妖精達と歩む大空   作:グリーン

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後10回でフェアリーテイル終了らしいですけどすぐに次回作を出すらしいですね。スゴ……今度の主役の名前はアキかな?


Vongola attack!!

 

 

-冥界島

 

「おい!あれを見ろ!!」

 

「あれってまさか……」

 

「ま……間違いないよ!アクノロギアだ!!」

 

カナの断定の声にフェアリーテイルのメンバー達は激しく狼狽する。かつて天狼島にてS級昇格試験を行った際に見た姿と変わらない……強気なカナが震えている。

 

だが妙な事に目視できる距離にいるにも関わらず近づいてこない……

 

「なあ……何でアイツは動かないんだ?」

 

「そういえば……」

 

「どうなってるんだ?」

 

不思議に思うフェアリーテイルのメンバー達だが一心に祈っているウェンディを見てあの場に誰がいるのかを察した。

 

「ツナさん……」

 

ギルドに加入したのは最近だが間違いなくフェアリーテイル最強の男……

 

強さと優しさを兼ね備え、メンバーの誰もが絶対の信頼を寄せる男……

 

それがたった一人であの化け物と戦おうとしている。ツナの勝利を祈ると同時に共に戦うことすら出来ない自分達の力の無さに全員が無力感に包まれていた……

 

 

 

 

 

 

 

 

アクノロギアにとって人間とは何か……一言で言うならばどうでもいい。人間が生きようが死のうが興味がない。だからこそかつてギルダーツはアクノロギアと遭遇したにも関わらず生き残る事が出来た。

 

人間を蟻のように……否、塵芥としか認識していないからこそ人語を理解しているというのに言葉を交わさない。かつて人間だったにも関わらず数多の竜の血を浴び、その肉を喰らい彼は竜の王として君臨した。

 

この世に最強の種族、竜は自分一人……だからアクノロギアは他の竜の存在を許さない。いつか自分と同じように竜になるかもしれない滅竜魔道士(ドラゴンスレイヤー)と人を超えた黒魔道士ゼレフ以外の人間には何の感情も動かさない。ただ自分が存在するだけで消えていく命など気に止めるに値しない。

 

だからこそアクノロギアを知る者からすればこの光景は奇妙なものに見えるだろう……

 

高速で冥界島に向かっていたアクノロギアが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

立ち塞がる人間を静止して見据えている事に(・・・・・・・・・・・・)……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ツナは自分を前にして動きを止めた漆黒のドラゴンを見つめる。クロッカスで見たドラゴンとは比べ物にならないプレッシャーを感じる……

 

-これがアクノロギア……かつて天狼島でフェアリーテイル上位メンバーを歯牙にもかけず、そしてジョットをも倒したドラゴンなのか……-

 

まさに竜の王と言う名に相応しいだけの貫禄を備えている。もしこの場にリボーンが居れば即座に撤退を進言していただろう。

 

かの家庭教師は無茶はさせるし理不尽だが相手と教え子の潜在能力までも見極めて勝機を見出だして発言する。どうあっても勝てない相手に立ち向かうのは無謀と考え逃げるのを良しとする。最強のヒットマンであるがゆえに引き際も心得ているからだ。

 

だが無謀であろうともツナは逃げることは考えていない。自分の後ろには大切な家族がいるのだ。そう思うとツナの額の炎はさらに激しく燃え盛った。

 

「キ……サマ……ハ……ソノ炎ハ……」

 

「!!」

 

アクノロギアが言葉を発した。どうやら自分にジョットの面影を見ているようだ。ならば見せてやるとしよう……ジョットの、ボンゴレの炎を!!

 

「行くぞ!!」

 

ツナの咆哮と共にツナの右拳から炎の奔流が迸る。7つの炎を揃えた副次効果で炎の質、量共に大幅に向上したのはツナにとって嬉しい誤算だった。

 

ただ炎を放っただけにも関わらずその威力は今までとは雲泥の差だった。炎はそのままアクノロギアを呑み込んだが炎に包まれたアクノロギアは翼を大きくはためかせると炎を吹き飛ばした。

 

「ガアアァァァッ!!!」

 

魔竜の雄叫びは周囲の雲を吹き飛ばしてその衝撃波が空気を弾く。思わずツナは耳を押さえて衝撃に耐えながら後退する。

 

アクノロギアはそのまま動きの止まったツナへと突進してきた。その巨体に似合わぬスピードは脅威だが小回りは自分の方が有利とツナは考えていた。

 

紙一重で躱して後ろをとろうとしたツナだったがアクノロギアの巨体が巻き起こす乱気流にその目論みは封じられる。

 

「やりずらいっ……なっ!?」

 

「ガアアァァァッ!!」

 

乱気流を何とか捌いたツナが見たのは既に反転して自分に向かって爪を降り下ろすアクノロギアの姿……咄嗟にツナは炎を雷属性へと変化させてその一撃を受け止めたが……

 

「ぐっ!……重っ!!」

 

雷の硬化の炎のおかげで何とか骨を砕かれる事はなかったが勢いまでは殺せずにツナは地面へ向かって真っ逆さまに墜ちていく。

 

「くっ……はあああっ!!」

 

地表直前に炎を大空へと戻すと逆噴射でブレーキをかけて着地してアクノロギアを睨みつける。

 

-さて……どっちだ?-

 

ツナは最低でも片腕を推進力にしなければ空中戦は上手く行えない為に空では不利と悟った。ナッツのモード妖精(フェアリー)を使えばもっと楽になるがそれでもアクノロギアの巨体が巻き起こす乱気流が厄介すぎる。

 

-もし冥界島(みんなの所)へ向かうなら使わざるを得ない。だが奴が俺に興味を持ってるなら……-

 

その考えを裏付けるようにアクノロギアが急降下してくる。それを見たツナは僅かに微笑むと前方に炎を放ってその場所から退避する。

 

まるで隕石が落ちたような音が響きその衝撃が地表を捲りあげていく……その舞い上がった土砂を隠れ蓑にツナは行動に移る。

 

「みんな、力を貸してくれ……」

 

当たり前だがツナは目覚めたばかりの大空以外の炎をまだ完全に使いこなせない。だから記憶の中のかつての守護者達の炎の使い方を参考にすることにした。

 

「勝負だ!!」

 

ツナは土砂を利用してアクノロギアの背後に回り込んだ。当然振り返るアクノロギアだが空中と比べるとその挙動は緩慢だ。ツナはかつて共に戦った仲間達を思い浮かべながら次々と手を繰り出した。

 

-骸!クローム!-

 

アクノロギアが振り向く前に藍色の霧の炎で自分の分身を作り出して再び土砂よる粉塵に身を隠した。アクノロギアは戸惑っているようだがすぐに匂いでバレるだろう。

 

だがその隙に炎を青い雨の炎へと変えると掌に大きな球体の炎を作り出す。

 

-武!-

 

「くらえ!時雨之化!!」

 

大きな雨の炎がアクノロギアを包み込むとアクノロギアの動きがスローモーションのように緩やかになった。山本武の時雨蒼燕流の総集奥義を真似たものだ。最も山本が使った時ほどの効果はないが……

 

-隼人!-

 

この好機を逃す手はないとばかりにさらに炎を赤い嵐の炎にして追撃を仕掛ける。左腕を突き出して弓を射るように右手を引くと大きな矢のような形の炎が形成される。

 

赤竜巻の矢(トルネード・フレイム・アロー)!!」

 

アクノロギアの腹部をめがけて嵐の炎の矢が回転しながら向かっていく。それは狙い違わず動きの鈍いアクノロギアへと直撃した。直撃した炎はアクノロギアの防御を削ろうと回転を続けるが薄皮一枚を傷つけるに留まった。しかしそれでも分解の力はアクノロギアの防御力を僅かに下げていた。

 

-良平さん!-

 

次に繰り出したのは黄色い晴の炎……身体中の細胞を活性化させてツナの身体能力が大幅に向上する。

 

極限太陽(マキシマム・キャノン)!!」

 

「キシャャアアアッ!!」

 

嵐の炎のによって防御力が下がっている箇所を目掛けて渾身の一撃を撃ち込むと堪らずアクノロギアは奇声をあげた。

 

-雲雀さん!-

 

紫色の雲の炎を指先に集めてそのまま空中をなぞる……すると雲の炎による輪っかが作られた。ツナはそのまま輪投げをするように炎を投げつける。すると炎の輪っかはアクノロギアを覆うほど巨大化するとそのまま収縮してその巨体を締め付けた。

 

「!?」

 

すぐにアクノロギアは引きちぎろうとするがその前に炎の輪っかは増殖してどんどん数を増やしていくと、アクノロギアの全身を拘束して身動きを封じた。雲雀のボンコレ匣、アラウディの手錠をイメージした技だ。

 

-ランボ!!-

 

ツナは両手を前に突き出し、雷の炎を集中させる。その炎はどんどん大きくなってバチバチと音をたてながら放電に似た現象をどんどん大きくしていった。

 

雷の角(コロナ・フールミネ)!!」

 

硬化した放電がまるで槍のようにアクノロギアに迫るがほんの僅かしか突き刺さらない。ダメージは期待できなかった。……が、その攻撃の中でアクノロギアは大きく息を吸い込んでいた。

 

「っ!ナッツ!!」

 

嫌な予感を感じたツナがナッツをマントにしたと同時にアクノロギアが大きく口を開ける。そしてその口内には光が集まっているのが視認できた。

 

「ガアアァァァッ!!」

 

咆哮と共に放たれた膨大な魔力がツナを襲う。マントでガードしたツナだがその魔力の奔流に呑み込まれる。

 

「た……耐えてくれナッツ……」

 

ツナは必死に大空の炎を込めて魔力を調和しようとするが余りにも膨大な魔力に意識が持っていかれそうになる。

 

実際に短い時間だったがツナにとっては永遠に等しい時間をツナとナッツは必死に耐え抜いた。

 

「はあっ……はあっ……大丈夫かナッツ?」

 

「ゼエ……ゼエッ……ガウ!」

 

息を切らしながらも返事を返すナッツに安心するツナは振り返って地平の彼方まで大地に残された破壊の傷跡を見ると思わずゴクリと喉を鳴らす。

 

ハッと前を見るとアクノロギアは巨大な右腕を叩きつけようと振り上げていた。ツナは今度は前進する事でその一撃を躱した。

 

「ナッツ!形態変化(カンビオ・フォルマ)!モードアタッコ!!」

 

ナッツを1世のガントレット(ミテーナ・ディ・ボンゴレプリーモ)に変化させるとそのまま高速でアクノロギアに接近する。そしてアクノロギアの腕を掻い潜り懐に飛び込むとアクノロギアの鼻先に飛び上がった。

 

「!!」

 

「バーニングアクセル!!」

 

至近距離から放たれた一撃はアクノロギアの顔面に直撃して大爆発を起こした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マルド・ギールは夢を見ているのか?」

 

マルド・ギールは呆然とツナとアクノロギアの戦いを眺めていた。虫ケラに等しいはずの人間が最強最悪の魔竜、アクノロギアを相手に一歩も引かずに戦っている。

 

その姿は隙だらけだったが対峙しているはずのナツは何故か動かない。それもそのはず、ナツは先程から体内で凄まじい動悸が起こり、膝を地につけて胸を押さえていた。

 

マルド・ギールは最初それを怪訝に見ていたが直後にツナとアクノロギアの戦いが激化したためにそちらに魅入っていた。

 

ナツと時を同じくしてラクサス以外の滅竜魔道士達も凄まじい動悸に襲われていた。

 

「な……なんだ……これ……」

 

ナツは自分の体の動悸がさらに激しくなっていくのを感じて声を漏らす……早く止めないと目の前の敵にやられてしまうだろう。だがその時、ナツの脳裏に懐かしい声が響いた。

 

『ナツよ……』

 

「この声……イグ……ニール?本当にイグニールなのか!?どこにいるんだ!?」

 

懐かしき父の声に思わず辺りを見渡すナツ。死物狂いで探して見つからなかった父が近くにいる。だが未だに激しい動悸で体が動かない。

 

『時は来た!お前ならば必ずENDに勝てると信じている!』

 

「どこだよイグニール!……父ちゃん!!」

 

声はすれども姿は見えず……だが必死に探すナツの体が光りだした。

 

「うわあぁぁっ!!」

 

自分の体の異変に驚くナツだが光はどんどん強くなっていく……マルド・ギールもこの異変に動くことも出来ない。

 

「何が起ころうとしているのかこのマルド・ギールにも分からん」

 

『アクノロギアは俺が何とかしよう。あの青年と共に戦えばこの場で奴を討てるやもしれん』

 

「父ちゃん……まさか……」

 

光が柱となってナツの上に昇っていくその先を見詰めるナツの視線の先にずっと探していた懐かしいシルエットが現れた。ナツは呆然とその姿を見ていた……

 

『今まですまなかったな……俺はずっとお前の中にいた』

 

赤き鱗を持った竜がその大きな翼を広げて空に舞い上がる……炎竜王イグニールがその勇姿を現した。

 

「今は全てを語る時ではない……まずはアクノロギアを排除する。……生きよ!ナツ!!」

 

炎竜王は大空と魔竜の戦場へ向かって空を駆ける。

 

「父ちゃん……」

 

竜の子は嬉し涙を流しながらそれを見送った……

 

 

 

 

 

 

 




本誌でゼレフ倒したけど思ってたよりも弱かった……アクノロギアはどうでしょうかね?

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