もうお気付きの方もいるかもしれないが一応説明しておこう。この異形の存在こそ、丈城が放ったスタンド『レッド・ホット・チリ・ペッパー』である。このスタンドは電気そのものが身体を構成しており、電気のある場所ならどこにでも侵入することができる。つまりバイクのバッテリーやラジコン飛行機の中にも入れるのだ。そして他の物質を電気と同化させて、電気ケーブルや電線内を移動させたり、それが人なら感電死させることが出来る。

 

原作では音石明がこの方法で虹村億泰の兄・形兆を殺害している。

 

 

「…さっきの人達はあなたがやっつけたの?」

 

 

呆然としていた少女が恐る恐るチリ・ペッパーに尋ねた。

 

 

『ああ。俺の名はレッド・ホット・チリ・ペッパー。くれぐれも俺の身体には触るなよ? 俺の身体は電気でできているからな、触ると感電しちまうぞぉ~?』

「そうなんだ。私は姫島朱乃! さっきは助けてくれてありがとう!」

『朱乃ちゃんていうのか。いい名前だねぇ。怪我はないかな?』

「うん、大丈夫だよ! 母さまは?」

「え、えぇ。平気よ…」

 

 

朱乃と名乗った少女はチリ・ペッパーは敵じゃないと判断し、彼の質問に元気よく答える。母親の方も無事のようだが、やはり先程の襲撃やチリ・ペッパーの存在の事もあってか、何処と無くやつれていた。しかし自分の娘はチリ・ペッパーと楽しく話している。その様子を見た彼女は静かな笑みを浮かべ、安堵した。

 

…が、さらにその時

 

 

「朱璃ッ! 朱乃ッ!」

 

 

物凄い足音と共に部屋の襖が開け放たれ、いかにも屈強そうな男が飛び込んできた。しかもその男はチリ・ペッパーを見るなり、それ以上の電気を纏って戦闘態勢に入ったのだ。

 

 

「貴様ァッ! 朱璃と朱乃から離れろッ!」

『オイオイオイオイオイオイオイ!?』

 

 

これにはチリ・ペッパー、もとい丈城も焦った。同じ電気系統だから平気だと思うのだが、それよりもこの男の異常な程の覇気に気圧されて焦っているのだ。

話し合いが出来ない状況と判断した丈城本人が動こうとすると

 

 

「待って! チリ・ペッパーさんは私達を助けてくれたの!」

「何だとッ!?」

「本当よ! 彼は敵ではないわ!」

 

 

なんと朱乃と母親が割って入り、チリ・ペッパーを庇ったのだ。

 

 

「本当……なのか?」

 

 

男がそう問うと、二人は縦に強く頷いた。彼は暫く考え込むと、電流を解いて穏やかな表情になり、二人を抱き寄せた。男は朱乃と母親の家族だったのだ。

 

 

「二人共……無事で良かった……本当に済まなかった…」

「あなた……」

「父さま……」

 

 

丈城はこの光景を見て、もうこの家族は大丈夫だと安心し、チリ・ペッパーを戻すためコンセント口へと移動させる。

 

 

「! ま、待ってくれ!」

 

 

すると男がチリ・ペッパーを呼び止めた。

 

 

「さっきは威嚇して済まなかった。私の名はバラキエル。家族を守ってくれてありがとう……」

『…気にしなくていいよ。俺はただその二人を助けたかったから助けただけだ。それと本当の襲撃犯達は此処から200m先の電線の上で真っ黒になっているぜ。それじゃあな、バラキエルさん。家族を大切にしなよ』

 

 

礼を述べられたことに照れつつも、丈城はコンセント口からチリ・ペッパーを戻した。 静まり返った室内で、朱乃は母親にこう尋ねる。

 

 

「ねぇ母さま、また…チリ・ペッパーさんに会えるかな?」

「……会えるわよ、きっと」

 

 

☆☆☆

 

 

「やっべ! 早くしねぇと門限に間に合わねぇ!」

『走れー相棒ー』

「棒読みで言うなし!」

 

 

チリ・ペッパーを引っ込ませた後、丈城は自宅に向かって走っていた。実はローブ集団を倒すのに時間を掛けすぎて、門限ギリギリになっていたことにようやく気が付いたのだ。小学生とは思えない程の速度を出しながら、彼は家路を急ぐ。

 

 

 

 

 

その翌日。朝刊の見出しにはデカデカと、黒焦げ死体遺棄事件の記事が載っていたという。

 

(←To Be Continued…)

 




はい、というわけで第2話は転生後と丈城の初戦闘、そして朱乃さんとのファーストコンタクトの回でした。

そして何気に丈城はスタンド能力に加えて赤龍帝の籠手も手に入れています。今後は無双プレイが見られるかもわかりません。


丈城「あたい最強!」


…いや、何も⑨にならなくてもいいんですよ?


では、第3話でお会い致しましょう。

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