妖精達と歩む大空   作:グリーン

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大変お待たせしました。感想の返信も遅れて申し訳ないです。余震は毎日続いてます。少しは小さくなったと思いますが……怖い日々です……


妖精の法律

 

 

-クロッカス

 

ツナが空中で小型竜の攻撃を一身に引き付けながらクロッカス中心のリ・イン・クリスタルにそろそろ辿り着くという時、地上では魔導士達による激しい攻撃が行われていた。

 

「行くわよ!アイスメイク……薔薇の王冠(ローゼンクローネ)!!」

 

ウルティアの母譲りの造形魔法が大地を走る……その薔薇と蕀に触れた小型竜達は凍りついて活動不能状態になる。

 

「さすがだぜウルティア!アイスメイク……氷創騎兵(フリーズランサー)!!」

 

「まさかウルの娘とはな!アイスメイク……蜻蛉(ドラゴンフライ)!!」

 

偉大な氷の魔導士の教えを受けた二人はまるで師匠(ウル)と共に戦っているような気持ちになり知らずに笑みを浮かべている。

 

「あなた達!母の教えを受けたのならまだまだ戦えるわね!?」

 

「当然だ!」

 

「ツナを助ける為にも休んでる暇はねえ!!」

 

「ならばあの集団を叩くわよ!!」

 

「「おうっ!!」」

 

 

 

 

 

「ネ拘束チューブ!カグラちゃん!!」

 

「ああ!不倶戴天・斬の型!!」

 

ミリアーナによって拘束された小型竜達をカグラの目にも止まらぬ斬撃が切り刻む。

 

「それにしても数が多いな……」

 

「全然減ってないような気がするよ~」

 

実際は少しずつ減っているが次から次へとやって来る小型竜達に辟易しながらも戦うカグラとミリアーナ。二人の視界の端には長年仇として狙っていた男がいた……

 

「七つの星に裁かれよ……七星剣(グラン・シャリオ)!!」

 

「天輪!循環の剣(サークル・ソード)!!」

 

エルザとジェラールのコンビネーションは長い間離れていたとは思えないほど息が合っていた。二人の前にいる小型竜は次々と撃破されていく……

 

「すごいね……あの二人……」

 

「ああ……互いの動きを完璧に把握しているからこそのコンビネーションだな」

 

「昔の二人は本当に仲良かったからね……」

 

ミリアーナは複雑そうな顔で共に戦っている二人を見つめる……ジェラールに対するわだかまりはまだ完全には解けてはいないようだ。

 

「……奴が全て悪いのではないと言うのは分かっている。だがエルザには悪いが私はまだ奴を許せない……と思う」

 

カグラにしても兄を死に追いやったジェラールに対してどう接すればいいのか判断がつきかねているようだ。

 

「だが……いつかエルザとジェラールにも聞いてみたいな……私の知らない兄さんの事を……」

 

「カグラちゃん……あ~!もう考えるのは後にしよう!とにかく今はドラゴンやっつけちゃおうよ!!」

 

「フフッ……そうだな!ツナヨシを少しでも楽にさせるためにも今は小型竜退治に集中することにしよう!!」

 

 

 

 

 

 

地上で魔導士達が小型竜と戦っている頃ルーシィは城へと走っていた。ツナが小型竜を引き付けている為に妨害もなく城へと辿り着いた。そこにはヒスイ姫とアルカディオス、ユキノとリリーがいたので声をかける。

 

「みんな~!!」

 

「ルーシィ様?」

 

「はあっ……はっ……これを見て!未来のあたしが落としたメモ帳なの!」

 

「未来の君が?」

 

「そう!上手くいけばこの戦いを終わらせる事が出来るかもしれないのよ!!」

 

「どういうことなのですか?」

 

ルーシィはメモ帳を開いてこの場にいる者達にとあるページを見せる。

 

「ここを見て!万が一この時代で扉が破壊されるとあたしは未来から来れないことになる……そうなればあたしはこの世界から消えるって書いてある」

 

「どういう意味なのでしょうか?」

 

「つまりね、未来のあたしが経験した第一の未来もローグが経験した第二の未来も鍵となっているのはあの扉なの」

 

その場にいる全員が頷いて続きを促す。

 

「もっと言えば扉があるから第一の未来も第二の未来も存在するの。だから扉を壊せば扉の存在しない第三の未来へと塗り変わるはず!そうすれば未来のあたしもローグもこの時代に来れないことになるわ」

 

奇しくもルーシィが思い付いたのはウルティアと同じ未来の道筋を固定する事だった。

 

「だが過去を変えても意味がないとツナヨシ・サワダが言っていたが……」

 

「そう!でも未来は私達の行動によって決まるわ!あの扉が残っている限り第一の未来と第二の未来も可能性として残る事になるけど扉そのものが無くなったら二つの未来はこの世界から切り離されるはず!」

 

「よく分からんが確信があるのか?」

 

リリーの問いにルーシィは首を振る。ルーシィにとっても賭けに等しい事だった。

 

「分からないわ……扉から来た者まで切り離せるのか……本当はツナか時魔法のエキスパートのウルティアさんに確認してみたかったんだけどね」

 

「ですがこの状況では他に手はありませんね」

 

「姫……よろしいのですか?」

 

「今戦っている魔導士達の助けになるのならば反対する理由もありません」

 

「かしこまりました……しかし問題は……」

 

アルカディオスの視線の先には巨大な扉が雄大に鎮座している。建設に携わったアルカディオスだからこそこの扉を破壊するということがどれだけ困難な事か分かっている……

 

「ありったけの魔力をぶつけるしかないわね!」

 

「はい!ルーシィ様今一度あれを!!」

 

ルーシィとユキノはエクリプスを閉じた時のように膝をついて掌と額を合わせると目を閉じて意識を集中する。

 

「「開け!十二門の扉!ゾディアック!!」」

 

二人の周囲に召喚された黄道十二門の星霊達が一塊になって扉へと向かっていったが……

 

「うそ!?傷一つついてないなんて!?」

 

「なんという固い扉なんでしょう……」

 

ルーシィとユキノの攻撃に扉は全くの無傷だった。さすがに傷一つつかないとは思ってなかった二人は愕然とする……

 

「でも諦めないわ!どんどん攻撃を仕掛けましょう!」

 

「はい!ルーシィ様!」

 

「俺も手伝おう」

 

ルーシィとユキノは戦闘モードになったリリーを加えて再び扉へと攻撃を仕掛ける為に魔力を高めるのだった……

 

 

 

 

 

 

「数が減っているお陰で捌きやすくなったな」

 

ツナは地上で戦っている魔導士達に感謝しながらクロッカス中心のリ・イン・クリスタルへと辿り着いた。しかし小型竜達は執拗にツナを狙って光線を放ってくる。

 

『ツナよ……よくやってくれた』

 

「マスター?」

 

『ワシの場所が分かるか?』

 

「ああ……見つけた」

 

広場の中心にマカロフと念話の補助の為にいるのだろうウォーレンの姿が見えた。

 

『ならばワシの真上に来るのじゃ。いい具合に小型竜達が引き付けられておるわい』

 

「だがどうする?魔導士達が入り乱れて小型竜だけを狙うのは難しいだろう?」

 

『心配はいらんわい。ワシに任せておけ』

 

「了解した……よし真上に来たぞ」

 

『そのまま攻撃を躱していてくれい。すぐに片をつけるからのう』

 

マカロフは念話を切ると体の前で掌に魔力を集中させる……ものすごい魔力が両の掌の間に集まって球体となった。

 

視線を小型竜達に向ける。どれだけ攻撃されようとツナ以外は目に入らない小型竜の様子に悲しみを感じているマカロフ……

 

「悲しいのう……最強の種族であるドラゴンでありながら操られるだけの存在となるとは……本来ならばこの魔法には3つ数える猶予を与えるのじゃが……」

 

操られるだけの小型竜には猶予を与えても全く意味のない事なのでマカロフはすぐに魔法の発動体勢に入ることにする。

 

「せめて安らかに……妖精の法律(フェアリーロウ)発動じゃ!!」

 

マカロフの両の掌の球状の魔力がクロッカスの街へと広がっていく。その光に触れた小型竜達が消滅していくのを魔導士達は呆然と見ていた……

 

妖精の法律(フェアリーロウ)……それはフェアリーテイルに伝わる妖精三大魔法の一つであり術者が敵と認識したものだけを攻撃する魔法である。

 

効果範囲もマグノリアの街全域を覆う程に広い。今回はマグノリアよりも広いクロッカスだったのでツナに小型竜を引き付けるように指示を出した。

 

この魔法を知るフェアリーテイルの魔導士達は安心と信頼をもってこの光を見ていたが他のギルドメンバー達は自分達も光に触れているにも関わらず小型竜だけを消滅させるこの魔法に驚きながらも感心していた。

 

光が消えた時そこには数えるのもバカらしいぐらい存在した小型竜は一匹残らず消えて魔導士達だけが残されていた。一瞬の沈黙の後大歓声が巻き起こった。

 

「よっしゃあ!!」

 

「小型竜が全部消えちまった!!」

 

「さすがです!マスター!!」

 

「お見事です!マカロフ殿!!」

 

「敵だけを消滅させるとは……」

 

「ただのじいさんじゃなかったんだな」

 

「フェアリーテイルは化物だらけかよ!?」

 

「ガーハッハッ!!どんなもんじゃい!!」

 

一仕事やり遂げたマカロフの高笑いが響く中、空中にいたツナが降りてくる。エルザやミラ、グレイ達も集まって来た。

 

「マスターお疲れ様です。すごかったですよ」

 

「おおツナ、お主の働きがあればこそじゃ」

 

「これで小型竜は殲滅できた……あとは大型のドラゴンが……五頭か」

 

「でもエルザ、一頭はナツと一緒に戦ってるみたいよ」

 

ミラが指し示す空にはナツを乗せたアトラスフレイムがローグが乗っているマザーグレアと激突して轟音と衝撃を撒き散らしていた。

 

「一体どうなってんだ?」

 

「あの炎の竜は味方と考えて良さそうだね……となるとあの卵を産む竜を引き受けてくれてるのなら残りは三頭か……滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)6人が戦っているはず」

 

「ナツは……まあ大丈夫だろう……」

 

こういった時のナツの強さはエルザが認めるほどである。空にいるドラゴンはナツと炎の竜に任せる事となった……ツナはこれからの行動を考える。

 

「よし!俺はラクサス達の所へ行くよ」

 

「ツナ!全員で行った方が……」

 

「いや、人数が多すぎてもだめだ。滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)達の魔法は攻撃範囲が広いから人数が多いと同士討ちを恐れて攻撃が制限されてしまう」

 

「確かにのう……じゃがお前は少し休まんか!今ラミアの嬢ちゃんを呼びにやっとる。言ったはずじゃ、お主一人でやる必要はないと」

 

「マスター言うようにお前は少し休め!隠しているがかなり疲労しているだろう!」

 

「はあ……分かったよ。少しだけ休むことにするよ」

 

マスターとエルザの剣幕にツナは渋々と噴水の縁に腰を下ろした。だが疲労していたのは本当なので一度座ったら立ち上がるのがキツそうだなとツナは思っていた。

 

腰を下ろしたツナの周囲では多くの魔導士達が体を休めているのが目に入った。みんなそれぞれ怪我をしていたが重症というほどの怪我を負っている者はいないようでツナはホッと息をつく。

 

「治療しに来たよ!」

 

「おお!待っておった!こやつから頼むぞい!!」

 

「ゴメンね。シェリアも疲れてるのに……」

 

「平気だよ!ツナは無理しないようにしないとウェンディが悲しむんだからね!」

 

「分かったよ。じゃあよろしく……ん?」

 

「どうしたの?ツナ」

 

ふと何かに気づいたように顔をあげるツナにミラが声をかけるがツナは城の方角を見て眉間にシワをよせる……

 

「城で誰か大きい魔法を使ってないかな?小型竜は全滅したはずだよね?」

 

「ム……確かに……おかしいのう……あの城も充分に魔法の範囲だったのじゃが……」

 

「城にはユキノとリリーがいたはずよね?」

 

「気になるのならちょっと見てみましょうか」

 

ウルティアがツナの前に来て水晶を取り出した。すると水晶から光が溢れ、その光が収まると城の光景が映し出される。

 

「ルーシィとユキノ……?それにリリーが扉を攻撃してる……壊そうとしてるのかな?」

 

「そう……その手があったのね……」

 

さすがにウルティアはすぐに理解した。彼女達は扉を破壊する事で未来を塗り変えるつもりだと……

 

「恐らくルーシィの発案ね。フフ……同じような方法を考えてもやっぱり私とは違うのね…………ツナ、よく聞いてちょうだい。彼女達は……」

 

ウルティアは自己嫌悪に囚われながらツナにルーシィ達の考えを話し始めた……

 

人と竜の戦いは遂に最終局面を迎えるのだった……

 

 

 

 

 

 




いつになったら余震収まるのやら……大きいのが来ないのを祈るしかできないです……

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