妖精達と歩む大空   作:グリーン

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ここまで来るのは長かった……


GLORIA!そして……

 

-3年前 ボンゴレ本部

 

「はあっ……はっ……」

 

ボンゴレ本部の訓練場で手を膝について肩で息をしているのはボンゴレデーチモ沢田綱吉……

 

「少し休憩するか……」

 

そう言ったのは黒のスーツとボルサリーノの黒帽子を着こなしている2~3歳くらいの男の子……ボンゴレデーチモの相談役であり凄腕のヒットマンでもあるリボーンだった。

 

「はあ……なんだよ……妙に優しいじゃないか?いつもならダメツナがとか言って銃を撃ってくるくせに……」

 

「……自力でのハイパー化やヘッドフォンとコンタクトレンズ無しでのX BURNERを短時間でマスターしたオメェでもこれは難しいと思っただけだ」

 

「確かにね……自力での死ぬ気の到達点……できるかな?」

 

「こればっかりは分かんねぇな……死ぬ気弾はきっかけに過ぎねぇんだからあの時の気持ちを再現してみたらどうだ?」

 

「ずっとやってるよ……あの時はバミューダを倒す為に全身の細胞が死を覚悟した感じだったからそれを再現しようとしてるんだけど……」

 

「……はぁ、オメェは強くはなったが全然自分の事を分かってねーな。それじゃ失敗して当たり前だ」

 

「なんでだよ?」

 

「いーかツナ……オメェは俺が代理戦争を止めた時に言っただろ?仲間の為に死ぬ気になれない奴はボンゴレ10代目失格だと」

 

「よく覚えてるね……」

 

「オメェは自分の為じゃなく仲間の為に死ぬ気になる男だ。死ぬ気とは迷わないこと、悔いないこと、そして自分を信じること……初めてリングに炎を灯した時の気持ちを忘れるな」

 

「分かったよ」

 

「ただし……いくら到達点の境地が死を覚悟すると言っても仲間を守る為にお前が死ぬようなことは許さねーぞ!」

 

「すごく矛盾してるけどね……」

 

「だからオメェは新しい境地を見つけろ」

 

「新しい境地か……やってみるよ」

 

「じゃあ続けるぞ」

 

こうしてツナの特訓は続いた。厳しい特訓の末に死ぬ気の到達点に至った生徒を見てリボーンは誰にも見られないように誇らしげに笑っていたのだった……

 

 

 

 

 

 

 

「な……んだよ……これは……」

 

「死ぬ気で仲間を守り……仲間と共に歩む。究極の死ぬ気……これが死ぬ気の到達点」

 

ツナの身体中から死ぬ気の炎が爆発的に発生する。夜の帳の中でそこは真昼のように明るくなり、スティングはその力の圧力に身動き一つ取れなくなった……

 

『これは凄まじい!ツナヨシの全身から炎が吹き出している~!!』

 

『熱がここまで届いてるカボ!!』

 

『何という魔力……』

 

ラクサス達は凄まじい力を発揮するツナの後ろ姿を見ながらただ感嘆していた。

 

「こんな力を隠してやがったのか……ギルダーツのおっさんよりもはるかに上だな……」

 

「ああ……間違いなくフェアリーテイル最強だ」

 

「ギヒッ!いつか越えてみせるけどな!」

 

「強さだけじゃない……これほどの力なのに私達はスティングと違って全く恐怖を感じない……むしろ安心感がある」

 

ツナの圧倒的な力を感じながらもその力はフェアリーテイルメンバーにとっては包みこむような優しさを含んでいるように感じられた……

 

しかし対峙しているスティングは圧倒的な恐怖に襲われていた。スティング自身は新たな力を手にしてドラゴンフォースを発動しているにも関わらず全く勝てる気がしない。

 

「なんでだ……?なんでアンタは……いやアンタらフェアリーテイルはそんなに強い!?」

 

「……これがお前の言う想いの力だからだ」

 

「それなら俺だってある!レクターを想う気持ちはアンタ達にだって負けてねぇハズだ!!」

 

「ならば何故他のメンバーが全員やられるまで身を潜めていた?お前にとっては仲間じゃないのか?」

 

「他の奴らなんて関係ねーだろ!!」

 

「そうか……なら何も言うことはない……始めよう」

 

ツナはさらに炎を発生させてスティングを待ちかまえる。スティングは1歩ずつ足を進めようとするがその足は石になったように動かない……

 

-くそっ!なんで動かないんだよ!!これに勝たなきゃレクターは返してもらえないんだぞ!!なのに……-

 

「くそっ!……なんで!!」

 

「何もないからだ……お前には心が折れそうな時に支えてくれるものが何もない……」

 

「支え……」

 

「誰かと想い合うからこそ繋がれる……その繋がりが絆になる。そして絆を育むのがギルドだ。俺の後ろには信じてくれる仲間がいる!だから俺は戦える!!」

 

その言葉にふとスティングは自分の後ろを振り返った。当たり前だが誰もいない……セイバートゥースの他のメンバーは自分を信じているのだろうか?

 

いや、そんなわけがないのは自分でもよく分かっている。ユキノが辞めさせられた時は自分も含めて嘲笑っていた。ナツに負けた後はそれが自分に向けられた……

 

スティングはツナの後ろにいるエルザ達に目を向ける……一点の曇りもなくツナを信じているのが感じられた。彼らだけでなく応援しているフェアリーテイルのメンバー達もツナを信じているのだろう……

 

-これがギルド……これが想いの力……眩しいな……俺達は今まで何をしてきたんだろう……-

 

スティングはゆっくりと膝をついて顔を伏せる。その瞳からは涙がとめどなく流れている……

 

「勝て……ない……降参だ……」

 

スティングの敗北宣言と共にフェアリーテイルに1ptが追加された。

 

 

 

 

 

 

-フェアリーテイル応援席

 

フェアリーテイルにポイントが追加されると7年間苦い思いをしてきたメンバー達は人目も憚らす泣き出して顔をぐちゃぐちゃにしている。天狼組も喜びに笑顔を見せている。

 

『決着!!大魔闘演武優勝は…フェアリーテイル!!!』

 

実況のチャパティが宣言すると静まり返っていた観客席からクロッカス全体を揺るがすような大歓声が巻き起こった。それと同時に色とりどりの花火が打ち上げられる……それを見ながらフェアリーテイル応援席は泣きながら抱き合って喜びに包まれていた。

 

7年間の低迷を経てフェアリーテイルが再びフィオーレ一のギルドに返り咲いた瞬間だった。

 

 

 

 

 

「ふう……」

 

自分の思った形ではなかったが決着がついたので死ぬ気の到達点を解除したツナは振り返ってメンバーの顔を見る。みんなが目標を達成したことで笑顔を見せている……

 

「そんなに疲れたのかよ?」

 

「あの技は出している間中炎をたくさん消費するからね……」

 

「そうか……何はともあれ目標は達成できたな!」

 

「ギヒッ!俺達がフィオーレ一だぜ!」

 

「ああ!だが厳しい戦いだったな……」

 

「まっ、これで7年間苦い思いをしてきた奴らに報いることが出来たな……」

 

『フェアリーテイル!フェアリーテイル!』

 

大勢の観客達が優勝を祝ってフェアリーテイルコールを続けている。応援席のメンバー達が泣きながら手を振っているのにみんなで応えるように拳を突き上げた。

 

……ガジルとラクサスまでもしているところを見ると二人とも相当嬉しかったようだ。

 

「ハハッ……本当に眩しいな……俺もアンタらみたいに仲間を大切にしてたらレクターを失うことはなかったのかな……?」

 

「スティング……今からでも遅くはないよ」

 

「でも……アンタらと向き合ってると何故かレクターに会えない気がした……」

 

「会えるよ……きっと……ほら!」

 

「エルちゃ~ん!ツナ~!!」

 

スティングがツナが示す先を見るとミリアーナが手を振りながら走ってきた。その腕に抱えられているのは見間違えるはずもない相棒の姿……

 

その姿を見たとき今までの悩みが全て吹き飛んでスティングは走り出した。

 

「レクター!レクター!!」

 

眠っていたレクターはスティングの声に目覚めてその姿を見つけるとミリアーナの腕から飛び出した。

 

「スティング君!スティング君!!」

 

二人とも泣きながら駆け寄って抱きしめ合う。その姿を見てツナ達は微笑んで顔を見合わせた……

 

未だに鳴りやまないフェアリーテイルコール……ラミアスケイルもマーメイドヒールもブルーペガサスもクワトロパピーもフェアリーテイルの優勝を讃えていた。だがフェアリーテイルの5人は浮かない顔をして向き合っていた。

 

「さて……後は……」

 

「城の方はどうなったんだ?」

 

「誰か合図の信号弾を見た者は?」

 

「ギヒッ!俺は見てねえな」

 

「どうやら誰も確認してねえみたいだな……」

 

5人共城の方角に目を向ける……ルーシィを助ける為に乗り込んでいるメンバー達があまりにも遅すぎるので不安がよぎる……

 

「今は待つしかあるまい……仮にナツ達が捕まっていたとしたら国王に謁見して頼むしかないな」

 

「そうだね……っ!!!」

 

「ツナ?」

 

「どうした?」

 

エルザとの会話の中で突然言葉を飲み込んで固まるツナに一同は訝しげな視線を向ける。ツナはエルザから装備を引ったくると手早く装着して額に炎を灯す。

 

「オイ!ツナ!」

 

「何を!?」

 

「説明している時間がない!!」

 

それだけ言うとツナは両手から炎を出して城に向かって飛び出した。残された4人は呆然と見送ることしかできなかった……

 

 

 

 

 

 

 

アルカディオスが最上階に到達して姫と大臣の姿を探すがそこは既に誰もいなかった。

 

「姫ー!!どちらにおられるのですかー!?まさか……既にあそこへ……?」

 

アルカディオスは再び姫を探しに部屋を飛び出した。

 

 

 

 

 

 

その頃ヒスイ姫はダートンを伴いながらある場所を目指していた。

 

「フェアリーテイルの最終日全員無敗とスティングの降参による決着……誰も予想できない未来を当てた。やはりあの方の仰っていた未来は……真実!!」

 

半信半疑だったダートンもこの結果を見て全面的に協力をすることを決めた。一つの結果で全体を判断するのは危険と分かっていたが助言者が未来から来たのは間違いない……ならば目前に迫る危機に対処しなければならない。

 

「準備を急ぎましょう。姫」

 

「ええ!観測所にも連絡しなくては……これより人類の存亡を掛けた戦いが始まります!!」

 

 

 

 

 

一方ナツ達は無限にわき出てくるのではないかと思えるほどの兵士達に囲まれていた……要所要所で餓狼騎士団が魔法を使ってくるせいで未だに突破できていない。

 

「火竜の翼撃!!」

 

「レグルスインパクト!!」

 

「んもう!しつこいわね!!」

 

「このままじゃ……」

 

「ドラゴンが来るのに間に合わないよ!!」

 

「くっ……戦闘フォームを維持出来なくなりそうだ!」

 

「何とかしなきゃ……」

 

「もうあんな未来は嫌……お願い通して!!」

 

ここにいる誰もが目の前に集中していた為に気付かなかった。兵士達に取り囲まれながらも必死で抵抗しているナツ達を包囲網の外から何者かがじっと見つめていた事を……

 

 

 

 

 

ツナは全速力で城を目指す。作戦を壊す事になってしまうが自身の超直感が最大の警鐘を鳴らしていたからだ。そしてツナはこの感覚に覚えがあった。かつてマフィア間の抗争の最中で何度も感じた嫌な予感……

 

「誰かが……死ぬ……!!」

 

ほどなくして城の裏手にたどり着いたツナは直感に従って走り出した……

 

 

 




大魔闘演武編終了です!結局ツナは到達点での戦闘をしませんでしたがいつか戦うと思います。

次回より竜王祭編です。これからも応援よろしくお願いいたします。

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