妖精達と歩む大空   作:グリーン

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遅くなりました……少し体調を崩してました。


開かれる扉

 

-華灯宮メルクリアス 下層

 

ツナ達は一丸となって城内を駆け抜けて行く。その間にツナは今までの出来事を聞き出していた。

 

「……なるほど。一万のドラゴンか……今そんなに生き残っているの?それだけいるなら今まで目撃情報とかありそうだけど」

 

「私は聞いたことないわ」

 

「私やナツさん、ガジルさんの親のドラゴンは777年の7月7日にいなくなっちゃいました」

 

「ちょうど日付が変わったら7月7日だね」

 

「何か関係があるのかしら?」

 

「ローグはルーシィが扉を閉めるって言ったんだよね。でも未来ルーシィはドラゴンが来た時牢屋で捕まっていた……」

 

「訳がわからないわ」

 

「さっきみんなを探して走ってる時に庭園にエクリプスが用意されてるのを見たんだ」

 

「ということは既にドラゴンの襲来に備えているってこと!?」

 

「おそらくはローグが教えたのか……」

 

「どのみちドラゴンに対抗するにはエクリプス・キャノンが必要ですよね?近くに行きませんか?」

 

「そうね!」

 

「…………」

 

「ツナ、どうしたんだ?」

 

なにやら考え込んでいたツナにリリーが怪訝に思いながら声をかける。

 

「いや……少し腑に落ちない点があってね。アイツの話をそこまで信用していいのかと思ったんだ。とはいえ確かにエクリプス・キャノンの近くに行った方が状況を把握しやすい」

 

「じゃあ行こう!」

 

「本当は信号弾を上げたいんですけど……」

 

「今は無理だよ。とにかく未来ルーシィの為にもオイラ達がドラゴンをなんとかしないと!」

 

「そうだねハッピー……ところでミラは?」

 

「はぐれたユキノさんを探しています」

 

「ミラなら平気か……とにかく行こう!」

 

エクリプスのすぐ側まで来ていたツナ達は兵士達に見つからないように身を隠す……同じ頃ミラジェーンは無事にユキノを発見して他者を不幸にすると膝を抱えるユキノを慈母のように優しく抱きしめて諭していた……

 

 

 

 

 

 

-庭園

 

あわただしく兵士達が行き交う中で遂にエクリプスの扉が開かれようとしていた。

 

「これよりドラゴン襲来に備えてエクリプス・キャノン発射シークエンスに移行します!開錠!!」

 

ヒスイ姫の号令によってエクリプスの扉の鍵が次々に外されていく。ツナ達は茂みに隠れながらその様子を眺めていた。そこにアルカディオスの声がかかる……

 

「隠れている必要はない。出てきなさい」

 

その言葉にツナ達は姿を現した。さっきまでいなかったツナの姿があったことにアルカディオス達は驚いていた。

 

「フェアリーテイル……」

 

「ツナヨシ・サワダ……いつの間に合流したのだ?」

 

「オイラ達悪い事してないぞ!」

 

「アンタが大臣と一緒にいるってことは……」

 

「色々と事情が変わったのです」

 

「それで済ませていい問題ではないと思いますけど?」

 

「そ……それはその……」

 

ツナの厳しい目付きの口撃に大臣はしどろもどろになって言葉を探す。身勝手な理由でルーシィを捕らえておきながら事情が変わったという理由で済ませようとする大臣には少しぐらい皮肉を言っても罰は当たらないだろう……

 

「あ……あの!後日正式に謝罪致しますのでなにとぞこの場は……」

 

「ツナ!とりあえずその話は置いておこう!今は……」

 

「ルーシィ人がよすぎるよ……もっとたっぷりと責任を追求しても文句を言われないよ」

 

「ツナさん……」

 

「アンタって意外と根にもつタイプなのね……」

 

重くなった空気を変えようとヒスイ姫が口を開く。

 

「あの!それと大魔闘演武優勝とツナヨシ様のMVP獲得おめでとうございます!!」

 

「ツナがMVP!?」

 

「すごいです!!」

 

「ありがとうございます……それよりまだドラゴンが来ていないのに何故扉を開いてるんです?」

 

「ドラゴンのことを……?」

 

「彼らも知っています……そういえば未来から来たルーシィ殿は?」

 

「……殺されたわ。もう一人の未来人に」

 

「「なっ!!?」」

 

「ソイツはあたしが扉を開くのを邪魔した為にエクリプス・キャノンが撃てなかったと言ったわ……」

 

「……?邪魔をするのですか?」

 

「そんなことはしません!ただどうしてドラゴンが来てないのに扉を開いてるんですか?」

 

「それは単純にドラゴンが来てからでは間に合わないからです」

 

「本当に……本当にドラゴンを全部倒せるんですか?」

 

「それは分かりません……一万頭いますから何匹かは逃れてしまうかもしれません。最悪の事態を想定して父……陛下が策を練っておられるはずです」

 

「君達も力を貸してもらいたい」

 

「この事態が収まった後には私に出来ることなら何でもしますのでこの緊急事態を乗り切る力を貸して下され」

 

「どうか私からもお願い致します」

 

王国の重鎮3人から頭を下げられてルーシィ達は困惑してツナを見る……ツナは大きく息を吐き出して3人に告げる。

 

「頭を上げて下さい……力は貸しますけどそれは未来を託して逝った未来のルーシィの為です。それでドラゴンはどこから来てるんですか?」

 

「まだ観測所からもその姿を確認したとの連絡はない。今のうちに準備を万端にしなければ……」

 

「ウェンディ……ドラゴンが近づいてきたら分かる?」

 

「あ……はい。他の人よりは……」

 

「少し考えをまとめたいんだ。近づいてきたら教えてくれる?」

 

「分かりました!」

 

「ツナ?」

 

「この話何かがおかしいんだ……それがなんなのか少し考えさせて」

 

「うん……でも未来のあたしは扉を閉めてないって言ったのになんでローグは……」

 

「それは多分未来のルーシィは扉を閉めてない未来から来てローグは閉めた未来から来たんじゃないかな?」

 

「そうなの!?ローグのいた未来ではあたしは扉を閉めるの!?」

 

「落ちついて……ローグの話を全て信じたならね……アイツの言うことを全面的には信じられない」

 

「そうですよ!!ルーシィさんが希望を消す訳がないですよ!!」

 

「ありがとう……」

 

-そう…ルーシィはそんなことをしないはず……ならば何故?そして扉を閉めてないにもかかわらず未来はドラゴンに滅ぼされる……エクリプス・キャノンは効かないのか?嫌な予感がする……-

 

ツナは考えれば考えるほど疑問が沸いてきて自分の考えをまとめる事に意識を費やしていった……

 

 

 

 

 

-クロッカス中央広場 リ・イン・クリスタル

 

大魔闘演武の表彰式すら行われないまま各ギルドはこの中央広場に集められた。いや、大魔闘演武の予選で敗退したギルドも含めてクロッカスにいた魔導士の全てが国王直々の願いで召集された。住民達は兵士達に先導されて避難を開始している。

 

そしてフィオーレ国王であるトーマ・E・フィオーレより語られたのはもうすぐ一万のドラゴンが襲ってくる為にこの国が存亡の危機にあるという信じがたい話だった……

 

「一万のドラゴンですと……」

 

「アクノロギア一頭でも歯が立たなかったのに……」

 

「あれは特別だとしても一万ってのはね……」

 

かつてアクノロギアに手も足も出ずに完敗したフェアリーテイル天狼組の表情は暗い……彼らはドラゴンの強さを骨身に刻み込まれている。

 

「今……城では一万のドラゴンを一掃する作戦の準備が進められている……じゃがそれだけの大群を全滅させることは出来ないと思われる。数頭かあるいは数百頭かどれだけの数が残るのか検討もつかない……」

 

数頭ならまだしも数百頭残るのならばここにいる魔導士達に死にに行けと言うようなものだ。しかし国王としてはこの国を守る為にも彼らの協力を得なくてはならない。

 

「魔導士ギルドの皆さん……どうか力を貸して欲しい。生き延びたドラゴンを倒して欲しい……この通りです」

 

だからこそ国王は頭を下げる……その心情を読みとった魔導士達はこの国の国民であることを誇りに思い、そしてその願いに応えた……

 

「おう!!」

 

「任せておけ!!」

 

「この国を守る為に!!」

 

「ドラゴンなんてぶっ倒してやる!!」

 

「気合入れていくぞ!!」

 

「「「「「オー!!!!」」」」」

 

荒々しくも頼もしい怒号が広場に響き渡る……魔法と共に歩んだこの国は魔導士達にとってかけがえのかい祖国であることがよく分かる光景だった……国王は自分はこの国の王で幸せだと感じながら涙を流す。

 

「私達の仲間が王国軍に捕らわれているのだが……」

 

「無事です。先程姫と合流したと報告が。ツナヨシ・サワダ殿も一緒とのことです」

 

「アイツ……いきなり飛んでいったと思ったら……」

 

「それほど心配だったのでしょう。それよりもグレイ様!今回はジュビアと共に戦いましょう!」

 

「フン……おもしれぇ!滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)の力を見せてやるぜ!」

 

「オメェだけにいいかっこはさせねえぜ」

 

「ガジルもラクサスも怪我が酷いじゃない。大丈夫なの?」

 

「俺達はラクサスのフォローだ」

 

「腕がなるぜ!でもエバはエルフマンと一緒だろ?」

 

「なんでよ!!」

 

「俺だってゴメンだ!!」

 

気合をいれる妖精の尻尾(フェアリーテイル)を筆頭に他のギルドもやる気十分だ。

 

「いいか!ドラゴンはメチャクチャ強いからな!仲間を信じて戦おうぜ!他のギルドとも協力しろよ!!」

 

「さすが新たなマスターだな。この短時間でみんなをまとめあげた……」

 

「悪くないね……ところで御嬢は?」

 

「さあな……試合後から姿が見えねえけど」

 

「ふっ……見ていろグレイ。試合では遅れをとったが今度は負けんぞ」

 

「これこれ……今度は勝負ではないぞ。お前達のコンビプレイを見せてやればよい」

 

「大怪我してる人ー!!今のうちに治療してあげるよー!!空気たくさん食べたから魔力は十分あるからね!」

 

「カグラちゃん怪我は?」

 

「いや、ツナヨシの攻撃は深刻なダメージにはなっていない……相当手加減されたようだな……」

 

「全てのギルドの意志が一つに……なんと素敵な香り(パルファム)……」

 

「今のうちにドラゴンについて調べておこう」

 

「頼んだぜヒビキ!あんまり無理すんじゃねーぞ」

 

「「「「ワイルド~」」」」

 

「カッカッカ……いい酒の肴だぜ!!」

 

剣咬の虎(セイバートゥース)蛇姫の鱗(ラミアスケイル)人魚の踵(マーメイドヒール)青い天馬(ブルーペガサス)四つ首の猟犬(クワトロケルベロス)その他のギルドもその心を一つにしてこの国難に立ち向かう。

 

その姿に感極まった国王は涙を流しながら何度もお礼を言う……

 

「みなさん……ありがとう……ありがとう……ありがとう…………カボ」

 

国王の語尾にざわめきがピタリと止まってみんなが目を点にしていた……

 

一方広場を見ていた評議員のラハールとドランバルトはエクリプスの存在が法に触れることを危惧していたがとりあえず目の前の危機を乗り越える為に魔導士達と協力して事に当たる事にした。

 

 

 

 

-メルクリアス下層

 

ナツは未来のローグに大苦戦していた。この時代ではローグを圧倒したナツだったが7年のハンデは大きく全くダメージを与えられない……

 

「フフ……かつては俺よりはるかに強かったというのに今となってはこの通りだ……」

 

「うるせえぞ!!」

 

「おっと!さっさとどけ!俺はこれ以上時間を無駄にしたくはない」

 

「ぐっ!テメェ本当に未来を救うために来たのか?お前からは邪悪な臭いがするぞ!」

 

それには答えずにローグは冷たい笑みを浮かべる……その頃庭園では遂に扉が開き始めた……

 

時刻は間もなく7月7日午前0時……

 

 

 

 




次回はいよいよ……

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