妖精達と歩む大空   作:グリーン

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ようやく地震の被害からライフラインの復旧が完了しました。しかし余震はまだまだ続いていて今日も震度4を記録しました。


罪の在りか

 

 

-クロッカス

 

花咲く都クロッカスの上空ではこの世のものとは思えない戦いが繰り広げられていた。激突する2頭のドラゴン……そのぶつかり合いは大気を震わせ、衝撃を撒き散らしていた。

 

「何故ナツと……裏切ったのか!?アトラスフレイム!!」

 

「我が友の子の存在が我の意識を遮った魔法を消し去った!最早貴様の思い通りにはならん!!」

 

「そういうこった!!行くぜオッチャン!!」

 

ナツの声に合わせてアトラスフレイムがマザーグレアの首に噛みつく……そしてお返しにマザーグレアも噛みつこうとするがアトラスフレイムはそれを避けるようにうまく回り込む。

 

マザーグレアは煩わしさからかブレスを放ってアトラスフレイムを攻撃するがそのブレスは炎の体をすり抜けるように受け流されはるか後方の山を吹き飛ばした。二頭のドラゴンは至近距離でにらみ合う……

 

「我が金剛の体は貴様の炎などでは焼けぬ!!」

 

「貴様のブレスなど我が炎の体には通じぬ!!」

 

二頭のドラゴンはお互いにダメージを与えられずに拮抗している。その拮抗状態を崩すのはその背に乗る二人の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)……

 

「貴様の仕業か!ナツ・ドラグニル!!さっさと貴様を片付けてもう一度俺の支配下に置いてやる!!」

 

「へっ!そう上手く行くかよ!!」

 

「見せてやれ!我が獄炎を食らったお前の力を!!」

 

「なっ!?アトラスフレイムの炎を……食っただと!?」

 

「うぅおぉぉぉりゃあぁっっ!!!」

 

今まで以上に激しく燃え盛るナツの右腕がローグとマザーグレアに突き刺さった……

 

 

 

 

 

 

ウルティア・ミルコビッチ……彼女の人生は呪われていた。最愛の母と引き離された彼女はその絶望からやり直しを望み闇の魔道の道へと堕ちていった……

 

彼女の求めたのは時のアークという名の「失われた魔法(ロストマジック)」そしてこの世界を一巡目と考え二巡目の世界で幸福を掴む為にどんなに非道なことでもしてきた……

 

だが天狼島でのグレイとの戦いの最中で母の愛を知り今までの罪を禊ぐ為に独立ギルド魔女の罪(クリムソルシエール)を立ち上げた……

 

そして彼女は再び絶望を抱えることになる……

 

「私は……何の罪もない人を……今の時代のローグを殺そうとした!思い止まったけど……やはり私は何も変わってないのね……」

 

ウルティアがこの事態を乗り切る為に考えたのは現在のローグを殺すこと……そうすれば未来のルーシィが体験した第1の未来、未来のローグが体験した第2の未来は消滅して強制的にローグが存在しない第3の未来へと塗り変わる。

 

そうすれば未来から来たローグの存在とそれによって呼び出されたドラゴン達も消える……過去を変えるのではなく未来の道筋を固定する事……それこそがウルティアの導きだした最善の方法だった。

 

だが城の地下でローグからナツを助けた時にその提案をナツに止められた。

 

「今のローグには何の罪もねえ。アイツはきっと道を間違えたんだ。殺すとか殺さねえとか……俺達も道を間違えるつもりかよ」

 

ナツの言葉に一度は賛同したが予想外の小型竜の群れ……そして一度ツナがジルコニスに吹き飛ばされたのを見てこのままでは犠牲者が出てしまうと思いメルディを置き去りにローグの元へ走った。

 

だが現在のローグを前にしてギリギリでローグの殺害を思い止まった直後にナツの声でツナがジルコニスを倒したのを知った。さらにはそれに触発された魔導士達は勢いに乗り小型竜達との戦いを有利に進めていた。

 

「私は……どこで道を間違えたのかな?お母さん……」

 

短絡的にローグを殺すしかないと思いそれを実行しようとした自分は昔と変わらず最低の人間だ。やはり根が腐っているのだろう……ジェラールとメルディと共に過去の罪に押し潰されずに償いの道を歩くと決めたのにまた罪を犯そうとした。

 

「せめて私の命を使えばこの罪を償う事ができるのかしら……」

 

ウルティアが考えているのは時の禁呪……ラストエイジス。それを使えば自分の命と引き換えに時を戻すことができる。

 

だがウルティアはその魔法を使うことに躊躇いを覚えていた。それは命を惜しんでいるわけではない……むしろこの汚れた命で世界が救われるなら喜んで命を捨てようとさえ思っている。

 

「私の命でどこまで時を戻せるの?」

 

現在の戦況はドラゴンを2頭倒して小型竜との戦いでも負傷者は出しても死者は出していない。そして小型竜はツナ一人を狙っていて他の者には目もくれない。おまけに何故かナツが炎のドラゴンと共にローグと戦っていた。

 

扉を開く前まで時間を戻せなかったら再び倒したドラゴンを復活させる事になってしまう。

 

「躊躇うのはツナの存在が理由ね……本当に色んな意味ですごい人……」

 

誰よりも強く、人々に勇気を与える存在……彼の勝利がこの戦いの流れを決めた。ウルティア自身も彼の炎に、存在に魅せられていた。あんな風になりたいと素直に思った……

 

ふと、上空を見上げると地上から数えきれないほどの光の筋が夜の暗闇の中で一際輝く炎に向かって殺到するのが見える。それを踊るように軽やかに躱している炎を見ているとここで燻っているわけにもいかないと言う気持ちになる。

 

だが罪の意識に苛まれるウルティアは動こうと思っても動けない……

 

「やっと見つけた!ジェラール!こっち!!」

 

「こんな所にいたのか……探したぞ」

 

そこに現れたのはメルディとジェラール……共に贖罪を誓い合った仲間達だった。だが自分に未だに仲間の資格があるのかと迷う。

 

「フェアリーテイルのマスターがツナが引き付けている小型竜達を一掃する策を練っている。俺達はツナが動きやすいように端から小型竜の数を減らすぞ」

 

「ここが正念場だよ!ウル!」

 

「でも私は……また罪を……」

 

「ウル?もしかしてローグを……?」

 

「ええそうよ!私は今のローグを殺そうとした!やっぱり私は何も変わってないのよ!!」

 

泣きながら叫ぶウルティアにメルディは困ったような顔をしてジェラールの顔を伺う……

 

「そうか……辛い選択をさせようとしてすまない」

 

「何を言っているのあなたは……?」

 

「俺も最後の手段として考えてはいた。最悪の手段だとは思ったがエルザや他の者達の命が危うくなったならば実行していたかもしれない」

 

「私だってウルやジェラールが危なくなったら同じようにしてたよ!きっと!」

 

「あなた達……」

 

「俺達はまた同じように罪を犯そうとした……それを防いでくれたのはツナだ……アイツが小型竜を引き付けてるお陰で未だに死者も出ていない」

 

「あたし達3人でツナに恩返しをしないとね」

 

「ここで燻っている訳にもいかないだろう?」

 

「だから行こう?少しでもツナを助けないとね」

 

ジェラールとメルディが差し出す手をおずおずと……そしてしっかりと取るウルティア。その瞳には再び力強さが舞い戻り二人に感謝する。

 

同じ罪を背負った3人はツナを援護するために小型竜に向かって走り出した……

 

 

 

 

 

 

「ローグ!!」

 

「影竜の斬撃!!」

 

スティングは自分が戦っていたドラゴン……シザーランナーを引き連れて現在のローグの戦っている場所へとやって来ていた。ローグは自分が相対していたドラゴンであるリヴァイアからこの騒動の原因は未来から来た自分であることを聞いて絶望の最中にいた。

 

だがスティングの登場とその明るさに光を見出したローグは立ちあがり共に双竜としてタッグで戦っていた。

 

「シザーランナー!手伝え!捕獲任務は面倒だ!!」

 

「リヴァイア……全員殺せば早いだろう!」

 

「アイツら……コンビネーションが悪いな」

 

「俺達の連係で一気にやるぞ!ツナヨシ・サワダだけに任せていては滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)の名折れだ」

 

「ああ!俺達ならやれる!……ってあれは!!」

 

スティングが見たのはガジルが戦っていた黒いドラゴン……ファフニールがこちらへ走って来る姿だった。その足下にはガジルの姿もある。どうやら攻撃を躱しているうちにここへ辿り着いたようだ。

 

「ちょっ!ガジルさん!何でここに!?」

 

「知るかよ!後ろの奴に聞け!」

 

「お前も人の事は言えんぞスティング……」

 

さらに数人の人影が現れたことによって戦場はさらなる混乱が巻き起こる。

 

「ガジルさん!スティングさん!ローグさん!」

 

「コイツら全員滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)かよ……」

 

「おいおい……ここは同窓会か?」

 

ウェンディとコブラ、ラクサスが現れたことによってこの場にナツ以外の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)が集結したことになる。

 

「貴様ら……邪魔だ!どこかへ行け!!」

 

「ファフニール!後から来て何だその態度は!!」

 

「シザーランナー!貴様も邪魔だ!!」

 

三頭になったドラゴン達は喧嘩をしていて目の前のスティング達には目もくれない。その態度は血の気の多い滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)達を苛立たせるには充分すぎた。

 

「嘗めやがって……俺らなんか眼中にないってか?」

 

「やるぞ!スティング!」

 

「ギヒッ!むかつくドラゴン達だぜ!」

 

「コイツらの声……イラつくぜ」

 

「なら俺達の存在を刻み付けてやろうじゃねえか」

 

「わ……私もガンバります!!」

 

6人の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)は並び立ちながら気合いをいれる。

 

「ツナが倒したのが二頭……何故かナツの味方をしてる奴にそれと戦ってる奴を抜かせばここにいる三頭が最後のドラゴンだ……やるぞ!!」

 

ラクサスの声に合わせて攻撃体勢を取る滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)達……全員が呼吸を合わせていがみ合っているドラゴン達に向き合う。

 

「雷竜の……」

 

「天竜の……」

 

「鉄竜の……」

 

「白竜の……」

 

「影竜の……」

 

「毒竜の……」

 

「「「「「「咆哮!!!」」」」」」

 

六種類の咆哮が混ざり合いながら三頭のドラゴンへと向かっていく。全く警戒していなかったドラゴン達は驚愕してろくな防御もできずに直撃を食らった。

 

「「「ぐぎゃああああっ!!!」」」

 

混ざり合った魔力が爆発して巨大な三頭のドラゴンを粉塵が覆い隠す……

 

「やったぜ!!」

 

「ギヒッ!俺らをなめんじゃねえ!!」

 

「……いや!まだだ!!」

 

粉塵が晴れるとそこにはかなりの傷を負っているものの五体満足なドラゴン達がいた……

 

「そ……そんな……」

 

「6人がかりでも倒しきれねえのかよ……」

 

「だが傷を負わせる事はできた!」

 

「そうだローグ!俺達の攻撃が通用したぞ!」

 

「なら一気にたたみかけるぞ!!」

 

「ちっ!仕方ねぇな……」

 

戦意高揚する滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)達……対するドラゴン達は傷つけられた怒りに燃えていた。

 

「人間風情が調子に乗るなよ!!」

 

「リヴァイア!もう捕獲などとは言うまいな!?」

 

「少し痛い目に遭わせてやるとしよう!」

 

ドラゴン達は喧嘩をやめて目の前の人間達を蹂躙するべく吠える。

 

「俺達をなめんなよ!!」

 

「私達の魔法はあなた達を倒す魔法です!!」

 

「ツナはドラゴンを倒してみせた!俺らもアイツに負けてられねえ!!」

 

「さすがフェアリーテイル!俺達も負けてられねえ!!双竜の力をみせてやろうぜ!!」

 

「ああ!コイツらを滅竜する!!」

 

「今日は色んな声が聞こえる……てめぇらの声は邪魔なんだよ!!」

 

滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)達も吠える。ドラゴン対滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)の死闘はいよいよ佳境を迎え始めた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 




余震1000回越えるとか……寝てる間にまた大きな地震が起きたらと思うとなかなか安眠できません……

ウルティアが迷っていたのは人類側がかなり優勢に戦いを進めていたからです。

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