少女少年 ~シンデレラガールズ~   作:黒ウサギ

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例のごとく蘭子のキャラが違います。熊本弁わかんないから仕方が無いですね。
デレステ文香は当然の様に出ませんでした・・・



少女少年の大問題

 

 トントンと包丁が一定のリズムで動く音が聞こえます。私はその音を出している人が叔母であると予想を付けて、何時の間に帰って来たのか、何故帰る旨を伝えてくれなかったのかと不満に思いますが。久し振りに会う家族ですし笑顔で会いに行く事にしました。

 

「お帰りなさい、叔母さん・・・え?」

 

「おはよう神楽、ご飯作ってるから座って待ってて」

 

 キッチンで待ち構えていたのは叔母ではなく、何故か凛がエプロン姿で私の事を出迎えてきました。

 

「え、何で凛が私の家にいるんですか!?」

 

「ん?何でも何も」

 

 そうして凛は左手薬指を私に見せてきます。そこには差し込む朝日を反射して、宝石が光り輝いています。そして薬指に指輪があるということは

 

「結婚したんだから、私が家にいるのは普通でしょ?」

 

「はいぃ!?」

 

 結婚ですか!?凛まだ現役で高校生でアイドルですよね!?それなのに結婚・・・。世の中の女子高生は進んでますね。お相手は誰でしょうか、身近な人を考えるなら武内さんなんですが・・・。

 

「ほら、出来上がったから冷めないうちに食べよ?」

 

 凛に勧められて、私は席に黙って座ります。

 というか凛が結婚しているのなら何故私の家にいるんでしょうか?凛の旦那さんは何処にいるのでしょう・・・。

 

「よいしょっと」

 

 そんな事を考えていると、凛が私の隣に腰かけました。結婚して旦那さんがいるのに私の隣に座る必要はあるのでしょうか。

 

「ねぇ、凛?結婚したんだから何も私の隣に座る必要は無いんじゃ・・・。何だか私旦那さんに申し訳なくなりますよ・・・」

 

 そう告げると、凛はクスクスと口元に手を当てて笑い始めます。その仕草が大人っぽく、少しだけドキリと胸が高鳴りました。

 

「旦那さんなんていないでしょ。私達が結婚したんだから」

 

「いやいやいや、仮に私と凛が結婚したとしたら私が旦那さんになるじゃないですか」

 

「今日の神楽は、少し変だね」

 

 そうして凛は顔を近づけてきて、そっと私に口づけしてきました。唇に触れた柔らかな感触、そこから伝わる彼女の体温が伝わってきます。

 

「同性愛でも、私の事を好きって言ってくれたのは神楽じゃない」

 

「同性愛・・・?」

 

 その言葉を理解できずに、私は自身の体を見下ろします。

 よくよく見れば、私が着ている服は女性ものであり。胸部はふっくらと膨らんでおり、髪も記憶しているより長く胸元まで伸びています。

 

「嘘・・・」

 

 有り得ない現実を突きつけられて、咄嗟に私は自身の下腹部に手を差し入れます。普通であればそこには男性のシンボルが存在している筈なのに、今はそんな物は存在しません。

 

「うっそぉ!?」

 

「嘘じゃないよ」

 

「いやでも、私男で・・・何で脱いでるんですか凛!?」

 

「何でって、これから蘭子にご飯上げないといけないし」

 

 何故か凛は上半身裸で立っています。と言うか待ってください、とても聞き逃せない言葉が聞こえてきたんですが・・・

 

「ほーら蘭子ー、ご飯の時間でちゅよー」

 

「ばぁぶ」

 

「蘭子ちゃん!?」

 

 何時ものゴシック服に身を包んだ、記憶の中にある背丈と変わらない蘭子ちゃんがベビーベッドに横になっていました。え、100歩譲って女性同士で結婚したとして。子供はどうやって・・・

 

「蘭子のオムツも変えましょうねー」

 

「ちょっと待ってっ、理解が追いつかないけど私ここから出て行った方が良い気がする!」

 

 流石にこれ以上は私が見るには刺激が強すぎますし、そもそも見てはいけないものなのでは!?そう思い私は慌ててリビングを飛び出して、段差に躓いて頭を階段にぶつけてしまい

 

 

 

 

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「朝からとても凄い夢を見ました・・・」

 

 結局は夢落ちでしたが、夢で本当に良かったと思います。だって私いつの間にか女の子になってるんですよ?しかも凛と結婚して、蘭子ちゃんという子供までいて。これが現実だったら受け入れきれる自信がありませんね。

 

 それはさておき、私達のデビューライブから一週間程経過しました。その一週間で季節は梅雨に入り、気温も徐々に高くなって肌に湿気が纏わり着くようになりました。梅雨は苦手なんですよね・・・。傘が手放せなくなりますし、カビが生えやすくなりますし。もう梅雨なんてすっ飛ばして夏に入ってほしいですね。

 そんな事を思いながら私は事務所に辿り着きます。何時もであれば凛と共に学校から事務所に向かうのですが、あのライブ以降少しずつ私達に仕事が舞い込んで来まして。本日凛はその打ち合わせがあるとのことなので武内さんと共に学校から仕事に向かいました。なので本日は私一人と言うことです。

 

「おはようございます」

 

 畳んだ傘を手に持ち、私は何時もの部屋に挨拶と共に入ります。

 

「おはよう、神楽ちゃん」

 

「Доброе утро。おはようございます、カグラ」

 

 まず最初に返事をしてくれたのがラブライカの新田さんとアナスタシアさん。ユニットを組むようになってからは仲が更に深まった様子で、今も二人でソファーに隣り合うようにして腰かけ談笑していたみたいです。

 

「おはようございますっ、神楽さん!」

 

「おはよう蘭子ちゃん」

 

 次に声を掛けてくれたのが蘭子ちゃんです。夢の中で何とも言えない行動をしていた彼女ですが、当然今は普通に会話出来る状態です。

 

「今いるのは、三人だけですか?」

 

「そうみたいね。他の子は皆レッスンの時間だったり、まだ来てなかったりで私も顔を合わせてないの」

 

 成程、何時もであればソファの一角にいる筈の双葉さんがいませんし。元気よく動き回りみりあちゃんと城ヶ崎さんを見守る諸星さんも見当たりません。

 何時もなら騒がしいこの場所ですが、人がいないだけでこんなに寂しくなるんですね。そう実感していると、蘭子ちゃんが声を掛けてきました。

 

「神楽さんっ、明日お時間ありますかっ?」

 

「明日ですか・・・?私は特にレッスンの予定も入ってませんし、お仕事もまだ来ていませんから時間はありますが・・・」

 

「で、でしたら!」

 

 勢いよく声をあげて蘭子ちゃんは私の手を取り顔を近づけてきます。

 

「ら、蘭子ちゃん?少し近いかなって・・・」

 

「お泊り会しませんか!」

 

 私の言葉をスルーして、蘭子ちゃんはそんな事を言ってきました。その言葉を聞いて私はピタリと動きを止めてしまいます。

 

「お、お泊り会・・・?」

 

「はいっ、美波さんとアーニャちゃんとさっきまで話してたんです!・・・私、あまり皆と仲良くなることが出来てないですし、仲良くなるためにはどうしたらいいかって相談して・・・」

 

 それでお泊り会になったということですか。ですが蘭子ちゃんには申し訳ないのですが、流石にそのお泊り会に私が参加するのは躊躇われてしまいますね。男ですし、男ですし!最近凛も武内さんも私に対する接し方がたまに女性扱いになるんですよね。忘れないで下さい、私は立派に男性です!

 

「ごめんね蘭子ちゃん・・・、お泊りするにも場所が・・・」

 

「場所は女子寮で大丈夫みたいです!寮母さんの許可も貰ってますし、今ここにいない皆さんも参加してくれるって言ってましたし!」

 

 あれ、これはもしかして逃げ場が無いのでは・・・?それにいつの間に皆さんに声を掛けていたんですかね。私今初めて声を掛けられたんですけど、ハブられてたんですか・・・?

 

「私達も、神楽ちゃんが参加してくれれば嬉しいなって。私神楽ちゃんともっとお話ししてみたかったし」

 

「ワタシも、カグラと仲良くなりたいです」

 

 あ、これ完全に逃げ場無いですね。先程明日は時間があると言ったばかりですし、参加しなかったら私だけ皆さんとの親交を深める機会を逃す形になってしまいます。

 

(それでも、凛ならきっと助けてくれるはずですっ)

 

 なんて今はいない凛を頼ることにしました。蘭子ちゃんに一言断りを入れて凛にメールを打ちます。

 

From:鳳神楽

To :渋谷凛

 お泊り会の件ですが、私が参加した場合凛はフォローを入れてくれますか?流石に断るのも申し訳なく、参加したいと思っているのですが・・・。

 

 こんな感じで良いでしょう。そうして凛にメールを送信して少し待ちますと、携帯が震えます。

 

From:渋谷凛

TO :鳳神楽

 私もなるべくフォローはするつもりだし、下手な事しない限りは問題無いかなと思うよ。

 

 返って来たメールを見て私が参加しても問題無さそうと言うこともあり、私も参加する旨を蘭子ちゃんに伝えます。

 

「ありがとうございます神楽さん!」

 

 そう言って蘭子ちゃんは私に抱き着いて来ました。ちょっと待ってください、胸が!胸が当たってますよ蘭子ちゃん!

 助けて新田さんっ。と視線を移しますが、新田さんとアナスタシアさん二人して微笑ましいものを見るようにあらあらと声を出して笑っていました。

 結局、そのあと蘭子ちゃんは感極まって抱き着き魔と変化し。来る人来る人に抱き着いて周っていました。武内さんには抱き着きませんでしたけどね。

 

 

 

 

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 明けて翌日。私は学校終わりに一度家に帰り、昨晩の間に準備を終わらせていた荷物を手に持ち女子寮に向かいます。とは言っても女子寮は事務所から近い場所にあるので何時もの道を歩くだけです。

 心中は私なんかが女性だらけのお泊り会に参加していいものかと今も悩みますが、凛のフォローもありますしそこまで困った事態には陥らないと思っています。ほら、伊達に今まで皆さんに私の事ばれてませんし。何時も通りに過ごしていれば死に瀕するみたいな事は起きないでしょう。

 

「かぐちゃーん!こっちこっち!」

 

 女子寮に付き、その大きさに少し驚いていると。上の階の窓から本田さんが声を掛けてきました。あのライブ以降、彼女は私の事をかぐちゃんと呼ぶようになりました。心境の変化があったのでしょうがかぐちゃんは女の子らしいあだ名なので未だに呼ばれ慣れていません。

 本田さんが入ってきても良いよと言っていたので、私は女子寮の門をくぐりました。

 まず女子寮に入って、女性が多い事もあるからなのか甘い香りが私の鼻に入ってきます。慣れない匂いに少しドキドキしますが、今の私は女の子ですし慌てずに中に入ります。

 玄関を通り抜け、来客用のサンダルに履き替え中に入ると大広間に着きました。比較的大きめのTVに大人数が座れるように配慮されてなのかソファが並んでいます。

 

「神楽、こっちこっち」

 

「凛、随分早いですね」

 

 少しだけ女子寮の設備に圧倒されていると、凛が声を掛けてきてくれました。何時もの見慣れた制服ではなく、寝間着姿に着替えた凛です。これはレアな物を見ましたね・・・。

 

「着替えるの早くないですか?」

 

 ですが時間はまだ6時にもなってません。それにも関わらず寝間着になるのは流石に早いと思います。そんな私の疑問ですが、凛曰くみりあちゃんがパジャマパーティーはパジャマに着替えるのが常識何だよと言い出したために着替えていたとのこと。

 

「みりあちゃんの言葉なら従うしかないですよね」

 

「流石にあの笑顔で言われたら誰も断れないって。ほら、神楽と私は蘭子の部屋に泊まるらしいから行こっ」

 

 私は凛の言葉に従い、蘭子ちゃんの部屋を目指して歩き出しました。とは言っても部屋の場所分かりませんし、凛の後をついて行くだけなんですけどね。

 

 そして、蘭子ちゃんの部屋に辿り着き持参した寝間着に着替えた現在。皆さんが着替え終わり大広間に集まった時に、みりあちゃんが言ったその言葉。

 

「一緒にお風呂入ろうよ!」

 

 私と凛は固まりました。純真無垢なその言葉が心に突き刺さるようです。普通に考えてみりあちゃんは純粋に一緒にお風呂に入りたいから言ったんでしょうね。でも私にとってその選択肢はかなり危険な物になります。流石にお風呂となれば肌を晒さない訳にはいきません。スッポンポンですよスッポンポン。隠すものが何一つない場所ですし確実に私の事がばれてしまいます。

 

「ごめんなさい。私今女の子の日なので・・・」

 

 ですので私は以前凛に教えてもらった鉄壁の防衛術を使うことにしました。この言葉を言うことで大抵の方は諦めてくれるらしいです!

 

「そっかぁ・・・。残念だけど、仕方が無いもんね・・・」

 

「ごめんねみりあちゃん」

 

 少しだけ表情を陰らせるみりあちゃんに申し訳なくなり、私は優しく彼女の頭を撫でます。蘭子ちゃんも悲しそうに顔を歪めていますが、こればかりは流石に混ざることは出来ないのです。ですので、私は蘭子ちゃんに許可を取って彼女の部屋にあるシャワーを使わせてもらう事にしました。

 皆さんが一緒にお風呂に向かっていくのを見送って、私は一人蘭子ちゃんの部屋に戻りました。

 

「セーフ・・・」

 

 事前に凛にもしもの為の逃亡術を教えてもらって正解でしたね。今後もこういった機会が無いとは言い切れませんし、使用していくとしましょう。

 そう決意して、私は部屋の鍵を閉めてお風呂に向かいます。着ていた服を脱ぎ去り、一糸纏わぬ姿になります。そうして鏡の前に立ち

 

「私の筋肉は何処にある・・・」

 

 自身の体形を見て溜息を溢しました。どれだけレッスンしても筋トレしても、目に見えて筋肉が付いたと実感出来ないんですよね・・・。お腹も割れませんし、力こぶもあまり出ません。以前よりは体力もつきましたし、重いものを持つのも簡単に出来るようになったのですが・・・。

 考えても詮無き事。何時かは変わるでしょう。そう判断して、私はお湯を出してシャワーを浴び始めます。シャワーから放たれる温水が、一日の汗と疲れを流していく気がします。体を軽く流し、髪を濡らし、蘭子ちゃんが使っているであろうシャンプーに手を伸ばした時

 

「神楽さん、私も一緒に入りま・・・す・・・」

 

 部屋の主が現れました・・・。

 

 

 

 

 

 

 


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