妖精達と歩む大空   作:グリーン

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今回はラミアメンバーが出演してます。


黒き霧の街で

 

 

-空中

 

ツナは魔障粒子に犯された街を救う為にヤジマの店がある街を目指して空を飛んでいた。発生からかなり時間が経過している為に少々焦っている。

 

-冥府の門……タルタロス……犯人はこの前のリリスのようなゼレフ書の悪魔という話だが……-

 

ツナはウォーロッドから聞いたゼレフについて考えていた。不老不死でありジョットにその命を終わらせてくれるように願った男……

 

-ゼレフは何の為に悪魔を造ったんだ……やはり自分を殺す為だろうか?ナツが言っていたENDも気になるが……いや、今は街を救う事だけ考えよう-

 

ほどなくするとその街が見えてきた。だがツナが見たのは黒い風が魔障粒子を閉じ込めている光景だった。

 

「あの風は……ん?あれは……」

 

知っている相手を見つけたツナは地上に降りていく。そしてその者の隣へと降り立つと炎を消して話しかけた。

 

「アルカディオスさん!」

 

「ん?ツナヨシ・サワダ?」

 

「アルカディオスさんどうしてここへ?」

 

「評議院が壊滅したので国の兵達を中心に救助隊を結成したのだがな……あまりに毒性が強い為に魔導士でない者すら命を落としているのだ」

 

「あの黒い風はシェリアですね?彼女も来ているのですか?」

 

「ああ、ラミアスケイルが異常に気づいて応援に来てくれた。彼女の魔法で魔障粒子が拡散しないようにしているがいつまで持つか……」

 

シェリア本人の魔力がいつまで持つか……街の住民全てを助け出すまで持てばいいが……と力なく項垂れるアルカディオス。だがツナの次の言葉を聞いたアルカディオスは顔を輝かせる。

 

「俺の炎なら魔障粒子を消し去る事は可能です。生きてる人には治療も出来ますので被災者をなるべく1ヶ所に集めて下さい」

 

「何と!?それはまことか!?分かった!すぐに手配する!ラミアの連中はあちらの方角にいる!」

 

そう言うとアルカディオスは部下達に指示を出しに駆けていった。絶望の中でたった一つの希望を見つけたようにその足取りは今までと違い軽かった。

 

アルカディオスが指し示した先ではシェリアが魔法を使っていた。恐らく長い時間使い続けていたのだろう膝を付いたまま必死に手を伸ばしていた。

 

従姉妹のシェリーがその体を支えていた。リオンは万が一シェリアが力尽きた時の為に氷の壁を作って救助された者達を守っている。ジュラは地面を操って街から生きている者を運び出していた。

 

「大丈夫!?」

 

「おお!ツナヨシ殿!!」

 

「どうしてここに?」

 

「ツナも手伝ってくれるの?」

 

「お久しぶりですわ」

 

「ああ!早速だけどシェリア、もう少し頑張って!すぐにあの魔障粒子を消し去るから」

 

「えっ!?消せるの!?」

 

「何と!?」

 

ツナはシェリアの風の壁が魔障粒子を散らさないように内側へ向けて吹いているのに気づいていた。

 

これだけの広範囲を風で覆う彼女の力量に感心しながらも相当に疲れていると思われる為に、時間はかけられないと思ってすぐにその風を利用することを決めた。

 

「そのまま内側へ風を向けてて!俺の炎を風に乗せて一気に魔障粒子を消し去る!」

 

「待て!それでは未だに街にいる者や街そのものも燃やしてしまうのではないか!?」

 

街には王国の兵士達が防護服を着込んで救助作業を続けている。

 

「安心して。燃やすのは魔障粒子だけだから。それを街にいる人達に伝えて欲しい」

 

「その程度なら私がやりますわ」

 

シェリーの言葉にツナは頷くとシェリアの後ろに立って自分の手をシェリアに重ねるように伸ばした。

 

「ツナ、街の人達を本当に助けられるの……?」

 

「……まだ生きてる人はね。でも少しでも多くの人を助ける為に力を貸して!シェリア!」

 

「分かった!あたしもがんばる!」

 

その言葉に笑顔でシェリアの頭を撫でるツナ。シェリアもさっきまでの不安顔から笑顔を見せた。そこへシェリーから魔法で街にいる者達に伝え終えたと連絡が入る。

 

それを聞いたツナはハイパー化すると手に炎を集め始める。

 

-シェリアの風と同調させるイメージで風に炎を乗せる……-

 

「いくぞ!シェリア!」

 

「うん!」

 

ツナの掌から放たれた炎はシェリアの風と混ざり合って街を覆っていく……その炎の凄まじさに思わずリオンもジュラも街にいる人達が心配になるがここはツナを信じるしかない。

 

ツナの炎は瞬く間に街中に漂う魔障粒子を消し去っていく。ジュラ達はその光景を感嘆の目で見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

やがて全ての魔障粒子を消し去った事を確認したツナは炎を消してハイパーモードを解除した。

 

「や……やったの?」

 

シェリアも風を消して呆然としていたが魔障粒子が消えた事を実感すると恐る恐るツナへ問いかける。ツナが笑顔で頷くと喜びを全身で表現した。

 

「やったぁーー!!」

 

疲れも忘れてピョンピョン跳び跳ねるシェリアだったがその小さな体は確実に疲れ果てていた。

 

「あれ?」

 

「危ない!!」

 

ぐらついたシェリアを受け止めて抱えあげるツナ……シェリアはツナに抱え上げられていることに気付くと途端に顔を真っ赤に染める。

 

「ツ……ツナ!?だ……大丈夫だから!その……下ろしてもいいよ!?」

 

「シェリアが一番がんばってたんだから無理はしちゃダメだよ」

 

ワタワタと焦るシェリアを見てシェリーがクスリと微笑む。

 

「そうですわね。ツナヨシさん。しばらくそのまま休ませてもらえますこと?」

 

「もちろんいいですよ」

 

「ち……ちょっとシェリー!!」

 

「今病人達を1ヶ所に集めているみたいですし、それからまた貴方の力が必要になりますからそれまでお休みなさい。……それが愛!ですわよ」

 

「あ……愛!?」

 

「ウム、ではシェリアを頼みますぞ。我々は病人を運ぶのを手伝って来ますので」

 

「ツナヨシもそのまましばらく休んでてくれ……行きましょう。ジュラさん、シェリー」

 

ラミアメンバー達はシェリアをツナに任せると魔障粒子の消えた街へと走っていった。残されたシェリアは顔を真っ赤にしたまま顔を俯かせていた……

 

実はこの時シェリアはある程度回復していた。ツナの炎が魔障粒子を消し去った後、この一帯はツナの調和の炎により浄化されて空気が清められていた。

 

それはシェリアやウェンディにとってはものすごいご馳走と変わらない。さらに自己回復の出来るシェリアはもう立って歩く位は余裕だった。

 

それでも心地よさからシェリアはもう少しだけこのままでいたいと願っていた……

 

 

 

 

 

 

魔障粒子に犯されて救助された人々は1000人以上にもなったがこれでも街の総人口の3分の2にも満たない……残りの人々は既に命を落としていた。先程までは生きてる者のみを街の外へと運び出していたが、魔障粒子が消えた事で一部の兵士達は遺体を運び出している。

 

「…………!!」

 

「ツナヨシ殿……」

 

「くっ!俺にもっと力があれば……」

 

ツナは必死に大空の結界を構築するがこれはツナをもってしてもそれほど大きくは作れない。元々この結界はトゥリニセッテを持つ3人が炎を共鳴させて作り出すものだ。ユニと白蘭がいない現状では精々20人ずつしか治療出来ないうえ、時間もかかる。

 

「はあっ……はっ……次の人達を……」

 

「ツナ……」

 

「大丈夫ですの?」

 

症状の比較的軽い人達は一旦離れてもらって老人、子供、妊婦、そして命が危ない者を優先して治療したおかげで今すぐ命の危険のある者はいなくなったがまだ半数近くの病人が残っている……

 

既に日は暮れて夜になっていたがツナは休まずに治療を続けていた。それは友であるラクサスが命を懸けて繋いだ命を守る為だ。

 

「ツナヨシ・サワダ!ひとまず命の危険のある者は既に治療済だ!今日のところはもう休んでくれ!」

 

アルカディオスだけでなく治療を待っている人々からも声が上がる。彼らもツナがどれだけ無理をして治療をしてくれているかが分かっている。

 

「ツナヨシ殿!あなたが倒れてはこの街の人々はそれこそ助かりませんぞ!!」

 

「その通りだ!今はしっかりと休め!!」

 

「そう……だね……すみません。全員今日の内に治療しておきたかったのですが……」

 

治療を待つ病人達に頭を下げるツナだったが彼らはむしろツナに感謝して気にしないように伝える。

 

ツナはアルカディオスに夜中に急患が出た場合はすぐに伝えてくれるように伝言すると少し離れた場所へと腰を下ろした。

 

「シェリー、シェリア、ツナヨシ殿をしっかりと休ませてくれ」

 

「夜は俺とジュラさんで見ておくからな」

 

「容態が悪くなった人がいたらすぐに呼んでくださいね」

 

「分かりました。ではリオン、参ろう」

 

「はい!ジュラさん!」

 

ジュラはリオンと共に病人達に付き添いに離れていった。シェリーは炊き出しの所へと歩いて行く。

 

「二人の分も食事を貰って来ますわ。シェリア、頼みましたわよ」

 

「うん。任せて」

 

「シェリアもずっと回復魔法を使ってただろ?休まないと……」

 

「ツナほどは疲れてないよ。この辺りの空気はツナの炎のおかげですっごくおいしくて魔力もすぐに回復しちゃうから……ツナこそ疲れてるでしょ?大会の時みたく私から魔力を吸い取ってもいいよ?」

 

「一晩休めば回復するよ。……けどありがとう」

 

いくらなんでも試合でもないのにシェリアから吸収するのは憚られる。ツナはシェリアの頭を撫でてやんわりと否定した。

 

「それにしてもツナがいなかったら……」

 

ツナが来なければあのまま風の結界を張り続けた自分も回復より消耗が激しくて倒れていたとシェリアは確信していた。そうなると魔障粒子はさらに拡がってジュラ達も兵士達も全滅していたかもしれない。

 

「はあ……ツナは凄いなあ……」

 

「どうしたの?」

 

「ツナは強くて、頭もよくてみんなに頼られてる……あたしなんてドジで魔法しか取り柄がないのにみんなを治すことも出来ないんだもん……」

 

「そんなことないよ。シェリアががんばってくれたから今俺はこの街の人達を助ける事ができてるんだから……それに俺が君くらいの時、俺は何をやってもダメダメのダメツナって呼ばれてたんだから」

 

「えっ!?ツナが!?嘘でしょ!?」

 

あまりに衝撃を受けたシェリアはツナに掴みかかる勢いで聞き返してきた。そんな様子にクスリと笑うツナは嘘じゃないよと口にする。

 

「弱かった俺だけど……仲間がいるからどんな戦いも乗り越えられた。どんな強敵でも仲間と一緒なら怖くなかった。一人で出来る事なんてたかが知れてる……でも仲間がいれば自分に出来ない事を補ってくれる」

 

ツナは昔を思い出すように空を見上げてかつての仲間を思い浮かべる。

 

「俺にとってフェアリーテイルは大切な家族だ。でもギルドは違うけどシェリアだって俺の大切な仲間なんだからだからお互いに助け合えるんだよ」

 

ツナの笑顔と言葉にシェリアは顔を赤くして俯かせるとボソリと呟く。

 

「やっぱりツナは強いなぁ……」

 

向こうから食事を持ってきているシェリーの声を聞きながらシェリアはツナのようになりたいと強く願っていた……

 

 

 

 

 

 

 

「ふう……」

 

「お疲れ様でした。ツナヨシ殿」

 

「これで全員の治療が終了したな……」

 

翌日は早朝から治療を始め、昼過ぎに全ての住民の治療を終えてホッと一息つくツナ……今日もかなりの炎を消費してしまったがラクサスが守ろうとしたものを少しでも守れたことに安堵する。

 

「まだしばらくは安静にさせて下さいね。体の内部まで痛んでいるらしいですから」

 

「ああ、陛下から医療部隊の増援と食料も届けられた。とりあえず私がしばらく残って指揮を取るつもりだ」

 

アルカディオスの言葉にツナを含めた魔導士達は頷いてこれまでの労を労う。

 

「そうだ!通信ラクリマを貸してもらえますか?フェアリーテイルにも報告しないと……」

 

「分かった。だがまずは昼食を食べて体を休めてくれ。ラクリマは食事が済んだ頃に持って来させる」

 

ツナは頷くとラミアのメンバーと共に食事を取る為に移動する。用意されていた食事は国王の計らいか外で食べるにも関わらず豪華だった。

 

「お腹すいた~」

 

「シェリア、レディにあるまじき言葉ですわよ」

 

「よいではないか。シェリアも疲れておるのだろう」

 

「ツナヨシは大丈夫なのか?」

 

「まあ、お腹は空いてるね」

 

ツナ達は体を休めると共に食事を食べ始める。途中で比較的軽い症状だった病人達が何人も礼を言いに来た。だが亡くなった者も多く悲しみに暮れている者もたくさんいた……

 

食事を終えた頃約束通り兵士の一人が通信ラクリマを持って来たので早速フェアリーテイルに連絡をいれる。

 

「ツナか?」

 

「マスター、魔障粒子の対処と生き残っていた人々の治療は完了しました。救えなかった人もたくさんいましたけど……」

 

「そうか、よくやってくれたのう……」

 

マスターはツナを労うがあまりに暗い雰囲気に何か起きた事を感じ取った……

 

「何があったんですか?」

 

「ツナ……落ち着いて聞いて欲しい。実は……」

 

マカロフから伝えられた事に驚愕と怒りを顕にすることになる……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回からフェアリーテイルVSタルタロスの戦いが始まります。

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