妖精達と歩む大空   作:グリーン

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ヒロイン候補二人目のお話。


Fairy Girls -Wendy-

-フェアリーテイル

 

 

ウェンディ・マーベル12歳は不機嫌だった。現在気になっている男性-沢田綱吉とルーシィが昨日デートしていたとカナが言いふらしていたからだ。耳を澄ませてみると、二人は付き合っているのではないようだが、昨日一緒にショッピングと食事をしたらしい。カナは近くの席で酔っぱらいながらルーシィに胸は揉ませたのか、その胸で迫ればイチコロだと絡んでいる。ルーシィの顔は真っ赤になっている。

 

-そうですか、胸ですか。その胸で誘惑したんですか?ルーシィさん…-

 

暗黒面に堕ちそうになっているウェンディに、

 

「顔が怖いわよ、ウェンディ。」

 

相棒のシャルルから声がかかる。

 

「えっ、そんなことないよ~シャルル~!」

 

「バレバレよ。」

 

シャルルは溜息を吐きながら、

 

「そんなに羨ましいならあんたからショッピングでも食事でも誘えばいいじゃない。」

 

「む、無理だよ~!私胸だってないし…」

 

「ばかね…あのね、あんたはツナが胸ばっかり気にするような男だと思ってるわけ?」

 

「そうは思わないけど私なんて妹くらいにしか思われないんじゃないかな~?」

 

ギルドの外で男連中と談笑しているツナを見る。女性からだけでなく暴れるナツとグレイを簡単に沈めることから、男性からも人気があり、今やギルドの中心人物である。先程までハッピーがシャルルをもてなしていたのもツナの教育らしい。ナツとグレイと一緒に逃げるように仕事に行ってしまったが…

 

「今のままなら確実にそうなるわね。もっとアピールしなさい!…というわけでこの依頼を一緒に行ってもらいなさい。」

 

「えっ、何これ!こんなの行ってもらえるわけないじゃない!」

 

「明日の朝7時にここに来てってツナに頼みなさい。私は行かないから…じゃあ今日は帰るから。朝7時よ。」

 

「シャルル~」

 

ウェンディはちらっとツナを見て、明日誘ってみようと決心した。

 

 

 

-全く世話が焼けるわね-

 

帰り道シャルルは自分の予知通りになるように願いながら歩いていた。

 

 

 

翌朝、ツナは朝一番にフェアリーテイルに顔を出した。元の世界の習慣から朝早くから修行している為、ツナが起きるのは早い。

 

「おはようございます。ツナさん!」

 

ツナはびっくりしつつも笑顔で挨拶を返す。

 

「おはよう、ウェンディ。今日は随分と早いんだね。」

 

「その…今日はツナさんにお願いがありまして…この依頼に一緒に行って欲しいんです…」

 

「なになに…地元の山の中腹に咲く花を摘んで来て欲しい。簡単そうだけど報酬は…何これ?水晶の髪飾り?」

 

「はい!どうしても欲しくて…でも駄目ですよね…あ、でも私少しだったらお礼を…」

 

「いいよ、一緒に行こうか。後、お礼なんていいよ。仲間なんだから。でもちょっと遠くないか?今日はシャルルはいないの?」

 

「あ、今日はちょっと用事があるみたいで…」

 

「じゃあ時間あるしゆっくり行こうか?」

 

「はい!」

 

二人は駅に向かって歩き出した。

 

 

 

「うわ、すごい人混みだね。」

 

「そうですね~。」

 

「はぐれないようにね。」

 

そう言ってツナは右手を差し出す。その意味に気付いたウェンディが、顔を赤くするもしっかりと手を繋ぐ。二人は列車に乗るまで手を繋いでいた。

 

列車に乗った二人は雑談する。

 

「そういえばウェンディは乗り物平気なの?」

 

「ええ。私は平気です。もしツナさんが苦手ならトロイアをかけてあげますから。」

 

「俺も平気だよ。そっか、滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)はみんなナツみたくなるのかと思ってたよ。」

 

「もう…失礼ですよツナさん!そんなわけないじゃないですか。」

 

「そうだよね。ゴメンゴメン。ハハハ…」

 

「ふふっ、もう…」

 

ある意味重要な話をしながら列車は進んで行く…

 

 

 

何本も列車を乗り継ぎ目的地に到着した。本当に寂れた村だ。さっそく依頼人の家を探す。

 

「ここで住所あってるよね?」

 

「はい!間違いありません。」

 

「すみません依頼を受けてフェアリーテイルから来た者ですけど。」

 

しばらくすると女性が出てきた。

 

「何かの間違いでは?私は依頼などしてませんけど…?」

 

「しかし確かにこの住所から依頼が発行されているのですが…」

 

「本当ですね。いったい誰が…?」

 

「あ~魔導士さんが来た~。」

 

5歳くらいの女の子が出てきた。例の髪飾りをしている。

 

「サクラ!まさかあなたが…」

 

詳しく事情を聞くとその花は薬の材料となる為、以前はよく採取されていたが、魔物が住み着いたことで誰も取りに行けなくなったらしい。ギルドに依頼をするお金も村にはないため困っていたそうだ。そんな時に病気の祖母のために花を手にいれたいと思い、依頼をしたそうだ。ただ花を摘んでくるだけならとその報酬で受理されたようだ。…もっとも魔物のことが伝わっていたらさすがに受理されなかっただろう。こんな誰もしないような依頼がまわって来るあたりが、今のフェアリーテイルの現状を表している。

 

「そういうことだったんですね…」

 

「申し訳ありません!しかも魔物のことを伝えずに…この依頼は取り消しますので。」

 

「いえ!それには及びません!私達はフェアリーテイルの名の元に依頼を受けました!この名前にかけて依頼を完遂します。」

 

ウェンディが元気よく言うが、

 

「ですが…魔物討伐の料金など払えませんよ。」

 

「大丈夫です。花を摘んで来るだけですから。邪魔者がいたらついでに倒しますけど。サクラちゃん!もう少し待っててね。お花摘んでくるから。」

 

しゃがんでサクラに目線を合わせて言うウェンディと、喜んで抱きつくサクラを見て、母親が困惑したようにツナを見る。ツナは笑顔で大丈夫ですと伝える。

 

「じゃあ行こうか、ウェンディ。」

 

「はい!」

 

そして、山へ向かって歩き出した。

 

 

 

依頼は拍子抜けするほど簡単に終わった。花畑までは一本道で魔物(猪と豚を混ぜたようたようなもの)が5匹程出てきたが、ツナが瞬殺した。気合いをいれたウェンディが咆哮を放つため、息を吸い込んでる間に終わってしまい、恥ずかしそうにゆっくり息を吐くウェンディを見ながら、ツナはとても申し訳ない気持ちになった…

 

花を摘んで村に戻ると村人達が大喜びで迎えてくれた。せめて少しでもお礼をと言う村人達に、それを受け取ってはギルドの理念に反すると固辞した。ウェンディは結局サクラから髪飾りを受け取らなかった。村人達からあの髪飾りはサクラが祖母からもらった大事な物だと聞いたからだ。母親もそこまでしてもらう訳には…と譲らなかったが、娘が大事にしていたのを知っていたので結局遅めの昼食をご馳走することでお礼とした。二人は村人達に見送られながら村を後にした。

 

 

 

 

「はうぅ~…」

 

「どうしたのさ。やっぱりあの髪飾りが欲しかったの?」

 

帰りの列車の中でみるからに落ち込んでいるウェンディにツナは声をかける。

 

「違います!そうじゃなくて…結局ツナさんに無駄足踏ませちゃったし、すごい迷惑かけたなぁって思うと…」

 

「迷惑なんて思ってないよ。むしろあそこで何もせず帰っちゃう方が俺は嫌だな。だから元気出して。」

 

ツナが頭を撫でるとウェンディも少し元気が出た。

 

「…ツナさんに頭を撫でられると、すごく気持ちいいですぅ。」

 

「昔家に小さい居候が何人もいてね…よく頭を撫でてたからかな。」

 

「私もツナさんから見たら小さい子供ですか…?」

 

ウェンディは少し悲しくなりながら問うが、

 

「いや…俺はアイツらをただ危険から遠ざけて、守ろうとしていた。でもウェンディは互いに助け合う対等な関係だと思っているよ。」

 

対等と言う言葉にウェンディは嬉しくなる。

 

「はい!ツナさんが怪我をしたりしたら絶対私が治しますから。」

 

ウェンディは顔を赤くしながら力強くそういうのだった。

 

 

 

駅に着いたツナは少し席を外し、すぐ戻ってきた。

 

「ウェンディこれ依頼を達成した報酬だよ。」

 

そう言って、雪の結晶をモチーフにした髪留めを二つ手渡す。

 

「ええっ!いいんですか?ただでさえ今日…」

 

「いいんだよ。ウェンディに似合いそうだったし、けどあの髪飾りに比べたら安物だけどね…」

 

「そんなことありません!大事にします!…どうでしょうか?」

 

「とてもよく似合ってるよ。我ながらいい選択だったな。さぁ帰ろうか。あまり遅くなると俺がシャルルに怒られちゃうからね。」

 

「はい!あ…あの…///」

 

ウェンディは顔を赤くして俯きながら手を差し出す。ツナはニッコリ笑って手を繋ぎ、女子寮までの道を歩き出した。

 

 

 

翌日フェアリーテイルにて、ルーシィがウェンディに声をかける。

 

「ウェンディ、その髪留め新しく買ったの?よく似合ってるよ。」

 

「ありがとうございます。ツナさんが買ってくれたんですよ。」

 

笑顔で言うウェンディにルーシィは、

 

「え…あーツナがね!どうりでセンスいいと思った。うん、よく似合ってるよ、ホント。」

 

少し慌てながら言うルーシィにウェンディは真面目な顔で告げる。

 

「ルーシィさん…私負けませんから。」

 

ルーシィは、一瞬目を見開き、ニヤリと笑って、

 

「受けてたつわ。」

 

と答えてその後、二人は一緒に笑いだした。カナとリサーナとジュビアはそれを見ながら会話していた。

 

「いやぁ、盛り上がって来たわね~」

 

「カナ~ちゃんと見守ってあげようよ。」

 

「ジュビア的には恋敵が減るのはいいことですので、二人とも応援します。」

 

「よっし!じゃあ今日はツナのどこがいいかで盛り上がりますか!ルーシィ!ウェンディ!」

 

「ちょっとカナ///もう~」

 

「恥ずかしいですぅ///」

 

 

 

 

 

二人がカナの方へ行くのを見ていた一人の女性が呟く。

 

「あらあら…私もそろそろ動かないとね。」

 

 

 




あんまり甘くはなかったと思います。
雪の結晶の髪留めはお兄様が妹に買ってあげたものをイメージ。
次回は三人目のヒロイン候補。あの人のことです。

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