少女少年 ~シンデレラガールズ~   作:黒ウサギ

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相変わらず会話多め。
なんか神楽がうざきゃら見てくなったので、気に食わなかったら修正入れるかもしれません。それと最初の方の話を大幅に改正するかもしれませんが。いつになるかは不明です


少女少年に出来る事

 前川さん等によるストライキから数日。時間の流れと言うものは早いものであっという間に私達のライブの日になりました。

 舞台は事前に説明されていたショッピングモールでの小さなライブです。小さなものと言ってもライブはライブ、緊張で手汗を何時もより多くかき、喉が渇くのも幾分か早く感じます。

 設営された舞台裏。CPメンバーに武内さん、それに美嘉さんが揃っています。凛と本田さん島村さんは赤色がメインの衣装に、新田さんとアナスタシアさんはお揃いの様な白のドレスに身を包み、私はというと

 

「スカート丈短すぎませんか!?」

 

「それを言ったら私達の衣装も結構短いんだけど・・・」

 

 膝上10㎝にあるスカート丈ですが、一男子としては短パンでもここまで短いのは履きませんし、スースーして落ち着かないんですよね。試しにとその場でクルリと一回転して見ますがスカートがふわりと舞う感覚が落ち着きません。幸い今回の私の歌、スタンドマイクで歌うのでダンスの要素が無いためパンチラ!なんて事は起きませんが、それでも落ち着きませんよ・・・。

 

「神楽さん、すっごい綺麗ですよ!」

 

「うんうんっ、ゴシック系の和服って人を選ぶだけど神楽にはしっかり似合ってるね★」

 

「ありがとうございます、蘭子ちゃん、美嘉さん・・・」

 

 スカート丈にばかり意識が行っていましたが、今回の私の衣装はゴシック和服とか巷で言われている物らしく、脇の部分がざっくりと開いているのがこの衣装の特徴でしょうか。服自体は可愛らしく見てる分には良いのですが、いざ自分が着るとなると違和感しかありません。それに綺麗と言われても男としては嬉しくなく・・・。何とも言えない気持ちになりますね。

 

「新田さんとアナスタシアさんは落ち着いた衣装で良いですね・・・。今からでも交換しませんか?」

 

「えっ・・・流石に私そこまで露出するのは・・・」

 

「凛は・・・同じくらいの露出ですし変わらないですね・・・」

 

「私も結構恥ずかしいけどね・・・。それでも神楽よりはまだ平気かな?」

 

そういうと凛は私の耳元で囁きます。

 

(流石に男の子がそんな格好するのは恥ずかしいと思うけど、頑張ってね)

 

 その言葉に私は小さく微笑んで頷きます。

 衣装は兎も角、今回が私の初ライブです。路上とは違って本格的な物ですのでここでの評価が今後にも響いて来るでしょう。だからこそ、今まで努力してきた事を存分に発揮して私と言う存在を認知してもらうには持って来いです。

 なんて考えていると、本田さんが外を見て何か困惑している様子。何かあったのかと聞いてみますが

 

「お客さん少なすぎない?」

 

 との事。私も本田さんと同じように、仕切りの隙間から外を見てみますが・・・。少ないとは思いますがこんなものでしょう。告知はしましたけど、私達はまだ無名でしょうし少しでも人が立ち止まってくれているのならいい方だと思いますが・・・。

 そんな私の考えを述べる前に、本田さんは武内さんに同じように話をしていました。告げるタイミングを逃したため私はその考えを消し去ります。今は私も他人を気に掛ける余裕はありません。

ライブの段取りを確認して、私達は控室で待機する事になりました。控室では、メンバーの皆さんに美嘉さんから激励の言葉を頂き、自然と気合が入ってしまいます。少し大げさかもしれませんけど、待っててくださいね楓さんっ!ここから頑張って追いついて見せますから!そんな決意を秘めて、お手洗いや水分補給などを済ませ少しだけ談笑しながら待っていると武内さんが時間を告げに来て、遂に私達の出番が来たようです。

 先導する武内さんの後に続き、ステージの後ろの広めのスペースで待機します。最初に舞台に上がるのはラブライカのお二人、次がニュージェネレーションズ、そして最後が私『Moon Light』。最初この名前を教えてもらった時は色々と考えてしまいました。『月明り』と言われても何故そんな考えになったのかと不思議でしたが、武内さんいわく「夜に輝く月は、朝に煌めく太陽とは違う形で地上を照らします。鳳さんには今までのアイドル業界を違った視点から照らして欲しい」とのこと。違った視点とは男の娘としてと言う事なんでしょうかね。深くは考えないようにしますが、この名前結構お気に入りなんですよね。最初は暗いステージを私が照らす。そう考えたらお気に入りになりますよ。

 

「第一歩目です。頑張ってください」

 

 おっと、考えに集中し過ぎていたみたいですね。武内さんの声を聞いて現実に引き戻されます。皆さんその言葉を聞いて色々思うところがあったのでしょう。島村さんは何時もの様に頑張りますと声を出し、凛も手に力を入れています。新田さんとアナスタシアさんは二人で手を握り合い緊張を解している様子。私?私はほらソロですから、隣に誰もいませんから。あっはっは・・・。

 

「ラブライカのお二人、時間です!」

 

 少しだけソロの自分に悲しくなったところでスタッフの方から声が掛けられます。ラブライカの二人が深呼吸をして舞台に上っていくのを見届けて、残された私達は歌声が響く中で待つことになりました

 

 

 

 

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「お疲れさまです」

 

「うんっ、疲れたけど、すっごく楽しかった!」

 

「お客さんから、拍手を貰えて、とても嬉しいです!」

 

 本当に嬉しそうな二人を見て、私は自然と笑顔になります。二人が舞台から降りてきて、次はニュージェネレーションズの出番です。ラブライカの二人とすれ違う時に小さくタッチをしているのを見て、私も手を差し出します。

 

「頑張ってね、凛」

 

「うん、見ててね」

 

「島村さん、笑顔ですよっ」

 

「はいっ、島村卯月頑張ります!」

 

 凛と島村さんとタッチして、次は本田さん。と彼女を見れば少し不安そうに顔を歪めています。

 

「本田さん?」

 

「ん、あぁごめんねとりちゃん」

 

 何か考えていたのか、彼女は頭を振って私にタッチしてから舞台に出ていきました。

 

「何かあったんでしょうか・・・」

 

 何時もの元気ハツラツと言った彼女とは違った様子に私も不安になります。だからと言って私に何か出来るわけではありませんが、彼女たちの成功を祈ることにしましょう。

 

 

 

 

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 ニュージェネレーションズのライブも終わり、次はいよいよ私の出番になりました。掌が少し汗で湿り、心臓が早鐘の様にドクンドクンと煩いほどに聞こえます。落ち着くように深呼吸していると、ライブが終わった三人が舞台から降りてきます。お疲れさまと声を掛けようとしたところで本田さんの様子がおかしい事に気づきました。

 

(何か、あったんでしょか・・・)

 

 少し気になりますが、私は自分の事に集中する事にしましょう。そう思いましたが、少し離れた所から本田さんの叫び声が聞こえてきて、私はスタッフの方に少し待ってもらうように告げて、声が聞こえた場所に向かいました。

 

「本田さん、何かあったんですか・・・」

 

 声がした場所に向かうと、本田さんだけではなく武内さんに島村さん、凛に美嘉さんが集まっています。武内さんにライブはどうしたのかと聞かれましたが、何かあったかと思ってこちらに来たことを告げると、首に手を当てて戻るように言われました。

 

「前のステージみたいに、盛り上がると思ったのに!」

 

「それって、アタシのライブに出た時の事?」

 

 その言葉を聞いて、私は戻ろうとした足を止めます。前のステージと言えば、美嘉さんのライブの事でしょう。つまり本田さんはあの時と比べて人が少なくて不満に思っているのでしょうか。その言葉を聞いて、武内さんが口を開きます

 

「今日の結果は・・・当然のものです」

 

「何それ・・・。もういいよ、私アイドル辞める!」

 

 本田さんはその言葉で涙を流し始めました。当然と言われても受け入れられないのでしょうね。そんな本田さんにそっと近づいて、口元を人差し指で塞ぎます。

 

「ねぇ本田さん。確かに美嘉さんの時とは違って、今回は小さな舞台ですし人も集まっていません」

 

 行き成り語りだした私に本田さんは驚いて固まっているみたいです。武内さんも止めませんし私はそれを良い事に話を続けます。

 

「でも、本田さんのお友達はちゃんとライブを見に来てくれましたし、お客さんも足を止めて本田さん達を見ててくれましたよ。それでも不満ですか?」

 

「でも、私皆に凄いライブやるって言って・・・。それなのにこんな小さな場所でライブだなんて情けなくて・・・」

 

「最初は誰もがこんな小さな場所でライブをやるんです。本田さん達はその前に美嘉さんのライブを経験したからわからなかった事かも知れませんけど、美嘉さんだって楓さんだって、トップアイドルの方達だってスタートラインは一緒なんです。他にも私達アイドルには共通する事があるんですよ、わかりますか?」

 

「わかんないよ・・・」

 

「お客さんを笑顔にする事です。ニュージェネレーションズのライブを見てくださった方達の顔を覚えていますか?ラブライカのライブを見た方達の顔見ましたか?」

 

「見てなかった・・・」

 

「じゃあ、これから始まる私のライブを見ていてください。それで答えを見つけてください。私達アイドルを見て、お客さんがどう変化するのかを」

 

 そう告げて私はスタッフの方の所に戻ります。年下に色々言われていい気分じゃないでしょうが、本田さんが見てくれることを信じて私は舞台に上がりました。

 小さなライトに照らされる舞台に立ち、私の体が引き締まったような気がします。そして、待っていた人達を見て気持ちが昂ります。

 設置されているマイクの前に立ち

 

『皆さん、お待たせして申し訳ありません。緊張しちゃって少しお手洗いに行ってました。時間もあまり残されてませんし、歌わせてもらいます。聞いてください「moon story」』

 

 この歌は私が路上で歌った曲の一つになります。満月を見て思い浮かんだ歌詞で作ったこの曲を、武内さんは私のデビュー曲として受け入れてくれました。素人が作った曲なので、そこまで深い意味はありませんが路上で聞いてくださったお客さんは皆楽しそうにしてくれていたので私のお気に入りの一つです。

 

 無事に歌い終わり、聞いてくださった方々にお礼として頭を下げます。すると拍手が響き渡り、改めてライブが終わったことを実感します。

 

『ありがとうございます!』

 

 そう告げて私は舞台を降り、待っていた本田さんに声を掛けました。

 

「本田さん、お客さんの変化、分かりましたか?」

 

「みんな、笑顔だった・・・」

 

「はい、笑顔になってました。これはラブライカの時も、ニュージェネレーションズの時も一緒です。お客さんも、本田さんのお友達も、皆笑顔で見ていたんです」

 

「そう、だったんだ・・・」

 

「武内さんが写真撮ってましたし、確認してみましょう」

 

 言いながら武内さんを見ると、こちらの言葉を聞いていたみたいで近づいてきてくれます。デジカメで撮影したので直ぐに確認が出来ました。笑顔で拍手をしているお客さんの写真を見て、本田さんは涙を流します。

 

「笑顔にする事が、私達には出来るんです。こうして、笑顔で見てくれた人たちがファンになってくれるんです。今日来てくださったお客さん、本田さんのお友達」

 

 そこでいったん区切り、一つ深呼吸して続けます

 

「アイドルを辞めるというなら、そんな方々を裏切るんです」

 

「裏切る・・・」

 

「それでもアイドルを辞めるのであれば、私は何も言いません。でも、もう一つだけ。本田さんはこの企画に応募して、不合格だった人たちの上に立っているんです。私も、凛も、島村さんも皆さんも。そうした人達の上に立つ以上、アイドルだからと言って浮かれてばかりはいられません。だから、これからアイドルを続けるなら、もうこんな悲しい事言わないでください・・・」

 

 胸の内をすべて話、私はその場を離れます。言いたい事を言うだけになってしまいましたが、情けないですが私にはこれ以上どうしようもありません。後は武内さんや凛に任せることにして、私は蘭子ちゃんの所に近寄ります。

 

「蘭子ちゃん、応援ありがとっ」

 

「お疲れ様ですっ。あの、未央さんの事大丈夫ですか・・・」

 

「うん、私に出来る事なんて限られてるし・・・。本田さんの気持ちは本田さん自身が決めることだし」

 

(私が言わなくても、きっと誰かが言ってくれただろうしね)

 

「私も、まだひよっこだしね。気持ちは分からない訳でもないんだ」

 

「そうなんですね・・・」

 

 そう蘭子ちゃんは呟いて、私達は本田さんを見ます。武内さん達に謝っているのが見えますし、彼女はこれからもアイドルを頑張るんでしょうね。

 私はそれを見て沿って頷いて、隣に立つ蘭子ちゃんを見ます。

 

「蘭子ちゃんも、デビューした時は頑張ってね」

 

「はいっ!頑張ります!」

 

 小さく両腕でガッツポーズをする彼女を見て。私は微笑みました。

 

 

 


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