妖精達と歩む大空   作:グリーン

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大変お待たせしました。ではどうぞ!


突入!冥界島!

 

 

-魔障粒子対策本部

 

魔障粒子を消し去り病人の治療を終えたツナはフェアリーテイルに通信ラクリマで報告をする。しかし事態はさらに深刻化していた……

 

「ナツにリサーナ、エルザとミラまで!?」

 

「そうじゃ……ハッピーやエルフマンの話からすると間違いないようじゃ……」

 

「タルタロス……!!」

 

ツナがギルドを発った後、タルタロスへの報復へと動き出したフェアリーテイル。しかし相手は本拠地も分からない謎に包まれた存在……

 

現評議員だけでなく元評議員のヤジマも狙われた事によりロキの情報によって何人かの元評議員の住所を割り出して護衛につくことになった。

 

ナツ達のグループは唯一九鬼門のジャッカルを撃退してミケロ老師を守りぬいた。だが他の議員は既に殺されていた……そしてミケロ老師から狙われる心当りとしてフェイスという兵器の情報を得る。

 

タルタロスは大陸中の魔力を消し去るその兵器を起動する為に鍵となる3人の議員の命を狙い、無差別に襲っているようだ。だが鍵となる議員を知るのはおそらく元議長のみ。その為、元議長の元へ現在の最高戦力であるエルザとミラを派遣した。

 

フェイスの存在と元評議員の住所をタルタロスが知っていた為、元議長を怪しんだナツが家に向かうと荒らされた家と睡眠薬の匂いから二人が拉致された事を知る。

 

ナツは捕らわれたエルザとミラの匂いを追ってタルタロスの本拠地に乗り込んだが氷を操る男に捕らえられたらしい……ハッピーは泣きながら一人で脱出して情報を伝えたようだ。

 

「リサーナもですか……」

 

「うむ……エルフマンと一緒に行動してたのじゃが……」

 

「……?エルフマンは戻って来たんですか?」

 

「どうしようもなかったようじゃ……ひどく落ち込んでおる……」

 

ツナは違和感を感じた。確かにどうしようもなかったのかもしれないがあのエルフマンが目の前でリサーナを拐われて大人しく帰って来るだろうか……?

 

「奴らの目的はフェイスと呼ばれる魔導パルス爆弾を使って大陸中の魔力を消し去る事じゃ。奴らが使うのは呪力……そうなっては魔導士だけが魔法を使えなくなる」

 

「ああ……そういえば前に戦ったゼレフ書の悪魔も魔力とは違った力を使ってました」

 

「うむ……そしてフェイスは3人の評議員の命を封印の鍵としているらしい……誰かまでは分からんがな」

 

「その為に評議院を襲ってさらに元議員を殺害しているんですね……」

 

「そうじゃ……今レビィがタルタロスの本拠地の位置を割り出しておる。どうやら空飛ぶ移動要塞らしい。とにかくすぐに戻って来てくれい」

 

「分かりました。すぐに戻ります。では」

 

通信を切ったツナは捕らえられた仲間を……特に自分に好意を持ってくれるミラを心配しながらも必ず全員助け出すと決意を新たにする。

 

「フェイスの鍵となる人物か……」

 

ツナは何故か元評議員の青髪の青年の姿を思い浮かべながらラミアのメンバーに別れを告げて大空へと飛び立っていった……

 

 

 

 

 

-岩山地帯

 

ツナが思い浮かべた人物……ジェラールはウルティアとメルディが見守る中、オラシオンセイスのコブラ、エンジェル、レーサー、ミッドナイトと1対4で激闘を繰り広げていた。

 

何故彼らが戦っているかというとドランバルトがジェラールに連絡を入れて情報を得る為に釈放したオラシオンセイスを再び捕らえようとした為だ。

 

大魔闘演武の後で見逃してもらった借りを返す為にジェラールは快くその頼みを聞き入れた。ジェラール自身にもある考えがあり、一人で戦っている。

 

一方オラシオンセイス側はブレインは自分達を駒としか思っていないと心の声を聞いたコブラにやられて戦闘不能、ホットアイは既に改心している為に戦闘に参加していない……

 

オラシオンセイス4人を相手にジェラールは押されながらも拮抗する奮闘を見せていた。

 

「ねえウル……やっぱり私達も……」

 

「ダメよ。ジェラールを信じなさい」

 

メルディは旗色の悪いジェラールを心配し、色々あったが付き合いの長いウルティアはジェラールの考えを尊重している。

 

流星(ミーティア)!!」

 

「くっ!スピードで負けるかよ!!」

 

「おっと!毒竜爪牙!!」

 

「私達は自由を手に入れるんだゾ!!」

 

縦横無尽に戦場を駆けるジェラールだがレーサー、エンジェル、コブラの猛攻に徐々に追いつめられていた。だが傷を負いながらもその闘志はさらに燃え盛っている。

 

「エリック、ソーヤー、ソラノ、リチャード、マクベス……」

 

「「「「「!!」」」」」

 

久し振りに聞く自分達の本名に動揺するオラシオンセイス達……彼らは罪を犯した。だがそれは自分も同じ、いや自分はもっと大きな罪を犯している。だからこそジェラールは彼らの心を救いたいと思っていた。

 

「その先には自由はありはしない……再び闇の道を行こうとしているお前達を見捨ててはおけない!」

 

「うるせえよ!同じ穴の狢が!!お前が言えた事かよ!!」

 

「俺達はもう光には戻れねえんだよ!!」

 

「それは違う!俺達は……ガハッ!!」

 

ジェラールが言葉を紡ごうとした時、突如起き上がったブレイン……いや、ブレインのもう一つの人格であるオラシオンセイスのマスター、ゼロの指先から放たれた光線がジェラールを貫いた。

 

「ジェラール!!」

 

「死ねぇぇぇっ!!」

 

咄嗟に駆け寄るメルディの目の前で先程のよりも強力な光線がジェラールに直撃し、その体を消し去った。残されたのはジェラールの足首のみ……

 

「アーッハッハッハッハッハッ!!」

 

「うそ……そんな……ジェラール……」

 

「…………」

 

高笑いするゼロの目の前で崩れ落ちて涙を流すメルディ。ウルティアは顔色を変えずにただジェラールが消えた場所を見つめている。

 

「消し飛んだ……」

 

「マジかよ……」

 

突然の事にオラシオンセイス達も言葉もない。先程ブレインを攻撃したことで自分達も殺されるかもしれないと戦々恐々としていた。その中でミッドナイトだけが笑みを浮かべている。その瞳は怪しく輝いていた……

 

だが高笑いし続けるゼロの体に突如幾筋もの線が走った。そしてガラスが割れるような音と共にゼロのいた空間が砕け散った。

 

「ジェラール!?何で!?」

 

そこには五体満足なジェラールが存在していた。それを見たミッドナイトが困惑する。

 

「そんな!?僕の悪夢が……破られた?」

 

ゼロはブレインのまま倒れていた。全てはミッドナイトの魔法で作り出した幻覚だった。

 

「ジェラール!目を!?」

 

「まさか……自分で潰して!?」

 

両目を閉じて血を流すジェラールの姿を見て、メルディだけでなくオラシオンセイスの面々も驚愕する。だがジェラールは意に介さず行動に移る。ジェラールが構えるとオラシオンセイスがいる地面が輝きを放っていた。

 

「立体魔方陣!?いつの間に!?」

 

「まさかさっきの戦闘中に仕込んで……」

 

「七つの星に裁かれよ……七聖剣(グラン・シャリオ)!!」

 

天空に輝く七つの星から光が降り注いだ。オラシオンセイス達は光に飲まれて苦悶の表情を浮かべている……しかし既にジェラールは次の行動を起こしていた。

 

「ジェラールは二度と迷わないわ。闇に囚われず償いの道を歩き続ける……」

 

「ウル……」

 

「真・天体魔法……星崩し(セーマ)!!」

 

ジェラールの言葉と共に上空に厚い雲が渦巻いた。そしてその中心部より巨大な隕石が地上に落とされる。その隕石は眼下のオラシオンセイス達に直撃はしなかったがその余波は凄まじく地形すらも変えるその衝撃に吹き飛ばされ、もはやボロボロで戦意を失っていた……

 

地に伏すオラシオンセイス達にゆっくりとした足取りで近づくジェラール。だが抵抗する力すらない彼らは何故自分達を殺さなかったのか疑問に思う。

 

「何故……殺さなかった……?」

 

「お前達の道は俺が創る……」

 

「牢に……連れ戻すの……?」

 

エンジェルの質問に首を振る事で答えるとジェラールはミッドナイトの胸ぐらを掴んで体を起こす。

 

「独立ギルド魔女の罪(クリムソルシエール)……俺達のギルドに入れ」

 

「え……?」

 

「お前達の祈りは必ず届く……共にゼレフを倒すんだ!!」

 

ジェラールの心からの言葉は確かにオラシオンセイスの心に響いていた。だがジェラールはおろか誰もが気づいていなかった。ジェラールに起きた異常について……

 

 

 

 

 

 

 

-冥界島

 

キューブ状のタルタロス本部は今フェアリーテイルのあるマグノリア上空に差し掛かろうとしていた。

 

タルタロスの目的であるフェイス復活の為に必要な鍵は元議長の超古文書(スーパーアーカイブ)の魔法により戦闘中のジェラールから元議長へと譲渡された。

 

喜ぶ元議長だったが所詮は利用される存在……九鬼門のキョウカに殺害され、それによりフェイスの封印は解かれてしまった。

 

そして後は邪魔になるフェアリーテイルを一掃する為にリサーナを人質に取り、さらにセイラの命令(マクロ)に操られたエルフマンに強力な爆弾ラクリマを持たせて爆破させようとしていた。

 

「そろそろですわ」

 

「ふふっ……大きな花火があがりそうだ」

 

「グヘヘ……」

 

セイラ、キョウカ、フランマルスが見守る中フェアリーテイルのギルドが大爆発を起こした。建物は跡形もなく、黒煙が立ち昇る……

 

「御覧の通りですわ」

 

「よくやったぞセイラ」

 

「失った命はおいくらか、おいくら……ん?多数の魔力反応を確認!?」

 

「何だと!?モニターに映せ!!」

 

キョウカの指令に切り替わったモニターにはハッピー、シャルル、リリーが翼を生やして冥界島に向かって飛んでくる姿が映っていた。

 

「ネコ?」

 

「あの3匹はそれほどの魔力を持っているのか?」

 

「これは……いや!奴らが持っているカードの束!あれはフェアリーテイルの魔導士ですぞ!!」

 

「そんな……失敗した……?」

 

「アンダーキューブに重力場を展開しろ!兵を送り込んで奴らを叩きのめせ!!」

 

 

 

 

 

 

「ギルド壊れちゃったね……」

 

「カナの機転のおかげで助かったけど……」

 

様子のおかしいエルフマンを怪しんだカナが爆弾ラクリマを発見した。襲いかかって来たエルフマンをカードに封じると脱出の為に自分を含めて全員をカード化するとハッピー達に託していた。

 

ちょうどタルタロス本部が上空に来ていた事もありそのまま特攻するように指示を出し、間一髪で脱出に成功した。

 

「ぬおっ!これは!?」

 

「底面に引っ張られるわ!?」

 

「上手く飛べないよ!」

 

ハッピー達は立方体の底面に着地するが、そこに大量のタルタロスの兵が出現する。

 

「こんなにいっぱい出てくるなんて!」

 

「ご苦労さん!全員カード化解除!!」

 

カナにより全員カード化が解除されると共にフェアリーテイルの全員が突撃する。

 

「フェアリーテイル出陣じゃあ!!」

 

「「「「「うおおぉっ!!」」」」」

 

仲間を傷つけられ、ギルドを破壊された彼らの怒りは既に頂点に達していた。

 

「悪いが今日ばっかりは冷やしてやれねえ!!アイスメイク……氷槍騎兵(フリーズランサー)!!」

 

「はい!グレイ様!ジュビアも熱く燃えています!!水流裂鞭(ウォーターカーネ)!!」

 

「絶対みんなを取り戻すわ!お願い力を貸して!ロキ!!」

 

「もちろんさ!僕にとってもみんなは大切な仲間だからね」

 

「私も仲間の為に……アルタイル!!」

 

「行くッス!!」

 

「敵を掃討しつつ内部への道を探すのじゃ!」

 

「「「「おうっ!!」」」」

 

自分のしたことは許される事ではないとエルフマンは地面に倒れ込み涙を流していた。それを横で見下ろしているカナの目は冷たい……

 

「正気に戻ったのかい?」

 

「……ううっ……俺は……俺は何て事を……」

 

「そうやってずっと泣いてる気?あんたが今やらなきゃいけない事は何?」

 

「…………分かってる。反省も謝罪も全て後だ。姉ちゃんとリサーナを助け出す!」

 

エルフマンは立ちあがり、戦場へと駆け出した。カナはそれを見て肩を竦めると自らも後を追った。

 

「フリード無茶はやめな!!」

 

「しかし……ラクサス達を守らねば……」

 

ポーリュシカが止めるのも聞かずに無理矢理体を起こしたフリードは術式を構築して未だに目を覚まさないラクサス達を守ろうとしていた。

 

「ツナのおかげで魔障粒子が消えたとはいえまだ無理できる体じゃないだろう?」

 

「だがせめて術式で結界を張るくらいは……」

 

「……こいつらを頼むぜフリード」

 

「「なっ!?」」

 

フリードとポーリュシカは聞こえてきた声に驚く……一番重傷だったはずのラクサスがフラフラと起き上がっていた。

 

「良かった!目が覚めたのかラクサス!」

 

「何するつもりだい!あんたが一番重傷なんだからね!!」

 

「タルタロスは許せねえ……俺はあの街を守れなかった……」

 

「…………」

 

ラクサスの後悔の言葉にフリードも俯く……マカロフは街は無事だと言っていたが今ならその言葉が自分達を気遣っての事だと分かる。

 

「無茶するんじゃないよ!それにツナが街の対処に向かったから無事な人達もいるはず……」

 

「だとしても!俺は自分が許せねえ!仲間も守れず、街も守れず結局ツナに頼っちまった!だからせめてタルタロスは潰す!!」

 

血が滲むほど強く拳を握りしめてラクサスは全身に雷を纏う……その怒りの表情を見たポーリュシカとフリードは溜め息をつくと止めても無駄だと悟る。

 

「まったく……そういう所はマカロフそっくりだね」

 

「行ってこい。無茶はするなよ?」

 

「……そりゃ無理だ」

 

そう言い残すとラクサスは雷を纏って凄まじいスピードで最前線へと向かった。

 

「雷竜の咆哮!!」

 

ラクサスが放った一撃に前線にいたタルタロスの兵達は吹き飛ばされる。

 

いきなり最前線へ現れたラクサスにフェアリーテイルメンバー達は驚愕した。さっきまで意識がなかった男が突然現れたのだからしかたがない。

 

「ラクサス!何やっとんじゃお前は!!」

 

「よおシジイ……決まってるだろ?タルタロスの連中をぶっ倒しに来たんだよ」

 

「ダ……ダメですよ!まだ安静にしてないと……」

 

「大丈夫だ。それにいつまでも寝てるとアイツに美味しい所持っていかれるからな」

 

「アイツ?」

 

「真打登場ってやつだな」

 

ウェンディを宥めながらある方向を指差すとその顔が心配する顔から笑顔になった。

 

 

 

 

 

 

モニター室ではキョウカが兵達に指示を出しながらこの後の事について考えていた。

 

「フェアリーテイル……なかなか手強い相手のようだな……だが我らタルタロスには勝てん。人間にはやはり人質という手段が有功だな……」

 

捕らえているエルザを人質にしようと拷問部屋へと足を向けるキョウカ。そこへ焦ったようなセイラの声が響く。

 

「!進行方向より何かがもの凄いスピードでこちらへ向かってきます!!」

 

「何?モニターに映せ!」

 

「おや?人間ですなぁ~フェアリーテイルの一員でしょうかね……ん?止まりましたな」

 

モニターに映っていたのは額と両手に炎を宿した青年。先程までこちらに向かって来ていたが今は右手を後方に、左手をこちらに突き出して静止している。

 

「待て!奴は確か元議長からの情報にあった奴だ!」

 

「ではあの者がリリスを!?」

 

「やや!?エネルギーが急速に上昇していますぞ!その力はおいくらか!?おいくらか!?」

 

モニターに映る青年……ツナの突き出された左手にもの凄い力が集中されていくのを見てキョウカ達は戦慄する……

 

そして放たれる炎の奔流。その一撃はフロントキューブに直撃して冥界島を揺らす……

 

「きゃあああっ!!」

 

「な、なんとぉ~」

 

「くっ!何という一撃だ……なっ!?」

 

キョウカがモニターを見るとフロントキューブに大穴が開いていた。

 

「派手にやられましたな~この損害はおいくらか?おいくらか?」

 

「くっ!至急フロントキューブにも兵を回せ!」

 

「ダメです!既に内部に侵入されました!」

 

「奴の目的は仲間の救出か!?ただちに追跡しろ!」

 

ツナは立方体の冥界島の前面に開けた穴に脇目も振らずに飛び込んでいった。こうしてフェアリーテイル対タルタロスの死闘が幕を開ける事になるのだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回もお読み頂きありがとうございます。ペースは落ちてますが続けていきますのでどうぞよろしくお願いします。

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