妖精達と歩む大空   作:グリーン

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過去最長の話になりました。遅れてすみませんでした。


大舞踊演舞とそれぞれの決断

 

 

-クロッカス

 

ドラゴンの襲来から数日後……クロッカスの街には避難していた街の住民達が戻って来ていた。

 

「しっかしよ~何でこんなに街がボロボロになってんだ?」

 

「魔導士達が喧嘩でもしたんじゃねえの?でも王国が魔法できちんと直してくれるらしいぜ」

 

「さっすが魔法の国フィオーレ王国だな!!」

 

「噂じゃドラゴンが何頭も襲って来たらしいぜ」

 

「バカね……そんな訳ないじゃない。ドラゴンスレイヤーの間違いでしょ?」

 

「そう言えば魔導士達は今日は城でパーティーらしいな?羨ましいぜ」

 

「マジかよ!?俺も行きて~な~!そしてミラジェーンとジェニーとお近づきに……」

 

「俺はフェアリーテイルのルーシィがいいな……あのスタイルの良さといったら……」

 

「ウェンディちゃんとシェリアちゃんの可愛さには負けるけどな」

 

「お前ロリだったのか……」

 

「あんたらみたいなのが相手にされるわけないじゃない。バッカじゃないの?」

 

「でも私もツナヨシ様とお近づきになりたいわね~」

 

「大魔闘演武のMVPだもんね。強くて紳士的でかっこいい!完璧よね~」

 

「この前までヒビキがいいとか言っといてこれだから女は……」

 

「でもツナヨシってあんだけ強いのに全然知らなかったな……火竜(サラマンダー)妖精女王(ティターニア)は有名だったけどよ」

 

「まあ今日のパーティーの主役なのは間違いないだろうな」

 

魔導士達の噂をしていた街の人々は城を羨望の眼差しで見上げていた……

 

 

 

 

 

 

 

-メルクリアス

 

噂の的となっている魔導士達のパーティー会場ではフェアリーテイル男性陣が集まって話をしていた。

 

「しっかしアイツら遅いな」

 

「グレイ……女性の支度には時間が掛かるものだよ。もう少し落ち着きなよ」

 

「俺は先に食ってるぜ~」

 

「ガジル!漢ならどっしりと構えて姉ちゃん達を待つべし!」

 

「ロメオ。ネクタイが曲がってるよ……これでよし」

 

「ありがとうツナ兄!ツナ兄スッゲー決まってるぜ!」

 

「ふふ……ありがとうお世辞でも嬉しいよ」

 

「いやいや……お世辞じゃねーから……会場に来てる女達の視線を全部集めてるんじゃねえか?」

 

ツナはボス時代に幾度もパーティーに出席していたのでボンゴレのボスとして相応しい超高級品のスーツをしっかりと着こなしていた……

 

お陰で既に会場入りしている女性達はその中性的な顔立ちと彼の為に作られたスーツの取り合わせにうっとりと熱い視線を送っていた。

 

「お待たせー!!」

 

女性陣が着替えを終えて登場した。美女揃いのフェアリーテイル女性陣のドレスアップした姿に会場の男達は歓声をあげ、フェアリーテイルの男性陣は普段と違う女性達の格好に息を飲んだ。

 

ミラ、ルーシィ、ウェンディは早速ツナに着飾った自分を見せようとしたが、ツナの着飾った姿に見惚れて足を止めてしまう。それでも何とか平静を装いツナに声をかける。

 

「ツ……ツナこの服どうかしら?」

 

「ミラはセンスいいね、すごく似合ってると思うよ」

 

「あ……あたしは?どう?」

 

「ルーシィはやっぱり着なれてるね。よく似合ってるよ」

 

「あの……私はどうでしょうか……」

 

「ウェンディ、よく似合ってるから顔をあげて」

 

「もう!ツナったら似合ってるしか言ってないじゃない!!」

 

「実際みんな似合ってるんだからしょうがないじゃないか……」

 

「でも一番似合ってるのはツナだよね」

 

「このスーツはあっちから持って来てたんですか?」

 

「まあね。ところでユキノは一緒じゃなかったの?」

 

「え!あれ?もしかして恥ずかしがって戻っちゃったのかしら?連れてくるから先に楽しんでてね」

 

ミラはユキノを探しに控え室の方へと戻っていった。周りを見るとカナは早速お酒に手を伸ばしてバッカスと飲み比べを始めていた。

 

一夜が楽団に無茶振りをしたりカグラが着なれないドレスを着て恥ずかしそうに俯いていた。

 

ルーシィはヒスイ姫に、ウェンディはシェリアに声をかけられて少し離れた場所でこのパーティーを楽しんでいるようだ。

 

「ツナ!ナツどこに行ったか知らない?」

 

聞いて来たのはリサーナだった。ツナはそう言えばナツの姿がないことに疑問を感じる……

 

「ナツは着なれない服を着て窮屈だからって先に行ったんだけど……そういえば見てないね」

 

「もーどこに行っちゃったのかなー?」

 

「せっかく綺麗に着飾ったんだからナツにも見せたいのにね」

 

「うん……って違うよ!そんな事考えてないからね!」

 

「ふふ……そんなに慌てなくてもいいのに」

 

顔を真っ赤にしてあたふたするリサーナにツナは生暖かい視線を向ける。そこへウェンディがシェリアを伴って戻って来た。

 

「ツナさん!見てくださいこのデザート!」

 

「すっごい綺麗!宝石みたいだよね」

 

「美味しそうですね……」

 

「うひゃっ!?初代!?」

 

初代の幽体がウェンディとシェリアが手にするデザートを至近距離で凝視していた。だがシェリアには見えていないようでウェンディの奇行に首を傾げていた。

 

-そういえばフェアリーテイルの紋章を刻んでないと見えないんだっけ?あれ?でも……-

 

疑問に思ったツナはデザートを指をくわえて見ている初代に小さな声で声をかける。

 

「初代」

 

「はっ!何でしょうツナ?」

 

「俺がこの世界に来た時も初代の姿が見えたんですけど何でですか?紋章を刻んでなかったのに……」

 

「……それには確かに理由があります。ですが申し訳ありませんが今は語ることが出来ません。いずれ必ず話さなければならないでしょうからそれまで待っては頂けませんか?」

 

「いえ、少し気になっただけですから気にしなくていいですよ」

 

ツナは恐らくジョットと何か関係があるのだろうと当たりをつけるがあまり踏み込んでまで聞く事はないと思って笑顔で応じる。

 

「ありがとうございます。では私もパーティーを楽しむ事にしますね。ツナも楽しんで下さい」

 

幽体でどう楽しむのか気になるがそれにはツッコまずにツナは踵を返した。

 

「ウ…ウェンディ!!ここ何かいるよ!!」

 

……気にしない事にした。

 

 

 

 

 

「おお!ツナヨシ殿!!」

 

「ムム……何というイケメンっぷり!」

 

「ジュラさん、一夜さん」

 

食事を楽しんでいたツナの元へジュラと一夜がやって来た。ツナも食事をやめて二人に応じる。

 

「今回は見事な御活躍でしたな」

 

「みんなの力があればこその結果ですよ」

 

「メェ~ン。そう謙遜せずともここにいる全員があなたの勇姿を見ているのですからな」

 

「今回は己の未熟さを思い知らされました。ツナヨシ殿にラクサス殿、そして小型竜を一掃したマカロフ殿……ワシももっと強くならねば!」

 

「常に先頭に立ち皆に勇気を与える存在……正に私を越えた真のイケメンでしたぞ」

 

「はは……ありがとうございます。まあ一杯飲みましょう。ささっどうぞ」

 

ツナは空いているグラスを手渡してワインを二人に注ぐと一夜がツナのグラスにワインを注ぐ。

 

「では……勝ち取った未来に乾杯!」

 

「「乾杯!!」」

 

 

 

 

 

二人と別れたツナが周りからの視線を気にしながら歩いているとエルザがカグラを抱き締めていてそれをマーメイドヒールのメンバーが生暖かい視線で見守っている光景に出くわした。

 

「何やってるの?エルザ」

 

「ニャ!ツナ~!」

 

「ん?おおツナ!カグラが私の妹になったんだ!」

 

「冗談だと言っているだろう!放してくれ!」

 

「エルちゃん!ツナとカグラちゃんの合体技すごかったんだよ!ドラゴンをやっつけたんだよ!」

 

ツナの腕にしがみつきながら岩窟王を倒した時の事を語るミリアーナ。

 

「そうか!よくやったぞカグラ!」

 

「わあ!だからやめてくれと……んんっ!ツナヨシ」

 

「ふふっ……どうしたのカグラ?」

 

微笑ましく見守っていたツナにエルザから逃れたカグラが気を取り直して真剣な顔でツナに話しかける。

 

「此度の戦いはそなたがいなければ勝てなかっただろう。少なくとも仲間を失っていたかもしれない……ありがとう」

 

「俺だけの力じゃないだろう?カグラが手伝ってくれたおかげであの岩のドラゴンを倒せたんだし他のみんなが気を引いてくれたからあの技を決めれたんだよ」

 

「いや、それだけではなく私が闇に囚われそうになった時もそなたの炎が私を救ってくれた。まるで兄さんのように温かい炎だった……」

 

真面目な顔でお礼を言っていたカグラがそこまで言うと急に顔を赤くしてモジモジしだした。そんなカグラをエルザとマーメイドヒールのメンバー達は優しげな瞳で見守っている……

 

「それで……その……ツナヨシの事を兄さんと呼んでもいいだろうか!?」

 

「「「「何で!?」」」」

 

いきなり顔をあげての爆弾発言にマーメイドヒールから総ツッコミが入る……ツナは申し訳なさそうにそれが出来ない事を伝える。

 

「えっと……俺19歳だからカグラの兄にはなれないんだけど……」

 

「大丈夫だ。フェアリーテイルには7年の時の呪縛があるのだろう?何も問題はない」

 

「カグラ……残念だがツナが加入したのは天狼島の後だ。時の呪縛は受けていない」

 

「な……んだ……と……」

 

エルザの残酷な一言にカグラはガクリと肩を落とすが次のエルザの一言により再び復活する。

 

「だから兄ではなく弟にすればいいだろう」

 

「その手があったか!!」

 

「何でそうなるの!?」

 

「さあツナヨシ……私の事を姉さんと呼んでいいんだぞ」

 

にじり寄ってくるカグラからほのかにワインの香りがするのにツナは気付く。よく見ると顔も赤く目の焦点もどことなく合っていない……

 

「まさか……カグラ酔ってるの!?」

 

「私はこの程度の酒では酔わないぞ。あと姉さんだ」

 

「いや!絶対酔ってるよね!?」

 

「カグラは下戸なんだよね~」

 

「すぐ酔っぱらっちゃうからね……」

 

「カグラに飲ませちゃいけないよ」

 

「ねえツナのネコネコ出して~」

 

「今俺それどころじゃないよね!?」

 

「姉さんの話はちゃんと聞けーー!!」

 

暴れ始めるカグラを宥めつつツナはこの場から撤退することにした……

 

 

 

 

 

「ふう……疲れたな……」

 

「あっ!ツナー!!」

 

「ルーシィと……ヒスイ姫?」

 

カグラから逃れたツナが歩いているとルーシィから声がかかる。今まで話していたのだろうヒスイ姫が側にいた。

 

「今ヒスイ姫と色々話してたの」

 

「ルーシィさんのお父上には昔色々とお世話になったので……」

 

「そうだったんですか?意外……でもないかルーシィお嬢様だったんだもんね」

 

「もう!それを言わないでよ!」

 

「ふふっ、ツナヨシ様とルーシィさんは仲がよろしいのですね。……少し羨ましいです」

 

「ところで王女に様付けされるのはちょっと……できればツナと呼んでは頂けませんか?」

 

「よろしいのですか?ではツナ…と呼ばせて頂きますね。ツナ、今回の事は私のせいで大変な事になってしまいました……本当に申し訳ありません」

 

顔を赤くしてツナを愛称で呼ぶヒスイ姫だがすぐに神妙な顔になりツナに謝罪する。

 

「私は大変な過ちを犯してしまいました。あなた方の助けがなければこの国は滅びていたかもしれません……国を預かる王族としてあってはならないことです」

 

「確かに……ですが過ぎたことはどうしようもありません。これからどうするかが大事だと思います」

 

「そうですね……今日私は国王に罰を願い出るつもりです。その前にあなたにお礼を言いたかったのです」

 

「ちょっ!何もそこまで……」

 

「いいえルーシィさん罰は必要です。では存分に宴を楽しんで下さい」

 

そう言うとヒスイ姫は踵を返して去っていった……

 

「ツナ……どうしようもないのかな?」

 

「ヒスイ姫は覚悟を決めてる……俺達が口を出すことじゃないよ。彼女自身が一番自分を許せないんだろうしね……」

 

ツナとルーシィは去っていったヒスイ姫の背中が見えなくなるまで見送っていた。

 

 

 

 

 

「ツナ、ルーシィ!」

 

「ミラさん……それにユキノも」

 

「ミラジェーン様……やはりこのような格好私恥ずかしいです……」

 

「もう!さっきからそればっかり!よく似合ってるのに……」

 

「そうだね。よく似合ってる……もっと自信を持っていいと思うよ」

 

「そうよ!ユキノ可愛いんだから自信持って!」

 

「ツナヨシ様……ルーシィ様……」

 

「ほら俯いてちゃだめよ。顔をあげて」

 

「はい……!!」

 

顔をあげたユキノは一瞬笑顔を浮かべるがすぐにその表情が凍りついた。何事かと思って振り返るとそこにはスティングやローグ、オルガやルーファスといったセイバートゥースメンバー達がこちらを見ていた……

 

「っ……私やはり来るべきでは……」

 

「待って!!」

 

会場から去ろうとするユキノをスティングが大声で呼び止める。ユキノはとっさに立ち止まるがスティング達の方を向かない……スティングは一歩踏み出そうとするがそこには立ち塞がる者がいた。

 

「スティング……今さらユキノに何の用だ?」

 

「っ……ツナヨシさん……」

 

ツナはスティングを……セイバートゥース達を睨み付ける。彼らがユキノにした仕打ちは到底許せる事ではない。

 

「その……俺達がしたことが許される訳がないのは分かってる……あんたとナツさんが何の為に襲撃して来たのかも最初は分からなかった……」

 

俯きながらもスティングは自身の後悔を吐き出すように語りだした。他のメンバーも同様に顔を伏せる……

 

「マスターとお嬢の行方が分からなくなって仲間を大切にする新しいセイバートゥースを創ろうって時に思ったんだ……ユキノにも居て欲しいなって……」

 

ユキノは振り返ってスティング達を見る……

 

「こんな事言えた義理じゃないってのに今日ここでユキノに会えて……今言わなきゃ絶対後悔すると思って……すまなかった!ユキノ!セイバートゥースに戻って来てくれ!!」

 

スティングが頭を下げるのに合わせて他のメンバー達も一斉に頭を下げる。ユキノはスティングの言葉に動揺して言葉が上手く出ない……ツナが肩に手を置いて優しく語りかける。

 

「ユキノの思うようにしていいんだよ……」

 

「ツナヨシ様……」

 

ユキノはスティングに向き直ると頭を下げたままのスティングに一歩踏み出した。

 

「スティング様……私は……」

 

「ふははっ!調子が良すぎて笑えるな!!」

 

ユキノが答えようとした時、横から乱入者が現れた。それはカグラを筆頭としたマーメイドヒールのメンバー達だった。

 

「忘れたか?ユキノの命は私が預かっておる。ユキノはマーメイドがもらう!異論は認めん!」

 

「「「「「何ーー!!」」」」」

 

「えっ……あの……カグラ様?」

 

これにはスティング達も黙っておれずにカグラに真っ向から立ち向かう。

 

「アンタ酔ってるだろ!?」

 

「うるさい!ユキノはマーメイドのものだ!」

 

「待て~い!!それは聞き捨てならんぞ!!」

 

「ユキノはフェアリーテイルに入るのよ!」

 

「へっ?あの?エルザ様?ルーシィ様?」

 

「美しく可憐なあなたはブルーペガサスにこそ相応しいですぞ!」

 

「うちにいらっしゃいな。あなたなら私の後を継いでナンバーワンを狙えるわ!」

 

「ならば我らラミアスケイルもユキノ争奪戦に参加しよう」

 

「男臭えギルドに一輪の花ってのも魂が震えるぜ!」

 

「え?あの?皆様……?」

 

混乱するユキノをよそに話は勝手に進んでいく。オロオロするユキノの隣でツナとミラが笑っていた。

 

「こうなったら実力で勝負だ!!」

 

「大会じゃ負けたけどこの戦いは負けられねえ!」

 

「いいかお前ら!絶対にユキノを取り戻すぞ!」

 

「やっちまえ!!」

 

「ユキノは渡さん!私の妹にするのだ!」

 

「おい!妖精女王(ティターニア)の奴本気だぞ!!」

 

「誰だ!足踏んだの!!」

 

「痛てえじゃねえか!!」

 

会場全てを巻き込んだ乱闘をユキノは呆然と見ていたがやがて声を抑えて涙を流し出した……そんなユキノを優しく抱き締めるミラをツナはまるで聖母のようだなと思って笑みを浮かべる。

 

「あなたはこんなにもみんなから愛されてるのよ。もう他人を不幸にするなんて思わないでね」

 

「ミラジェーン様……」

 

かつて生き別れた姉のように優しい温もりに包まれてユキノは綺麗な笑顔を浮かべた。

 

 

 

 

 

乱闘は唐突に終わりを迎えた。アルカディオスがバルコニーに現れて国王陛下の言葉を聞くようにお達しがあった為だ。全員が国王陛下の登場を待つ……

 

「ガーハッハッ!皆の者!楽にせよ!!」

 

「返すカボ!返すカボ!」

 

「いいじゃねえか、優勝したんだから。俺にも王様やらせてくれよ!」

 

現れたのは王冠とマントを纏ったナツだった。この事態に全員の目が点になる……あまりのストレスにマカロフの髪は抜けてしまった。

 

「俺が王様だー!王様になったぞー!お前らはみんな家来だからな!!ようし!じゃあお前ら……」

 

「へえ……ナツが王様にね……」

 

ナツの肩にポンと手が置かれた……ビクッと震えあがったナツが振り返った先にはいつのまにかツナが笑みを浮かべてそこにいた。但し目が笑ってなく既にグローブも装着している……

 

「ツ……ツナ……様」

 

「あれ?どうしたのナツ陛下?様を付けちゃ駄目じゃないか……王様(笑)なんだから……」

 

「ご……ごめんなさい……」

 

「少し……頭冷やそうか?」

 

バルコニーに一体の氷像が完成した……ツナはマントと王冠を笑顔で国王に差し出した。

 

「どうぞ陛下お返し致します」

 

「あ…ありがとう……彼は大丈夫かね……?」

 

「お優しいですね。ですがこれはオブジェなのでお気になさらないで下さい」

 

「オ……オブジェかね……?」

 

「はい。オブジェです。さあお言葉をどうぞ」

 

「う……うむ……」

 

ナツだけでなく会場中が凍りついたように静まり返っていた……

 

 

 

 

国王の言葉を静聴した魔導士達はナツの事を頭から追い出してダンスを楽しんでいた。思い思いの相手にダンスを申し込む魔導士達……特にフェアリーテイルやマーメイドヒールの女性達は様々な男性からダンスを申し込まれていた。

 

逆にツナやブルーペガサスのトライメンズといった面子は女性からのお誘いが後をたたなかった……

 

ツナはミラやルーシィ、ウェンディを始めとしてカグラやミリアーナ、ジェニーなどの女性と踊ることになった。

 

ウェンディみたいになかなか誘えない女性にはツナの方からダンスを申し込む。そのくらいの気遣いはツナの中では当たり前の事だった。

 

「踊って頂けますか?」

 

「え……あの……私でよろしいのでしょうか?」

 

だから先程からチラチラとこちらを見ていたユキノにも声をかける。それにユキノには聞いておきたい事があった。ホールの中央で躍りながらツナはユキノに質問する。

 

「どこに入るか決めたの?」

 

「はい……私はもう一度セイバートゥースに戻ろうと思います」

 

「いいのかい?」

 

「はい。私もセイバートゥースをフェアリーテイルのように仲間を大切にするギルドにしたいと思います。辛い事もあったけどやっぱり私にとって大切な場所なんです」

 

躍りながら横目でスティング達を見ると心配そうな顔でこちらを見ていた……どうやら勧誘してると思ってるらしい……

 

「ユキノが決めたならそれでいいよ。もしもまた泣かされるようならすぐに連絡してね。ギルドは違っても仲間なんだから」

 

「はい!ありがとうございます!」

 

曲が終わりユキノをスティング達の所へと連れて行くと全員が不安そうな顔でこちらを見てくる……

 

「ユキノ……」

 

「スティング様……皆様……またお世話になります」

 

「ほ……本当か!?」

 

「はい!」

 

「やったぁ!ありがとうユキノ!」

 

「お帰りなさい!ユキノさん!」

 

「また一緒で嬉しいぞ。ユキノ」

 

「フローも嬉しい」

 

「今日は記憶すべきセイバートゥースの第一歩だね」

 

「歓迎に俺の歌を!」

 

「それはいいっつうの!!」

 

喜びに溢れ返るセイバートゥース達……随分と変わったなとツナは思っていた。

 

「もう2度と泣かせないようにね」

 

「分かってる!ユキノは俺達の仲間なんだ!」

 

「もしも泣かせたなら……」

 

そう言うとツナは視線を横に向ける。セイバートゥースメンバーが不思議に思ってその視線を辿るとそこには氷像と化したナツの姿……スティング達は冷や汗が止まらない。

 

「ね?」

 

「「「「「絶対泣かせません!!」」」」」

 

セイバートゥースの心が1つになった。

 

「じゃあユキノ、元気でね」

 

「はい!色々とありがとうございました!」

 

ツナは満足げに微笑むとナツを解放する為に歩き出す。リサーナもナツと踊りたいだろう……

 

 

 

 

 

ナツの氷を溶かしてリサーナの元へ送り出したツナは再び誘われて何人かとのダンスをこなして一休みしていた。

 

すると、ヒスイ姫が国王と向かい合っている光景が目に入る……どうやら罰を願い出ているようだった。アルカディオスやダートン、さらには各ギルドの主要メンバー達は寛大な措置を願い出ていた。

 

「皆様のお気持ちは嬉しいのですが私は一歩間違えればこの国と国民達を滅ぼしてしまう所でした。法を守る王家の者としてやはり罰は受けなければなりません」

 

「しかし姫!」

 

「アルカディオス……私はこの国の王女です。だからこそけじめはつけなければなりません」

 

「陛下……私めにも罰をお与え下され……私は自分勝手な判断でルーシィ嬢を牢へと閉じ込めました。法を守る者に有ってはならない行為です」

 

「大臣!それならば私もです!エクリプス製造の責任者は私なのです!私のせいであのような事態が起こることになったのです」

 

「フム……どうしたものか……」

 

いくら何でもこの3人を全員裁くとしたら国政は滞ってしまうだろう。

 

「ツナヨシ殿……何か意見はないだろうか?」

 

「……何故私に?」

 

「そなたの戦功が一番だからじゃ……戦った者を代表して意見を聞かせて欲しい」

 

「……姫は罪の意識を感じておられるようですが今回姫は黒幕に騙され、独自に行動しました。その後の対応は王族としての誇りを持った尊いものです。本来騙された方が悪いというのは間違ってると思います」

 

「ですがツナヨシ様……」

 

「分かってます。あなたはこの先この国を率いる身です。罰を与えるとしたら今回騙された事を教訓として未来をより良くする為に与えるべきです」

 

「未来をかね?」

 

「ええ……起こった事はもう変えられない。反省を促す為の罰ではなくこれから先に有益な罰にするべきだと思います……私からは以上です」

 

国王は腕を組んで考える……重い沈黙がホールを包んでいたがやがて意を決してヒスイ姫の前に進み出た。

 

「王女ヒスイ・E・フィオーレに罰を与える」

 

「はい!」

 

「……そなたを1年間の追放刑に処す!」

 

「「「「「なっ!?」」」」」

 

「陛下!お待ちを!」

 

「ご再考を!」

 

「静まれ!そしてマカロフ殿……どうか娘をフェアリーテイルのメンバーとして加えて頂きたい」

 

「何ですと!?」

 

「「「「「はあっ!?」」」」」

 

「お父……陛下!どういう事ですか!?」

 

追放という刑だけでなくフェアリーテイルに加入させるという言葉に当のヒスイ姫だけでなく会場中が驚きに包まれる。

 

「うむ……娘が大事なあまり外遊なども最低限で城から余り出さなかったのが今回騙された原因とも言える……だからこそ世間や常識を知って欲しいのじゃ」

 

「しかし姫の御身に何かあれば!」

 

「だからこそフェアリーテイルに預けたいのじゃ……大魔闘演武や後の騒動を見てその強さや仲間を大切にする絆にワシも安心して娘を預けられる」

 

「なるほど……」

 

「確かに……」

 

アルカディオスやダートンも国王の言葉に納得したように頷く……何よりも仲間を大切にするこのギルドなら王女を守ってくれるだろうという思いもある。

 

「娘はこれでも星霊魔導士での……決して足手まといにはならんじゃろう」

 

「えっ!星霊魔導士だったの!?」

 

「へぇ~いいじゃん!歓迎するぜ!」

 

「新しい仲間が増えるのはいいことだ」

 

「しかも美人だしな!」

 

「よろしくな!」

 

「グレイ様を巡る恋敵にはなりませんよね?」

 

「漢だぁ~!!」

 

大歓迎なメンバー達だったがツナとマカロフは同じ悩みを抱えていた。

 

フェアリーテイル(うち)で常識が学べるのか……?-

 

「どうかな?マカロフ殿?」

 

「はっ!姫がよろしければ慎んでお受け致します」

 

「では皆様よろしくお願い致します!」

 

-益々マスターの心労がかさむな……-

 

ツナは苦笑いしながらマスターに同情する。ヒスイ姫はギルドメンバー達に囲まれて自己紹介を受けていた。

 

「ちゃんと手紙を書くのじゃぞ」

 

「はい!陛下……いえお父様!!」

 

「いい人が出来たら紹介するようにの(ボソッ)」

 

「お父様!!!」

 

「(半分は)冗談じゃ……アルカディオスとダートンにはヒスイが抜けた分もたっぷりと働いてもらう!当分休む暇はないぞ?それが主らに与える罰じゃ!」

 

「「御意!!」」

 

「ツナヨシ殿もどうか娘をよろしくお願い致しますぞ」

 

「もちろん出来る限りの事をさせて頂きます」

 

「そなたは第一候補じゃからの(ボソッ)」

 

「は?」

 

「いや何でもない……」

 

「よっしゃあ!新たな仲間の歓迎の宴だぁ!!」

 

ナツの音頭に合わせてパーティーは更なる盛り上がりをみせる……他のギルドもフェアリーテイルの新たな仲間を祝福し、宴の夜は続いていくのだった……

 

 

 

 

 

 

 

 




熊本も復興しつつありますが閉店した店舗や壊れた家屋などもあります……クロッカスのように簡単には直せないですからね……

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