妖精達と歩む大空   作:グリーン

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会社で5人ほどインフルエンザで休みの人達がいました。みなさんもお気をつけください。


未来を守る!!

 

 

-中央広場 リ・イン・クリスタル

 

7月7日午前0時を告げる鐘の音がクロッカスに鳴り響く……中央広場を守備するフェアリーテイルの一同は既に戦闘準備を終えて雑談していた。他のギルドも既に街の要所に散らばっていた。

 

まるでミイラ男のような格好のガジルは親である鉄竜メタリカーナを思い出す……

 

「7月7日か……こんな日にドラゴンが現れるってのか……」

 

「ガジルやナツ達のドラゴンが消えた日……何か関係があるのかな?」

 

ガジルの隣に立っていたレビィもただの偶然で片付ける事は出来ないようだった。

 

大魔闘演武で怪我をしていたガジル、グレイ、ラクサスの3人はラミアスケイルのシェリアや王国のヒーラーの力で全快とはいかないが回復をしていた。

 

「けっこう静かですね……街の住民の避難は終わったのでしょうか?」

 

「まだ完全には終わってねえみたいだぜ……もっともドラゴンがどっから来るか分からねえからな」

 

「しかし一万のドラゴンか……そんなに生き残っているとは驚きだな」

 

「どこに潜んでいたのやら……」

 

「それにしても不気味な月だな……」

 

月蝕(エクリプス)か……」

 

フリードの言葉にラクサスは赤く染まった月を見上げた……

 

 

 

 

 

 

 

-華灯宮メルクリアス 下層

 

地上でエクリプスの扉が開いている音がここまで響いていた。戦いの最中のナツとローグはこの音に反応して動きを止める。

 

「エクリプスは開いたか……だが必ずルーシィは邪魔をする……扉を閉めると決まっている!」

 

「ルーシィはそんなことをしねえ!みんなの希望を打ち砕く訳がねえだろうが!!」

 

激しく打ち合いながらも徐々に押されていくナツ……ローグは大量の魔力を込めた一撃をナツに撃ち込んだ。

 

「があぁぁぁっ!!」

 

「俺はルーシィを殺しに行く……そこをどけ!!」

 

「させるかぁ!!」

 

吹き飛ばされたナツに追い打ちをかけようとするローグだがなんとかその攻撃を躱すとナツは切り札を切った……

 

「モード雷炎竜!!!」

 

「それが7年前に隠していた力か!!」

 

「雷炎竜の撃鉄!!」

 

ナツの一撃を腕に魔力を集めてガードするローグ……今度はさすがに手傷を負ったようだ。

 

「なるほど。大した力だ……ならばこちらも行くぞ!!モード白影竜!!」

 

「なにっ!!」

 

雷炎竜と白影竜の激突によって生まれた凄まじい衝撃が辺りの壁を崩壊させてゆく……だが同じ双属性であってもやはり7年の差は簡単には埋まらないようだ……

 

「がっ!!」

 

「これが光と影の双属性……」

 

まるで光のような速さで攻撃を加えるローグにナツはついていけない。さらには影と同化して姿を消してナツの死角に回り込む。

 

「死ね!!白影竜の(あしぎぬ)!!」

 

「ぐああああっ!!」

 

黒と白の魔力が無数の線となってナツの体を切り裂いた。あまりの速さにナツは防御すら出来ずに倒れ伏した……

 

「白……影……」

 

「スティングを殺して奪った力だ……もっともこの時代より少し先の話だがな」

 

「お前……スティングは相棒だろ……?何でそんな真似を……」

 

「スティングも喜んでいるさ……俺がこんなにも強くなる切っ掛けになれたのだからな!!」

 

「ふざけんな……!テメェそんなに命をなんとも思わねぇ奴だったのかよ……」

 

「そうだ。お前はさっさと死ね!白影竜のっ!!」

 

ブレスを放とうとしたローグだがいつの間にか自分の周囲にいくつもの水晶が浮かんでいるのに気づいた。女性の声が通路に響く……

 

「フラッシュフォワード!!」

 

浮かんだ水晶が一斉にローグへと飛来して爆発するがローグは影になって爆発の煙に紛れてこの場を去っていった……

 

駆けつけた女性は魔女の罪(クリムソルシエール)のウルティアとメルディだった……

 

「ナツ!しっかりしなさい!メルディ!応急薬を!」

 

「うん!……ルーシィ……」

 

メルディは未来のルーシィの遺体を痛ましげに見る……二人はナツの応急処置を施そうとするがナツの体が影に沈んでいく。

 

「ナツ!起きて!影に飲み込まれるわ!!」

 

「どうすれば……」

 

なんとか引っ張りあげようとする二人の肩を意識を取り戻したナツが掴む。その姿に二人はほっと息をつく……

 

「ありがとな……早く行かなきゃ……」

 

影から脱出したナツは傷だらけになりながらもその瞳には強い光を宿していた……

 

 

 

 

 

-庭園

 

「おおっ!見ろ!」

 

「扉が開くぞ!!」

 

「これが俺達の勝利への希望だ!!」

 

エクリプスの扉が開いているのを王国兵達は興奮しながら眺めている。そんな中でツナの超直感は扉に対して警鐘を鳴らしていた。

 

ツナは周囲を見渡すがドラゴンの気配もなければ嫌な予感もしない。いくらなんでも一万ものドラゴンが接近しているならば距離があっても自分の超直感が感じ取っていてもおかしくないはずだ。

 

-エクリプス……時を渡る……未来のルーシィと7年後のローグ……ドラゴン……ジルコニスの幽霊……四百年前……まさか!!-

 

最悪の答えが頭をよぎる……ルーシィのいた未来は扉を閉めてないにも関わらずドラゴンによって滅ぼされた。てっきりエクリプス・キャノンが効かなかったと思っていたが……

 

-まさか、扉を開いたままだからこそ滅ぼされた(・・・・・・・・・・・・・・・・・)としたら……-

 

「扉を閉めるんだ!!」

 

その考えに至ったツナはヒスイ姫に駆け寄ると相手が姫であるにも関わらず大声で叫ぶ。

 

「えっ?で……出来ません!これはドラゴンに対抗する唯一の……」

 

「違う!そうじゃない!これは罠だ!!ルーシィなんとか扉を閉めるんだ!!」

 

「ちょっ!ツナ!?」

 

「いったいどういうことですか!?」

 

ヒスイ姫は一瞬ツナが何を言ってるか分からなかった。アルカディオスやダートン、フェアリーテイルの仲間達すら呆然としている中、ヒスイ姫の反論にさらに言葉を重ねる。

 

「落ち着け!姫の御前だぞ!罠とは何の事だ!?」

 

アルカディオスが姫を庇うように前へ出てツナに問う。ヒスイ姫も厳しく口を開く。

 

「今扉を閉じたらエクリプス・キャノンは撃てないのですよ!!」

 

「それも未来のローグからもたらされた情報でしょう!?奴はあなたにそう言うことで扉を開かせるのが目的だったんです!!」

 

「何を言ってるのです!?」

 

「あの扉は……っ!!」

 

その時轟音と共に大地が揺れる……ヒスイ姫はアルカディオスに支えられるが他の者達は体勢を崩してしまう。一度だけでなく規則的に何度も音と地震が起きる。そして誰もが気づいた……これは足音だと。

 

「こ……この気配は!?」

 

「遅かったか……」

 

「いったい何が起こっているというのだ!」

 

ウェンディが感じ取った気配にツナは自分の予想が当たっていたことを確信した。状況を把握しようとするアルカディオスにツナはエクリプスに指を指すことで応える。その場にいた全員がツナの指差す先を見る……

 

「あ……ああ……」

 

「そんな……」

 

「バカな!何故……」

 

「こんなことが……」

 

誰もが信じられない思いで扉から出てきたものを見ていた。扉を潜って現れたのは巨大なドラゴンだった……

 

「扉からドラゴンが!?」

 

「どうなってるの!?」

 

「グルルル……グオオオオオオオオォォォッ!!!」

 

ドラゴンの咆哮が衝撃波となって辺りにいた兵士達を吹き飛ばして石畳をひっぺがしていく。ただの雄叫びでこれだけの破壊力を生み出すドラゴンにその場にいる者は恐怖に震えている……

 

「マズイ!!」

 

ドラゴンが右手を振り上げるのを見たツナは後ろにいる人間の位置を把握して先頭に飛び出すと地面に手をつけてシェリアとのバトルの時より遥かに巨大な炎の壁を作り出した。

 

炎の絶対防壁(ブリンダ・アッソルート・ディ・フィアンマ)!!」

 

衝撃を受け流すようにツナを頂点として扇状に展開された炎はルーシィ達だけでなくこの場にいる兵士達も守ろうとしている……9代目より伝授された常に先頭に立つボンゴレのボスが仲間を守るために作る調和の属性を持った至高の防御壁だ。

 

ドラゴンの右手が地面に叩きつけられるとその衝撃が炎を食い破らんと襲いかかる。

 

「ぐっ……うううううっ!!」

 

「ツナ!!」

 

「ツナさん!!」

 

ツナは気を抜くと炎を突き破られると感じて衝撃に対してさらに炎を注ぎ込んで防壁を強化する。そのおかげで衝撃は炎の壁を滑るように後方へと抜けてゆく……

 

だが威力は多少減衰したもののその衝撃は街を走りズタズタに切り裂いた。街で配置についていた魔導士達もこの異変に緊張を高めていた。

 

なんとか攻撃を防ぎきったツナは炎の壁を消して片膝を地面につきながら肩で息をしている……

 

「ツナ!大丈夫!?」

 

「今回復を……」

 

「はあっ……はあっ……なんて重い攻撃なんだ……たった一撃でかなりの炎を持っていかれた……これが……ドラゴンの力!!」

 

あまりにも次元が違う力にその場にいる者達は戦慄する。ツナがいなければ一撃で全滅していたかもしれないのだ。……だがさらに悪夢は続いてゆく。

 

「もう一頭出てきたぞ!!」

 

「ぜ……全身が燃えている!!」

 

「おい!さらに出て来るぞ!!」

 

「どうなっているんだ!!」

 

様々なドラゴンが扉から出てくるのを見た者達は絶望する……兵士達は放心しているヒスイ姫に避難を促すが姫は自分の行動が世界を滅亡させる事にショックを受けて動けない……

 

「私は……なんてことを……」

 

「姫!!速くお下がりください!!」

 

呆然と膝をつくヒスイ姫に誰かの平手打ちが打たれる……あまりの予想外にアルカディオスも行動が遅れた。

 

「ツナ……ヨシ様?」

 

「貴様!姫の顔を!!」

 

「後で謝る!しっかりするんだ!まだ終わってない!扉はどうやって閉めるんだ!?答えて!!」

 

「あ……あそこの……台座で……」

 

ヒスイ姫が指差す先にはレバーが取り付けられた台座があった。ルーシィはそれを確認すると台座へと走り出した。

 

「あのレバーを引くのね!?星霊魔導士の力で……」

 

「ルーシィ急いで~!どんどん出てくるよ~!!」

 

「ツナさん!なんで気づいたんですか!?」

 

「……確証があった訳じゃない。最初におかしいと思ったのは未来のルーシィは牢屋にいて扉を閉めてないのにドラゴンに滅ぼされたと聞いた」

 

ウェンディは頷いて先を促す……

 

「一万ものドラゴンが生き残っていたなら目撃証言があってもおかしくない。だが地下のジルコニスの幽霊の話などからもう生き残っているドラゴンはそんなにいないんじゃないかと考えた……」

 

エクシード達もその話を思い出していた。アルカディオスもその話は立ち聞きしていたので頷いている。

 

「ならばどうやって一万のドラゴンが現れるのか……エクリプスしか考えられない!」

 

「そんな……」

 

ヒスイ姫が絶望の表情を浮かべる……そこでウェンディはあることに気づいた。

 

「待って下さい!!それじゃ未来のローグさんが言っていたのは……!」

 

「そうだ。ルーシィが扉を閉めた未来では一万のドラゴンは存在していないということ……そしてローグの目的はドラゴンを呼び込むことなんだ!」

 

話を聞いていた全員が驚愕する……そんなことに何の意味があるのか分からない。シャルルが金切声をあげる。

 

「何の為にそんなことをする必要があるのよ!?」

 

「それは俺にも分からない……ルーシィ!!」

 

「ぐぎぎぎぎっ……!!」

 

ルーシィは全体重をかけてレバーを引こうとするがびくともしない……そして扉からは新たにドラゴンが現れる。

 

「また出たぞ!!」

 

「今度は岩の塊みたいな竜だー!!」

 

「姫を守れー!!」

 

「私の……選択ミスで……世界が終わる……世界はドラゴンの怒りに染まる……」

 

ドラゴンの歩く揺れでルーシィは台座から転がり落ちてしまうがすぐに起き上がって泣きながらレバーを掴む。

 

「あたしはそんなの嫌!!もう一人のあたしの分まで生きるんだ!!泣いて……笑って……みんなで生きていくんだ!!」

 

「ルーシィ……」

 

「そうですよね!」

 

「オイラ達も同じだよ!」

 

「まだ未来は決まってないわ」

 

「ウム!」

 

ルーシィの叫びを聞いたフェアリーテイルのメンバーは同じ事を想う……地下でドラゴンの襲来に気づいたナツも同様だ。死に際の未来のルーシィが願ったことを叶えると……

 

「「「「「「「未来を守る!!」」」」」」」

 

 

 

 

 




ツナが色々と言いましたがやっぱり決め手は超直感ですね。本誌で読んでる方はあ、これ扉から出てくるなと思った方も多かったはずです。

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