Hightension School Jo×Jo 作:尾河七国
「…迂闊だったわ。まさかすぐに居場所を突き止められるなんて…」
前回の悪魔祓いとの対峙、そしてアーシアを保護したその一週間後、事態が動いた。
なんと堕天使と悪魔祓いの集団が保護先のマンションを突き止め、住人である裕斗が出払っているスキに襲撃を仕掛けてきたのだ。裕斗がすぐに気付いて戻ってきたが既に後の祭り。部屋は荒らされ、アーシアの姿は何処にもなかった。事態を重く見たリアは眷属と丈城を夜中に召集し、事の顛末を話した上で、堕天使のアジトを自分達の敵の本拠地として襲撃すると伝えた。
「申し訳ありません部長。僕がついておきながら……」
「気にしなくていいわ裕斗。でもこれで連中の狙いがハッキリしたわね」
「やっぱアーシアの能力が目的だったのか……となれば、監禁場所はあの廃教会だな!」
丈城はバンッと拳を掌に叩きつける。
「幸い、ジョジョが見つけてくれたあの教会は既に捨てられていたみたい。そこを連中は私利私欲のために利用していただけみたい。これから起こるであろう戦いは只の野良試合、派手にやっても問題ないわ」
「ヒャッハ━━━━ッ! 待ってろ今から教会ごとブチ殺してやるからなレイナーレェッ!!」
「やめなさい。貴方の場合本気でやりかねないから」
丈城に半ば呆れつつ、リアは全員に向き直って力強く激を飛ばした。
「とりあえず、今回の相手は堕天使と悪魔祓いの烏合の衆だけれど、油断をすれば命を落としかねないわ。各自気を付けて敵を消し飛ばしなさい! 裕斗・小猫・ジョジョは正面から、私と朱乃は別方向から突入。いいわね!」
「「「「はい!(All right!)」」」」
☆☆☆
リアと朱乃の両名は魔方陣からある場所へ向かい、残りの三名は部室を飛び出して目的地である廃教会を目指す。
現時刻午前2時。この時間に廃教会にやってくる人影などなく、あるとすれば近くの草むらに身を潜めている悪魔二名とスタンド使い一名だけである。
「これはあの教会の見取り図だ。相手陣地に攻め込むときのセオリーだから、一応持ってきたよ」
様子を伺っていた裕斗が一旦二人の元に戻り、懐から廃教会の見取り図を取り出した。
どうでもいいが、何処からそんなものを持ってきたのだろうか。
「一番怪しいのは聖堂。ほかに宿舎があるけど、奴等は儀式の際によく聖堂を選ぶから無視してもいいね」
「ま、頭がパープリンになってる奴等の考えていることなんざ知らねぇけどな。とりあえず聖堂を叩けばいいってことだ」
「そうだね、遠からず近からずと言ったところかな」
「さてと、対策はこの辺りでいいだろ。あとはその場で考えりゃいい。突る準備はいいか? 二人共」
『
その問いに対して裕斗と小猫は小さく頷く。
「グレート…! しゃっ、行くぜ!」
丈城の掛け声と共に草むらを飛び出し、三人は教会へ突撃。
堕天使達は感度が鋭いのか、もうこの時点で気付いているという。だがいちいちそんなことに構っていることは出来ない。今は先へ進むことを最優先にするだけである。両開きの扉が見えてくると、開けることを面倒臭がった丈城が『
そこで待ち受けていたのは…
「ご対面! 再会だねぇ! 感動的だねぇ!」パチパチパチ
イカレ神父・フリードだった。
「! オメーこの間のドグサレ神父!!」
「ヒャハハハハッ! てめぇら、アーシアたんを助けに来たんだろ? ハハハ! あんな悪魔も助けちゃうビッ○な子を救うなんて悪魔様はなんて心が広いんでしょうか!」
「黙れ小僧ッ! アーシアは何処にいる!?」
「んーそこの祭壇の下に地下への階段が隠れてございます。そこから儀式が行われている祭儀場へ行けますぞ」
丈城の怒号にフリードはあっさり場所を白状。それを聞くなり丈城が「だったらそこを退きなァァァ━━━━━━ッ!」と飛びかかろうとした。すると
「ここは僕達で食い止める。ジョジョ君、君は早くアーシアさんの元へ!」
「……潰れて」
魔剣を携えた裕斗と教会の長椅子を持ち上げた子猫が割り込んだ。
「……グレート! 二人共ぜってー生きて帰ってこい! 俺も必ず戻ってくるからよォ!」
二人の協力に感謝した丈城は祭壇に向かって一直線に駆け出す。だがフリードも教えた割にはそうやすやすと通すつもりはないらしく、「行かせませんよォォォォ━━━━ッ! こンのクソガキャ━━━━ッ!!」と殺気を振り乱して襲いかかる。だがその攻撃は裕斗は阻まれた上に、丈城がすれ違い様に放った『
「グギャアアァァァッッッ!? お、俺っちのおめめがぁぁぁッッッッ!?」
「アーシアァァッ! 今行くぜェェェ━━━━ッ!」
☆☆☆
祭壇下の階段を転がり落ちるように駆け降り、丈城はアーシアの元へ急ぐ。
『……相棒、一ついいか?』
「? どったの?」
『以前お前があのシスターの保護先を訪ねたとき、彼女に何か仕組んでいたみたいだが……ありゃ一体何なんだ?』
ドライグは丈城に、以前から気になっていた疑問をぶつけた。それはアーシアがさらわれる三日前の事である。
(━回想━)
三日前、アーシアの様子見に丈城が裕斗のマンションを訪れた。
彼女を保護してからは、オカ研メンバーが代わる代わる訪ねており、この日は丁度丈城の番だったのだ。裕斗が丈城に茶を出すために台所へ引っ込んだ頃合いを見計らって、彼はアーシアにこう話しかけた。
「なぁアーシア」
「はい、なんでしょう?」
「俺は、連中にアーシアを殺されることを一番恐れている。それは皆も同じだ」
「私も……怖いです」
「だろうな。そこでだ、怖くならないように俺がおまじないをしてやる。サァ、手を出して目を瞑って」
彼に言われるがまま、アーシアは左の掌を丈城に差し出す。
「ちょっとくすぐったいぞー」
「?」
と言って彼は岸辺露伴のスタンド『ヘブンズドアー』を発現させると、アーシアの掌を能力で本に変えて、何かの文章を書き込んだ。
書き込みはものの数秒で済み、丈城はすぐに彼女の掌を元に戻した。
「ベネ(良し)。もういいぜ、アーシア」
「ジョジョさん、一体何を?」
「なーに、ちょっとした『
首を傾げる彼女に、丈城はまるで悪戯が成功したような笑みを浮かべた。
(━回想終了━)
「……一応な、最悪の事態に備えてスタンド能力を使ったんだ。いくら奴等でもこのおまじないは解くことは出来ない」
『属に言う……先手を打ったってことか?』
「Exactly(その通り)」
そう会話を続けていると、目の前に大きな扉が見えてきた。丈城は怒りを込めてそれを蹴破り、中へ入る。
室内には大量の悪魔祓いに加えて、奥の祭壇とおぼしき場所に立つ天崎夕麻…もとい忌まわしき堕天使・レイナーレがいた。
さらに祭壇の十字架には磔にされている少女の姿。…間違いない、アーシア・アルジェントである。
「アーシア! 聞こえるか!? 俺だ! ジョジョだ!」
視界に彼女を捕らえた丈城は大声を上げた。疲弊しているようだが意識はあるようで、それに反応して彼女は顔を上げた。
「……ジョジョさん?」
「Yes I am! 約束しただろ? ぜってー死なせないって!」
約束を覚えていたことに、そして本当に助けに来てくれた丈城に、アーシアは嬉しさのあまり涙を流す。しかし
「いらっしゃい、あわれな人間さん。感動の再会だけれど、遅かったわねぇ。たった今、儀式が終わるところよ」
割って入るようにレイナーレが不敵に笑う。刹那
「……あぁあ、イヤァァァァァァァァァッッ!」
「!? アーシア!!」
アーシアの体が突如輝きだし、苦しそうに絶叫を上げたのだ。
やはり連中の狙いは彼女の能力だった。全てを悟った丈城は手遅れになる前に救いだそうとアーシアの元へ駆け出す。しかし行く手には大量の悪魔祓い達が。ブチ切れ寸前の彼は『
「『世界』ッ! 時よ止まれェッ!」
静止した中で、丈城と『世界』は悪魔祓い達を蹴散らしながら突き進む。
「『無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァァッ!』」
必死だった。今まさに、自分の目の前で命の灯火が消えかけている。一度死んだことのある彼にとって、生死に関わる問題は非常に重要視していた。だからこそ救わなくてはならないのだ。粗方の悪魔祓い達を殴り飛ばし、とうとう祭壇へ辿り着いた丈城。と同時に十秒経ち、時間が再始動した。
だが、直前というところで……
「いやぁぁぁぁぁ……」
「しまった! アーシアの能力が!!」
アーシアの体から大きな光が飛び出し、それをあろうことかレイナーレが手にしてしまったのだ。
「これよ、これ! これこそ私が長年欲していた力!
「畜生! なんだこの逆転サヨナラホームランはよ!!」
それでも丈城は諦めずに十字架へ飛び付き、アーシアの拘束具を外しにかかる。そして殴り飛ばされずに無事だった悪魔祓い達が背後から襲い掛かるも、
『『オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァッ!(無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァッ!)』』
そこら辺は彼でもわかっているので、『星の白金』と『世界』のコンビで迎え撃つ。多少のダメージは負いつつ何とかアーシアを介抱した。
「……ジョ、ジョジョさん……」
「アーシア…気をしっかり持て! このジョジョが助けに来た! もう安心だぜ!!」
「……………はい」
もはや虫の息のアーシア。恐らく彼女の体から能力を抜かれたせいで、体力を大幅に消耗しているようだ。
「無駄よ、神器を抜かれたものは死ぬしかないわ。その子、死ぬわよ」
「やっぱ神器だったか……なら返してもらおうかッ!! アーシアの神器をよぉッ!!」
「返すわけないじゃない。これを手にいれるために私は上を騙してまでこの計画を進めたのよ? あなたたちも殺して証拠は残さないわ」
「へっ、上等だ! スタンド使いをそうそう殺れると思うなよ!!」
そう言って丈城は自身の左肩口付近に手をやったその時
「「ジョジョ君ッ!(丈城先輩!)」」
土壇場のタイミングで裕斗と小猫が合流。どうやらフリードとの戦いに勝利したようだ。
「二人共! アーシアがピンチなんだ!」
「わかった! 僕らがもう一度食い止めるから、ジョジョ君はアーシアさんと一緒に逃げて!」
「オメーら大丈夫なのかよ!? 連戦になるぞ!!」
「……悪魔は頑丈」
二人の覚悟に丈城は承諾して、衰弱したアーシアを抱えて「ぜってー死ぬんじゃねぇぞ! 死んだら地獄の底まで追っかけてブン殴っからなぁッ!」と言い残し、来た道を通って上へ向かった。
それを見てせせら笑うレイナーレだったが、その足元にシャボン玉が接近しているのに気が付いていなかった。
星の模様がついたそれは彼女の手に触れると、弾けて消えるのだった。
☆☆☆
「ハァー……ハァー……」
フルスピードで駆け上がった丈城は肩で息をしつつ、抱えていたアーシアを長椅子の一つに寝かせる。しかし彼女の意識は朦朧としており、息も絶え絶えになっていた。
「ア…アーシア……死ぬなよ…ッ! 大丈夫…! 俺が必ず……救ってみせる…ッ!」
「……ジョジョさ…ん…私、少しの間だけでも……友達ができて……幸せでした……」
「んな事言うなよ……空しくなるだろーが……ッ!」
アーシアの手を丈城はしっかり握る。
「……アーシア、疲れたろ…少し寝な…多分ここ暴走族がたむろしてるみたいにうるさくなるだろうから……」
「ジョジョさん…私は…この国に来て……貴方に会えて…良かっ…た……」
その声は段々か細くなってゆき、アーシア・アルジェントは動かなくなった。
「………………」
黙って立ち上がり、静かに眠るアーシアの顔を見下ろす丈城。
しかしその表情は慈愛に満ちたものではなく、明らかにデス○ート持った青年の如く『計画通り』といった笑みを浮かべていた。
そこへ
「あーあ、死んじゃったわねぇその子。可哀想に」
裕人と小猫と戦っている筈のレイナーレが現れた。どうやら勝負を悪魔祓い達に丸投げしたらしい。しかしダメージは負ったらしく、その手甲には切り傷が。
「見てご覧なさい、この傷はここへ来る途中で『
「……治せるってか?」
「ええ勿論。こうして………!?」
レイナーレはアーシアの能力を使って傷を治そうとした。するとどうだろう、傷が見事に………治らないではないか。奪って自分のものにした筈の彼女は困惑し始める。
「な……何故なの!? 傷が治らない!? どうして!?」
「フフッ…フゥ~フフフ……」
困惑するレイナーレそっちのけで、突然笑い出す丈城。そしてゆっくり彼女の方に向き直ると………
「ヌゥハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!」
笑いだした。狂ったかのように笑いだしたのだ。
「ッ! な、何を笑っているのよ!!」
「かかったなアホがぁッ! 治るわきゃあねぇんだよ!! 何故なら………
『アーシアの能力は、既に俺が奪い返したからな』!!」
(←To Be Continued…)
アーシアちゃんは本当に死んでしまったのでしょうか?
そして丈城の仕掛けた策とは?
次回をお楽しみに。
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