妖精達と歩む大空   作:グリーン

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今週一更新ですができれば週二で更新できるようにガンバります


ヒスイの初クエスト

 

 

-フェアリーテイル

 

フェアリーテイルの依頼用の掲示板には貼りきれない程の様々な依頼が貼られていた。大魔闘演武前に使っていたギルドでは他のギルドでは受けないようなショボい依頼が数件しかない状態だった。

 

やはり大魔闘演武優勝と言う栄誉は宣伝効果という面では抜群らしい。7年間苦い思いをしたメンバー達も嬉しそうな顔で依頼を選んでいた。

 

「すごい数の依頼ね!」

 

「これでも全部じゃないのよ」

 

ルーシィの驚きにミラが苦笑する。しかも高額の依頼もたくさんありこれならきちんと仕事をすれば家賃に困ることもないだろう……

 

「なるほど……この中から好きな依頼を受ける訳ですね」

 

「あ、ヒスイも仕事行くの?」

 

「はい!家賃も稼がなくてはならないので」

 

「そういえばフェアリーヒルズに住んでるんだよね?家賃十万なのよね……」

 

「一応お父様が多少持たせてくれましたがあまりそれは使いたくないのでしっかりと仕事するつもりです」

 

そこへツナを伴ってマカロフがやって来る。

 

「最初は簡単な依頼から始めなさい。それと最初の依頼はツナが一緒に行くことになる」

 

「よろしくね。ヒスイ」

 

「こちらこそよろしくお願いします。ツナ」

 

「いいなぁ……」

 

ルーシィがそれを羨ましそうに見ていたがルーシィはヒスイに聞きたいことがあった。

 

「そういえばヒスイは戦闘用の星霊持ってるの?」

 

「ええ、一応持ってますよ」

 

「なら討伐系のクエストにしてみようか?いざとなったら俺が守るから」

 

「はい!お願いします!!」

 

ヒスイが嬉しそうに返事をするとツナと二人でリクエストボードを見て依頼を探しだした。

 

蚊帳の外になってしまったルーシィは自分も一緒に行こうと声をかけようとするがエルザに捕まりナツとグレイとハッピーと一緒に二人が気付かない内に依頼へと連れて行かれていた……

 

 

 

 

 

 

ツナとヒスイが選んだのは魔物討伐の依頼。魔物の数は1頭だが畑を散々荒らされたあげく、遂には止めようとした村人の内5人を病院送りにされてしまった為村長がなるべく早く解決してほしいと願い依頼料を上乗せした結果、300,000Jという値段になったものだ。

 

誰が見てもおいしい依頼と呼べるものだったが初クエストに燃えるヒスイはそんな事には目を向けず一刻も早く討伐しなければと気合いをいれていた。

 

マカロフに依頼書を提出すると魔物が1頭ならばいざというときツナも守りやすいだろうと許可を出された。マカロフもツナが一緒なので何の心配もしていなかった。

 

「じゃあ出発しようか?」

 

「はい!」

 

こうしてヒスイの初クエストが始まった。ちなみにギルドに来てからヒスイは身分がばれないように魔法で髪の色をピンクに変えていた。

 

 

 

 

 

依頼の場所へは魔導列車を使って行くことにした。ヒスイは初めて乗った為にその快適さに感動していた。

 

「すごいです!景色がどんどん流れて行きます!」

 

「列車に乗ったのは初めてなの?」

 

「はい!あまり外へは出れなかったのですが外遊へ行くときは大抵馬車でした!でも馬車よりは全然速いのに何故使わなかったのでしょう……?」

 

「まあしかたないと思うよ」

 

護衛の観点からすれば見ず知らずの人々が大量に乗るような列車は避けたいと思って当たり前だ。馬車の周りを兵士達で固めた方がいざという時守りやすい……

 

「切符の買い方覚えた?」

 

「はい!バッチリです!」

 

「なら今度からは大丈夫だね。依頼に行く時は色々な乗り物で行くんだから覚えておかないとね」

 

「う……他の乗り物までは自信がないです……」

 

しゅんとなるヒスイを見てツナは苦笑する。

 

「危険度の高い討伐系のクエストは誰かと一緒にクエストした方がいいよ。ヒスイの立場を考えると多分一人では受けさせてもらえないと思う」

 

「……やはりそうですよね」

 

やはり自分は特別扱いなのだろうかとヒスイは落ち込み始めた。

 

「落ち込まないで。マスターもヒスイを特別視してる訳じゃないんだ。ただ万が一にでも君を失えば信用して預けてくれた陛下にも申し訳ないしこの国の未来も閉ざされるんだから」

 

「ですがみんなと同じように一人前になりたいです」

 

「基本的にチームを組んでやるのが主流だよ。ナツやグレイ達でもチームを組んで依頼をやってるしね。俺だって一人で行った依頼なんて数えるほどだよ」

 

それを聞いて伏せていた顔をあげたヒスイは不思議に思う……あんなに強いツナでも誰かと組んで仕事をやるのだろうか?

 

「ツナもチームを組んでいるのですか?」

 

「特定のチームは組んでないけどやっぱり一人でやるよりは仲間と行った方が楽しいからね」

 

「楽しい……」

 

「うん!一緒に依頼をやれば仲良くなれるしね。だから誰かと一緒の方が絶対いいよ!」

 

「そうですね。フェアリーテイルの最大の力は仲間との絆でした……」

 

「ギルドもこれからはどんどん人が増えると思うし、みんなと仲良くなりたいでしょ?」

 

「はい!そうしますね!」

 

「じゃあ今回の依頼についてだけど……」

 

緊張している様子はないので今回の依頼について話そうとツナは表情を改める。

 

「基本的に今回は俺は手を出さない。ヒスイの力で魔物を倒してね。その場合は依頼料は全額ヒスイがもらっていいよ」

 

「えっ!?いやそれは……」

 

「もしもヒスイが危ない時は俺が助けるよ。それとどうしても自分だけでは出来ないと思ったら助けを求めてね。その場合は依頼料は半分こね」

 

「いや……それはいいのですがここまでついて来てもらってるのに無料という訳には……」

 

「今回は特別!ヒスイの初クエストだからね。俺はついて行くだけのつもりだからがんばって!」

 

ヒスイは緊張とやる気が混ざったような顔になった。だが被害を受けた人の為にもなんとしても依頼を完遂すると気合いを入れ直したのだった。

 

マカロフもツナもヒスイを一人でクエストにやるわけにはいかないと思っている。一年間の追放を受けているとはいえこの国の王女である彼女を失う訳にはいかないからだ。

 

そうして話し込んでる内に列車は目的地に到着した……

 

 

 

 

 

 

村にに着いた二人の目には荒れ果てた畑と表に誰もいない閑散とした風景が広がっていた。まだ昼間なのに誰一人として外に出ていない……

 

「ひどいですね……」

 

「とりあえず村長の家を訪ねよう。多分奥のあの大きな家だと思う」

 

二人が村長の家と思わしき家の扉をノックすると中から老人の声が聞こえた。

 

「どなたじゃ?」

 

「依頼を受けてフェアリーテイルから来ました」

 

「おおっ!お待ちしておりましたぞ!ささっ中へどうぞ!!」

 

勢いよく扉が開くと痩せたというよりやつれたといった風情の老人が飛び出して来て中へと招かれる。

 

「あなたはツナヨシさんですよね?大魔闘演武見てファンになりました!」

 

椅子に座った二人に孫娘と思わしき女性がお茶を用意してくれた。その女性はツナのファンらしく少々はしゃぎすぎて村長に怒られてしまったが……

 

「本当に助かりますじゃ……あの魔物のせいで村人達も外を歩けなくなってしもうた……」

 

老人は相当に疲れているようだ。自分の息子を含めて5人の血気盛んな男性が返り討ちにあってしまったのだからしかたない……

 

今回はヒスイの依頼なのでどう戦うかを考えるのもヒスイの役割だ。

 

「魔物の特徴とかはありますか?」

 

「そうですな……熊くらいの大きさで動きそのものは鈍いのですが力はあります。あ、後は角が特徴的ですな。作物のみを荒らして人を食うような性質では無いようです」

 

「いつもはいつ頃現れるのでしょうか?」

 

今度は孫娘が答える。

 

「大体は昼過ぎですからもうしばらくするとやって来ると思います。村全体に聞こえるような雄叫びをあげますので来ればすぐに分かるはずです」

 

「ツナ、こっちから攻めこむと入れ違いになるかもしれませんね?」

 

「そうだね……ならどうする?」

 

「これ以上村へ被害を与えないためにも村の外で待ち構えます」

 

「正解!いつ来るかは分からないから早めに行って準備だけはきちんとしておこう」

 

「はい!」

 

やる気に満ちたヒスイは立ちあがりツナもそれに続く。

 

「では行って来ますね」

 

「何卒よろしくお願いします……」

 

 

 

 

 

 

 

村長の家を出たツナとヒスイは村の入口から少し離れた所で魔物を待ち構える。ヒスイも銀の鍵を持って準備万端といった感じだ。

 

「無理だけはしないようにね」

 

「大丈夫です!」

 

10分ほど緊張をほぐすために話をしていたがツナが真剣な表情になったことで魔物が近づいているのをヒスイは理解した。

 

「ガォォォォッ!!!」

 

「本当にうるさいな……」

 

「そこまでです!これ以上は村へは手出しさせません!」

 

現れたのは聞いた通りの風貌の魔物だった。熊のように体が大きくその太い両腕はものすごい怪力であろうことが予想される。そして山羊よりも巨大な角は魔物とはいえ雄大で圧倒されるものだった。

 

魔物はヒスイを無視して村の畑へと歩を進めている。ヒスイは自身の持つ鍵を高々と掲げる。

 

「これ以上は行かせません!開け!おおいぬ座の扉!シリウス!!」

 

「参上!!」

 

「でかっ!」

 

現れた星霊は大きくて真っ白な犬だった。大きさとしては魔物よりもさらに大きくその背には何人か乗せて走れそうだ。さすがにツナもびっくりした。

 

「お願いします!シリウス!!」

 

「承知!!」

 

「ガルッ!?」

 

たったの一歩でシリウスは魔物に接近すると巨大な前足を振り上げて叩きつけた。その足を魔物は巨大な両腕で何とか受け止める。

 

ルーシィやユキノの黄道十二門の星霊のように特殊な能力は持っていないがその巨体から生み出されるパワーはかなりのものだった。

 

前足を捕まえられる前にその巨体で体当たりを仕掛けるシリウス、倒れた魔物の上から覆い被さるように押さえつけて止めを刺そうと再び前足を振り上げた時だった。

 

「危ない!!」

 

「えっ?」

 

魔物の角が発光しているのに気付いたツナが警告するがそれは遅かった。突如角から強力な電撃が放たれてシリウスに直撃する。

 

「ぐあぁぁぁぁっ!!」

 

「シリウス!!戻って!!」

 

「……無念」

 

ダメージを受けたシリウスをすかさず閉門するヒスイ。魔物は即座に立ちあがり脅威と判断したのか今度はヒスイに目を向ける。ツナは一歩踏み出すがヒスイの諦めていない顔を見てそのまま足を止める。

 

「ツナ……ありがとうございます。私はフェアリーテイルの魔導士として必ず勝ちます!」

 

「任せたよ」

 

「はい!開け!鷲座の扉!アルタイル!!」

 

「任せてッス!ご主人様!!」

 

次に出した星霊は一言で言うならば鳥人間……顔の作りは鳥ながらも手足を持ち、背中に翼を生やしていて右手に突撃槍……ランスを持っている姿だった。

 

「行くッスよ!フェザースラッシュ!!」

 

アルタイルは翼を広げるとその翼から羽がマシンガンのように魔物へと向かう……羽の雨に曝される魔物の体には無数の羽が突き刺さっていく。

 

「グオォォォッ!!」

 

「そんなの当たらないッスよ!!」

 

魔物は傷つきながらも角から電撃を放ってくるが背中の翼は飾りじゃないとばかりにアルタイルは縦横無尽に空を駆ける……

 

「これで止めッスよ!!」

 

アルタイルは右手のランスを両手で構えると空から一気に魔物へと急降下攻撃を仕掛けた……

 

 

 

 

 

 

村へと帰還したツナとヒスイを待っていたのは村人達の歓喜の声だった。魔物の遺体は町長に確認してもらった後ツナが炎で燃やし尽くした。

 

村人達が全員家の外へと出てきて次々と二人にお礼を言ってくる。子供達が二人に群がって輝くような笑顔を向けて来るので二人も笑顔で一人一人の声に応えていった。

 

村人達の見送りに手を振って応えて村を出た二人は二人はギルドに帰還する為に再び魔導列車に乗っていた。

 

「今日はお見事だったね。ヒスイ」

 

「ありがとうございます!村の人々にも笑顔が戻って私も嬉しいです」

 

「それが俺達に与えられる何よりの報酬だね」

 

「報酬といえば……やはりツナにも……ツナが後ろで控えてくれていたのは心強かったですし、魔物の遺体を処分してくれたのですし……」

 

「いやいいよ……今回はほんとにほとんど何もしてないし、ヒスイが頑張ったんだし……」

 

「ですが……」

 

結局ツナは断固として報酬を受け取らずそのやり取りはマグノリアに着くまで続いていたのだった……

 

 

 

 

 

夕方になってフェアリーテイルに帰ってきた二人を迎えたのは初クエストを達成したヒスイを祝う宴だった。ヒスイは感動していたが祝いというよりもただ騒ぎたかっただけだろう……

 

それを指摘するのも無粋なのでツナはみんなに囲まれるヒスイを置き去りにカウンターに座って一息つきながらマカロフとミラとラクサスと話していた。

 

「どうじゃった?あの子の初依頼は?」

 

「文句なしに合格……戦闘力の高い星霊は持ってるし頭もいい。まあ星霊魔導士だから本人の戦闘能力は無いに等しいし、やっぱり討伐系は誰かと組ませてさせる方がいいと思います」

 

「ま、妥当だな……さすがに一人で討伐にやって何かあったらギルドも終わりだろうしな」

 

「私も少し気にかけておくわ。リサーナにも伝えておきましょう」

 

「うむ。頼むぞい」

 

笑顔で周りと交流するヒスイを眺めながら話していたツナ達。ちょうどそこへナツ達一行が帰ってきてルーシィがツナに泣きついてきた。

 

「ツナ~!聞いて~!またナツとグレイが喧嘩して街を壊して依頼料を減らされたの~!」

 

「またなの?」

 

「あらあら……」

 

「エルザも一緒だったんじゃねえのか?」

 

「そうだけど!ナツとグレイをぶっ飛ばして止めたのはいいけどそのせいでさらに街が壊れたの……」

 

それを聞いて溜息を吐く一堂……マカロフの髪の毛が数十本まとめて抜け去っている。そこへ肩を落としたエルザがゆっくりと歩いて来る……

 

「マスター……すみません。私の監督不行き届きです……ルーシィもすまない。私の責任だ!殴ってくれないか?」

 

「いやいいわ……いつもの事だし……」

 

ルーシィは深く溜息をつきながらみんなに囲まれているヒスイの元へ去っていった。

 

マカロフはギルド復活の初回の依頼からの不祥事に真っ白になりながらブツフツと呟いている。

 

「また始末書…………のうツナ?7代目マスターにならんか?」

 

「慎んでお断り致します」

 

かつて守護者達や某暗殺部隊達の喧嘩や暴走の度に始末書の山と格闘していたツナはにっこりと笑顔を見せると即答で拒否した。

 

始末書の度にその原因となった者の氷像が作られてはいたが何度お仕置きしても治らないので頭を抱えていた経験がある。

 

-あんな思いは二度としたくない……-

 

肩を落としながら溜息をついたマカロフはここにいるメンバーを見て思い出したように話を変える。

 

「はあ……まあええわい。それよりもツナ、ラクサス、ミラ、エルザ、お主達に話があるのじゃ」

 

「「「「?」」」」

 

「実はじゃな…………」

 

マカロフの話は四人を驚かせるのだった……

 

 

 

 

 

 

 

 




一昨日は久々に震度4が来ました。治まって来ていたのにいきなりだったからすごくびっくりしました。

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