妖精達と歩む大空   作:グリーン

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何とか10月中に書けました。


小さき者達の戦い

 

 

-冥界島

 

「……という訳でルーシィはナツと一緒に行動してくれ」

 

「分かったわ……でも一人で大丈夫なの?」

 

ツナは先程から感じていた気配の元へと一人で行く為にルーシィの事をナツへと頼んでいた。ナツにしては珍しくツナについて行くとは言わずにその頼みを快諾していた。

 

「ああ、タルタロスの九鬼門はあと8人もいるしギルドマスターは別にいるかもしれないからね。ミラが一人相手にしてるけどそれでも俺達が固まってると後手に回りそうだ」

 

ツナにとってはゼレフ書の悪魔は大空の炎の力も相まって有利に戦える相手だ。だが他のメンバーには少し厳しい戦いになるだろう。

 

何とか戦えそうなのはマスターマカロフと大魔闘演武出場メンバーくらいだろう。それでもかなり苦戦することが予想される相手だ。

 

「後はマスターハデスの魂の伝言を何とかマスターに伝えて欲しい」

 

「分かったわ……でもフェイスが発動するまで多分後10分くらいしかないわ。ウェンディは大丈夫かしら……」

 

「大丈夫!シャルルもついてるから!シャルルはすっごく頭がいいんだよ!!」

 

「それにナッツもついてる。信じよう!」

 

ウェンディの心配をするルーシィにハッピーとツナが元気付けるように声をかけるとルーシィも多少不安は解消したらしく同意するように笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

一方そのウェンディはシャルルの翼の力を借りてフェイスの場所のすぐ近くまで来ていた。タルタロスの指令室で得た情報ではフェイスの発動まで残り10分ほどしかない。シャルルもそれを分かっている為、限界ギリギリのスピードで空を飛んでいた。ナッツも平行するように着いて来ている。

 

「ドクゼリ渓谷の大空洞……あそこだ!」

 

「それにしてもこの子も速いわね」

 

「ガウッ!!」

 

そのまま空洞の一番下層までウェンディ達は一気に突入した。しかしそこでシャルルの魔力が切れてしまった。限界まで頑張ってくれたパートナーに礼を言うとウェンディはシャルルを抱えて見つけた横穴へと浸入して行く。ナッツもシャルルを気遣うように周囲を警戒していた。

 

「すごく空気がおいしいね」

 

「高原地帯だからでしょうね」

 

「グルルルル……」

 

「どうしたの?ナッツちゃん?」

 

ナッツは後ろに向かって唸るように吠えていた。不思議に思ったウェンディ達が振り返ると空気を切り裂いて斬撃が迫っていた。

 

「なっ!?」

 

空気を操るウェンディだからこそその斬撃の恐ろしさを一瞬で理解したが既に避けるのは不可能だった。咄嗟にシャルルを庇うウェンディだがここには頼れる存在がいた。

 

「グルル……ガオオオオッ!!」

 

ナッツが吠えるとその斬撃は空気に溶けるように霧散した。大空の炎である調和の力を持った咆哮は斬撃を空気と調和して無効化することに成功していた。

 

「ナッツちゃん凄い!ありがとう!!」

 

「さすがはツナのパートナーね。それよりウェンディ気を付けて!敵よ!!」

 

「ちっ!邪魔しやがって……」

 

ウェンディが声のした方を見ると藍色の肌で4本の腕にタコのような複数の足を持った悪魔が天井に貼り付いていた。一撃で仕留められなかったからか顔を怒りで歪めていた。

 

「あなたは!?」

 

「ガキと猫2匹か……腹に溜まらねえな。ちっ!キョウカの奴俺にこんな仕事を押し付けやがって!俺はタルタロス九鬼門、童子切のエゼルだ!」

 

「九鬼門!?シャルル!ナッツちゃんも下がってて!」

 

「なんだぁ?やる気か?」

 

「ウェンディ!逃げた方がいいわ!もう時間もない!」

 

「逃げられないよ!やるしかない!」

 

シャルルとナッツを下がらせたウェンディは相手の強さから逃げられないと判断し、自分の力を最大まで高めて速攻で敵を倒す決意をする。

 

「全属性耐性上昇神の王冠(デウスコロナ)!!全身体能力上昇神の騎士(デウスエクエス)!!」

 

「おっ?付加術士(エンチャンター)か?」

 

攻撃力倍加(イルアームズ)防御力倍加(イルアーマー)速度倍加(イルバーニア)付加(エンチャント)!!」

 

可能な限りの強化魔法を重ね掛けして能力を無理矢理引き上げたウェンディは大きく息を吸い込んだ。

 

「天竜の……咆哮!!」

 

ウェンディの口から放たれた咆哮は巨大な竜巻となってエゼルを飲み込んだ。勝利を確信するウェンディだったが……

 

「ハハッ!!無駄無駄ぁ!!俺に切り裂けねえ物はねぇんだよ!!」

 

エゼルが4本の太い腕を振るうとそこから先程と同じ真空の刃が放たれる。その刃はウェンディの咆哮をいとも簡単に切り裂いた。

 

「なっ!?」

 

「オラァ!いくぜ!天下五剣、鬼丸!!」

 

4本の腕をクロスさせてから振り抜いた4本の刃が迫るが上昇した身体能力でウェンディは何とか躱す。だがエゼルは執拗にウェンディを追い込んでいく。ただ腕を振るうだけで必殺の真空の刃を発生させる……それがエゼルの呪法である。

 

「くっ!天竜の鉤爪!!」

 

「効かねえ!!」

 

「きゃあああっ!!」

 

ウェンディはツインテールの片方をスッパリと切られながらも風を纏った蹴りをエゼルの顔面に撃ち込むが全く効果が無い。さらにエゼルはタコのような脚でウェンディを壁に叩きつけた。

 

「数珠丸!!」

 

「ウェンディ!!」

 

2本の腕からバツの字に放たれた真空の刃が倒れたウェンディに向い、シャルルの悲痛な叫びが響く……

 

「ガオオオオッ!!」

 

「んなぁ!?」

 

だがその刃は再び飛び込んだナッツの咆哮によってかき消された。さすがにエゼルも目を見開き、驚愕して動きを止めてしまった。さらにナッツは傷ついたウェンディの姿に怒り、エゼルを睨み付けて再び雄叫びをあげる。

 

「ナッツ……ちゃん……」

 

「グルルルル……ガアオオオオッ!!」

 

「ヤベエッ!?」

 

咆哮と共に放たれたオレンジの大空の炎を直感的にマズイと感じたエゼルは全力で回避しようとするが間に合わず脚の一本がオレンジの光に晒された。

 

「なんじゃあ!?こりゃあ!!」

 

自分の脚が石化しているのを見てエゼルは叫ぶ。だがナッツはエゼルにさらに猛攻を仕掛ける。天空ライオン(レオネ・ディ・チェーリ)Ver妖精(フェアリー)に進化したナッツは単独での戦闘力も以前よりはるかに上昇していた。

 

炎の翼で縦横無尽に飛び回り、爪に宿した大空の炎でエゼルを攻撃する。ウェンディ達から少しでも引き離そうとしているのだろう。

 

「このクソネコがぁっ!!調子にのるんじゃねぇ!!」

 

小さなライオン一匹に押されるエゼルは怒りのままに攻撃を繰り出すが凄まじいスピードを持ったナッツの小さな体には攻撃が当たらない。

 

「ウェンディ!大丈夫!?」

 

「うん……何とか……私も戦わないと」

 

「待ちなさい!先にフェイスを何とかしないと今戦ってるみんなも危ないわ!」

 

「でも……」

 

「ガウッ!!」

 

ナッツに任せて先に行くべきだと言うシャルルに対してウェンディは迷うがナッツがこちらを見る瞳は先へ行けと語っていた。

 

「ゴメン!ナッツちゃん!!」

 

促されたウェンディはシャルルを抱えてフェイスへと向かおうとするがエゼルはそれを見逃すつもりはなかった。

 

「このクソガキが!逃がすわきゃねえだろ!!斬撃モード!!」

 

エゼルは自身のエーテリアスモードを発動した。腕を漆黒の刃状にし、兜のような仮面を被った姿になる。エゼルの呪力が膨れ上がり腕が変化した刃をウェンディ達に向けて何度も振るう……

 

「きゃああああっ!!」

 

降り注ぐ斬撃の嵐を自分の風を使って何とか逸らしていくが力量の差がありすぎてウェンディ達は傷ついていく。

 

「おらおらおらぁっ!!」

 

「ガオオオオッ!!」

 

ナッツが再び割って入って斬撃を無効化していくがエゼルはお構いなしに次々と斬撃を放つ。遂に抑えきれなくなった斬撃がウェンディ達に襲いかかった。

 

「「きゃああっ!!」」

 

「グル……ガアウッ!!」

 

ナッツは自分達に襲いかかった致命的な斬撃だけは防ぎきったが全てを防ぐことは叶わず、ウェンディ達と共に吹き飛ばされ洞窟の岩壁ごと吹き飛ばされてしまった。

 

「うう……こ、これは!?」

 

壁を突き抜けたウェンディの目の前には巨大な顔の形をした物体が鎮座していた。

 

「これが……フェイスなの?」

 

「フン!その通り!後5分もすればフェイスは発動する……そして魔力は消え、俺達タルタロスの天下が始まる!!」

 

「ガアアアウッ!!」

 

エゼルの言葉を聞いたナッツは飛翔しながら再び爪に宿した炎で攻めたてる。しかし先程までとは違い、楽に捌かれてしまう。

 

「さっきまでの勢いはどうしたよ!?」

 

「グルッ……」

 

戦況を見守っていたウェンディもナッツの動きが鈍くなっているのに気づいた。

 

-そうか!ナッツちゃんはツナさんから貰った炎のエネルギーで動いてるんだった!当然使えば使うほどに炎は減っていくんだ!どうしたら……いや!私がナッツちゃんを守る!!-

 

ウェンディは自分の無力感を振り払い立ち上がると辺りの異常にはっとする。

 

-空気がおいしい?そうか!フェイスの周囲に高濃度エーテルナノ領域が形成されてるんだ!私に出来るか分からないけど私もナツさんみたいに!!-

 

「ウェンディ!!」

 

ウェンディはフェイス周辺の空気を思いっきり吸い込む。しかし高濃度エーテルナノが混じった空気を吸収することは言うほど簡単な事ではない。

 

ウェンディの小さな体に凄まじい魔力の奔流が流れ込んで激痛が走る……苦しみながらもウェンディは目をしっかりと開ける。そこには劣勢になりながらも必死に自分達を守るナッツの姿……

 

その姿に奮い立ったウェンディは体に走る痛みを無視してさらに大きく息を吸い込んだ。

 

ナッツの炎は戦闘開始時より明らかに弱くなっていた。エゼルの暴風のような連続攻撃からウェンディ達を守る為に既にツナから貰った炎を8割近く消費しているからだ。

 

「手こずらせやがって!これで終わりだ!!」

 

「!!」

 

今までにない巨大な一撃がナッツに迫る……ナッツも残り少ない炎を使って斬撃を調和しようとするが炎を吐く前にその斬撃は弾けるように消滅した。

 

「ガウ?」

 

「なんだぁ?」

 

ナッツもエゼルも突然の事で疑問を感じて横を見るとそこには洞窟の中であるにも関わらず竜巻が巻き起こっていた……

 

「ありがとうナッツちゃん。後は私に任せて」

 

「ガウッ!!」

 

「てめえは……本当にさっきのクソガキか?」

 

台風をその身に纏ったウェンディはゆっくりと歩いてきた。滅竜魔法の最終形態、ドラゴンフォースを発動させながら……

 

「あなたを……倒します!私の全てを賭けて!」

 

「ならてめえから刻んでやるよ!!」

 

エゼルは攻撃をウェンディへと向ける……しかし突如ウェンディの姿が消える。

 

-凄い力が溢れてくる!私は今、この空間の風を……空気を支配してるんだ!!-

 

「どこに行きやがった!?」

 

洞窟には足音だけが響きウェンディの姿を見失ったエゼルは刀になった腕を遮二無二振り回すがウェンディを捉えることはできない!

 

「はっ!!」

 

「ぐぬおっ!!」

 

ウェンディの蹴りを後頭部にくらったエゼルは思いっきり壁に叩きつけられた。先程までは何のダメージもくらわなかったのに今度は体の芯まで響くような痛みにのたうち回る。

 

「小娘が!!」

 

「遅いです!!」

 

「ぐはぁっ!!」

 

怒りのままウェンディに襲いかかったエゼルだがウェンディは再び消えると後ろに回り込んでエゼルを殴り飛ばした。

 

「こ……このっ……!?」

 

エゼルが振り返るとウェンディを取り巻く風がさらに激しさを増していた。ウェンディはその嵐のような風を束ねてエゼルに放った。

 

「滅竜奥義!照破天空穿!!」

 

「ぬおおおおおっ!!」

 

ウェンディの奥義をエゼルは斬撃を無数に放って相殺しようとするが力負けして体が傷ついていく。だが何とか耐えきったエゼルはボロボロになりながらもウェンディを睨み付ける……しかしその表情は凍りつく。

 

ウェンディの右の掌にさっき以上の風が集まって球状の塊を作り出していたからだ。凝縮されていく風を見て顔色を変えたエゼルは技の発動前にウェンディを殺そうと最強の技を繰り出した。

 

「死ねぇっ!!妖刀・村正一閃!!」

 

呪力を限界まで込めた一振りの斬撃がウェンディの首を目掛けて飛ぶ。

 

「ガアアアアッ!!」

 

渾身の一撃を横合いからナッツが咆哮で無効化する。この一振りに全てを賭けていたエゼルは呆然とその光景を見つめた後、ナッツを睨み付ける。

 

「クソネコがぁっ!!」

 

「これで終わりです!!」

 

ウェンディの声でナッツから視線を戻すとウェンディの掌にある風の塊が光輝いていた。その膨大な風を束ねるウェンディに恐怖を感じてエゼルは後ずさる。

 

「あ……ああっ……」

 

「天竜の……風魂(かざだま)!!」

 

「……っ……っ!!」

 

エゼルが風の塊をその身に受けた瞬間、超圧縮された風が膨張してエゼルの体を引き裂き、砕いていく。あまりにも強力な嵐にのまれて声をあげる事もできないまま……それに留まらず破壊の風はその後ろにあったフェイスをも粉々に砕いていた。

 

「はあっ!はあっ!やった!フェイスも壊れた!」

 

「ガウ……」

 

「ナッツちゃん?」

 

ほとんどの炎を使いきったナッツはヨレヨレとそれでもフェイスへと向かっていた。その行動に疑問を抱くウェンディ。まるでフェイスはまだ起動しているような……

 

「!?ま、まさか!!」

 

「……まだ止まってないわ。ウェンディ」

 

相棒のシャルルはフェイスに既に近づいて色々と操作をしていた。ウェンディには何をやっているのか分からない。

 

「シャルル……止められるの?」

 

「黙って!今無数の未来の中から最適な止め方を検索してるの。もう少しで……」

 

シャルルは一心不乱に装置を操作している。相棒を信じてナッツを診ようとしたウェンディだが不意に体の力が抜ける……

 

「あれ?」

 

ドラゴンフォースも解除されて体に全く力の入らなくなったウェンディはその場に倒れこんだ。朦朧とする意識の中でシャルルの動きが止まったのを見る。

 

「終わっ……たの?」

 

「ええ……後はここに触れればフェイスは自律崩壊して大爆発が起きるわ……触れた途端にね」

 

「そんな!それじゃ……」

 

それでは自分達も爆発に巻き込まれてしまう……ウェンディは口に出来なかったがそういうことだ。

 

「私ね……思うんだけどね、魔法がなくても生きていけると思うのよ。エドラスみたいにね……そりゃ色々と変わっちゃうけど生きていけるのなら……」

 

「ダメだよ!今みんなは戦いの真っ最中なんだよ!今魔法が消えたらやられちゃうよ!!」

 

シャルルはウェンディがそう答える事を分かっていたかのように微笑む。そしてその瞳には決意の光が宿っていた。

 

「ウェンディ……私はギリギリまで待ってからフェイスを破壊するわ。だからあなたはその子を連れて逃げなさい」

 

「な……に……言ってるの……?シャルルだけ置いて逃げられる訳ないじゃない!」

 

一瞬何を言われたか分からずに放心したウェンディだがすぐに反論する。だがシャルルは穏やかな顔でウェンディを諭す。

 

「ダメよ。すぐに逃げなさい。誰かがどうしてもやらなければならないのだから……あなたにはツナとの未来もあるでしょう。ここで死んではダメよ」

 

「ダメだよ!その未来にはシャルルもいなきゃ……シャルルがいなきゃ嫌だよ!!」

 

動かない体で這いずるようにシャルルの元へ移動するウェンディ……それを見たシャルルは怒鳴る。

 

「いいから早く逃げなさい!!」

 

「絶対に嫌!!シャルルを一人にしない!だって……シャルルは私の親友で相棒なんだから!!」

 

叫ぶウェンディにとうとう泣き出してそれでもシャルルは懇願するように怒鳴り付ける。

 

「お願いだから逃げて!!」

 

「……どのみち無理だよ。もう……逃げる力も残ってないんだから……だから最後までずっと一緒にいようよ」

 

「バカ……」

 

ウェンディが伸ばした手をしっかりとつかんだシャルル……二人共泣きながらも綺麗な笑顔を見せていた。

 

「ナッツちゃん……せめてあなただけでも逃がしたかったけど……」

 

「まだ飛べる?」

 

二人の問いにナッツはフルフルと首を振った。逃がすのは無理そうだと二人は顔を伏せた。

 

ナッツはウェンディに歩み寄ると苦労しながらもウェンディの肩によじ登った。

 

「ナッツちゃん?」

 

「何やってんのよ?」

 

「グルル……ガアアアアッ」

 

ナッツの体が光輝くとその形状が変化してゆく。そしてウェンディをすっぽりと覆って余りあるほどのマントに変化した。

 

「わっ!?このマントって……」

 

「ツナが使っていたやつね。私達を守ろうとしてくれてるのね……」

 

一世のマント(マンテッロ・ディ・ボンゴレプリーモ)に変化したナッツだったが本来の持ち主のツナが使うのではなく自分に残された残り少ない炎を使って変化した為に防御力はツナが使っている時と比べて格段に落ちてしまう。

 

それでもナッツは最後の炎を使ってウェンディ達を守ろうとしている。それはウェンディとシャルルにも伝わっていた。

 

「心強いわね」

 

「そうだね」

 

二人はマントにくるまりながら笑みを浮かべた。しかし消耗しているナッツではこの爆発に耐えられないだろう事も予測がついた。

 

「シャルル……ずっと一緒にいてくれてありがとう。また私と友達になってね」

 

「当たり前じゃない」

 

二人は涙を流しながら笑顔で再会を誓う。悲壮感はなかったがウェンディにはたった一つだけ心残りがあった。

 

-ツナさん……-

 

思い出すのは強くて、優しくて、みんなの中心にいるツナの姿……初めて一緒にいった依頼の時の事、大魔闘演武での思い出、共にドラゴンと戦った時の事、どれもが大切な記憶だった。

 

「やるわよウェンディ」

 

「うん。一緒にね」

 

いよいよ時間が無くなって二人は手を重ねて装置に触れた。その瞬間、二人の視界は白い光に包まれた。ウェンディは自分を飲み込む光の中でツナを想う……

 

-ツナさん……大好きです!-

 

巨大な爆発と閃光が辺りを包み洞窟を跡形もなく吹き飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

貫いた閃光は天まで届きその場にいた者達の生存は絶望的かと思われたが……

 

「間に合った!!」

 

洞窟からかなり離れた場所に突然人影が現れた。ドランバルトがダイレクトラインの魔法を使ってこの場に出現したのだ。そしてドランバルトは黒い塊を抱えていた。

 

黒い塊は光に包まれるとナッツに変化する。そしてマントに包まれていたウェンディとシャルルも無事な姿で現れた。全員意識を失っているが命に別状はないようだ。

 

「まさかフェイスを破壊してくれるとはな……こんな小さな勇者達が……」

 

ドランバルトは優しい顔を浮かべて3人の寝顔を見ながら呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここか……」

 

ツナは巨大な扉の前で佇んでいた。この扉の向こうにいるのが何者かはまだ分からない……しかしツナの超直感はこの向こうにいる人物に会わなければならないと強く示していた。

 

意を決して扉を開くツナ……大きな音をたてながら扉は開いた。中にいたのは黒髪の少年と言うべき年齢の男だった……少年はツナを見ると口を開いた。

 

「待っていたよ。新たな大空……そしてさようなら」

 

「!!」

 

少年から黒く、死をもたらす波動が放たれてツナを包み込んだ…………

 

 

 

 

 

 

 




遂に出会ったツナとゼレフ……

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