妖精達と歩む大空   作:グリーン

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本当に遅くなって申し訳ありません。12月まで仕事が忙しく、寝る前にちょこちょこ書いてる状態です。でも続けるつもりですので応援よろしくお願いします。


ゼレフとの邂逅

 

 

-冥界島

 

ゼレフが放った闇の波動……それはゼレフが命を尊く思えば思うほど制御が効かず、周囲の命を奪ってしまうアンクセラムの呪いだ。

 

その危険さを瞬時に感じ取ったツナは咄嗟にハイパーモードになって両腕を顔の前でクロスしてガードした。だがそれでも脱力感があり、改めて目の前の男を見る……

 

目の前の男は笑顔で拍手をしていた。

 

「凄いね。僕のアンクセラムの呪いから逃れるなんて。それにその炎……やっぱり君はジョットの後継者なんだね」

 

「何故ジョットの事を……まさかお前は!」

 

「初めまして。僕はゼレフ……ゼレフ・ドラグニルだ」

 

「ドラグニル……?」

 

「弟がいつもお世話になってるみたいだね。それで君の名前は?」

 

「ツナヨシ・サワダだ……弟とはナツの事なのか?」

 

「そうだよ。僕の愛すべき弟……僕を殺してくれたかもしれなかった存在だ」

 

嘘を言っているようには見えない……そしてやはりウォーロッドから聞いた通りゼレフは死にたがっているようだ。だがツナはその言葉を過去形で言った事に疑問を感じた。

 

「今でも死にたがっているのか?」

 

「……いや。もうそれは諦めた。僕は全ての人間を滅ぼす事に決めたんだ」

 

「なっ!?」

 

「竜王祭は近い……竜と魔と人との戦いの幕があがるよ。竜の王アクノロギアの前には人の力は無力……ならば僕が竜の王と人間を滅ぼす」

 

「何故そう極端から極端へ走るんだ?人間と協力してアクノロギアを倒そうとは思わないのか?」

 

「僕のアンクセラムの呪いは人を尊く思えば思うほど強くなるんだ。僕が人間の為にアクノロギアと戦おうとすればこの死をもたらす呪いはさらに強さを増すだろうね」

 

ツナは絶句する。あまりにも過酷な運命をゼレフは背負っていたのだ。

 

「だからタルタロスに来たのか?人間を滅ぼすのを手伝わせる気か?」

 

ゼレフは首を横に振る。

 

「彼らはもう用済みさ。かつて僕を殺そうと造り出したモノだけど役に立たないだろうし。ENDは別だけど、彼らがENDを復活させられるとは思えないしね」

 

「ナツが言っていた最強のゼレフ書の悪魔の事か……」

 

「そうか……どうやらまだのようだね……」

 

ゼレフはツナに聞こえない程の小さい声で呟いた。気にはなったがそれを問う前にゼレフが口を開いた。

 

「僕の目的はルーメン・イストワール……いや永久魔法フェアリーハートを手に入れる事だ」

 

「その名前は確か……」

 

ツナは以前ラクサスにこっそりと聞いてルーメン・イストワールという名前だけは知っていた。フェアリーテイルの最高機密でマスター以外にはその詳細を知る者がいない。

 

「その力を手に入れればアクノロギアも倒せる。僕が竜王祭を制するのに必要だからね」

 

「……させない。俺がみんなを守る!」

 

ツナの額の炎が激しく燃え盛るのをゼレフは愉快そうな笑顔で見つめる……

 

「僕を殺すのはジョットですら無理だった……君に出来るのかな?」

 

「……ジョットはお前を殺したくなかったんじゃないのか。友人だったんだろう?」

 

「だからこそ殺してくれると思っていたんだけどね……さて、ここで戦うとタルタロスの連中に見つかってしまうからね。場所を移すよ」

 

「!!」

 

ゼレフが指を鳴らした瞬間にツナとゼレフの姿はこの場から消え去った……

 

 

 

 

 

 

ツナが去った後のヘルズ・コアではミラジェーンとセイラ、リサーナとラミーがそれぞれ戦いを続けていた。

 

リサーナはラミーに対して優勢に戦っていたがミラはセイラとほぼ互角の戦いをしていた。

 

「先程の者といいあなたといい命令(マクロ)が効かないのは厄介ですね」

 

「私達を甘く見ないで」

 

「確かにあなたやあの男は強いですわ。しかしあなたの弟はそうでもないようですね。マクロも効きましたし、命令通りギルドを破壊してくれましたわ」

 

ミラは弟を侮辱するようなセイラの言葉に怒りを感じるが次の言葉を聞いて顔色を変える。

 

「一度私のマクロに掛かった者は私の自由になりますわ。遠隔操作で自殺させる事もできますのよ」

 

「やめて!!」

 

「それはあなた次第……っ!!エゼル様!?」

 

エルフマンの事で動揺するミラに追い打ちをかけようとするセイラだが突如ボロボロのエゼルがこの部屋に多数あるカプセルの中の一つに現れた。

 

「これはいったい……?」

 

「あのクソガキとクソネコがぁっ!!絶対にぶっ殺してやる!!セイラ!さっさと治しやがれ!!」

 

「今手が放せませんの。もうしばらくお待ち下さいませ」

 

「早くしろぉっ!!早くあのクソガキとクソネコを殺してえんだよ!!」

 

「いったい何なの……?」

 

「ファファファ……ここはタルタロスの復活地点なのよ!私達ゼレフ書の悪魔は敗れてもここでこうして復活できる。私達は不死のギルドなのよ!!」

 

ミラは絶句する。その話が本当ならば九鬼門を倒しても時間があれば復活出来るということだ。

 

「ラミー様、喋り過ぎですわ。私が戦っている間にエゼル様を」

 

「ハイハ~イ!では早速……アレ?」

 

「どうかしましたか?」

 

「フランマルス様も倒されたみたいなんだけど……ヘルズ・コアに戻ってない!?」

 

「なっ!?どういう事ですの!?それではリリスの時と同じではないですか!?……まさかさっきの男が!」

 

機械を操作しようとしていたいつもふざけているラミーの珍しく焦った声にセイラも取り乱して問い詰めている。その隙をミラとリサーナは見逃さなかった。

 

「リサーナ!」

 

「うん!」

 

「きゃあああっ!!」

 

「ゴヒュ~!!」

 

片やサタンソウル、片やアニマルソウルで変身していたストラウス姉妹はそれぞれの敵を殴り飛ばした。

 

「くっ!あの男はやはり危険ですね……我らを完全に滅する存在ということですか……」

 

「さすがはイケメン……」

 

「そ……それ関係あるの?」

 

ラミーの言葉に呆れたように返すリサーナ。その光景に苦笑しながらミラはセイラに向き直ると不敵な笑みで宣言する。

 

「あなた達が復活するというのならまずはここを壊した方が良さそうね」

 

「あなたにそれが出来ますか?」

 

「簡単よ?」

 

そう言うとミラはサタンソウルを解除する。それを訝しげに見つめるセイラだが……

 

「え?」

 

次の瞬間、ミラの横にあったカプセルが爆発するのに目を見開いて驚愕する。

 

さらに次々と部屋にある円筒形のカプセルが爆発していく。エゼルが入っていたカプセルも当然破壊され、エゼルは怒声をあげながら消滅していった……

 

「な……何故……?」

 

「テイクオーバーよ。さっき捕まってた時にこの触手を全て支配下に置いていたの」

 

カプセルの中にはミラを改造しようとしていた触手が入っている。それを爆発させたようだ。

 

「そ……そんな……」

 

「アホな……」

 

「さっすがミラ姉!すごい!!」

 

「ここからが本当の勝負よ!!」

 

再びサタンソウルで変身したミラだが、目の前のセイラは俯きながら体を震わせていた。

 

「……のれ……くも……」

 

「え?」

 

「おのれぇぇっ!!よくもぉぉっ!!」

 

顔をあげたセイラは怒りにその美貌を歪ませていた。そして黒いモヤがセイラを覆ったと思うと肌が変色し掌に目がある露出度の高いエーテリアスフォームに変身していた。

 

突然膨れ上がった呪力に気圧されないようにミラも魔力を練り上げる。

 

「殺す!!」

 

「肉弾戦がお望み?受けて立つわ!!」

 

二人は正面からぶつかり合うが……

 

「きゃあああっ!!」

 

「ミラ姉!!」

 

吹き飛ばされたのはミラの方だった。しかもたった一撃でサタンソウルが解除される程のダメージを負ってしまう。

 

何とか立ち上がったミラだがセイラは今までの上品さをかなぐり捨てたような言葉を放ちながら猛攻を仕掛けてきた。致命打を何とか避けつつセイラをテイクオーバーしようとするが……

 

「無駄だ!私にそんなものは効かん!!我は我に命令する!目の前の敵を八つ裂きにせよ!!」

 

「あぁああっ!!」

 

「ミラ姉ぇっ!!……あうっ!」

 

「ファファファ!セイラ様が本気になったからにはアイツも終わりだよ。じっくりと姉が殺されるのを見なよ……所でさっきのイケメン紹介して」

 

蹂躙される姉を助けようとしたリサーナをラミーが押さえつける。エーテリアスフォームになったセイラは自分自身にマクロをかけ、さらに魔眼を解放したことによって圧倒的な力を発揮していた。

 

圧倒的な暴力に曝されたミラは子供の頃の記憶を思い出す……教会に巣くう悪魔を退治した代償として右腕が変質して村人達から悪意を向けられるようになってしまう。それが自分だけなら耐えられたがエルフマンとリサーナにも向けられるのは耐えられなかった。

 

村を出てフェアリーテイルに拾われた後も二人はすぐに馴染めたが自分はそうではなかった。

 

ミラは自分の力が嫌いだった。悪魔の力を宿すサタンソウル……それは自分だけでなく周りの人間にも悪意をもたらすと考えたからだ。

 

二人が笑顔でいるのを嬉しく思い、安心して一人でフェアリーテイルを去ろうと思ったが二人は自分と同じ魔法を覚えてこれでお揃いだと言ってくれた。

 

フェアリーテイルの仲間達は誰一人としてサタンソウルに悪意を向ける事なく逆に凄いと言ってくれた。

 

-私の大切な家族……そしてツナ……-

 

 

 

 

 

 

本当はツナに初めてサタンソウルを見せる時は躊躇した……ツナなら大丈夫と信じていたがもしも悪意を向けられたらと思うと怖かった。

 

『怖くないの?ツナ……』

 

『何で?』

 

『だってこれ……悪魔の力だし……姿も悪魔みたいだし……』

 

『全然。世の中にはもっと悪魔みたいに怖い奴らもいるし……』

 

その時のツナは某家庭教師や某風紀委員長、某暗殺部隊のボス、某女教官の姿を思い浮かべて体を震わせていた。

 

『俺みたいなマフィアの力と違ってその力は家族を……大切な者を守る為の力だろう?そんなミラの力を怖いなんて思えないよ』

 

『ありがとうツナ……でもツナの力だって大切な人を守る力だと思うわよ?』

 

『そうありたいと願ってるよ』

 

 

 

 

 

 

 

-私の力は大切な家族を守る為の力!みんなを守る為なら私は……悪魔で構わない!!-

 

大きなダメージをを受けてフラフラになりながらもミラはセイラの足にしがみついた。無駄な足掻きと嘲笑うセイラだが急に感じた脱力感に慌ててミラを蹴り飛ばした。

 

-今の感じは!?テイクオーバーされそうになっていた!?そんなバカな!!-

 

「最早これ以上付き合ってられん!すぐに殺してやる!!魔眼解放!!」

 

ミラの肉体を消し飛ばそうと魔眼の力を最大に高めて一撃を放とうとするセイラを見てミラは笑みを浮かべる……

 

「確かに私にはあなたをテイクオーバーするのは無理だけど思った通り一部なら可能だった……命令する権利をあなたから頂いたわ」

 

「……!!このぉぉっ!!」

 

「……エルフマン。家族の元へ来て」

 

セイラから奪ったたった一つのマクロがその命令を遵守させる……

 

「うおぉぉぉぉっ!!!姉ちゃんは俺が守る!!」

 

「ガハァァァァッ!!」

 

命令に導かれてやって来たエルフマンのビーストソウルの一撃はセイラを倒すのに充分過ぎる一撃だった。天井を破って現れたエルフマンにセイラは対応できないまま沈むことになった。

 

「エルフ兄ちゃん!!」

 

「オワタ……」

 

リサーナの歓喜の声とラミーの絶望の声を聞きながら頼りになる弟を見つめてミラは笑顔を見せたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「X BURNER!!」

 

ツナの掌から放たれた巨大な炎がゼレフを飲み込んだ。掛け値なしの全力で放った炎をまともにくらって吹き飛ばされながら崩れ落ちるゼレフ……

 

「はあっ!はあっ!!」

 

だがツナの表情は優れない。何故なら……

 

「もの凄い破壊力だね」

 

「くっ!」

 

立ち上がったゼレフの体の傷が瞬く間に癒えていくのだった。こんな光景が既に何度も繰り返されていた。

 

「どうやら君でも僕を殺せないようだね、それに大分疲れているようだけど?」

 

「これが……不死の力……」

 

「でも想像以上の力だよ……はっきり言ってジョットを超える者がいるとは思わなかったよ」

 

ゼレフの造り出した閉鎖空間に連れて来られたツナはゼレフと戦い始めた。序盤はツナが圧倒していたかと思いきやゼレフはどんなに攻撃を与えてもすぐに復活してしまう……

 

ただでさえ今日は魔障粒子に侵された人々の治療で炎をかなり消費している上にそのまま突入したタルタロスでの戦いと何度も復活するゼレフとの戦いでツナの炎は底を尽きかけていた。

 

-どうする?死ぬ気の到達点を使うか?いや、今使っても僅かな時間しか持たない上に炎が完全に底を尽いてしまう……-

 

焦るツナを見ながらゼレフは笑みを深めると朗らかにツナに語りかける。

 

「ここまでにしよう。今日は君の力を確かめたかっただけだからね。その代わり少し話をしようか」

 

「何の話だ?」

 

タルタロスと戦っているみんなの事は気になるが正直今の自分ではゼレフに勝つのは不可能なので少しでも情報を得る為に話を聞く事にした。

 

「君が知っているかは分からないがこのイシュガル大陸の西のアラキタシア大陸にはアルバレス帝国という国がある。僕はそこの皇帝をやっているんだ」

 

「は……?」

 

「だから僕は西の大陸アラキタシアのアルバレス帝国の皇帝なんだ」

 

「……?だがお前は死をもたらす呪いにかかっているんだろう?どうやって国を率いているんだ?」

 

「大丈夫さ。人を駒……ユニットと思えば呪いは発動しないからね。その国は700以上のギルドを纏めて作ったんだ。このイシュガルのギルドの総数は100ちょっとだから凄い数だろう?」

 

「それで?何が言いたいんだ?」

 

「僕はフェアリーハートを手に入れる為にその国の全軍をあげてイシュガルに侵攻するよ」

 

「何っ!?」

 

あっさりと目的を話すゼレフに驚愕するツナ……

 

「まあ今すぐじゃないよ。まだしばらくは帰らないつもりだしね。だけど君達には勝ち目はない……最強の12人、スプリガン12ははっきり言って君以外では相手にもならないからね」

 

「スプリガン12……」

 

ゼレフにナツはおろかエルザやラクサスでも敵わないと言わしめるスプリガン12……未だその全貌すら分からない強敵の出現にツナの心に衝撃が走る……

 

「確かに君は強い……はっきり言って一対一ではトゥエルブでも分が悪い。だがトゥエルブの中でも別格とされる3人を纏めてぶつければ勝てる」

 

「……そうまでしてお前が求めるフェアリーハートとは何なんだ!?」

 

「永久魔法フェアリーハート……その名の通り無限に魔法を使えるフェアリーテイルの最終兵器。魔法の理を根底から覆すもの。それは……」

 

ゼレフの笑顔が悲しげに陰る……そして顔をあげるとツナに向かって衝撃の一言を放った。

 

 

 

 

 

 

 

「僕がかつて愛した女性……フェアリーテイル初代マスター、メイビス・ヴァーミリオンの心臓だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ナツ達フェアリーテイルメンバーより先にゼレフの目的を知ったツナでした。

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