妖精達と歩む大空   作:グリーン

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何と謝罪すればいいのか……実に5ヶ月振りの更新になりました。楽しみにしてくださった方、申し訳ありません!


フェイス発動

 

-冥界島

 

ツナとイグニールのタッグがアクノロギアと激闘を繰り広げている頃、冥界島でもまだ戦いが続いていた。

 

「火竜の翼撃!!」

 

「無駄だ……棘!」

 

ナツの一撃を軽やかに躱したマルド・ギールは巨大なバラの棘を思わせる巨大な植物を一瞬で召喚する。それによって動きを制限されてしまうナツ。

 

「厄介な奴だな……けど父ちゃんに頼まれたんだ!ぜってーにテメェを倒してその本はもらうからな!」

 

「竜の子といえどマルド・ギールはに勝つことなど不可能だよ」

 

余裕を崩さないマルド・ギールだったがナツの辞書に諦めという文字はない。まずは自分を邪魔するこの植物を焼き尽くそうと息を吸い込む。

 

「やってみせるぜ!火竜の咆哮!!」

 

「無駄だと言うのに……」

 

植物の一部は焼かれたが残った他の部分がナツに迫ってきた……が、それがナツに届くことはなかった。

 

「「なっ!?」」

 

異口同音で驚くナツとマルド・ギール。ナツに迫る棘が一瞬にしてその動きを凍りつかせて停まってしまった。そこに現れた人物はナツが捕まった時に失ったマフラーをナツへと投げ渡した。

 

「俺のマフラー……」

 

「大事なモンなら二度と手放しちゃなんねえ」

 

現れたのはグレイだった。だが今までのグレイとは何かが違う……ナツはそう感じた。

 

「タルタロスは俺が潰す!!」

 

父親より受け継いだ滅悪魔法の証がグレイの右腕に宿っている。その紋章に触れながらグレイはマルド・ギール悪魔を倒す為の力を練り上げていった……

 

 

 

 

 

 

 

 

ナツとグレイに負けず劣らず、エルザとキョウカの戦いも激しさを増していた。

 

「エルザァッ!!」

 

「うおおぉっ!!」

 

クロスレンジで切り結ぶ二人の戦いをミラは歯を噛みしめながら見ていた。フェイスがもうすぐ発動してしまうのにエルザが戦っているのを見ている事しかできない……

 

いや、それよりもツナがアクノロギアと戦っている。それなのに自分はここでいったい何をしているのだろうか?以前ツナにアクノロギアと一人で戦わないでと言っておきながら結局ツナに戦わせておいて自分は無様に地に伏しているだけ……

 

-情けないっ!……何て情けないの私は!-

 

「こ…こで……何も出来……ないなら……」

 

「ミラジェーン……その傷で何を?」

 

足をガクガク震わせながらもゆっくりと立ち上がるミラに同じく倒れていたミネルバが心配そうに声をかける。

 

「死んだ方がましよっ!!」

 

「ミラッ!?」

 

「何だと!?ぐはっ!!」

 

ミラは残り僅かな魔力を振り絞ってサタンソウルを発動させる。しかも現時点最強のミラジェーン・シェトリに変身すると凄まじいスピードでキョウカを殴り飛ばした。

 

「くっ!?この呪力……我らに匹敵するというのか!?」

 

「さあエルザ!さっさと倒してフェイスを止めてツナの加勢に行くわよ!!」

 

「最後の理由が一番だろう。まったく……ああ!行こう!」

 

ツナを助ける為に復活したのだろうミラを見て苦笑するエルザだったが隣に立つ心強い親友を見てさらに気勢を高めると再びキョウカへと剣を振るうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

冥界島内部で激闘が繰り広げている頃、ツナとイグニールのタッグとアクノロギアの戦いはハッキリとツナ達に形勢が傾き始めていた。

 

「「グググググッ……!!」」

 

アクノロギアとイグニールが空中で組み合って力比べをしている。両者の力は魔力も膂力もアクノロギアが勝っているが、イグニールも意地を見せて食らいついている。だがアクノロギアの真上からオレンジの流星が舞い降りる……

 

「くらえっ!!」

 

真上から炎で加速してそのままアクノロギアの脳天に拳を叩きつける。

 

「ぐはっ!!貴様!!」

 

「よそ見をするな!!」

 

アクノロギアがツナに気をとられた隙にイグニールが攻撃する。未だにアクノロギアはこの連携を崩す事が出来なかった。ツナを放っておいてイグニールを叩こうにもツナの攻撃はアクノロギアであっても無視はできない。

 

「もう一度力を貸してくれ、武!」

 

「ヌッ!?これは!?」

 

ツナは右拳の炎を雨の青いに変化させると、ツナはその炎をアクノロギアに直接流し込んだ。当然ながら雨の鎮静の炎の効果でアクノロギアの動きが緩慢になる。

 

「今だ!イグニール!!」

 

「任せろ!!フンッ!!ハッ!!」

 

「グッ!ガハッ!!」

 

イグニールの怒濤の連撃がアクノロギアに次々と吸い込まれていく。攻撃がヒットする度に凄まじい大音響がツナの鼓膜を揺らす。

 

いつの間にか戦場は冥界島から見えないほど遠く離れた場所に移っている。真下には海が広がっていた。もちろんツナ達が引き離した結果だが……

 

-ここしかない!!-

 

ツナは背中の炎の翼を広げると両腕をクロスさせながら前方へと突き出した。

 

「オペレーションXX(ダブルイクス)!!」

 

 

 

 

 

 

 

三組の戦いが激しさを増していく一方で残りのフェアリーテイルのメンバー達はフェイスをどうにかして止めようと考える……しかし、大陸中にフェイスが3000基現れた今となってはエルザ達が何とかしてくれるのを祈るしか出来なかった。

 

「どうすれば……もうあまり時間がないわ」

 

「魔法が消えてしまったら星霊たちにも会えなくなってしまいます……」

 

ルーシィとヒスイは特に星霊という友を失ってしまうことに心を痛めている。他の者達も同様に落ち込んでいた。ここにいる者達は全て魔道士……今まで魔法という存在と共にあった者達だ。

 

例え魔法が消えても生きてはいけるとはいえ、魔道士にとって自分のアイデンティティともいえるものが消えてしまうなんて考えたくもない。

 

『皆の者、聞こえるか?』

 

エルザ達の加勢に行くべきかと意見が出始めた頃、この場に集まっているフェアリーテイルの全員に念話が届いた。それは先程フェアリーテイルに戻ったマスターマカロフの声だった。

 

「ジジィ……」

 

『戦っている者以外は今すぐにギルドに戻ってくるのじゃ』

 

マカロフのこの言葉に反発するギルドメンバー達。戦っている者を残してこの場を離れたくはなかった。しかし、マカロフはそれを許さなかった。そのうえフェイス発動までもう時間がないのだから……

 

『……今こそ最後の手段を使う。それこそがフェアリーテイル最終兵器、ルーメン・イストワール!!』

 

「何だと!?」

 

その名を聞いたラクサスは驚愕する。自身の父であるイワンが求めたもの……全てが謎にに包まれたフェアリーテイルの最高機密のはずだ。その反応を見たフリードがラクサスに訊ねる。

 

「知っているのか。ラクサス?」

 

「名前だけはな……仕方ねぇ。全員戻るぞ」

 

「でも!みんな戦ってるのに!」

 

ラクサスの言葉に反発したのはルーシィだったが他のメンバー達の顔を見ると全員同じ考えだと伺えた。無論、ラクサスも同様の考えだったが敢えて言う。

 

「ここにいても何もできねぇ……初代の話じゃルーメン・イストワールは何かとてつもない物らしい。ジジィも相当に自信を持ってるようだ……それに賭けるぞ」

 

渋々と動き出すフェアリーテイルのメンバー達だがその歩みは遅い。その間にマカロフはある人物にだけ聞こえるように念話を送る。その人物はフェアリーテイルのメンバーではないドランバルト……

 

マカロフはドランバルトに事が済んだ後にルーメン・イストワールに関する記憶を自身を含めて全て消すように指示を出した。ドランバルトは自分がそれを断らない事を確信しているようなマカロフの態度に訝しむ。

 

指示を出し終えたマカロフは溜め息をつくとルーメン・イストワールに視線を戻す。

 

「この選択が正しいのか間違っておるのか……評議院が壊滅した以上西の連中も間違いなく動き出す……ワシに本当にこれを使う勇気があるのでしょうか……初代よ……」

 

視線の先には巨大なラクリマ……その中に一糸まとわぬ姿で佇む初代マスター、メイビス・ヴァーミリオンの肉体は何も答えなかった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「火竜の咆哮!!」

 

「氷魔の激昂!!」

 

ナツとグレイの魔法が左右からマルド・ギールに迫るがそれをマルド・ギールは巨大な棘を召喚して防ぐ。

 

「フンッ!!」

 

さらにマルド・ギールが腕を振るうとさらに地中から棘が飛び出して高速で二人に迫る。だがそれをムザムザ受けるほどナツもグレイも容易い相手ではない。前後左右から襲いかかる巨大な棘を躱し、棘の上を走りながらもマルド・ギールに接近する。

 

「「うおおぉっっ!!」」

 

マルド・ギールは二人を一瞥すると二人のそれぞれ炎と氷に包まれた拳を素手で受けとめ、その勢いをを殺さずにそのまま二人を投げ飛ばした。だが二人の攻撃を受け止めた掌は軽度の火傷と凍傷になっていた。その傷を見てマルド・ギールは思案する。

 

-キョウカに指示は出した……後数分もすればフェイスは発動して奴らは魔力を失うだろう-

 

それを待てば勝利は確実になる。だが……

 

「貴様らに見せてやろう。このマルド・ギールの真の姿を!!」

 

マルド・ギールが凄まじい光に包まれるとナツとグレイはとっさに手で目を庇う。そして光が収まった後には今まで人間の様な姿ではなく恐ろしい悪魔の様な姿でマルド・ギールは佇んでいた。コウモリの羽を巨大化させたような羽がより悪魔的な印象を与えている。

 

「マルド・ギール・タルタロス……その真の力を思い知れ!!」

 

名乗りと共に翼を広げてナツとグレイへ襲いかかるマルド・ギール。その速さは今までとケタ違いだ。だが……

 

「ツナより!!」

 

「遅えっ!!」

 

「何っ!?」

 

後ろへ回り込んだマルド・ギールを二人共見逃してはいなかった。二人の頭を掴もうとしたマルド・ギールは二人が避けたのを見て驚愕する。

 

「氷魔零ノ太刀!!」

 

「ガッ!?」

 

一瞬の隙を逃さずにグレイは造形魔法と滅悪魔法を組み合わせて造り出した刀でマルド・ギールの胸部を斬り裂いた。

 

傷自体はそんなに深くはないのだが滅悪魔法の力がマルド・ギールを苦しめる。たまらず上空へと羽ばたいたその顔には怒りが浮かんでいた。

 

冥界樹(デア・ユグドラシル)!!」

 

マルド・ギールが腕を一振りすると空間が歪み、そこから大樹がナツとグレイに向かって突き進んでいく。呪力をたっぷり内包している冥界樹はとても硬い上に人間にとっては有害だ。だがその木を見ながらナツはニヤリと笑って腕を振るう。

 

「滅竜奥義……紅蓮爆炎刃!!」

 

ナツの腕から放たれた炎は螺旋を描きながら大樹を包み込むとそれを燃やし尽くしていく。

 

「何だ!何なのだ!?貴様らは!?」

 

エーテリアスモードとなった自分に一歩も引かずに戦い続けるナツとグレイを信じられないものを見る目で見ながら驚愕するマルド・ギール……

 

「何だよ……てめえらが誰に喧嘩を売ったのかも分かってねえのかよ」

 

「なら二度と忘れねえように教えてやろうじゃねえか。俺達は……」

 

マルド・ギールの問いに並んで不敵に笑いながら答えるナツとグレイ。

 

「「フェアリーテイルの魔道士だぁっ!!」」

 

ナツとグレイの叫びと共に放たれた炎と氷が巻き付くように絡み合いながらマルド・ギールに襲いかかった。本来なら互いに威力を減衰してしまうだろう攻撃だが二人のライバルだからこそお互いを理解する心と、優れた魔力コントロールによってむしろ威力を高め合っていた。

 

「ぐぬぬぬぬっ!!」

 

避ける間もなく襲いかかる炎と氷を呪力を集中して受け止めたマルド・ギールだったがその身を焼き尽くす様な熱と身を切り刻む様な凍気に晒されて大きくダメージを受けてしまった。

 

「おのれ……こうなれば我が最強の呪法で跡形もなく消し去ってくれよう!!」

 

身体をボロボロにしながらも何とか耐えきったマルド・ギールの言葉と共に辺りの空気が変わった。敏感にその空気を感じ取ったナツとグレイは警戒する。

 

「この感じは……?」

 

「やべぇっ!!」

 

「終わりだ!メメント・モリ!!」

 

主であるゼレフを殺す為に作られたマルド・ギール最強の呪法がナツとグレイを包み込んだ……

 

 

 

 

 

 

 

 

エルザとミラを相手にしていたキョウカは、戦闘中にマルド・ギールから1つの指示を受けていた。それは生体リンクでフェイスの起動システムと一体化すること。そうすればフェイスの起動までの時間を短縮できる……しかし、それはフェイス発動と同時にキョウカが死ぬ事を意味していた。

 

だがキョウカは自身の死をまったく恐れず、むしろ嬉々としてシステムと一体化してしまった。こうなった以上フェイスを止める為にはキョウカを殺すしかない。残り時間が大幅に少くなる中、焦るエルザとミラにエーテリアスモードになったキョウカが襲いかかる。

 

「そらっ!!」

 

「きゃあっ!!」

 

キョウカの呪力、『強化』によって時間が進むほどに呪力を増していくキョウカの蹴りでミラは吹き飛ばされた。

 

「ミラッ!?くっ」

 

「ソナタには再びあの拷問部屋を思い出してもらおうか!!」

 

「がっ!?がああああっ!!」

 

エルザは痛覚を何十倍にも増幅され、空気が流れただけでその身に激痛が走る。だが激痛に晒されながらもエルザの闘志は折れない。縦横無尽に剣を振るう……その姿を目にしてキョウカはサディスティックな笑みを浮かべて高笑いをしていた。

 

「良いぞエルザ!やはりソナタは最高だ!!」

 

爪を伸ばして鎧ごとエルザの肌を次々と斬り刻むキョウカ。最初は大きな悲鳴をあげていたエルザだったがやがて声をあげることすら出来ずに地面に倒れる……

 

エルザが倒れるのを見てミネルバは嘆き、ミラはこのままエルザが終わるはずがないと信じて逆転の手段を探す。

 

-なんとかしなきゃ……これしかないわ!-

 

倒れたエルザをフェイス発動ギリギリまで嬲ろうとキョウカは動かないエルザの鎧や服を剥ぎ取るとその白い胸を鮮血で染めようと再び爪を伸ばした。

 

「さあ!残り少ない命の此方をもっと楽しませてくれ!!」

 

キョウカが頭上に振り上げた爪を胸の中央振り下ろそうとした時、凛とした声が響く。

 

「命令する。動くな!」

 

「なっ!?く……セイラ!どういうつもりっ……ソナタは!!」

 

キョウカが振り返ると、そこには何故か立ち上がったセイラが呪力による言霊でキョウカを縛っていた。だがキョウカはすぐに気付いた。それがセイラではないことに……

 

「ミラジェーン!?そうか!テイクオーバーしたのか!!」

 

「おのれ……許さんぞ!すぐにこの呪縛を解いて殺してやる!!」

 

ミラがセイラをテイクオーバーしたことに気付いたミネルバと怒りに燃えるキョウカ……確かにキョウカならすぐに呪縛を破るだろう。しかしミラは笑みを崩さない。

 

「いいのかしら?私に構ってて」

 

「何?……!バカな!?」

 

振り返ったキョウカが見たのはあり得ない光景だった。

 

「何故だ!?ソナタの五感は既にボロボロのはずだ!何故立ち上がれる!?」

 

エルザは半死半生ながらも立ちあがっていた。ほんの少しつつけば倒れそうな状態ながらも右手にしっかりと妖刀・紅桜を握っている。

 

「どれだけ私を痛めつけようと……仲間が信じてくれる限り私は……負けない!!」

 

エルザが刀を振り上げる……

 

「……まだ動けんか」

 

キョウカは振り下ろされる刀を見て目を閉じた。

 

「やれ!エルザ!!」

 

ミネルバの声と共に刀はキョウカを斬り裂いた……そのままエルザは意識を失って倒れる。

 

命令(マクロ)に抵抗しなかった?まさか!?」

 

最後の瞬間、抵抗なく刃を受け入れたキョウカ……その死に顔の愉悦の表情に嫌な予感を感じ、ミラはフェイスのタイマーを見て絶望する……

 

タイマーは00:00を示していた……

 

「そんな!?まだ時間はあったはずだ!!」

 

ミネルバの叫びに歯を喰いしばりながらミラがその疑問に答える。

 

「やられたわ。最後に命と呪力の全てをフェイスに捧げていたのよ……だから私の命令に抵抗しないでエルザの剣を受けたんだわ」

 

「それでは……」

 

「ええ……世界から魔法が消えるわ……」

 

テイクオーバーを解き、膝をついて俯くミラの言葉が虚ろに響いた……

 

 

 

 

 

 

 




みなさん来年もよろしくお願いいたします。
それでは良いお年を!

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