妖精達と歩む大空   作:グリーン

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10年クエスト2話目です。


夢幻の悪魔

 

 

-アルビオン

 

「いや~こんな旨い飯は久しぶりだぜ!」

 

ツナ達四人の前に現れたギルダーツはツナがボックスから出した食事を美味しそうに食べている。まともな食事は街に寄った時くらいしか食べないようだ。

 

「そういえば大魔闘演武優勝よくやったな!まさかこんなに早くフィオーレ一のギルドに返り咲くとは思ってもみなかったぜ」

 

「まあそのおかげで厄介な依頼も回ってきたんだけどね……」

 

ミラの言葉に3人も苦笑する。ギルダーツも厄介な依頼ということに興味を示した。

 

「アルビオンの件か……」

 

「ああ……おっさんは何か知らねえか?正直いってどうなってるのかさっぱり分からねえ」

 

「何より情報が少なすぎるのだ」

 

「どうかな……何者かが仕掛けたのは間違いねえとは思うけどよ。それが何なのかまでは分からん」

 

ギルダーツも何故街がこのような状態なのかを調べていたようだが有力な手がかりは何も掴めなかったらしい……

 

「ちなみに何でこの街に?」

 

「……ここは俺の妻と初めて会った場所だからな。久しぶりに来てみたらこんな状態だからびっくりしたぜ」

 

「カナも連れて来れば良かったのに……」

 

「いずれな。その前にこの街の異常をどうにかしねえとな」

 

「と言っても実際どうするよ?」

 

ラクサスの問いに答える者はいない。あまりにも手がかりが無さすぎてどうすればいいのか分からないといった感じだ……ミラは最後の希望とばかりにツナに振り向く。

 

「ツナの勘で何か分からない?」

 

ツナは少し考えて口を開く。

 

「……少し気になる事はあるけどそれが何を意味するのかは分からない。とにかく明日もう一度街を調べてみよう」

 

その場にいた全員が頷くと今日はお開きとなった。

 

 

 

 

 

翌日はギルダーツを加えて5人となった一行は朝から別れて街を回り探索を進めていく……

 

町長と思われる屋敷を発見したツナはふと気になってそこを探索していた。家の中には町長らしき老人とその子供、孫が街の人々と同じように固まっている。

 

「ん……?」

 

執務室と思われる場所にいた町長の固まった姿を見てツナは他の人々とは違う箇所がある事に気づいた。町長は執務室の椅子からまるで立ち上がって逃げるような体勢のまま固まっていた。その顔は恐怖と絶望に染まっている……

 

「他の街の人々は普段と変わらないまま固まっているのに町長だけは何故か恐怖を感じている顔をしている……?」

 

この部屋を見渡して見ると本棚の中の一冊の本の背表紙にここにあるはずのないものを見つけて驚愕した。

 

「これは!?」

 

ツナが発見した本にはフェアリーテイルとボンゴレの紋章が刻んであった。フェアリーテイルの紋章が刻んであるのもおかしいがまだ理解できる。だが何故異世界のボンゴレの紋章まであるのか……ツナは焦ってその本を開いた。

 

「そういうことか……」

 

ツナは次々とページを捲っていく。一通り目を通し終わるとその本を持って仲間達との合流場所へと戻る事にした。

 

 

 

 

 

「手がかりが見つかった!?」

 

「うん。おそらくだけどね」

 

仲間達と合流したツナが町長の件を話すと確かに街の人々は何も気付かぬまま固まっていたので何かあると感じる4人……

 

「もしかして何か知ってたのかもな……」

 

「あるいは犯人を目撃したのか……」

 

「でも話を聞くこともできないんじゃ……」

 

「で?ツナは他に何か見つけたのか?」

 

ツナはギルダーツの問いに頷くと見つけた本をみんなに見せる。それを見たメンバーは驚く。

 

「フェアリーテイルの紋章!?……とこれはナッツちゃんのボックスにあるのと同じ紋章?」

 

「これはボンゴレの紋章なんだ」

 

「何故それがここに?」

 

異世界の紋章を疑問に思う4人……ツナはこの本の内容について語り出した。

 

「これはこの街の町長のお父さんかおじいさんが残したらしい日記……というより手記なんだ。そしてこの本によると過去にもアルビオンで同じことが起こっていたらしい」

 

「「「「な!?」」」」

 

過去にもこれと同じ事が起きていたと聞き驚く4人……だがそれはすなわち解決策があるということだ。4人は表情を引き締めて続きを促す。

 

「その犯人は夢魔リリス……人々の魂を捕らえて夢幻宮と呼ばれる場所に引きずり込んで楽園の夢を見せ続ける悪魔らしい」

 

「じゃあこの街の連中も同じように……」

 

「そうゆうこと、魂を囚われた者は今の街の住民と同じような状態になったらしい」

 

4人は絶句するがいち早く正気に戻ったギルダーツがツナに質問する。

 

「当時はどうやって解決したんだ?」

 

「手記によるとそれを解決したのが当時のフェアリーテイルで俺の先祖のジョットらしい。ただし倒したんじゃなくて、止めをさす前に夢の中に逃げ込んだからしかたなく封印したみたい」

 

「ちょっと待て!それじゃその悪魔が復活したのか!?」

 

ラクサスはの叫びは他の3人も思っていた事だ。もちろんツナも同じ考えなので頷く。

 

「多分ね……この本の最後にはリリスが復活したならこの2つの紋章を持つ者に助けを求めるように書いてあった。それを実行する前に……」

 

「やられちまったわけか……で、その悪魔はどこにいるのか分かるのか?」

 

ギルダーツの問いにツナは頷くと背後の広大な森を指差す。

 

「この森のどこかに夢幻宮に繋がる空間の歪みがあるらしいけど正確な場所は分からない……でも俺の超直感で見つけてみせるよ。ジョットも見つけたらしいし」

 

「それに頼るしかないか……相手のテリトリーでバラけると危険だしな」

 

「お願いね!ツナ!」

 

5人はそのままツナを先頭に森の中へと進んでいった……

 

 

 

 

 

 

 

「遂に見つけたね!」

 

「凄いわ!ツナ!」

 

「「「ちょっと待て!!」」」

 

夢幻宮への空間の歪みを見つけたツナとそれを喜ぶミラだったが他の3人が声を揃えて抗議する。

 

「どうしたのみんな……?」

 

「どうしたのじゃねえよ!何でこんなにあっさりと見つけてんだよ!?」

 

ツナの超直感を初めて見たギルダーツの驚きといったら他の2人の比ではない……

 

「相変わらず理不尽な直感だな……」

 

「ツナは本当に人間なのか?」

 

「みんな酷い…………」

 

「まあまあ……それよりもこの空間の裂け目から夢幻宮に行けるのね?」

 

落ち込むツナを慰めるようにミラが話を変えると全員の顔が引き締まった。この先に囚われた街の人々の魂と夢魔リリスがいるのは確実だ。

 

「みんな、行こう!」

 

「そうね!」

 

「何としても囚われた人々の魂を解放する!」

 

「ついでに10年クエストもクリアだ!」

 

「久々に燃えてきたぜ!」

 

恐れる者はなく、5人は空間の裂け目へと飛び込んでいった……

 

 

 

 

 

空間の裂け目へと飛び込んだ5人の目の前には巨大な門が待ち構えるようにそびえ立っていた。ただし門の扉そのものは開いている。

 

「門は開いてるな……来るなら来いってか?」

 

「おもしろい。その余裕がいつまで続くか教えてやらねばな……」

 

ラクサスとエルザが好戦的な笑みを浮かべる中でツナは門の上部に文字が彫られているのを見つけた。

 

「なになに……この門を通る者、一切の希望を捨てよ……って地獄の門でも気取ってるのかな?」

 

「冥府の門……つまりタルタロスが関係してるかもしれねえな」

 

「あのバラム同盟の最後の闇ギルドが?」

 

ツナとギルダーツ、ミラが文字について話していると真上に不吉な気配を感じたツナが叫ぶ。

 

「……!みんな!散って!!」

 

「「「「!!」」」」

 

「「「グルルルル……ガアッ!!」」」

 

上から飛び降りて来たのは門と比べても遜色ないほどの大きさを誇る犬のような怪物……しかも頭が3つ存在する。門番としてはポピュラーな怪物だった。

 

「門番は三ツ首の魔犬、ケルベロスかよ!」

 

「でけえな……」

 

「「「グルァァァッ!!」」」

 

ケルベロスはその3つの口から同時に炎を放つがそこはS級魔導士……全員簡単に躱している。

 

ミラはサタンソウルで変身して、エルザは黒羽の鎧を纏って戦闘体勢を整える。

 

先手を取ったのはラクサスだった。ラクサスは右手に雷を集めてそれを槍にと変化させるとそれを気合いと共に投擲する。

 

「雷竜方天戟!!」

 

魔犬の左側の眉間に狙い違わず突き刺さり絶叫が響く中で今度はエルザが魔犬の右側の首を狙って飛び込んだ。

 

「黒羽・月閃!!」

 

目にも止まらぬその一閃は魔犬の太い右の首を容易く斬り飛ばした。さらに残った中央の顔には上空に飛んでいたミラが魔力を集束した光線を真上から放った。

 

「ソウルイクスティンクター!!」

 

真上からの莫大な魔力光線を受けたケルベロスは反撃する間もなく中央の頭を潰され最早虫の息といった所だがさらには……

 

「クラッシュ!!」

 

光線の余波が収まった瞬間にケルベロスの心臓部にギルダーツが拳を打ち込んだ。ギルダーツの魔法によりケルベロスの体の骨はバラバラに砕かれて立ち上がることもできない……

 

ツナは自分も攻撃しようと構えていたが止めた。明らかにオーバーキルのダメージだったからだ。

 

すると、魔犬の体が光りだしてそのまま弾けたように粒子となってやがて消えてしまった……

 

 

 

 

 

 

その戦いの様子を映像で見ている夜より暗い黒髪を持つ妖艶な美女……露出の高い服に身を包みその蠱惑的な肉体を惜しげもなく晒しているのはこの夢幻宮の主であるリリスだ。

 

「ふふっ……この夢幻宮にお客様なんて百数年振りかしら?その中でもこの青年は……」

 

水晶を通してツナを見つめるその視線は熱を帯びている……

 

「私を封印したあの者そっくりね……血縁かしら?あの時は彼の魂を手に入れる事が出来なかったけど……」

 

百年以上前に自分を封印したジョット……この夢幻宮に封印されてなお彼の魂を手に入れる事を夢に見続けていた。

 

「ああっ!彼と同じ闇を知りつつも光り輝く魂……今度こそ絶対に手に入れてみせるわ!そして永遠に私の傍に置いて愛でてあげる!想像しただけで……」

 

体をビクビクと震わせながら恍惚の表情を浮かべるリリス……

 

「まずは彼の心を徹底的に虐めちゃおうかしら?そして魂を絶望という私色に染めてあげるの……ふふっ……お姉さんがじっくり可愛がってあげるからね」

 

見る者を魅了する笑みを見せながらリリスは胸を高鳴らせるのだった……

 

 

 

 

 

 

 

ケルベロスが消えて呆然としていたツナ達だったがここで立ち止まっててもしかたないと思い先に進もうとすると突然ツナが明後日の方向を見て立ち止まる。

 

「どうしたの?ツナ」

 

「……見られてるね」

 

「まあここは奴の腹の中だからな」

 

「こちらの行動は筒抜けということか……」

 

「どっちにしてもやることは変わんねえよ。リリスって奴ををぶっ飛ばすだけだ」

 

「ラクサスの言う通りだね。それじゃあ行こう!絶対に街の人達を助けよう!!」

 

そうして一行は門を通りリリスの待つ夢幻宮へと歩を進めるのだった……

 

 

 

 

 




次回は……明日同じ時間に!

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