妖精達と歩む大空   作:グリーン

67 / 90
大変お待たせしました。10年クエスト開始です。


いざ10年クエスト!

 

 

-クロッカス

 

ツナ達4人がS級クエストに出発してから3週間と少しの時が流れた……最初の依頼である遺跡の攻略を終えてから次々とクエストをこなしていくフェアリーテイル最強チーム。

 

桁外れに強い魔獣の討伐や百人以上を殺害した魔導士の逮捕など様々な依頼があったが4人で力を合わせ、時には二手に別れて無事に達成することができた。

 

残る依頼は10年クエストを残すのみとなった。そして依頼人に会う為にこの国の王都である花咲く都、クロッカスへとやって来たのだった……

 

 

 

 

 

 

「とりあえず依頼人には明日会いに行くということで今日はこの宿で休もう」

 

「もう夜だしね……さすがに今日は無理ね」

 

「けっこう疲れてるしな……」

 

「そうだな。残すは10年クエストだからな……しっかりと鋭気を養わなければ……」

 

4人共連日のクエストでかなり疲労が溜まっていたのだろう。日が暮れる頃に宿に着くとそのまま一晩休む事になった。

 

「みんなは10年クエスト受けたことがあるの?」

 

「いや……今のフェアリーテイルで受けたことがあるのはギルダーツのおっさんだけだ」

 

フェアリーテイルにおいてマカロフより5代目マスターを任命されながら再びそれをマカロフへとスルーパスして旅に出た男だ……

 

「そもそも数年に一回くれば珍しいくらいなの」

 

「単純な討伐などなら誰かが既に達成してるだろうからな……今回の件は大きな謎を解かねばクリアはできんのだろう」

 

ツナ達は依頼書を広げて読む……依頼書にはこう書かれていた。

 

『アルビオンの街を救ってくれ!!』

 

その言葉と依頼人の名前と報酬額しかかかれていない。何から救えばいいのかさっぱり分からなかった……そして注意書きには……

 

「詳しくは依頼人から聞けって何だよ?」

 

「しかもその依頼人が……」

 

「国王陛下って……」

 

「国でも問題視してるってことだね」

 

大魔闘演武の際に会った国王を思い出しながらその国王が10年もの間悩み続けた問題ということで自然と力が入る一同……空気を変えるようにツナが明るく声をかける。

 

「まあ今考えてもしかたないし悩むのは明日陛下に謁見してからだね」

 

「そうね。今日はゆっくりしましょうか」

 

「だな……さっさと飯食いに行こうぜ。もうツナのボックスの中身も少ねえんだろ?」

 

「そうだな……その後今日は早目に休むとしよう」

 

ツナ達はエルザの言葉に頷くと食事の為に部屋を出るのだった……外に出るついでに城の門番の兵士には国王からのクエストを受けたことを伝えて明日謁見出来るように伝えてもらった……

 

 

 

 

 

 

 

翌朝身支度を整えて城に向かうと門の所にアルカディオスがいてツナ達を出迎えていた。

 

「しばらく振りだな、フェアリーテイルの諸君」

 

「アルカディオスさん、わざわざありがとうございます」

 

「あなた方ががこのクエストを受けてくれることを陛下も心強く思っておられる。さ、まずは陛下と謁見するので着いて来てくれ」

 

アルカディオスの案内で謁見の間へ向かう一堂……ドラゴンと戦ったのはついこの間だったはずだが城も街もすっかり元通りになっていた。

 

玉座に座る国王は笑顔でツナ達を迎えた。……さすがに今回はマトー君の被り物はしていなかった。

 

ツナ達はひざまずくべきかと悩んだが国王自身から止められた。そのまま話を始めるかと思いきや隣室にある応接室に通される。

 

「ささっ!まずは座ってくれい!」

 

「ですが……」

 

さすがに一国の王と同じ席に座るほど常識はずれではない面子だ。これがナツならば即座に座っていただろうが……

 

「構わんよ。少し長くなりそうだしの!アルカディオス!侍女にお茶を用意させてくれい」

 

「かしこまりました。陛下」

 

アルカディオスがチリンとベルを鳴らして侍女を呼んで用件を伝えると侍女は一礼して去って行った。ツナ達は恐縮しながら椅子に座る。

 

「詳しい依頼の話はお茶を飲みながらするとして……娘は元気にしているかね?」

 

国王としてでなく一人の親として尋ねてくる国王にミラが笑顔で答える。

 

「私達がギルドを出たのは3週間程前なので現状は分かりませんがギルドの者達とも仲良くされていました」

 

「初依頼には自分が付き添いましたが完璧にこなされておられましたよ。魔導士としてのレベルも高いのですがやはり直接的な戦闘は不可能なので誰かと一緒にクエストをするように伝えてあります」

 

ツナの言葉に嬉しそうに顔を綻ばせる国王……アルカディオスも笑顔でそれを聞いていた。

 

「そうかそうか!上手くやっておるか!これからも娘をよろしく頼むぞい!」

 

「もちろんです。もう彼女はフェアリーテイルの仲間なのですから」

 

エルザの言葉に満足そうに頷く国王。その時先程の侍女がお茶を持って来た。それぞれに配るとまた一礼して部屋を出ていった。

 

一息ついたところでツナは依頼書を取り出して国王の前に置く……

 

「陛下、この依頼……アルビオンの街を救えとありますが一体何から救えばよいのですか?」

 

ツナの質問は他の3人も聞きたいことだった。もちろんその質問が出ることを国王も予想していたのだが国王は言い難そうに眉間にシワをよせた。

 

「ふむ……アルビオンは森と湖の綺麗な街だったのじゃが……10年前のある日住民達が止まってしまったのじゃ」

 

「陛下、止まったとは?」

 

「それ以外に表現する言葉が見つからんのじゃ。人々は止まったまま10年の時が流れておる……何らかの魔法によるものだとは思うのだが……」

 

「住民達は生きているのですか?」

 

「おそらく……本当に住民の営みをそのままに止まっているからのう。老化もせず肉体の腐敗もない10年前のまま止まっておるのじゃよ」

 

「それって私達が体験した7年間の凍結封印のようなものなのかしら?」

 

「似たようなもんだろうな……だが俺達は生き延びる為にそれを受けたが悪意を持って仕掛けられたのなら最悪だな」

 

「仮に誰かの魔法によるものだったと仮定して犯人の手がかりなどはないのでしょうか?」

 

エルザの問いに答えたのは国王の横に立っていたアルカディオスだった。

 

「残念ながらな……これまでセイバートゥースやラミアスケイルの魔導士達もこの依頼を受けたが何の手がかりも得られなかった。もちろん国からも餓狼騎士団や優秀な解呪魔導士(ディスペラー)を派遣したのだがな……」

 

4人は顔を見合わせて頷くと椅子から立ちあがる。

 

「とりあえず現場に行ってみますね」

 

ツナの言葉に国王も立ち上がって深く頭を下げる。その行動に4人は驚き、アルカディオスは頭を下げる国王に思うところはあったがこういう人柄だったと溜息をつき自分も頭を下げる……

 

「どうか我が国民を救って下され」

 

その言葉を胸に刻んで4人は城を後にしてアルビオンに向かって出発した……

 

 

 

 

 

 

アルビオン……フィオーレ王国の北に位置するその街はかつては美しい森と湖に囲まれた街として避暑地として栄えていた。

 

4人はクロッカスから1日をかけてアルビオンに到着した。途中まで魔導列車で来たのだがアルビオンに行くということで車掌には相当驚かれてしまった。どうやら理由を知っていたらしい……

 

「ここがアルビオン」

 

「本当に止まっているわね……」

 

「空を飛んでる鳥も止まってやがる」

 

「動かすこともできんか……」

 

4人が見たのは街を行く人々だけでなく動物も含めた全ての生命が止まったまま動かない光景……草木の手入れもされずに放置されていたため街の外観はとても避暑地とは呼べない状態になっていた。

 

「草木や湖は固まっている訳じゃないのね」

 

「そうみたいだね」

 

「とりあえず別れて手がかりを探そうぜ」

 

「そうだな……では一時間後にここで」

 

 

 

 

 

 

ツナは街を回りながら手がかりを探すがそれらしきものは見つからない……試しに調和の炎で街の人々を戻せないか試してみたが効果がなかった。

 

「魔力は感じないけど何か別の力を感じるな……これはいったい……?」

 

その力がこの惨状を引き起こした原因なのだろうか?だが魔力じゃないとしても何らかの力で街の人々が変質されているとしたら調和の炎で元に戻せないのはおかしい。ツナは悩みながらも街を歩く……

 

 

 

 

 

 

結局大した情報も集まらずに集まった一堂は暗くなってきたので森の中で火をおこして食事をとることにした。

 

「何か分かったかよ?」

 

「さっぱりだ……」

 

「魔力とは少し違う何らかの力を感じたんだけどね」

 

「あ、私も!あれはサタンソウルを使う時に感じる力に似てるわ!」

 

それは呪力と呼ばれる力だったが今は誰も知らないことだった。

 

「じゃあなにか?悪魔の仕業ってことか?」

 

「確かにゼレフ書の悪魔ならばこんな事ができるのかもしれんが……」

 

「実はもう一つ気になる事があってね……」

 

ツナの言葉に3人は顔を向ける。ツナは自分が感じた事を話し出した。

 

「魔力であれ悪魔の力であれ何らかの力が働いて住人が変質しているなら俺の調和の炎で戻せるかと思ったんだけど……」

 

「無理だったということか……ということはツナよりも強い力で住人を止めているということか?」

 

「いや、もしそうなら俺の炎に反発する力を感じるはずだ。だけど炎には何の手応えも感じなかった……」

 

それがツナが一番気にかかっていたことだ。ツナの調和の炎ならいびつに歪められた状態……つまり調和していない状態ならば正常に戻す事ができるはずだ。

 

もし、術をかけた相手の力がツナの力を遥かに上回っていたとしても反応くらいは起きるはず。それすら起きなかったということは、つまり今の住人達は正常の状態といっているようなものだ。

 

だが異常なのは見るからに明らかだ……

 

「もしかしたら住人はここにいないのかもしれない」

 

「どういう意味?みんないるじゃない?」

 

「分からない……ただ漠然と思ったんだ」

 

ツナの言葉に全員が考えるがさっぱり分からない……やはり数々のギルドが何の手がかりを掴めなかった事を考えると一筋縄ではいきそうにない……

 

「さっぱりだな……どうする?」

 

「とにかく今日は休んで……!!」

 

「「「!!」」」

 

4人は同時に立ち上がった。森の奥から魔力の高まりと4人に向けて巨大な殺気が膨れ上がったからだ。殺気の持ち主に対して構えを取る3人……ツナは何故かその方角を見ているだけだ。

 

「気をつけろ!!」

 

「この巨大な魔力と殺気は……」

 

「相当強いわね!!」

 

「…………」

 

戦慄するラクサス達3人を置き去りにツナは前に出る。戦闘体勢を取っていないツナの姿に3人はギョッとする。

 

「ツナ!何してるの!?」

 

「無防備に近よるな!!」

 

「おい!どうした!?」

 

ツナは苦笑すると殺気の主に声をかけた。

 

「久しぶりなのに随分過激な挨拶ですね」

 

親しげに声をかけるツナに殺気も魔力も収まっていく。3人は混乱して何が何だか分からないといった顔をしている。

 

「……やれやれ、シャレの分からねえ奴だ」

 

森の中からかけられた声に3人は驚いた。聞き覚えのあるその声の主は……

 

「い……今の声は……」

 

「何故ここに……」

 

「驚かせやがって……」

 

足音と共にその声の主がその姿を現した。

 

「よお!元気だったか!」

 

「「ギルダーツ!?」」

 

「おっさんかよ……」

 

「お久しぶりですね、ギルダーツさん」

 

フェアリーテイルS級魔導士にして元5代目マスターギルダーツ・クライヴがその姿を現した。

 

 

 

 

 

 

 




10年クエスト2話目は明日投稿予定です。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。