-クロッカス
マザーグレアから落下したナツを助けたルーシィとハッピーはナツを連れて一時身を隠していた。
「ナツ~大丈夫なの?」
「これぐらいどうってことないぜ!」
「やっぱり未来のローグは強いのね……ナツでも勝てないなんて……」
「ちょっと待て!!誰も勝てないなんて言ってねえぞ!!」
「じゃあ勝てるの?」
「もちろんだ!!……でも正直アイツ強ぇな……それに乗ってるドラゴンが厄介だ」
ナツにとっては珍しく弱気になっているのか自信なさげにローグの事を語る……
「ツナに変わってもらったら?」
「いーや!俺はツナにアイツは任せろって言ったんだ!アイツは俺が倒す!!」
「ツナはドラゴンと戦ってもらった方がいいと思うよ。もう一頭倒したみたいだし」
「てことはドラゴンは残り五頭ね……うちのギルドは炎の竜と戦ってたけどみんな無事かな?」
「……それだ!いいこと思いついたぞ!!ハッピー行くぞ!!」
「アイ~!!」
「ち……ちょっとあたしは!?置いて行く気!?」
「お前は隠れてろ!!」
ナツとハッピーが飛び去って行くのをルーシィは見送ることしか出来なかった。
「んもう!何よアイツら!!……あれ?あそこにあるのは……」
憤慨するルーシィはドラゴンによって壊された瓦礫にまみれたあるものを発見した。見覚えのあるそれはここにあるはずのないものだった……
「あたしの……メモ帳?なんでここに?」
フェアリーテイルの面々はエルザと戻って来たミラを中心に防衛ラインを死守していた。だがあまりにも多い小型竜の数に死者こそ出していないが怪我人の数も徐々に増えてきていた。
「負傷者はグレイの作った氷の防壁まで下がれ!」
「リサーナ!あなたも下がりなさい!」
「大丈夫だよミラ姉!ナツ達も頑張ってるんだもん!」
「それにしてもきりがねぇな……」
「ジュビア達も魔力の消費が激しいですね……」
「って危ない!ジュビア!!」
「え?」
油断していたジュビアの死角にいた小型竜が口に光を溜めて発射寸前だった。その光がカナの声に振り返ったジュビアに向けて放たれようとしたが……
「マギルティ=レーゼ!!」
複数の魔力のエネルギー弾がジュビアを狙っていた小型竜に直撃して粉砕していた。
「油断大敵だよ。ジュビア!」
「メルディ……ありがとう!」
「
そして一筋の光がフェアリーテイルに迫る小型竜を次々に撃破していくのを見てエルザは驚愕する。
「ジェラール!!」
「エルザ……メルディも無事だったか」
「ジェラール!ウル見てない?はぐれちゃったの!?」
「いや、見ていないが……心配はいらんだろう」
「うん……そうだとは思うけどさっきちょっと深刻な顔してたから……」
「そうか……ならここの小型竜を殲滅したら探しに行こう」
「そうだね。じゃあ力を貸してくれるジュビア?」
「もちろんです!」
「助けは必要ないかなエルザ?」
「足を引っ張るなよジェラール!」
「そっちこそ疲れたなんて言うなよ」
お互いに強気な笑みを浮かべて並び立つ二人が小型竜に向き直った時空から再び大量に卵が落下した。
「くっ!またか!」
「しかも最初の時より数が多いわ!」
「まだこんなにいんのかよ!!」
「こうなったらワシが……」
マカロフが前に出ようとすると小型竜達は突然方向を変えてフェアリーテイルを無視して一目散にどこかへ去って行った。
「逃げるとは漢らしくないぞ!!」
「エルフ兄ちゃん!あの数はきつかったと思うよ」
「しかしどこへ?」
「怪我のないメンバーで追撃するぞ!背を向ける相手なら簡単だ!罠にだけは気をつけろ!!」
突如踵を返した小型竜の狙いはツナただ一人……
一方岩窟王を倒したツナ達はドラゴンに勝った喜びに浮かれていた。人にとってあまりにも強大な存在であるドラゴンの倒したことで戦闘の疲れなど感じない程に盛り上がっていた。
「ツナさん!カグラさん!やりましたね!」
「ほんとにすごかったよ~!!」
「ツナ~!カグラちゃん!やっぱり最強だね!!」
「カグラをなめちゃいけないよ!」
「まことにあっぱれじゃ!」
「いや……私の力など微々たるものだ」
「そんなことはないよ。俺一人ではあの技は使えなかったからね。本当にありがとう」
「ツナヨシ……」
通常状態に戻ったツナとカグラを労いと共に取り囲む連合メンバー達。その顔には笑顔が溢れていた。
「僕も手伝ったんだけど……」
「仕方ねぇよヒビキ」
「メェ~ン。そう悲観することはない。確かに主役はあの二人だったが君もきちんとアシストをしていた。それが勝利に繋がったのだからね」
「ありがとうございます!師匠!」
そんな勝利の余韻を噛みしめていたメンバー達だったが少し離れた場所にいたコブラの発した言葉に再び緊張感を高める事になる……
「そう来るか……おい!あのドラゴンに乗ってる奴の命令で小型竜の全てをツナヨシ・サワダ一人に集中するらしいぜ!こっちにすげぇ数が向かってやがる」
「「「「「なっ!?」」」」」
マザーグレアの背でローグが発した命令がコブラには聞こえていた。
「ドラゴンとまともに戦えるのはそいつ一人だけ……なら小型竜の全員でそいつを討ち取るつもりらしいぜ」
「なるほどね……でも俺に攻撃が集中するなら俺が囮になれば簡単に小型竜を倒せるね」
「そんな!ダメですツナさん!!」
「いくらなんでも数が多すぎるぞ!!」
「ここはツナヨシ殿を守るように円陣を組んで……」
「ダメだ!それじゃあ結局俺に攻撃するために他のみんなも攻撃に晒されることになる」
「しかしツナヨシ!そなたが危険だ!」
「考えてる時間も無さそうだ!!」
ツナは瞬時にハイパー化すると一瞬で人垣から距離を取ると離れた場所に立った。そこへ到来するいくつもの光を炎を広げてガードする。
驚いた連合メンバーが辺りを見渡すとそこには十数体の小型竜がツナへ向けて光線を絶え間なく放っている光景があった……
「ツナさん!!」
「くっ!崖錘!!」
ウェンディが悲痛な叫びをあげる中でジュラが地面を操って小型竜を押し潰す。だがその後ろからさらに小型竜の群れが現れて光線を放とうとしている。ツナが炎の推進力で空を舞うと地上からツナへと無数の光の帯が向かってゆく。
それをツナは自身の高速移動でバレルロールしながら躱している……小型竜達はツナ以外が目に入らないとでもように次々と光線を撃ち込んでいく。
「ウェンディ!コブラ!他のドラゴンスレイヤーに加勢するんだ!!」
「ツナさん!!」
「ちっ!……仕方ねぇ」
「皆の者!!小型竜へ攻撃を!!絶対にツナヨシ殿を討たせてはならんぞ!!」
「承知!!」
「了解です!!」
「ウェンディ!ここは任せて!!」
「ヒビキ君!君は他の者達へ連絡してくれたまえ!魔導士の総力をあげてツナヨシ君を援護するんだ!!」
「分かりました一夜さん!!」
「闇の文字……絶影!!」
「バリオンフォーメーション!!」
「レブラホーン!!」
「雷竜の咆哮!!」
雷神衆の連続攻撃に加えてラクサスの強力な咆哮が全身を凄まじい炎に覆われたアトラスフレイムに放たれるが効果がない。
「無駄だ!我が獄炎は魔法を焼き尽くす!!」
「くそっ!!」
アトラスフレイムの嘲笑に舌打ちするラクサスだが打開策は浮かばない。
「ラクサスとは相性が悪いな」
「水のドラゴンスレイヤーはいないの!?」
「聞いたことねぇな」
「炎ならあそこにいるけど」
そう言ってビッグスローが指差す空に視線を向けるとハッピーに掴まったナツが近寄って来ていた。ナツはアトラスフレイムの真上に来るとそこで手を放してその頭に着地した。
「見つけたぞ炎のドラゴン!!」
「何だ貴様は?」
「俺はナツ!!今からお前を……食う!!」
「「「「んなー!!??」」」」
ナツの爆弾発言に顎が外れるかというぐらいに驚愕するラクサス&雷神衆……そんな彼らを尻目にナツはアトラスフレイムの体の炎を食べ始めた。
「貴様!!離れろ!!」
「やだ……モグモグ……ツナの炎と同じくらいうめぇな……」
「おいナツ!!どういうつもりだ!?」
「俺はこいつを食ってパワーアップするんだ!!他のドラゴンに行ってくれ!……モグモグ」
「なるほど……単純に炎には水と考えていたが炎のドラゴンスレイヤーにとっても相性がいいということか……ラクサス!ここは任せよう」
「俺のベイビー達が調べた所によるとあっちでガジルが戦ってるみたいだぜ!」
「よし!任せたぞ!ナツ!!」
「おう!!そっちもな!!」
ラクサス達が走り去って行くのを見ながら再び炎を食べ始めるナツに激怒したアトラスフレイムは体を揺さぶったり近くの瓦礫にぶつけたりしてナツを振り落とそうとしていた。
だがその最中でアトラスフレイムは懐かしい気配を感じて戸惑った。自分の炎を食べている少年から感じるこの気配は自身のよく知る気配だった。
「小僧……貴様イグニールと関係があるのか?」
「イグニール……?イグニールを知ってんのか!?」
「炎竜王イグニール……我が盟友にして炎竜を統べる王だ……貴様はイグニールの……?」
「そうか!イグニールは俺の父ちゃんだ!!」
友の息子……その熱が……その存在が自身を縛り付けていた呪縛を跡形もなく消し去っていた。
「くっ!数が多いな……!」
地上から放たれる光線を捌きながらその全てを避けているツナ……炎を節約するためにもナッツの力を借りずにいる。その時ツナに念話で話しかける者がいた。
『ツナよ。聞こえるか?』
「マスター!?」
『うむ。ウォーレンに手伝ってもらってお主に話しかけておる。事情は聞いたぞい。全く無茶をする奴じゃ……』
「すまない!今は……」
『分かっておる。そやつらを誘導しながらクロッカス中心のリ・イン・クリスタルまで来るのじゃ』
「だが……」
『お主は確かにワシよりも強い……じゃがお主一人で戦う必要はない。お主とてワシの大事な子供じゃ……たまには親にも格好つけさせんかい!』
「……了解した。このままクロッカス中心に向かう」
『うむ。無事に来るんじゃぞ』
念話が終わり下を見ると少しずつ小型竜が削られていってるのが見える。ツナをフォローする為に攻撃しているようだ。ツナは心の中で感謝しながら少しずつ移動を始めた……
クロッカスの戦いは一気に終焉へと加速する……
ツナは小型竜を誘導しながらクロッカス中心へ……
ナツは新たな友と共に再びローグへと向かう……
その他の者もそれぞれに己の戦場を駆ける……
そして……
「何が魔女の罪よ……私の罪は禊ぐ事はできない」
自身の行動に絶望した一人の女性が涙を流していた……
次回からもう少し早く仕上げれるといいなあ……