妖精達と歩む大空   作:グリーン

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間章はこれで最後です。


相変わらずのギルド

 

 

-フェアリーテイル

 

ツナ達がS級クエスト行脚に出かけてから4週間が過ぎようという頃……フェアリーテイルは出戻りの者達や新人達が数多く加入してかつての賑わいを完全に取り戻していた。

 

だがその賑わいの中で二人の少女だけが暗い雰囲気で完全に浮いていた……

 

「二人共~そろそろ元気出しなよ~」

 

「しけた顔してんじゃないよ!酒が不味くなるじゃない!」

 

「もう少ししたら帰って来ると思うから」

 

リサーナ、カナ、レビィが元気付けようとするも二人の少女……ルーシィとウェンディはなかなか元気にならない……

 

「はあ~ツナはまだ帰って来ないのかな……」

 

「もう一月くらい会ってないですね……」

 

「依頼なんだからしょうがないでしょ!」

 

シャルルの言う通り依頼は20件……しかも全てがS級以上なので時間がかかって当たり前だが、ツナに恋する二人はツナに会えなくて最近ずっと落ち込んでいる。

 

「いいなあ……ミラさん……」

 

「一緒の依頼……羨ましいですね……」

 

同じS級でツナに同行できるミラジェーンを羨ましがる二人……

 

「まあまあ……ミラ姉もS級だししょうがないじゃない。私としてはこの機会に少しは進展して欲しいけどね」

 

「「し……進展!?」」

 

リサーナの一言に驚愕する二人は脳内でツナとミラが仲良くしている場面を妄想していた。顔を真っ赤にしながらプルプル震えている二人を見ながら溜息をつく周りの人々……

 

「ですが意外ですね……ツナには恋人はいないのですか?」

 

新たに加わったヒスイの質問に周りはそう言えば知らなかったんだとツナの出自を話した。さすがに驚いたヒスイは呆然としている。

 

「異世界ですか……」

 

「そうなの。ツナは別の世界から来たのよ。あれだけ強いのに大会……というか雑誌の撮影までまったく無名だったでしょ?」

 

「どうりで……」

 

「まああれだけの男だしあっちには恋人いたかもね~二人共どう思う?」

 

「ツナに恋人が!?」

 

「そんな……」

 

カナのからかうような問いかけにますます暗くなる二人……さすがに周りが嗜める。

 

「カナ、飲み過ぎ!ルーちゃんもウェンディも気にしないの!」

 

「う~ん……ミラ姉にがんばって欲しいけどこの二人も上手くいって欲しいな……」

 

「ウェンディももう少しアピールしなさい」

 

「ルーシィはちゃんとその胸で誘惑するのよ~」

 

「ちょっと!カナったらもう!」

 

「…………」

 

ウェンディは何も言わずにカナの言葉に胸を隠そうとするルーシィの胸元を睨んでいた。……ちなみに隠そうとしても隠しきれていないのでウェンディの視線はさらに鋭くなる……

 

「ルーシィー!ウェンディー!!」

 

その時ハッピーがギルドの入り口から飛び込んできた。少し興奮しているようにも見える。

 

「ハッピーどうしたの?」

 

「大ニュースだよ!!」

 

「だから何があったのよ?」

 

「ププ……知りたい?」

 

ハッピーは口を押さえてニヤニヤと二人を見ながら勿体ぶっている……

 

「あ~も~何なのよ!?」

 

「も~しょうがないなあ~ツナ達が帰って来たんだよ!!」

 

ハッピーの言葉に目の前の二人だけでなく周りの喧騒も静かになる……一拍置いてギルド中から大歓声が巻き起こった。

 

「ほんとか!?ハッピー!!」

 

「ようやく帰って来やがったのか!」

 

「姉ちゃん!やっと帰って来たのか!!」

 

「雷神衆!ラクサスを出迎えるぞ!!」

 

ナツ達も大盛り上がりで一気にギルド内が騒がしくなってきた。

 

「やっとツナに会えるのね!!」

 

「良かったねルーちゃん、ウェンディ」

 

「はい!嬉しいです!!」

 

「やれやれね……」

 

「オイラが見た限りではそろそろ着く頃だと思うよ」

 

中でもルーシィとウェンディは抱き合って喜んでいる。お祭り騒ぎのギルドだったがハッピーの言葉に再び静まり返って全員がギルドの入り口近くに集まる……

 

そして入り口の扉が開かれてツナ、ミラジェーン、ラクサス、エルザが姿を現した。

 

「「「「「おっ帰りー!!!」」」」」

 

いきなり全員揃って言われたので4人はびっくりしたが、すぐに笑顔になって帰還の挨拶をする。そして人混みの中からマカロフが出てきた。

 

「みな……ご苦労じゃったのう」

 

「マスター、ただいま帰りました」

 

「お久し振りです、マスター」

 

「依頼は20件全て完遂しました」

 

「ま、俺らにかかれば余裕だったけどな」

 

マスターの労いの言葉に帰還の挨拶と依頼達成の報告をする4人……それを聞いて顔を綻ばせて頷くマカロフと盛り上がるフェアリーテイルのメンバー達。

 

「うむ、よくやってくれた!さすがはフェアリーテイル最強メンバー達じゃ!!今日は宴じゃあ!!みな、ガンガン騒げぇ!!」

 

「「「「「よっしゃあ!!」」」」」

 

「ははは……けっこう疲れてるのに……」

 

「しょうがないわね~」

 

「みなが歓迎してくれるのだ。付き合うしかあるまい」

 

「やれやれだぜ……」

 

 

 

 

 

 

そう言って4人は久し振りのギルドの中へと入っていった。ツナとミラは先程までルーシィ達が集まっていたテーブルへと招かれた。

 

「お帰り!ツナ!ミラさんも!」

 

「お疲れ様でした!」

 

「ありがとう。ルーシィ、ウェンディも」

 

「ありがとうね、二人共」

 

「ミラ姉!怪我とかしてない?」

 

「全然大丈夫よ」

 

ツナとミラか座った席にはルーシィ、ウェンディ、リサーナ、カナ、レビィ、ヒスイが座っている。シャルルもウェンディと一緒に居た。運ばれてきた料理を食べながらクエストの話をしている。

 

「って訳でギルダーツはまたどっか行っちゃったんだ」

 

「相変わらずフラフラしてんのね~」

 

「でも4人にギルダーツまで加わったなら本当に最強チームね!!」

 

「でもその悪魔も強かったのよ。ツナの記憶から強い人を具現化してたから……その人達は少なくともギルダーツと同じかそれ以上だったわ」

 

「何それ!?」

 

ツナの世界にはギルダーツレベルがゴロゴロいるのだろうか……とルーシィやウェンディはそれを聞いて身体を震わせていた。

 

「あ、そういえばヒスイに陛下から手紙を預かってきたよ」

 

「ありがとうございます!アルビオンの民達もようやく解放されたのですね……良かった」

 

「ヒスイも知ってたのね……って当然よね」

 

「依頼が終わった後、アルカディオスさんがすぐに食料品や生活用品を対応してくれたから街の人達も戸惑ってはいたけど何とかやっていけると思う」

 

「そうですか……アルカディオスやダートンもがんばっているのですね……」

 

「それにしてもしばらく居ない間に人が増えたわね」

 

周りを見ると知らない顔がたくさんあった。新人の女性達はツナを、男性はミラやルーシィ達をチラチラと見ていた。

 

「これだけ人数が増えても依頼が山程あるから私達も忙しかったのよ」

 

「私達も依頼がんばりました」

 

「ミラ姉、またS級の依頼も来てたみたいだよ」

 

「そうなの?」

 

久し振りの会話を楽しみながらツナもワインを呑む。するとほろ酔いで顔を赤くしたカナが猫なで声でツナにおねだりする

 

「ねえツナ~報酬で美味しいお酒おごってよ~いっばいもらったんでしょう~」

 

「相変わらずだねカナは。でもダメだよ。それに俺も買いたいものがあるしね」

 

「何を買うの?」

 

レビィの質問にテーブルについているみんなは興味津々といった感じで身を乗り出す。

 

「家を買おうと思ってるんだ」

 

「どうして急に?」

 

「ま、この世界に骨を埋める覚悟が出来たって事かな。ジョットみたいにね」

 

「でも……いいの?向こうにはご家族や仲間……それに京子ちゃんって子もいるんでしょう?」

 

ツナがそう答えるとミラが嬉しそうに、でも不安そうに聞いてくる。ツナは胸元からお守りを取り出してしっかりと握る……

 

「……このお守りには京子ちゃんが自分の炎を込めていたんだ。そして俺を助けてくれた……その時にその炎が京子ちゃんの想いを伝えてくれたんだ」

 

別れてからも自分の事を心配してくれた京子に感謝すると共にきちんとお別れをすることができた……

 

「京子ちゃんは俺が過去に囚われずに現在を見ることを願ってくれたんだ。だから俺も現在を精一杯生きていこうと思えるようになったんだ……みんなと一緒にね」

 

「ツナ……ってかキョーコって誰なのよー!?」

 

ルーシィが癇癪を起こしたように聞いてくる。

 

「一言で言うと……元カノ」

 

その言葉にルーシィとウェンディはこの世の終わりのような顔をして落ち込んだ……

 

「ちょっと!ルーちゃん!元って言ってるじゃない!落ち込まないでよ!」

 

「ウェンディもしっかりして下さい!!」

 

「そりゃ~ツナならいてもおかしくないわよ~ミラは何とも思わないの?」

 

レビィとヒスイが落ち込む二人に声をかける中、カナはミラがニコニコしてるのを見て問いかける。

 

「気にはなるけどツナは私達と未来を歩んでくれるって言ってくれたからそれが嬉しいの……そして私と一緒に暮らしてくれるって♪」

 

「「「「「何~!!?」」」」」

 

同じテーブルの女性陣の歓声だけでなくギルド中から悲痛な叫びが巻き起こった。

 

「ミラ姉!ホント!?」

 

「そんな~!?」

 

「ツナさん……」

 

顔を輝かせるリサーナ、逆に落ち込むルーシィとウェンディを横目にツナが慌てて声をあげる。

 

「ちょっとミラ!そこまでは言ってな……危なっ!ってエルフマン!?」

 

いきなり背後から殴りかかってくる拳を避けて振り返るとそこには顔を俯かせるエルフマンの姿……

 

「姉ちゃんは……姉ちゃんは渡さねえ!!」

 

「話を聞いて!エルフマン!!」

 

「「「「「ツナ~!!!」」」」」

 

何とかエルフマンを落ちつかせようと宥めるがまったく効果がない。そしてエルフマンだけでなくマカオやワカバなどのミラジェーンファンがツナを取り囲む……

 

「かかれ~!!」

 

「「「「「ウォォォォッ!!!」」」」」

 

「だから俺の話を……」

 

嫉妬に狂った男達が一斉にツナへと襲いかかる……ツナはそれをいなしながらギルドを走り回る。

 

「よっしゃ!てっぺん取るチャンスだ!」

 

「ギヒッ!てめぇじゃ無理だ!俺がやる!」

 

「言ってろ!俺がツナを凍らせてやる!」

 

さらにはナツ達まで加わってさらにカオスな状況になってしまう……

 

「ミラさん!さっきの話は本当なんですか!?」

 

「ズルいです!ミラさんばっかり!」

 

「あら?二人も一緒に住めばいいじゃない」

 

「いや……ツナはほっといていいの?てゆうかツナの意見は?」

 

「ま、大丈夫でしょ。ツナだし……」

 

「テーブルとかたくさん壊れてますけど……」

 

「いつものことだね」

 

「それよりも三人共一緒に暮らすなら……」

 

女性陣はツナをほったらかして勝手な意見を出し合っていた……

 

「やれやれ……相変わらず騒がしいギルドだ。止めねえのか?エルザ」

 

「ふふっ……こういうのも久し振りだからな。たまにはいいだろう。む、このケーキは旨いな。キナナもうひとつ頼む」

 

「はいどうぞ」

 

「いや、ワシとしては止めて欲しいんじゃが……ま、ええか……」

 

カウンターで騒動を眺めながら酒を呑んでいるラクサスとケーキに夢中のエルザは騒動を止めようともしない。マカロフは溜め息をつきながらも懐かしい光景に目を細める。

 

「こっのっ!いいかげんにしろ!!」

 

この騒動はキレたツナが全員を沈めるまで続いていた。誰もがこの騒がしい日常を楽しんでいた……しかしこの日常が崩れ去る日がすぐそこまで来ていることを誰一人気づいてはいなかった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回からはタルタロス編に入っていきます。太陽の村編は省略します。

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