妖精達と歩む大空   作:グリーン

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余震がもう1500回くらいきました。回数は減ってますが時たま強いのが来たりしますので驚きます!


そして新たな未来へ……

 

 

-???

 

「うっ…………」

 

目を覚ました少女が見たのは地獄だった……焼けた街……崩れ落ちた(メルクリアス)……そして焼けるような痛みを感じてその痛みの元を見るとあるはずの自身の右腕は存在していなかった……

 

フェアリーテイルの紋章を刻んだ右腕の喪失に少女……ルーシィは涙を流す……血が止まっているのはおそらく気絶している間に星霊が止血してくれたのだろう。

 

星霊達に感謝しながらフラフラと立ち上り辺りを見渡すとそこには共に牢に入れられた仲間達の変わり果てた姿があった……

 

「な…んで……どうしてこんなことに……」

 

絶望したルーシィが空を見上げるとそこには空を埋め尽くすほどのドラゴンが我が物顔で空を飛んでいた。

 

「あ……ああ……あっ……!」

 

目を見開き恐怖に震えるルーシィ……それに気付いたのか一頭のドラゴンが急降下してきた。そしてルーシィの近くまで来るとブレスを放つ為に大きく息を吸い込んでいた。

 

そしてブレスが吐かれるがルーシィは一歩も動けない……迫り来る死に目を閉じた。

 

「ルーシィ!!」

 

誰がが自分の名前を呼ぶ……その人物はドラゴンの咆哮を身に纏ったマントで防いでいる。

 

「ツナ……?」

 

「ルーシィ!無事……じゃないな……」

 

痛ましそうにルーシィの右腕を見るツナ……

 

「ううっ!ツナ……みんなが!みんなが……」

 

「そうか……こっちも……」

 

「ねえ……他のみんなは?無事なんだよね?」

 

「……現時点で無事が確認できたのはレビィだけだ。ガジルがその身を盾にして守っていたよ……マスターもエルザもラクサスも……みんな……さっきナツも……」

 

「嘘……みんなが……?」

 

ルーシィが悲しみに暮れているとブレスを放ったドラゴンの他にも十数頭のドラゴンが集まって来た……

 

「ルーシィ……君だけでも逃げるんだ……」

 

「嫌だよ!ツナ……!?その怪我は!?」

 

マントで見えなかったツナの体には無数の傷があり血が未だに流れ出ていた……それでもツナはドラゴンを迎え撃つ為に空へ舞う……

 

無数のドラゴンがツナへと群がるが大怪我をしているはずのツナの炎は激しく燃え上がる。ツナはここに来るまでも数頭のドラゴンを屠っていた。そして今絶対にルーシィを守るという覚悟の元、大空の炎が一層激しさを増す……

 

「ツナ……もう……無理だよ……」

 

しかしいくらツナが強くとも一万を越えるドラゴン達を全て倒せる訳がない。疲労と怪我……流れ出る血がツナから力を奪っていく……そして……

 

「ぐあっ!!」

 

「ツナ!!」

 

「来るな!!」

 

地上へ叩きつけられたツナの元へ走ろうとするルーシィを押し留め、立ち上がったツナは全身から激しく炎を噴き出していた……

 

死ぬ気の到達点……今の状況で炎を無尽蔵に消費するこの技を使ってしまえば間違いなく炎を使いきって死ぬだろう……

 

だがせめてルーシィを視認している周りの百頭近いドラゴンは倒さなければならない……

 

「ルーシィ……せめて君だけは守ってみせる!」

 

「ツ…ツナァァァァッ!!!!」

 

ルーシィの叫びが響き渡った…………

 

 

 

 

 

 

-???

 

雲一つない青空に黒い点が見える……その点はぐんぐんと近づいて来た。それを見た村の人々は絶望する……

 

「ア…アアア…アクノロギアだ!!」

 

「遂にここにも来たの!?」

 

「もう……終わりだー!!」

 

泣きわめきながらパニックになる人々……それはそうだろう。やって来たのは世界の人口を9割も減らし尚も気まぐれに生き残った人々を殺戮する悪魔のドラゴンなのだから……

 

逃げ惑う人々を鬱陶しそうに見ながら右腕を地面に叩きつけるアクノロギア……ただそれだけで地面はめくり上がり、衝撃が村人ごと村を吹き飛ばそうと襲いかかるが……

 

炎の絶対防壁(ブリンダ・アッソルート・ディ・フィアンマ)!!」

 

突如青年の声が響き炎の壁が衝撃波を防ぎ、めくれた大地も燃やし尽くした……

 

「マタ貴様カ……大空ヨ……!!」

 

人間を虫のようにしか思っていないはずのアクノロギアが青年に声をかける。青年はそれには答えずに額と両手の炎を激しく燃やす。

 

「エルザ!ジェラール!ソラノ!頼むぞ!!」

 

「気をつけろよ!!ツナ!!」

 

「皆!こっちだ!!急げ!!」

 

「ユキノとのリンクは済んでるゾ!いつでもゲートは繋げられるゾ!!」

 

ソラノは拠点にいる妹のユキノと力を合わせて転移の為の魔法を使おうと準備している。

 

「あ……あんた達はいったい……?」

 

「俺達はVONGOLA(ボンゴレ)だ」

 

ジェラールの名乗りに村人達の顔に希望が灯る……アクノロギアに抵抗することを諦めずに人々を守る……この世界に残されたたった一つの希望なのだから。

 

「そして彼が我々のボス……ツナヨシ・サワダだ」

 

そして村人達が青年を見る……7年前の大魔闘演武で一躍有名になった男の名前だ。青年は背中に炎の羽を生やして大空に舞い上がりながら果敢にアクノロギアと戦っていた。

 

「破壊!破壊!我ハ破壊ノ王、アクノロギア也!!貴様ハ邪魔ダ!消エロ!!」

 

「これ以上お前に何も奪わせない!!」

 

激しくぶつかり合う両者だがやはり質量が違いすぎることもありツナが一方的に傷ついていく……

 

「逃げ遅れはいないな!?」

 

「ああ!全員いるよ!!」

 

「よし!ツナに合図を!!」

 

エルザが明星の鎧に換装して光を放つのと同時にジェラールの魔力が高まり構えをとる……するとさっきまで雲一つなかった空に渦巻くような雲が現れる。

 

「真・天体魔法……星崩し(セーマ)!!」

 

雲の中心から隕石がアクノロギアに迫るがアクノロギアは反転すると両手でそれを受け止めた。だがその為に動きが止まったのをツナは見逃さない。

 

「X BURNER!!」

 

「ヌググググッ……!!」

 

ツナは技を放ちながら後ろ手に放っていた柔の炎を弱めていく……すると技の勢いに後方へと飛ばされるがその勢いを利用してソラノが作る魔方陣に着地した。

 

「よし!」

 

「ソラノ!」

 

「分かってるゾ!!(ゲート)発動!!」

 

ソラノの言葉と共に魔方陣が発動する。ツナ達も村人達もソラノの妹のユキノが待つ拠点へと転移していった……

 

 

 

 

「もう!また無茶して!!」

 

「ごめんなさい……」

 

拠点の自室で7年で美しく成長したシェリアの治療を受けているツナは平謝りするしかできない……連れて来た難民達は地下にある居住区へソラノとユキノの姉妹が連れて行っている。

 

「そんなんじゃウェンディだって心配してるよ!」

 

「そうだね……」

 

壁を見るとそこにはリーダスの遺したウェンディの絵が飾ってある。いやそれだけではなく在りし日のフェアリーテイルのメンバー達が描かれた絵が飾ってあった。

 

アクノロギアによって魔導士ギルドも全滅させられた……生き残ったのはほんの僅かしかいなかった。

 

フェアリーテイルからはツナ、エルザ、ドロイ。

 

クリムソルシエールからはジェラール、後に加入したソラノ。

 

ブルーペガサスからは一夜とヒビキ。

 

ラミアスケイルからはシェリア一人。

 

セイバートゥースからはユキノ……ローグも生きているらしいがボンゴレには加入していない。

 

ドロイと一夜とヒビキは作物の品種改良と増産する為の魔法を開発している。ボンゴレや難民達が食糧難にならないのは彼らのおかげだ。

 

シェリアは貴重な回復役なので、ユキノはゲートの魔法を使う為に拠点に残されている。もっともユキノはソラノが絶対に行かせないが……

 

戦闘員はツナ、エルザ、ジェラール、ソラノだがこの中でかろうじてアクノロギアと戦えるのはツナのみ……ソラノはゲートを作る為に動けないのでそれを守るのがエルザとジェラールの役目だ。

 

「ツナの負担が大きすぎるよ……」

 

「ボスだからしかたないさ」

 

「普通ボスが最前線に出る!?」

 

「ボンゴレのボスなら当たり前だよ」

 

「でもっ……エルザやジェラールだってツナと一緒に戦いたいって思ってるよ!!」

 

「分かってるよ……何度も言われてるからね……」

 

だが現段階で二人を最前線に出すわけにはいかない。二人はツナに認められるように帰って来てすぐに修行を始めている。

 

「あたし嫌だよ……ツナがジュラさんやリオンみたいに……」

 

ツナは泣き出すシェリアの頭を優しく撫でると力強く言葉を紡ぐ……

 

「俺は死なないよ。ボンゴレを結成した時の誓い……希望を捨てないこと、これ以上誰も死なないこと、忘れた事なんてないからね」

 

「絶対だよ」

 

「うん。約束だ……」

 

絶望が支配する世界で彼らは希望を捨てずに戦い続けていく……

 

 

 

 

 

 

これらはIFの未来……ルーシィとローグが経験した世界での話……

 

 

 

 

 

 

 

現代はこれから第3の未来へと動き出す……

 

 

 

 

 

 

 

 

-クロッカス

 

オレンジの閃光と爆発が視界を埋め尽くす……そして視界が回復した後にはあったはずの扉は粉々に砕けて跡形も残ってはいなかった……

 

「ルーシィ!見て!扉が壊れたわよ!」

 

「ツナ……」

 

「し……信じられん……マギナニウム合金製の扉をここまで破壊するとは……」

 

「この後どうなるのです!?」

 

「未来の可能性を切り離した事によりローグはこの時代に留まる事はできない……ローグが呼んだドラゴンも同じ……つまり……」

 

その時近くに横たわっていたジルコニスの体から淡い光が輝きだした……

 

 

 

 

 

 

「なんだ!?」

 

「ドラゴン達が光っている!?」

 

「な……何がおきているんでしょう……」

 

死闘を繰り広げていた滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)達は目の前にいるドラゴン達の体が光を放ち薄くなっていくのを驚きと共に眺めていた。そして消え去るドラゴン達を見てようやく終わった事を実感した。

 

「終わったのか……」

 

「やりましたね!」

 

「ああ……だが……俺達は結局ドラゴンを倒すことは出来なかった……」

 

「せっかく呼ばれたってのに情けねぇなあ……」

 

「アクノロギアってのはもっと強いんだろ?滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)が聞いて呆れるぜ……」

 

「だが……今は喜ぼう……仲間を守る事ができたんだ」

 

「ってか!ツナヨシさんの強さは何なの?ドラゴンよりも強いって俺達の立場がないじゃん!!」

 

「あはは……ツナさん強すぎますからね……」

 

「まっ、俺達も滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)を名乗るならアイツくらい強くなんねぇとな」

 

「ギヒッ!すぐに追いついてやるぜ!」

 

「無理だな……」

 

「何だとライオス!!」

 

「俺はローグだ!!」

 

「ちっ!やれやれだぜ……」

 

戦いを終えた彼らの元へやって来るギルドのメンバーを目の端に捉えながらメイビスは彼らを空中から見下ろしていた。

 

滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)誰一人としてドラゴンを倒す事は出来ませんでしたか……そしてツナ、あなたの炎……見事でした。あなたなら私達を呪われた運命から解き放ってくれるのでしょうか……」

 

 

 

 

 

「どうやらお別れのようだなイグニールの子よ……さらばだナツ。お前の事は忘れん」

 

「ありがとなオッチャン!おかげで助かったぜ!」

 

アトラスフレイムとマザーグレアが消えるのを見届けてからローグに向き直る。ナツは目の前に倒れているローグの体が光輝くのを見て安堵の息を漏らす……間違いなく強敵だった。

 

「クク……俺の計画がここまで完全に破綻するこになるとは……見事と言っておこうナツ・ドラグニル……」

 

「ローグはお前にはならねえ……だからお前はお前として未来に帰れ」

 

「そうするしかないようだがな……影だ。影がずっと俺に付きまとい俺を苛む……そしてフロッシュが死んだ時俺は影と一つになっていた。俺に伝えろ一年後……絶対にフロッシュを守れと」

 

「一年後だな……」

 

「ああ……一年後フロッシュは―――に殺される」

 

「!?」

 

「そしてもう一つ、ツナヨシ・サワダに虹の炎を手に入れろと伝えろ」

 

「虹の炎!?どういうことだ!?」

 

「詳しくは知らんが……俺の時代のツナヨシは虹の炎を手にする機会を永遠に失ったらしい……」

 

「どうやって手に入れるんだ!?」

 

「さあな……そこまでは知らんがアクノロギアを倒せる可能性があるらしい」

 

「アクノロギアを!?」

 

「クク……ここまでヒントをやったんだ。無駄にしたら許さんぞ」

 

「ああ!俺達の未来は俺達が作る!お前も未来でガンバれよ!!」

 

「さらばだ……」

 

そうしてローグは消えていった……未来のルーシィを殺した事は許せないが、ナツは最後に少しだけローグと分かりあえたような気がして笑みを浮かべるのだった……

 

 

 

 

 

 

ジルコニスも岩窟王も元の時代へと帰っていった……全てのドラゴンが消えると魔導士しかいないはずの街から大歓声が巻き起こった。

 

彼らは誰も死ななかった事を抱き合って喜んでいた。そこにはギルドの垣根など関係なく共に戦った戦友達は勝ち取った未来を祝っていつまでも騒いでいた……

 

 

 

 

 

 

そして地上の騒ぎなど全く聞こえない静寂に包まれる地下では一人の少女の遺体が光と共に消え去った……

 

 

 

 

 

 

-???

 

目を覚ました少女は自分がどこにいるのか分からなかった。どこまでも広がる雄大な黄金の草原……その幻想的な光景に目を奪われる。ふと違和感を感じると驚いたことに失ったはずの右腕が存在していた。

 

驚く少女……ルーシィはフェアリーテイルの紋章が刻まれた右腕を愛しそうに抱き締める。ここがどこなのか分からないルーシィは当てもなく散策してみることにした……

 

「ルーシィ!!」

 

懐かしい声を聞いて振り返るとあの日失ったはずの一人の青年が立っていた。まるで自分を待っていたかのように……

 

そしてその青年の隣には寄り添うように佇む二人の恋敵と呼べる女性達もいた。

 

「ルーシィさん、早く行きましょう」

 

「みんな待ちくたびれちゃうわよ」

 

二人が指し示す方向を見るとフェアリーテイルの仲間達が勢揃いしていた。またみんなと一緒にいれる……そう思うとルーシィの瞳から涙が溢れてくる……

 

「さあ、行こう!みんな……また一緒だ!」

 

「うん!」

 

青年の……ツナの差し出す手を取ったルーシィは残った手で涙を拭い輝くような笑顔を見せた……

 

その笑顔を見ながらツナは自分がここに居ることが出来るのは何故かなんとなく理解していた。ボンゴレリングに宿ることなくみんなと共に居られるのはきっと自分が心の底からそう望んだからだろうと……

 

何よりも大切な仲間達と共に歩む……

 

ツナはルーシィの手を取りながら仲間達の元へと駆け出した。

 

 

 

 

 

 

-クロッカス

 

ルーシィの手から未来のルーシィが遺したメモ帳が光となって消え去った……

 

「終わったのね……これで……」

 

「ルーシィ?泣いてるの?」

 

ミラに指摘されてルーシィは慌てて手を顔に当てると何故か涙が止めどなく流れていた……

 

「あれ?おかしいな……なんで……?」

 

止まらない涙で滲んだ視界にツナがゆっくりと歩いて来るのが見えてルーシィは駆け出した。そのまま顔を隠すようにツナの胸に飛び込む。

 

「ごめん……少しだけこうさせて……」

 

ツナは何も言わずに微笑んでルーシィの頭を撫でる。雲の隙間から月の光が二人を優しく照らしていた……

 

 

 

 

 

 

 




バトル終了です。次回は打ち上げです。

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