少女少年 ~シンデレラガールズ~   作:黒ウサギ

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今回は短め


少年少女の涙

 おっぱいが一つ、おっぱいが二つ、おっぱいが三つ・・・・・・。

 

「凛、私帰りたい」

 

「帰ったら仕事にならないよ・・・」

 

 だってだって、女性の象徴がいっぱいあっちこっちにあるんですよ?私何処見てれば良いんですか・・・。

 武内さんが連れてきた新たな人たちが加わった結果。私の精神ががりがりとすり減って行く事になりました。いえ、そもそもすり減る予定だった精神ですが、すり減るペースが凄まじい事になってしまいまして。

 

「神楽ちゃん大丈夫?顔が赤いみたいだけど熱でもあるの?」

 

「あ、いえ、お構いなく!」

 

 そう言って心配する声を掛けてくださったのは元アナウンサーという経歴を持つ川島瑞樹さん。先輩らしく後輩である私達をこうして心配するように声をかけてくれるのは大変嬉しいのですが現在の私にとっては火に油も同然です。

 ビーチチェアーに腰を掛けて座っている私と凛ですが、座っているからなのか川島さんは前かがみになるような形でこちらを見てきます。そのため大変大きなものが私の目の前に存在するわけで、何が言いたいかと言えば助けて凛ちゃん。

 

「ふふ、瑞樹さんの水着・・・」

 

 なんて小粋なジョークと共に現れたのは私の憧れであり恩師でもある楓さん。

 

「ちょっと楓、アンタ実はお酒飲んだりしてないわよね?」

 

「お猪口でちょこっとですか?流石に仕事前にそんな事はしませんよ?」

 

 目の前で会話されている訳ですが、如何せん青い水着に包まれた柔らかそうな双丘と薄緑に包まれた大きすぎずな双丘が眼前にあるため大変私困っております。具体的に言うと頭に血が上ってそろそろ血が零れそうです。

 凛や卯月さんといったシンデレラプロジェクトの皆さんは日ごろから見慣れているのもあるためか、少し時間が経過した現在なら視線を逸らせばある程度会話は出来ます。ですが流石に先輩とこうして肌を晒した状態で出会うことなどまず無く、更に更にその相手が憧れの存在と芸歴的にも届かない程の先輩です。流石に会話の際に目を逸らすなんて不躾な真似をするわけにもいかないので目を見て話すのですが、如何せん必ずと言っていいほど見えてしまうのが辛いです。

 唯一の男性である武内さんと一緒にいれば大事ないと思っていたのですが、あの人撮影が始まると同時に何処かに姿をくらましましたからね、裏切り者・・・。

 さて、どうにかしてこの境地を乗り切りましょう。端的に言えばお手洗いに逃げる事です。そのためお二人と凛に一言声を掛け立ち上がろうとしたところ

 

「あら」

 

「まぁ」

 

 なんの因果が働いているのか、何もない所で足を滑らせると言った所業を見せお二人の胸元に倒れこむような形となってしまいました。

 

「~~~~~!!」

 

 声にならない叫びを挙げそうになるのを何とか抑え・・・、抑える事が出来なかったよ・・・。

 一先ず大声で皆様の視線を集めるような真似にはなりませんでしたが、如何せんこの柔らかなお山に包まれている状態は大変私の心境的にもよろしくありません。何が不味いって理性がちぎれそうで本気で鼻血でそう・・・。

 

「もう、何してんのさ神楽!」

 

 そう言いながら凛が慌てて私の腕を掴んで引き起こしてくれました。

 ありがとう凛、お陰で私の血液が流れ出る事はありませんでした・・・。

 と言うかそんな場合ではありません。慌ててお二人の方に体を向きなおし、直角にならんばかりに体を折り曲げ謝罪します。

 

「たいっへん申し訳ございませんでした・・・っ」

 

 下手すれば私の人生これで終わりですよ!このまま警察を呼ばれてしまい、変態アイドルとして世間様を賑わせる事態になって、叔母さんにもご迷惑をお掛けして・・・。

 考えれば考える程顔面蒼白になっているのが分かります。これ本当にどうしましょうか・・・、土下座で許してもらえれば御の字、それでも駄目なら切腹・・・

 

「えいっ」

 

 なんて物騒な考えに辿り着こうとしていた時、ふにょりと柔らかな感触が私を襲います。何事かと視線だけ動かしてみるととても近い距離に楓さんが・・・

 

「くぁwせdrftgyふじこlp!?」

 

「別に同姓何ですし、慌てる必要なんてないじゃないですか。だからそんな思いつめたような顔しないの。私は神楽ちゃんには笑顔が似合うと思うわ」

 

「私も気にしてはいないし、顔を上げなさいって」

 

 それよりもそれよりも、お山が!楓さんのお山が!

 あぁ、初めて会った時から惹かれる存在だった楓さんの81cmのバストが・・・。死んでも良いんです、男としてこのまま死んでも良いです!

 にへら、と緩む顔を隠すことなく。どうにでもなれと言う気持ちで抱きしめてくれている楓さんを思いっきり抱きしめます。柔らかいよぉ・・・甘い匂いするよぉ・・・。

 

「あらあら、神楽さんは甘えん坊ね」

 

 なんかこうしていると昔を思い出してしまいますね。薄れていっている昔の記憶、母にこうして抱きしめて慰めて貰った事がありました。その時もこうして柔らかくて、落ち着く匂いがして、でも、そんな母はもういなくて

 

「あれ・・・」

 

 何故か零れだしてしまった涙を慌てて拭い、楓さんから体を引き離します。

 

「神楽ちゃん?」

 

「神楽・・・?」

 

 私の目元に光る涙に気が付いたのでしょう。楓さんと凛がこちらを心配そうに見てきますが、その視線から逃れるように走り出します。

 

「神楽っ!」

 

 慌てたように掛けられた凛の声を聞かないようにし、私は往くあてもなく走り出します。何故抱きしめられただけで思い出してしまったのか、何故あんな失態を晒してしまったのか。考えても考えても答えは出ないままで、走り続け走り続け

 

「きゃっ!」

 

 曲がり角を曲がろうとしたときに、誰かとぶつかってしまいました。

 人にぶつかった事で思わず冷静になり、慌ててぶつかった人に頭を下げてそちらを向く。

 

「す、すいません!前を見ていなかった物で・・・」

 

「あーいいよいいよ、前を見てなかったのは私も同じだし・・・」

 

 そう言って倒れたままの女性に手を指し伸ばし、立ち上がった所で視線が合わさり

 

「神楽君・・・?」

 

「加蓮さん・・・?」

 

 ぶつかった人は、加蓮さんでした。

 その事実を理解し、ダラダラと冷や汗が流れ始めます。何でかって?私女性ものの水着来てるんですよ?そりゃもう同級生にそんな姿見られたら確実に変態じゃないですかやだ・・・

 

「失礼!」

 

 逃げるようにその場を去ろうとしたところ、がっしりと腕を掴まれて逃げる事はかないませんでした。

 

「ぶつかった事とかはまぁ気にしないけど、女装して水着来ている事について詳しく説明が欲しいなーって」

 

 つまり、逃げ場が無いと。助けて凛・・・


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