妖精達と歩む大空   作:グリーン

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オリジナル話に行く前に……


嵐の前の穏やかな日々
罰ゲーム、明と暗


 

 

-フェアリーテイル

 

大魔闘演武優勝という輝かしい栄冠を手にしたフェアリーテイル……マグノリア中の人々の協力を得てかつて手放したギルドを贈呈され、新たなスタートを切ることになった。

 

そしてギルド復活と共に新たな戦いの幕が上がる……

 

 

 

 

 

「本当にやるのかい?」

 

「ああ!確かにお前は強い……だが私も皆の期待を背負っている以上負ける訳にはいかないのだ!」

 

ギルドの中央で睨み合っているのはツナとエルザ……間違いなくギルド最強であるツナとS級に名を連ねるギルド最強の女魔導士であるエルザが対峙している。その周りをギルドメンバー達が緊張の面持ちで見守っていた。

 

「お……お二人共!お止めください!仲間同士で争うなどあってはならないことです!」

 

そして一人オロオロとこの戦いを止めようとしているのはこの度ギルドに加入する事になったヒスイだった。

 

「ヒスイ止めるな!いや、もう止めることなんてできねえんだよ!」

 

「ああ……もうどうしようもねえ……こうなっちまった以上は仕方ねえんだよ」

 

「漢同士の決闘を止めることは許されん!!」

 

ナツとグレイとエルフマンがヒスイを諫める……3人の顔も真剣だがエルフマンにはエルザが漢に見えているのだろうか?

 

「で……ですが……」

 

「ヒスイ……ここまで来たらもう無理だよ……私達に出来るのはエルザが勝つことを祈るだけ……」

 

「いいのですかルーシィ!?エルザが勝つということはツナが負けるということなのですよ!?」

 

「ヒスイさん仕方ないんです……ツナさんに頑張ってほしい気持ちはありますが今回は……」

 

ルーシィとウェンディも苦渋に満ちた顔でエルザの勝利を願っていた……だが相手はフェアリーテイル最強だ。二人だけでなくエルザですら手に汗を握っている。

 

「フッ……ツナの心配をしているなら無用だぜ。こいつに勝てる奴はこのギルドにはいねえ」

 

「ギヒッ!悔しいがその通りだぜ!」

 

「ジュビアもグレイ様には申し訳ありませんがエルザさんですらツナさんに勝てる見込みはないと思います」

 

ラクサス、ガジル、ジュビアはツナの勝利を確信しているようだ。ヒスイは慌てて言い返す。

 

「そ……そういう事ではないのです!お二人共大切な仲間ではないですか!ミラ!あなたも止めて下さい!」

 

「私は……止めないわ。この戦いは止めちゃダメなの……大丈夫、ツナはきっと勝つわ……私は誰よりもツナを信じているから……」

 

信頼と心配が混ざったような表情を浮かべながらも目を閉じて祈るように手を重ねるミラの姿はまるで1枚の絵画のようだった……その時ヒスイの肩に手が置かれる。

 

「マスター……」

 

「たとえ仲間であっても主義主張が違えばぶつかり合うこともある。じゃが時としてそれは分かり合うには必要な事じゃ……こ奴らも決して憎み合って戦う訳ではない。ならば同じ仲間として見守る事がワシらが唯一してやれることじゃ……」

 

「見守る事が…………分かりました……」

 

「お主にはまだ辛かったかのう……」

 

「いえ!私もフェアリーテイルの一員として今は私にできる事を!」

 

顔を上げたヒスイの顔は先程までの悲しいものではなく勇ましいとすら思えるものだった。マカロフはその顔を見て笑みを深くするのであった……

 

そして対峙している二人の闘志が高まっていく……それを見守るメンバー達は同時に感じ取った。この二人の戦いは一撃で勝負がつくことを……

 

「震えているのかな?エルザ?」

 

「くっ!これは武者震いだ!!」

 

「いい覚悟だ……だけどそれだけじゃ俺には勝てないよエルザ……」

 

「手加減は無用だ!今日私はお前に勝つ!力を貸してくれ!みんな!」

 

「俺にだって背負うものはある!だから絶対に負けられない!」

 

「行くぞ!!ツナ!!」

 

「来い!!エルザ!!」

 

そして両者はぶつかり合う…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「エルザ!?」」」」

 

エルザが崩れ落ちて膝を付く……終わってみれば本当に一瞬の勝負だった。ツナはどこか虚しさ感じるような顔でエルザに背を向けて目を伏せる……

 

「エルザ……君の敗因はたった一つ……」

 

エルザは呆然と自身の手を見る……震えるその手は人差し指と中指の二本だけ立てられていた。対するツナは血が滲むのではないかというほどにその拳を固く握りしめていた。

 

「超直感を持つ俺に……じゃんけんで勝負を挑んだことだ!!」

 

「勝者ツナ!よってBチームの勝ちじゃ!!」

 

ツナはグー、エルザはチョキ……この結果が天国と地獄を分ける結果となった。

 

「「よっしゃあ!!」」

 

「やりましたね!!これでグレイ様を……」

 

「ツナ……あなたなら……あなたならきっと勝ってくれるって信じてたわ!!」

 

「負ける訳にはいかなかったからね」

 

凶悪な笑みを浮かべながらガッツポーズをとるラクサスとガジル、既に怪しい妄想を思い浮かべるジュビア、涙を流しながらツナに抱きつくミラ、大魔闘演武Bチーム組は歓喜に溢れていた。

 

「おいぃぃぃっ!!何あっさりと負けてんだよエルザー!!」

 

「どうするんだよエルザ!!あっちにはヤバイ奴らが揃ってんだぞ!?」

 

「ここはひとまず漢らしく土下座して許してもらうしかない!!」

 

「ラクサスとかガジルとか絶対イヤー!!せめてツナにしてー!!」

 

「わ……私達どうなっちゃうんですか……」

 

「……すまない」

 

憤怒と悲哀に包まれる大魔闘演武Aチーム……だが敗者である彼らにはもはや何もできることはない。敗者は勝者に従うのみだ。

 

何故ツナとエルザがじゃんけんをしていたのか……それは大魔闘演武前にマカロフが言ったことに起因する。

 

大魔闘演武で2チームのうち勝ったチームが負けたチームを1日好きにできるという約束だ。大会ではチームの統合で有耶無耶になってしまった約束を履行するためにチームの代表者であるツナとエルザによるじゃんけん対決が催された。

 

そしてその結果はBチームの勝利という結果になったがこれは当たり前の結果だ。Bチームの面々は代表者を決める際にじゃんけんをしたが何度やってもツナに一回も勝てなかった。

 

1対1ならばあいこにすらならずツナの超直感の恐ろしさを存分に味わっていたので自信を持ってツナを代表に送り出したのだ。

 

 

 

 

 

 

 

話し合いの結果Bチームの各人がそれぞれAチームのメンバーを指名する形にして1日言うことを聞かせることになった。

 

「じゃあ俺はナツとエルフマンをもらうぜ」

 

「「ぎゃーっ!!」」

 

「パンと牛乳買って来い!五分な」

 

「「何ー!!」」

 

「さっさと行けよ」

 

「「ちっくしょょう!!」」

 

悪どい笑みを浮かべてラクサスは二人の肩に手を回す。二人はラクサスの笑顔に恐怖を感じて叫ぶがさっそくパシらされてしまう……

 

「ジュビアはグレイ様一択です!」

 

「おい!せめて他の奴に!ラクサスでもガジルでもいいから助けてくれ~!!」

 

「ダメですよ!今日はジュビアの言うことを聞いてもらいます!!」

 

ジュビアは泣き叫ぶグレイを引きずりながら奥の部屋へと消えていった……それを見た誰もが合掌して見送っていた。

 

「私は~やっぱりエルザね」

 

「ミ……ミラ?何でそんなに満面の笑みなんだ?」

 

「だって~大好きなエルザを好きにできるんだもの」

 

「お……お手柔らかにお願いします……」

 

とても美しいミラの笑顔に観念したかのようなエルザの表情が哀愁を誘う……

 

残ったルーシィとウェンディは残りの面子を見て恐怖に苛まれた。ツナとガジル……言い替えれば片方は天国、片方は地獄なので必死にツナへすがりつく……

 

「ツナ!お願い!!あたしを指名して!!ツナにならどんな命令されてもいいから!!」

 

「ズルイです!私も何でもしますから!だからお願いします!!私を選んで下さい!!」

 

「二人とも落ち着いてよ!」

 

周りの男性陣は何でもとかどんなことでもとか聞いてあらぬ妄想を掻き立てていた……

 

「ツナの奴羨ましいね~」

 

「オメェならどんな命令すんだ?ワカバ?」

 

「そりゃオメェ……あれだ」

 

「あれだよな~」

 

オヤジ二人(マカオとワカバ)は置いておいて他の面子はルーシィとウェンディが必死になるのも無理がないなと考えていた。しかし無情にも審判は下される……

 

「踊り子~!オメェは俺がもらうぜ!」

 

「イヤー!!」

 

ルーシィの肩を掴んだのは既に白いスーツに着替えてギターを持ったガジルだった。

 

「ほれ!とっととこれに着替えな!」

 

「こ……これって……」

 

「今日は時間の許す限りライブだ!ギルドの向かいに特設ステージを用意してあるからな!俺のステージを盛り上げろよ!バニーとしてな!!」

 

「いやぁぁぁっ!!何で表でやるのよ!ギルドの中でいいじゃない!!」

 

「バカ野郎!!俺のソウルをマグノリア中の人に届けてーんだよ……」

 

「何ちょっと恥ずかしがりながら言ってんのよ!?イヤー!!引っ張らないで!!ツナ!!助けてぇぇぇっ……」

 

バニーガールの服を手渡されたルーシィは過去の悪夢が脳裏をよぎって必死の抵抗を見せるが意味を為さず虚しく引っ張られていった……

 

残ったウェンディは安堵の息を漏らしながらルーシィを見送っていた。

 

「じゃあ私がツナさんですね!何でも言って下さいね!」

 

地獄を逃れたウェンディは笑顔でツナの前に進み出る。しかしそう甘くはなかった……

 

「あら~?勘違いしてない?ウェンディは今日はツナとお姉さんのものなのよ?」

 

「え?カナ……さん?どうしてですか?」

 

「お姉さんね~Bチームのリザーブメンバーだったの。ツナは優しいから無茶な命令はしないでしょ?だからツナと一緒にお姉さんの言うことも聞いてもらうことにしたの」

 

「ゴメンねウェンディ……そういうことなんだ」

 

「そ……そんなぁぁぁっ!!」

 

天国と思っていたところから突き落とされたウェンディは絶叫した……

 

ちなみに罰ゲームは相棒のエクシード達にも適応されるらしくハッピーとシャルルはリリーの前に頭垂れていた……

 

 

 

 

 

 

「これじゃねえ」

 

「「はあっ!?」」

 

ナツとエルフマンがダッシュで買って来たパンと牛乳を一瞥したラクサスは怠そうにそう言った。

 

「何でだよ!?ちゃんと買って来ただろうが!!」

 

「そうだ!!時間も五分かかってねえはずだ!!」

 

ラクサスは首を横に振ると溜息をつきながら理由を話始めた。

 

「今、マグノリアには移動型の遊園地が来てるんだ……そこで手に入る限定品のパンと牛乳が欲しいんだよ。だからもう一度行ってこい」

 

「先に言えよ!!」

 

「パンと牛乳なんてどれも一緒だろ!?」

 

「分かってねえな……限定品に意味があるんだよ。今日は1日言うことを聞くんだろ?さっさと行ってこいよ」

 

「「ぐぐぐ……ちくしょう!!」」

 

ナツとエルフマンは再びパンと牛乳を求めてギルドを飛び出した。

 

「ラクサス……言ってくれれば俺が買って来るのに……」

 

ギルドの柱の陰からフリードがラクサスの後ろ姿を見ながらハンカチを噛み締めていた……

 

 

 

 

 

 

グレイがジュビアに連れ込まれた部屋では何が起こっているのか気になる者は多数いたが誰もその部屋に近よらなかった。

 

何故ならば扉からはあまりにもピンクなオーラが溢れていたし、時折ジュビアの甘えるような声とグレイの切羽詰まった叫び声が聞こえるからだ。

 

誰もがグレイの身が無事である事を祈らずにはいれなかった……

 

 

 

 

 

一方でウェンディはカナの提案によりメイド服を着せられてギルドの外のオープンテラスでツナとカナに奉仕していた。

 

時折外を通る人々に見られているので少々恥ずかしかったがツナのお世話をするということでそれもすぐに気にならなくなった。

 

「はい!ご主人様にお嬢様コーヒーとケーキです!お砂糖とミルクはお入れいたしますか?」

 

「ありがとう。俺はいらないかな?」

 

「私もいいわ」

 

「お酒じゃないなんて珍しいね」

 

「今日は後でね……」

 

「ああなるほど……ふふ……カナは優しいね」

 

「ちょっと!勘違いしないでよね!」

 

「はいはい……」

 

ツナとカナが二人だけに分かるような会話をしていたので側に控えるウェンディは少々不機嫌になる。それを目敏く見つけたカナはニヤリと笑う……

 

「ねえ~ウェンディ~メイドならご主人様にハイあ~んて食べさせるべきじゃない?」

 

「ええぇぇぇっ!?」

 

ウェンディは顔を真っ赤にして叫ぶが決して嫌がっている訳ではないようだ。

 

「いや、普通のメイドはそこまでしないよ?」

 

「あら?ツナはメイドに詳しいの?まさかメイドさんがいっぱいいるお店に通ってたりして?」

 

「ええぇぇぇっ!?」

 

また叫ぶウェンディは今度はおかしな妄想をしてるようだ……

 

「何でそうなるのさ……俺一応マフィアのボスだったんですけど……」

 

「なんだ……良かったです」

 

「つまんない!じゃあ今日は特別なメイドってことでウェンディやってあげて!」

 

「分かりました!それではご主人様!は……はいあ~ん」

 

「あ~ん。うん!美味しいよ。ありがとうウェンディ」

 

「ツナ少しは照れなさいよ……」

 

「はは……それにしても……」

 

ツナが通りに目を向けるとつられてウェンディとカナも目を向ける……そこには人だかりが二つ出来ていた。その一つを見るとミニスカートのメイド服を着せられたエルザが後ろ手に縛られて地面に這いつくばっていた。

 

「さあ!許して下さいご主人様とお言い!」

 

「くっ!……断る!」

 

「言わないか!このはしたないメイドめ!!」

 

「ぐっ……!……!」

 

「「「「おおぉぉぉっ!!」」」」

 

ミニスカートがめくれあがって下着が丸見えのエルザのお尻に次々と平手打ちをしているサタンソウルで変身したミラの姿があった……周りにいる男性陣は喝采の声をあげている。

 

「どうやらご主人様に逆らってお仕置きされるメイドってシチュエーションらしいわね」

 

「あ~あ……終わった後が怖いよね……」

 

「こっちのメイドで良かったです……」

 

「そしてあっちはあっちで……」

 

もう一つの人だかりの方へ視線を向けるとこちらも負けず劣らず男性陣が喝采をあげていた。

 

「シュビドゥビッ!ガジガジ!シュビドゥバ~」

 

「「シュビドゥバ~」」

 

「「「「おおぉぉぉっ!!」」」」

 

下手なギターを奏でながらノリノリな歌を歌っているガジルとバニーガールの衣装で踊るルーシィと何故か一緒に踊っているレビィの姿があった……しかも所々でハモらされている。

 

「二人とも泣きながら踊ってますね……」

 

「さすがのあたしもこれはやりたくないね」

 

「誰もガジルの歌を聴いてないよね……」

 

集まった男性はルーシィとレビィの躍りにしか見ていないがガジルは気にせずに気分良く歌っていた。

 

「あっ!レビィさんがどこか行っちゃいましたよ!?」

 

「……格差社会に絶望したのよ」

 

「……そういうことか」

 

「え?何の事です?」

 

カナがボソッと言ったことでツナは理解したがウェンディには意味が通じなかったようだ。同じように踊っていた二人だったが体のある一部の差がバニーガールの衣装で踊るとより顕著になるのだ……

 

「あ~も~しょうがねえ奴だな!オメェはアイツにやる!」

 

「アイツ……?」

 

ガジルは歌を止めてレビィを追いかけるがその前にガジルの指が指す方を見ると……

 

「ほら!はしたなくてすみませんとお言い!」

 

「…………ぐっ!くぅぅっ……!」

 

ミラとエルザの姿を見てルーシィは顔を青褪めると最後に一縷の希望を持って去って行くガジルを呼び止める。

 

「ねえっ!ツナだよね!?ツナでいいんだよね!?」

 

ガジルは足を止めて振り返ると凶悪な笑顔でルーシィに絶望を叩きつける。

 

「あん?……ギヒッ!ミラジェーンにきまってんだろうが!!」

 

「いやぁぁぁっ!!」

 

「あら?ルーシィも追加なの?」

 

 

 

 

 

 

ルーシィがミラの所へ移ってからしばらく時は流れた……エルザほど打たれ強くないルーシィが存分に痴態を晒してしまった頃カナが立ち上がった。

 

「じゃあそろそろ行こうかね~」

 

「ん、行ってらっしゃい」

 

「え?カナさんどこかへ行くんですか?」

 

ウェンディはこれでツナと二人だけになれると内心喜ぶがすぐにそれが甘かったと知る……

 

「ウェンディも行くのよ~」

 

「え?え?」

 

「午後からはお姉さんがウェンディを独り占めするって決めてたのよ~」

 

肩をがっしりと掴まれてウェンディはずるずると引きずられる……

 

「え!?あの!ツナさんは!?」

 

「ここでお別れよ~」

 

「ゴメンね」

 

「そ……そんなぁ~!?」

 

抵抗虚しくもウェンディはカナに抱えあげられて街の雑踏へと消えていった……

 

「それにしてもみんな罰ゲームが過激すぎるな。でも絶対に邪魔しないように約束したからなあ……さてと……俺も準備しないと……」

 

後に残ったツナは立ち上がってギルドの前から去って行った……

 

「助けて~!!」

 

いつもならば応える助けを求める声を無視しながら……

 

 

 

 

 

 

 

 

カナに連れられたウェンディはこれから己の身に何が起こるのか不安でしかたなかった。

 

最初に連れて行かれたのは服屋だった。そこで色々な服を着せられたのだがその内訳がウエディングドレスに始まりレースクイーン、ナース服などマニアックなものばかりで極めつけがアダルティなランジェリーという明らかにウェンディには早すぎるものだった。

 

さらにこれから行くところがいい年したおじさんのところだのベタベタ触られるなどと聞かされたら逃げ出して当たり前だ。

 

だが結局カナからは逃げられずにこうしてトボトボと着いて行くしかなかった……

 

「もう着くからね~」

 

「いくら罰ゲームだからって酷すぎます……」

 

このままでは自分はいったいどうなってしまうのか?自分にはツナという最愛の人がいるのだ!と意を決して物申そうとカナに声をかける。

 

「あのっ!やっぱり私……」

 

「着いたよ~」

 

「えっ!?……ここって?」

 

ウェンディが辺りを見渡すとそこにあったのは大きいが御世辞にも綺麗とは言えない古びた教会だった。

 

「ブロック神父~来たよ~」

 

「ホッホッ……よく来たね。そちらが例の子かい?」

 

「そうだよ。子供達は?」

 

「庭の方で遊んどるよ。さあどうぞ」

 

この教会の構造が分かってるかのように迷いなく進むカナにウェンディは慌てて着いて行った。

 

「あー!カナだー!!」

 

「本当だー!!」

 

「オッス悪ガキ共ー!今日はスペシャルゲストを連れて来たよ~!!」

 

カナが来て喜ぶ子供達だがウェンディを前に押し出すと途端にウェンディに群がり始めた。

 

「もしかしてウェンディ!?」

 

「ほんとに来てくれたー!」

 

「すっげー!俺達とそう歳も変わらないのに!」

 

「あ……あの……カナさんこれって?」

 

「いいから!話相手してやりな!」

 

「大魔闘演武見てたよ!!」

 

「シェリア強かった!?」

 

戸惑うウェンディはカナに問うが子供達のパワーに押されて次々とくる質問に一つずつ答えていった。

 

カナはそれをブロック神父と笑顔で眺めていた。

 

「服のセンスはイマイチだのう」

 

「言われると思って色々着せてみたけどね……あたしもセンスないわ~」

 

ちなみにブロック神父はどこかの国旗のようなカラフルな法衣を着ている……

 

「さすがに今日は飲んどらんようじゃな」

 

「まあ匂いを嫌がる子もいるしね~」

 

「いつもそれぐらい気遣い出来るといいのに」

 

カナの後ろから声がかかる……振り向くとそこには苦笑するツナの姿があった。

 

「初めまして神父。ツナヨシといいます」

 

「ほっほっ……初めまして。大魔闘演武の活躍は見事でしたぞ」

 

「ありがとうございます……カナいつでもいいよ」

 

「よし!はいみんな注目~!!続きはおやつ食べながらね~!!」

 

カナが手を叩きながらそう言うとみんながこちらに顔を向ける。

 

「あれ?ツナさん?」

 

「えっ!?本当だ!」

 

「ツナヨシ・サワダだ~!!」

 

「ウソ!?本物!?」

 

「メチャクチャ強いんだろ!?」

 

「かっこいい~!!」

 

「はいはい!ツナがおやつ作ってくれたからそこ空けて!じゃあよろしく!」

 

寄ってくる子供達を制してスペースを空けたカナに促されて前に出たツナはボックスを取り出してリングに炎を灯してボックスを開く。

 

すると大きめのテーブルにのったケーキを中心とした様々なスイーツが出現した。子供達は目を輝かせてスイーツを見つめる。

 

「すごく美味しそう!!」

 

「今の魔法!?」

 

「ツナヨシすげえ!!」

 

「たくさんあるからいっぱい食べてね~」

 

「「「「「は~い!!」」」」」

 

子供達はみんな美味しそうに食べながらもツナやウェンディに質問したり魔法を見せてと強請ったりしていた。

 

 

 

 

 

 

 

楽しい時間はあっという間に過ぎ、教会を出た一同は教会の見える丘でくつろいでいた。

 

あの教会は幼い頃カナがギルダーツを探しにギルドに来たときに泊めてもらっていた孤児院との事だ。

 

今でもちょくちょく様子を見に行くらしいが子供達が大魔闘演武を見てギルドのメンバーに会いたいと願っていた。特に歳の近いウェンディは子供達にとってヒーローのようなものでよく話題に出ていたので今回連れて来たというわけだ。

 

時間ができたらこれからも遊んでやってくれとカナに頼まれたウェンディは快くその願いを聞き届けた。そして疲れたのか丘の頂上にある木に寄りかかって眠ってしまった……

 

ツナはウェンディに上着をかけるとカナと二人で声を潜めて話をしていた。

 

「やれやれ……幸せそうな顔で眠っちゃって」

 

「色々不安だったんじゃない?カナのせいで」

 

「悪かったわよ……ゴメンね面倒な事頼んじゃって。でもあいつら喜んでたよ……ありがと」

 

「構わないよ。材料はカナが用意したんだしね」

 

「この子もあの子達も家族はたくさんいるんだから真っ直ぐ成長して欲しいね……」

 

「そうだね……」

 

「あんたは?一人異世界にやって来たけど家族は向こうにいるんだもんね……やっぱり帰りたい?」

 

ツナはしばらく夜空を見上げて考えていたがやがてカナの方を向いてこう口にした。

 

「向こうのみんなに会いたい気持ちはあるけど帰りたいとは思わなくなってる……みんなと過ごすうちにこっちのみんなとは離れたくない気持ちがどんどん強くなってるのを自覚してるよ」

 

「そう……こう言うと不謹慎かも知れないけど良かったよ……あんたがいなくなるとみんな悲しむからね。特にこの子とミラとルーシィは……」

 

「ははは……」

 

「あんたもそろそろ応えてやったら?3人まとめてでいいからさ!それくらいの甲斐性はあるだろ?」

 

「善処しておきます……」

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして罰ゲームの1日は終わった。ウェンディにとっては優しい1日だったが他の者にとっては耐え難い1日となったのだった……

 

「ラクサスどこ行ったー!?」

 

「漢としてこの屈辱は返す!!」

 

ナツとエルフマンがラクサスに御礼参りをしようとして逆にボコボコにされたり……

 

「もう…ジュビアの顔は暫く見たくねえ……」

 

「ガーン!!ジュビアショック!!」

 

憔悴したグレイの一言がジュビアを奈落の底へと突き落としたり……

 

「おいたが過ぎるぞミラ……」

 

「や~ご主人様~お許し下さい~」

 

1日屈辱を与えられたエルザによってミラが逆襲されることになったり……

 

「誰か……助けて……」

 

未だにバニーガールの衣装のまま手錠で繋がれているルーシィが泣いていたりとAチームにとっては散々な1日となったのだった……

 

 

 

 

 

 

 




S級クエストも考えないと……

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