妖精達と歩む大空   作:グリーン

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10年クエスト三話目……いよいよ佳境に入っていきます。


囚われた大空

 

 

-夢幻宮

 

アルビオンの人々を救うために夢魔リリスの居城である夢幻宮を進むフェアリーテイル最強チームの5人。

 

夢幻宮は夜空の海を歩いているように幻想的でエルザとミラは感嘆の声を漏らすほどだった。

 

「綺麗な所ね……」

 

「ああ……こんな状況でなければ充分に堪能できたのだがな……」

 

先程の門番のケルベロス程ではない強さの魔獣が四方八方より襲いかかって来る為進みは順調とは言えなかった。

 

「雑魚ばっかりでうぜえな!」

 

ラクサスは体から広範囲に雷を撒き散らして数体の敵をまとめて黒焦げにする……

 

「とにかく先に進もう」

 

ツナの言葉にみんな頷いて先へと進む。しばらく道なりに進んで行くと、道の先に魔方陣が見えてきた。全員気を引き締めて魔方陣へと向かう。

 

「明らかに罠ね」

 

「だろうな」

 

「だが行くしかないな」

 

「じゃあ俺から……」

 

おそらく罠が仕掛けてあるだろうがそれを恐れる者はここにはいない……が、さすがに想定外の事が起きる。

 

先頭のツナが魔方陣へと足を踏み入れた瞬間、2番目のミラの目の前でツナと魔方陣は消えてしまった。まるでツナだけを招き入れたように……

 

「ツナァァッ!!」

 

「敵の狙いはツナか!?」

 

「命知らずな悪魔だな……」

 

「おっと、お客さんだぜ!」

 

ギルダーツが警告すると4人の周りに数えきれない程の魔獣が姿を現した。ミラを除く3人は素早く体勢を整えるがミラは未だに呆然とツナの消えた場所を見ていた。

 

「ミラ!何をしている!早く……」

 

エルザがミラに声をかけるがその表情が固まる……

 

「フ……フフ……ツナが狙いなの?……フフフフフ……」

 

「お……おいミラ?」

 

「あ、これはやべぇパターンだな……」

 

ラクサスが冷や汗混じりに呟くとミラはサタンソウルで変身する。それも最強のサタンソウル、ミラジェーン・シェトリに変身していた。

 

「ツナを返しなさい!!」

 

怒号と共に振り抜いた右腕から発した衝撃波によって前方の魔獣の集団が消し飛んだ……

 

 

 

 

 

外でミラジェーンが暴れまわっている頃、ツナは通路を進んでいた。罠があるのは分かっていたがまさかいきなりみんなと引き離されるとは思っていなかった。

 

「俺だけを狙ったのか?ジョットの子孫だからかな?封印されて恨んでいるってことかな……」

 

だが好都合だ。相手がこちらに来るのなら倒して街の人達を救える……ツナは用心しながらも通路の奥へと進んで行った。

 

しばらく進んでいると随分と広い部屋へと辿り着いた。向こう側には豪華な扉があり、いよいよ敵が近づいているのを感じた。

 

扉が開く音が部屋に響きその奥から足音が聞こえる。ツナは歩みを止めて敵を待ち構える……

 

-複数だな……部下の魔獣か?-

 

そして扉の奥から現れた者を見てツナは驚愕する。

 

「な!何で……」

 

「10代目……御命頂戴致します」

 

「よっ!ワリーけどツナ……死んでくんね?」

 

「隼人……武……?」

 

さらに後ろから退路を断つように現れる者達……

 

「極限に死なんかぁ!沢田ぁっ!!」

 

「ツナ!死ね!だもんね!」

 

「了平さん?ランボまで……?」

 

ツナの右側に藍色の霧が集り2つの人影を作り出す。左側には天井から誰かが降ってきた……

 

「クフフ……君の体をいただきましょうか」

 

「ボス……お願い……死んで」

 

「今から君を咬み殺す」

 

「骸……クローム……雲雀さんまで……ふふっ……どうやら俺を怒らせるのが上手いようだね……リリスゥッ!!」

 

ツナには彼らが偽物ということは超直感に頼るまでもなく分かっていたが、かつての信頼する仲間達を利用することは許せなかった。襲いかかってくる守護者達を迎え撃つべくツナは炎を灯した……

 

 

 

 

 

 

 

リリスは豪華な椅子に座ってツナが怒るのを心地良さそうに微笑んで見ていた。

 

「フフ……いいわ……あの顔……ゾクゾクしちゃうわ……偽物と分かっていても大切な者達を傷つけることは彼にとって相当の苦痛を伴うはず……」

 

もちろん彼らは偽物……この夢幻宮はリリスの呪法によって作られたもので、この中ではリリスは他人の記憶を覗き、呪法によって記憶の人物を具現化することができる……そして彼らはツナの記憶を元に作り出されているのでかなり強い……

 

「それにしても……やっぱり人間って凄いわ……彼らがあの子と共にあれば冥府の門(タルタロス)だって簡単に滅ぼせるでしょうね……」

 

かつて人間に対する認識の違いから抜けたギルドを思い出しながら戦いを眺めているリリス……

 

「さて……もう一押し必要かしらね……この子がいいわね……ふふっ妬けちゃうわ……」

 

再びツナの記憶の中からある人物を造り出そうと呪力を集中する……

 

 

 

 

 

 

「ワオ!さすがだね」

 

雲雀のトンファーによる連撃を紙一重で躱しつつ後ろに下がっていたツナだったがその背後に2人の気配を感じて雲雀を蹴り飛ばす。振り返るとそこには2色の死ぬ気の炎が燃え上がっていた……

 

「時雨蒼燕流特式十の型燕特攻(スコントロ・ディ・ローンディネ)!!」

 

極限太陽(マキシマム・キャノン)!!」

 

「くっ!炎の性質まで同じなのか!」

 

直前に炎を噴出して空へ逃げるツナ……そこへ無数のダイナマイトが飛んでくる。ご丁寧に嵐の炎で着火したのか導火線の炎は赤く燃えていた。

 

炎をバリアのように広げて爆風を防いだツナだったが着地すると同時に頭を下げる。頭があった場所には三叉の槍が2本交差していた。

 

「クフフ……惜しいですね」

 

「さすがボス……」

 

誰もいない場所から現れる男女……骸とクロームが幻覚で隠れていたようだがツナの超直感はそれすらも見透していた。

 

「死ね!死ね!!」

 

ランボが髪の毛から手榴弾を取り出して次々に投げてくる……5歳の頃と違って適当に投げるのではなくツナのみを狙っている。10歳のランボなら恐れるに足らないが今の状態から10年バズーカを使われたら厄介だ。

 

セオリーならランボから倒すべきだと思うが一緒に暮らしていた弟のような存在に攻撃するのは躊躇われるし、ランボの打たれ強さに定評がある。

 

そこに雲雀がトンファーに雲の炎を纏わせて再び攻撃してくる。どうでもいいが雲雀が群れてる時点で偽物確定だ……

 

「いつまでも構ってる暇はないな」

 

冷静に呟くと殺傷力を低くする代わりに調和の質を高くした炎を両手に灯す。

 

そして次の瞬間に目にも止まらぬ速さで守護者達の間をすり抜けていた。その際に炎を灯した掌で守護者達に触れている。それだけで守護者達の動きは止まりやがて粒子となって消えていった……

 

ツナが守護者達より確実に上といえるのは最大攻撃力とスピードだ。今回は大空の7属性随一のスピードを利用して勝負をかけた。彼らには本物にはない致命的な弱点が存在したのをツナは感じ取っていた。

 

彼らはリリスによって魔力に似た呪力によって造られた偽物だ。つまり自然の理を乱す存在なので大空の属性、調和によって無力化することができる。

 

だが偽物とはいえ本来もう会えないはずの守護者達を自分の力で消すことはツナの心に深い傷を残した。そしてその傷が一瞬の隙を生むことになる……

 

「偽物とはいえみんなが消える姿はキツいな……」

 

「さすがはツナ君だね」

 

「!!」

 

自分の背後、至近距離からかけられた声に驚いて攻撃しようと振り返るツナだったがその顔を見た瞬間に目を見開き、動きを止めてハイパーモードすら解除してしまう……

 

「き……京子ちゃん……」

 

そこにはかつて愛した少女……笹川京子が最後に見た高校生の頃の姿であの頃と変わらない太陽のような微笑みを浮かべて立っていた。

 

「ツナ君」

 

「!しまっ……」

 

呆然とするツナの名前を呼んで普通の女子高生とは思えない速さでツナの懐に飛び込んだ京子は動こうとしたツナの唇を奪う……慌てて引き離そうとするツナだが甘い香りに意識が遠のいていき、やがてツナの意識は黒く塗りつぶされていった……

 

「フフ……ツナ君安心して。ツナ君がこれから見るのは楽園の夢なんだから……だがらその綺麗な魂は私に頂戴ね……」

 

京子の姿がぶれるとそこに現れたのはリリスだった。

 

「あなたは永遠に私のものよ……」

 

リリスは意識を失ったツナを愛しそうに抱き寄せた……

 

 

 

 

 

 

「イビルエクスプロージョン!!」

 

ミラの掌から放たれた魔力が大爆発を起こして最後に残った十数体をまとめて吹き飛ばした。4人によって魔獣は全滅したが中でもミラの暴れっぷりはギルダーツさえも顔をひきつらせていた。

 

「おっかねえ……」

 

「やっぱ怒らせるとやべえな……」

 

「まるで昔のミラだな」

 

「ツナはどこなの!?」

 

焦るミラの前に再び魔方陣が現れる。ミラは脇目もふらずに魔方陣へと突入して行く……

 

「待て!ミラ!!」

 

「ちっ!先走りやがって!」

 

「俺達も行くぞ!!」

 

残った3人もすぐにミラの後を追って魔方陣に突入するとそのまま内部を駆け抜ける。外のように敵も現れず通路の最奥の広い部屋へと辿り着いた4人はそこに広がる信じられない光景に立ち止まる。

 

「ツ……ナ……?」

 

4人が見たのは棘によって十字架に磔にされ、意識を失っているツナの姿だった。あのツナが敵に敗れ囚われている事に4人共大きな衝撃を受けていた。

 

「フフフ……私の夢幻宮にようこそ……歓迎するわ」

 

そこに姿を現したリリスに4人は警戒する。現れた妖艶な美女は磔にされたツナへ寄り添うようにして4人を迎える。

 

「ツナに何をしたの!?」

 

「フフ……この子は今夢を見ているの。幸せな夢を……二度と覚める事のない楽園の夢をね……本来なら魂を抜いてから傍に置くんだけど……」

 

リリスは熱を帯びた目でツナを見ると頬を優しく撫でる……

 

「この子の事気に入っちゃった。魂だけじゃ足りないわ……体も心も魂も……この子の全ては私がもらうわ」

 

ピシッと空気にヒビが入る音が聞こえたような気がした。

 

「あいつは悪魔にまでもてるのかよ?」

 

「悪魔とはいえあれだけの美女だからな……羨ましいと思うぞ」

 

「そんなことを言ってる場合か!早くツナを助けなければまたミラが暴走するぞ!」

 

固まるミラの後ろでラクサス達3人はこそこそ話をしていた。硬直から解かれたミラは笑顔でリリスに話しかける。

 

「へえ……随分と調子にのってるわね。私のツナにこんなことして……」

 

「あら?彼の記憶によるとあなたはただの仲間じゃなかったかしら?」

 

「…………」

 

「…………」

 

睨み合う二人だがいつまでもそうしていてもしかたないのでギルダーツが詰問する。

 

「おい!アンタが悪魔で、強いのは分かってるがツナが倒される程とは思えねえ!ツナに何をしやがった!?」

 

リリスはミラから視線を外してクスリと笑うとギルダーツに向き直る。

 

「鋭いわね。確かにこの子とまともに戦ったら私が負けるかもしれないけど、どんな人間でも心は弱い……この子は優しいが故に傷つきやすい心を持ってるしね」

 

「なるほどな……どんな手段か知らねえがツナの心を利用したのか」

 

「許さない……ツナを傷つけて……」

 

「ツナは返してもらう」

 

「俺達4人に勝てると思ってるのか?」

 

戦闘体勢を整える4人に対してリリスは余裕の笑みを崩さない……

 

「怖いわね……ならばこちらも助っ人を呼ばせてもらうわね」

 

リリスが指を鳴らすと光の玉が現れそれがどんどん大きくなってずんぐりとした体型の人の形に変化していく……

 

明らかに人間より巨大なシルエット。そして機械の体……それはツナ達の世界でストゥラオ・モスカと呼ばれる兵器だった。

 

「行きなさい」

 

リリスの命令に従ってモスカはジェット噴射でこちらへ飛翔して来る。

 

しかしそのようなものに気圧される者はここにはいない。ギルダーツが一歩前へ出て拳を振るう。

 

「クラッシュ!!」

 

拳を叩き込まれたモスカはギルダーツの魔法の効果でバラバラになってしまう。それを見ても顔色一つ変えないリリス……

 

「こんなガラクタじゃあ俺らは殺れねえぞ?」

 

「ふふっ……なかなかやるじゃない。じゃあ次はどうかしら?」

 

再び光の玉を呼び出すリリスだが今度はこちらの人数に合わせたのか4つの光が出現した。

 

「さあ!彼らはこの子が知る中でもかなりの強さを誇るわ!彼らに勝てるかしら!?(もっと強い者達もいたのに何故か呼べないのよね……)」

 

そして4人の姿が明らかになる……

 

「君達がツナ君の敵なの?」

 

赤い髪を持ったどこか幼さの残る顔立ちの気弱そうな青年……

 

「カッ消す!!」

 

顔に傷を持った見た目的にはマフィアというのが一番しっくりくる2丁拳銃を持つ青年……

 

「ワオ!咬み殺しがいがありそうだね」

 

トンファーを構えて獰猛な肉食動物のような笑みを浮かべるスーツ姿の青年……

 

「ん~君達ってば邪魔なんだよね~消えて♪」

 

飄々としながらも鋭い瞳でこちらを見ている危険そうな白い髪の青年……

 

「ツナの記憶から呼び出しているのか!?」

 

「ってことはマフィア達か?」

 

「でもあの子とかマフィアに見えないんだけど」

 

「油断するなよ!来るぞ!散れ!!」

 

ギルダーツの警告に4人は距離をとった。それを見たマフィア勢の4人もそれぞれに別れる……

 

フェアリーテイル最強チームVSマフィア達の戦いが始まった……

 

 

 

 

 




炎の強さ的には炎真>白蘭>ザンザス≧雲雀
戦闘技術的にはザンザス=雲雀>白蘭>>>炎真かな?

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