妖精達と歩む大空   作:グリーン

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今回は早く仕上げました……しかしこの展開は書いてて鬱になります。


悲しみを越えて

 

 

-華灯宮メルクリアス 下層

 

突如現れた未来から来たローグは餓狼騎士団と王国兵を一掃してナツ達に名乗りをあげた。だがその容貌は現在のローグとはかけ離れていた……

 

「ローグ?」

 

「セイバートゥースの?」

 

「あたし以外にも未来から来た人がいたなんて……」

 

「でも……何で?」

 

ハッピーの疑問にローグは口角をあげるとその疑問に答える為に口を開いた……

 

 

 

 

 

 

-庭園

 

ヒスイ姫が口にした情報提供者は男性との言葉に剣を自分の喉元に当てていたアルカディオスは自分が大きな勘違いをしていた事に気づいて困惑する。

 

「未来人は二人いた……一人はルーシィ。仲間へ危機を伝える為にやって来た」

 

「そしてもう一人は姫に危機を伝える為に……」

 

「二人とも目的は同じ……例え3人目4人目がいても驚くことではないでしょう。この国を救う為に来たのですから」

 

ヒスイ姫は諭すように告げるとアルカディオスが自身の首に向けた剣を受け取り、そして彼に返した。

 

「ですからあなたも騎士であるならばその剣先は向けるべき所へ……私は扉を開きます。この国を守る為に私も剣を抜きましょう」

 

 

 

 

 

 

 

-華灯宮メルクリアス 下層

 

「王国兵達から僕らを助けてくれたのかい?」

 

「とにかくサンキューな!でも大分雰囲気変わったな!」

 

「未来から何しに来たの?」

 

「俺は……扉を開く為に来た」

 

「扉!?それってエクリプスの事!?」

 

「そうだ。エクリプスには2つの使い道がある……1つは時間移動。そしてもう1つがエクリプス・キャノン……これが一万のドラゴンを倒せる唯一無二の方法だ」

 

ローグの言葉にナツ達は希望を見出だしたように表情を明るくする。未来ルーシィはあの悲劇を回避できる方法が本当にあるのか信じられないようだ。

 

「じゃあさっさと扉を開けようぜ!」

 

「未来は救われるんですね!」

 

「これでドラゴンを倒せるんだね!!」

 

だがローグは話はそんなに単純ではないと告げる。そして自分のいた時代……7年後の未来はドラゴンによって支配されていて生き残っている人類は今の1割にも満たないと……

 

あまりにも酷い状況に絶句したナツ達はなんとしてでもドラゴンを倒さなければ認識する。

 

「今……ここでドラゴンを止めなくてはこの世界は終わるのだ……」

 

ローグの言葉にナツはひきつった笑みを浮かべながら反論する。

 

「だから扉を開けてぶっ放すんだろ!?」

 

「しかし7年前に……つまりこの時代に扉を開くのを邪魔をして世界を破滅に導いた者がいる……そのせいでエクリプス・キャノンは撃てなかった。俺はその者を抹殺すために来たんだ」

 

シャルルとリリーが事情を話してその者を止めれば殺す必要はないと説くが、ローグは耳を貸そうとしない。

 

「大きな時の接合点では言葉で行動を制御できない」

 

ローグの話では生きるものは生き、死ぬものは死ぬ。全ては運命によって決まっている……つまりその者は扉を絶対に閉める運命にあると告げた。

 

だからこそ殺すと……だがナツ達はその言葉には納得できない。ツナの話でパラレルワールドという存在を聞いていたからだ……

 

「で……いったい誰なんだ?扉を閉める奴って?」

 

「扉を閉めて世界を破滅に導いた者……それは……

 

 

 

 

 

 

 

……お前だ!ルーシィ・ハートフィリア!!!」

 

「え?」

 

「ルーシィ!!」

 

ローグの叫びと共に飛来した影が剣の形を成してルーシィに迫る。全員が虚をつかれて初動が遅れてしまいナツやロキが気づいた時には既に自分の横を通りすぎて迎撃が間に合わない。

 

「がはっ!!」

 

刃が勢いよく刺さる音と鮮血が舞う……そして振り返ったナツ達が目にしたのは刃に深く胸を刺されて口からは大量の血を吐き出して崩れ落ちる……未来の(・・・)ルーシィの姿だった。

 

あの一瞬で現在のルーシィを庇ったようだがその代償はあまりにも大きかった……

 

「ちょ……ちょっとアンタ!!」

 

「ルーシィー!!」

 

「ルーシィが二人!?どういうことだ!?」

 

倒れた未来のルーシィに駆け寄る現在のルーシィとハッピー。ナツや他の者は目の前の状況を信じられないのか呆然と立ち尽くしている……

 

「しっかりして!!」

 

「ルーシィ!!」

 

「あたし…扉なん…て…閉めて…ない……」

 

「分かってる!!でもなんで!?なんで自分を庇ったの!?」

 

「だって…この世界…のあたしは…アンタだ…から…今…みんなと…生きて…るの…はアンタだから……」

 

「だからって!お願い!死なないで!!」

 

「ウェンディ……回復魔法は?」

 

「………」

 

ウェンディがロキの問いに泣きながら首を振ることで答える。もはや手の施しようがない……

 

「もう二度と会えない…と思っ…てたみんなに…もう一度…会えただけで…幸せ…心残りは…ツナに……」

 

「みんな!!!」

 

未来のルーシィのか細い声が聞こえる中、通路に響く声にその場にいた全員が目を向ける……未来のルーシィは泣きながら笑顔になる……そこにいたのは今未来のルーシィが一番会いたかった相手だった。

 

「ツナ!!」

 

「ツナさん!早くルーシィさんの所へ!!」

 

「ルーシィが……二人!?」

 

「エクリプスで未来から来たんだ!」

 

「いいから早く行きなさい!!」

 

ロキとシャルルに急かされて駆け寄ったツナが見たのは大量の血を流して今にも事切れそうな未来のルーシィ……すぐさま傍らに膝をついて声をかける。

 

「しっかりして!ルーシィ!どうして君がこんな……」

 

「嬉し…い…最後に…あなたに…会えた……」

 

「最後なんて言うなよ!どうして君がこんな……」

 

「そうだよ!ルーシィ死なないでよ……」

 

泣きながらすがりつこうとするハッピーをナツが後ろから抱えて引き離す。文句を言おうと振り返ったハッピーはナツの顔を見て勢いを失う……そしてツナと二人のルーシィを泣きながら見る……

 

「あたし…はこの世界の…あたしじゃ…ない…から…この世界の…あたしは…あなた…達と生き…続ける…だから…悲しまないで……」

 

「悲しいよ!未来から来ても他の世界から来ても君はルーシィだ!悲しいに決まっているじゃないか!!」

 

その言葉に未来のルーシィは笑みを深める……そして現在のルーシィに顔を向ける。

 

「ねぇ…ギルドマーク…見せて……」

 

怪訝に思いながらも自分の右手の甲にあるマークを見せる現在のルーシィ。それを愛しそうに左手で触る未来のルーシィ……それを見てツナとルーシィは気付く。

 

「アンタ……右手……」

 

未来のルーシィの右手は失われていた……

 

「ツ…ナ…あなたと…もっと冒険した…かった……」

 

「ルーシィ!もっと一緒に冒険しよう!そうだ!大魔闘演武優勝したんだ!!たくさん依頼も入って来るようになるよ!だから……」

 

「おめ…でとう…おか…しいな…あなたの…顔…がよく…見えない……」

 

もう目も見えなくなったのか未来のルーシィは左手を彷徨わせる……その手をしっかりと握ってツナは自分の顔に導いた。

 

ツナの目から流れる涙がルーシィの手を濡らす。ナツ達もみんな涙を流しながらその姿を目に焼きつけていた……

 

「ツナ……あなたと…会え…て幸せ…だった……お…願い未来を…守っ……て…………」

 

未来のルーシィ手から力が抜ける……閉じられた瞳は二度と開くことはなかった……

 

「ルーシィー!!!」

 

ウェンディやハッピーは声を出して泣き……他の者も顔を俯かせて涙を流していた……そんな中冷たい声が響く。

 

「扉を閉めた自覚が無かったか……」

 

その声に全員が涙を拭う事なく睨み付ける。

 

「何が扉よ!あたしは絶対にそんなことはしない!なのになんで……」

 

「今はな!だが数時間後にお前は必ず扉を閉める!そう決まっているのだ!だからお前は死なねばならない!」

 

「未来のあたしが閉めないって言ったんだ!あたしはそれを信じる!!」

 

「お前の言葉に真実などない!運命によって全ては決まっているのだ!!」

 

「運命……?」

 

ローグの言葉に反応したツナが顔を俯かせたままゆっくりと立ち上がる……

 

「運命……そんなものの為にルーシィを……」

 

「これが世界の為だ!ツナヨシ・サワダ!」

 

「ふざけるなぁ!!」

 

顔をあげたツナが見せたのは押さえきれない憎しみ……ナツ達が見たこともないツナの表情だった。

 

「俺は……お前を許さない!!」

 

「くっ!!」

 

ツナの殺気に当てられて一歩後退するローグ……だがルーシィ殺害を諦める気はないのかその場に踏み留まる。

 

そのまま今にもローグに飛びかかろうとしたツナだったが頬に衝撃を受けて倒された……

 

「ツナ!!」

 

「ツナさん!!」

 

「何をするんだ!ナツ!!」

 

ロキの叫びにツナもみんなもナツを見る……泣きながらも怒っているようだ。ナツはツナの胸ぐらをつかんで叫ぶ……

 

「お前がそんな顔するんじゃねえよ!!お前が今しなきゃいけないのは未来のルーシィの敵討ちじゃねえ!!今のルーシィを守ることだろうが!!」

 

ツナは目を見開いてナツを呆然と見上げる……尚もナツは叫ぶ。

 

「ルーシィの未来を守る為にもお前は絶対にルーシィを守らなきゃなんねえんだぞ!!それが出来るのはお前しかいねえんだ!!」

 

「ナツ……」

 

「アイツは俺がやる!ツナ達はルーシィを連れて逃げてくれ!!」

 

「……分かった。頼むぞ!!」

 

ローグの前に立ちふさがったナツに諭されたツナは躊躇なくルーシィの手を引きながら離脱しようとする。他の者も同じように後に続く。

 

「ツナ!こっちは任せろ!そっちは頼むぞ!!」

 

「気を付けろ!ソイツかなり強いぞ!」

 

「ナツ!」

 

「ここはナツに任せよう!」

 

「狙われてるんだよ!!アイツから逃げなきゃ!」

 

「うん……」

 

ツナがルーシィの手を引き、最後尾をロキとウェンディが後ろを注意しながら走り出した。

 

「逃がすか!」

 

「りゃあ!!」

 

ナツを無視して後を追おうとしたローグをナツの炎を纏った拳が防ぐ。

 

「お前が立ちふさがるのは想定内だ。ドラゴンによって殺されるならこの場で俺が殺しても変わりはあるまい」

 

「お前そんな奴だったか?俺を倒してもツナがいる以上はルーシィには手を出せねえぞ!!」

 

「歳月は人を変えるのだ!今の俺ならツナヨシ・サワダにも勝てる!!お前はここで死ね!!ナツ・ドラグニル!!」

 

「お前は絶対にツナには勝てねえ……お前は俺達の目の前で大切な仲間を奪ったんだ……お前のやり方は信じねえ!俺達のやり方で未来を変えてみせる!!」

 

ナツは炎を纏いながらローグへと向かってゆく……そして開かれようとする扉……未来ルーシィの死は絶望への始まりだった……

 

 

 

 

 

 

 




未来ルーシィの生存をどうするかは迷いましたが……やはり原作通りになりました。

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