Hightension School Jo×Jo   作:尾河七国

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第一章のクライマックス回です。




第12話《怒らせるな、危険》

レイナーレを再起不能(リタイア)にした丈城は一息つくために近くの長椅子にどっこらせと腰掛ける。

 

 

「やったねジョジョ君。お疲れ」

 

 

その声に後ろを振り返ると、ボロボロの状態でも笑顔を絶やさない裕斗が歩いてきた。一方小猫は丈城をスルーしてレイナーレが転がっている場所へすたすたと歩いてゆく。

 

 

「お疲れ裕斗。つーかオメーやられすぎだろ」

「まぁね。少し数が多かったって言うと、言い訳になっちゃうかな?」

「問題ねぇ。生きて帰ってくるだけで十分だ」

「ジョジョ君ならやってくれると信じていたよ。流石にアーシアさんを救う策までは見抜けなかったけどね」

「『敵を欺くにはまず味方から』って言うだろ? こうでもしねーと気付かれちまうかもしれなかったからな。……そういやアーシアは?」

「ああ、彼女なら…」

「ジョジョさん!!」

 

 

丈城がそう言うと、裕斗の後ろからアーシアが駆け寄ってきた。

 

 

「アーシア! その様子だと大丈夫みたいだな」

「ジョジョさん……こんなボロボロになってまで私のために…今治します!」

「別にいいってのに……ホントにいい子だね、この子は…」

 

 

丈城が取り戻した神器『聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)』で彼の治療を施すアーシア。涙目で必死に彼を治そうとするその姿から、いかに丈城を心配していたかが伺える。

 

 

「そういや、あの二人はどうしたんだ? 現場突入ん時から姿が見えねーんだけど」

「私達なら地下で少し悪魔祓い達とO☆HA☆NA☆SIしていたわ。用事が済んだから、魔法陣でここへジャンプしてきたの」

 

 

祭壇下の階段から現れたのは、決戦当初から別行動をとっていたリアと朱乃だった。この二人は丈城並に相手にしたら危険なので、恐らく祭儀場の悪魔祓い達は残らず始末されたと見ていいだろう。

 

 

「それにしても、保護している時からこんな細工を仕掛けていたなんて……しかも神器(セイクリッド・ギア)を奪い返して彼女を蘇生させるなんて、無茶苦茶もいいところだわ」

「イッツ・ジョジョクオリティー! HAHAHA!!」

「やめなさい。意外にムカつくからそれ」

 

 

いつものテンションで返してきたことに安堵したリアはうっすらと笑みを浮かべ、丈城の鼻をツンとつつく。アーシアの治療が完了したので、彼も立ち上がって得意気に笑ってみせた。

 

そこへ

 

 

「部長、持ってきました」

 

 

小猫が気絶しているレイナーレを引きずってきた。最早人扱いではなく物扱いになっていたが、この場に誰一人そんなことを突っ込もうとしない。

 

 

「さて、彼女から最期の話を聞こうと思うのだけれど……この様子だと聞けそうにないわね」

「あらあら、どうしましょう?」

「しょ~がねぇ~なァ~。俺が治すよ」

 

 

丈城は『クレイジーダイヤモンド』を出し、渋々レイナーレを元通りに治した。

 

 

「ぐ……うぅ…」

 

 

一拍置いて彼女は意識を回復。朱乃とアーシアは一旦教会の外に避難し、残りのメンバーでレイナーレを取り囲む。

 

 

「ごきげんよう、堕天使レイナーレ」

「……グレモリー一族の娘か……」

「はじめまして、私はリアス・グレモリー。グレモリー家の次期当主よ。短い間でしょうけど、お見知りおきを」

 

 

笑うリアにそれを睨み付けるレイナーレ。力の差は歴然としている。しかしこの堕天使は諦めが悪かった。

 

 

「……してやったりと思っているんでしょうけど、残念。今回の計画は上に内緒ではあるけれど、私に同調し協力してくれている堕天使もいるわ。私が危うくなったとき、彼らは私を必ず助けに来てくれるのだから…」

(あー、そういやもう一体いたっけな。確かドーナシークって言ってたよーな……)

 

 

そう、最初に丈城を襲撃した際に返り討ちに遭いかけたレイナーレを助けた男の堕天使がいたのだ。最も返り討ちしようとした本人はどこ吹く風だが。

 

 

「彼らは助けに来ないわ。堕天使カラワーナ、ドーナシーク、ミッテルト、彼らは私が消し飛ばしたから」

「嘘だッ!」

「オメーひ○らしなヤンデレじゃねぇだろ」

 

 

リアは三枚の黒い羽根を取り出し、ヒラヒラと見せびらかす。

 

 

「これは彼らの羽根。同族のあなたなら見ただけでもわかるわね?」

「たっ……たとえそうだとしても、まだ配下の悪魔祓い達が」

「それなら既に片付けたよ。フリード・セルゼンも僕らとの交戦中に逃亡したから、もう君は一人ぼっちだ」

「そ…そんな……」

 

 

どうやらリアの別行動とはこの事だったらしい。さらにフリードも撤退した後。逃げられたのは悔しいが、大きな傷痕を残せただけでも良かったのかもしれない。

 

とここで

 

 

「あのーリアさん? ちょっといいですかな?」

 

 

丈城が待ったをかけた。

 

 

「何? ジョジョ」

「大方こいつを消し飛ばそうとしているだろーが、ここから先は俺が引き受けよう。自分のケジメくらい自分でつけられる」

「……わかったわ」

 

 

と言って彼はリア達を下がらせ、レイナーレの前に立った。途端に彼女は態度を変えて丈城に泣きつく。

 

 

「丈城君! 私を助けて! あの悪魔達が私を殺そうとしているの! 私、あなたのことが大好きよ! 愛してる!

だから一緒にあの悪魔を倒しましょう!!」

 

 

必死に夕麻の演技で丈城に助けを求めるレイナーレ。今の彼女は孤立無援だ。味方の堕天使も消し飛ばされ、フリードにも見捨てられた。となれば彼氏の丈城に頼る他ない。だが

 

 

「うだうだとすっトロイことしゃべくってうるせーんだよ! このダボッ!!」バキィッ!

「ぶげっ!?」

 

 

この男が、兵藤丈城が許す筈がなかった。

 

 

「てめーは……俺が見てきた中で一番の屑ヤローだ。アーシアの命を弄んだこともそうだがその前に一個だけ、お前は大きな罪を犯した。それは……」ゴゴゴ…

 

 

ゴゴゴ…と怒りを露にし、血走った両眼でレイナーレを睨み付ける丈城。そして言い放った。最初に、この堕天使をブチ殺そうと思った決定打を……

 

 

「てめーが犯した大罪…それは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の今月の生活費を全部パーにしたことだァァァ━━━━━━━ッッ!」

「「「「「そ、そんな理由で!?」」」」」

 

 

これにはこの場にいる全員が驚く。あまりの理由に呆けて目が点になっているレイナーレに、丈城はさらに怒号を飛ばす。

 

 

「オメーがデートの時にあれ欲しいだこれ食いたいだの散々金使ったせいで、10万程あった生活費がほとんどスッカラカンになっちまったんだよ!! しかもそれが演技だとォ? 俺をはめるための罠だとォ? 洒落にならねぇんだよ洒落にッ!!」

 

 

丈城は拳を奮って、滝のように涙を流し訴える。下らないかもしれないが、彼の生活にとっては非常に重要な問題なのだ。

 

 

「同居人のオーフィスにも申し分が立たねぇし、同族みてぇに一撃で消し飛ばすだけじゃ俺の怒りが収まらん!! だからァッ!」

 

 

右手を高く掲げ、彼はこう言い放った。

 

 

「この俺が判決を言い渡す! 『死刑』ッ!!」

 

 

その言葉が言い終わるや否や、丈城の背後からジャン=ピエール・ポルナレフのスタンド『銀の戦車(シルバーチャリオッツ)』が飛び出し、目にも止まらぬ速さでレイナーレの体に次々と剣を突き立ててゆく。そのあまりの激痛にレイナーレの表情は大きく歪む。

 

 

「ガギャアアアァァァアアァ━━━━━━━ッ!!」

「カタをつけるッ! 『世界(ザ・ワールド)』ッ!」ブゥンッ!

 

 

確実なトドメをさすべく、丈城は『世界』で時間を停止させて教会を飛び出した。

10秒後、

 

 

「……!? あら!? ジョジョが…いない!?」

「ホントだ……一体何処に!?」

 

 

『世界』の能力がきれたにも関わらず、出ていった丈城は帰ってこなかった。レイナーレはチャンスとばかりに、最後の力を振り絞って逃走を図ろうとしたが

 

 

(ドガァアアアンッ!!)

「ロードローラーだァァァ━━━━━━━ッ!!」

 

 

教会の天井を突き破って丈城帰還。しかもどこから持ってきたのか、ロードローラーを引っ提げ、逃げ出そうとしたレイナーレに叩きつけた。

 

 

「グェアアアアッ!?」

「『無ゥ~駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァッ!』」

 

 

ローラー部分を丈城、エンジン部分を『世界』がそれぞれエルボーでラッシュ。レイナーレを確実に叩き潰さんとする。そして

 

 

「ブッ潰れよォォォォォォッ、このドグサレ堕天使がァァァ━━━━━━━ッ!」バゴンッ!

 

 

ラスト一発を叩きつけ、その場から飛び退いた。刹那ロードローラーは大爆発。リア達は即座に防御魔法を展開し、丈城は長椅子の陰に飛び込んで事無きを得たが、下敷きになったレイナーレはもう助からないだろう。

 

パチパチと燃えるロードローラーの残骸、そしてその下にうっすらと見える黒い影。長椅子の陰から飛び出した丈城はレイナーレが死んだのを確認し、ニタリと口元を上げる。

 

 

「スゲーッ爽やかな気分だぜ……新しいパンツをはいたばかりの正月元旦の朝のよーによォ~ッ……ククッ」

『悪魔かお前はッ!』

「最早私達よりも悪魔らしいわね……私絶対怒らせないよう気を付けないと…」

「僕も同感です……」

「…ゲスの極み」

「あらあら、教会内が大変なことに」

「い……一体何が起こったのですか!?」

 

 

オカ研メンバーが引く中、燃え盛る炎に照らされた丈城は憑き物が落ちて晴れ晴れとしていた。

 

 

その後ロードローラーの出火は朱乃が魔法で鎮火され、丈城とオカ研メンバーによるアーシア救出作戦は終了。夜が明け、焦げ臭い臭いが漂う廃教会に日の光が射し込む。

 

 

「さーてと…全ては終わった。アーシア、お前を苦しめていた奴等はもういない。これからが、アーシアの本当の自由の始まりだ」

 

 

丈城はアーシアに歩み寄り、頭を撫でて優しく語りかける。彼女も込み上げてきたものを押さえきれず、丈城に抱きついて嗚咽を漏らした。

 

 

「…ヒッ…うぐ……ジ、ジョジョさぁん……」

「帰る場所なら……俺がなってやる。だから…帰ろう。アーシア」

「は…はい……!!」

 

 

こうして一人の少女の力を狙った堕天使達の計画は、駒王町を根城とする心優しき悪魔達と最凶のスタンド使いにより音を立てて崩れ、彼女の命と未来は救われたのだった。

 

(←To Be Continued…)

 




こんにちは、尾河です。

というわけで一応のところvsレイナーレ戦はこれにて終了です。次回は後日談と第一章時点での丈城の設定を投稿致します。


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