妖精達と歩む大空   作:グリーン

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カグラ戦決着!そして最終局面へ……


到達点

 

 

-フェアリーテイル応援席

 

「おいおい!ツナの奴あんな攻撃して相手は大丈夫なのか!?」

 

ジェットの叫びはフェアリーテイル応援団の総意を代弁していた。あれほどの攻撃をくらってはカグラの命どころか跡形すら残っているか怪しい……

 

「ツナがそんな真似をするとは思えないけど……」

 

「もう!邪魔な煙だね!ちっとも見えやしない!」

 

リサーナとカナもカグラの安否が心配なのか目を凝らすが未だにカグラの姿は確認できない。会場は静まり返っている……

 

「みなさん心配いりませんよ。ツナはカグラを救う為にあの技を放ったのですから」

 

「救う……ですか?」

 

「ええ!すぐに分かりますよ」

 

メイビスの自信満々の声にフェアリーテイルメンバーは再びラクリマビジョンへと視線を向ける。すると煙が晴れて倒れているカグラの姿が映しだされた。

 

『これは!?カグラは意識を失っているようですが……無傷に見えます!ヤジマさん!これは……』

 

『フム……ツナヨシ君のあの技をくらってあの程度で済むわけないと思うがね……』

 

『どーなってるカボ!?』

 

『とにかくカグラが気絶した為フェアリーテイル、ツナヨシの勝利です!!これで5pt獲得!逆転!逆転!逆て~ん!!』

 

静まり返った会場から一転して大歓声が巻き起こった。フェアリーテイルの応援席は総立ちでツナに声援を送っている。

 

「とにかくやったぜ!逆転だぁ!!」

 

「カグラも無事みたいだしさすがはツナだぜ!!」

 

「ツナ兄!!すげぇぇ!!」

 

「それでこそ(おとこ)ぉぉっ!!」

 

「グレイ様もツナさんもスゴいです!!」

 

「見事ですな!!」

 

「ええ!さすがですね!!」

 

「でもあの炎を受けてどうして無傷なの?」

 

「確かに……MPFですら消滅する威力だ。対人用に押さえたとしてもあそこまで無事でいられるのだろうか?」

 

「ど~なってんだ?」

 

レビィの疑問にフリードとビッグスローも首を傾げている。

 

「フフ……ツナはカグラを倒す為にでなく救う為に攻撃したからですよ。私も生前に見たことがあります」

 

「どういうことですかな?」

 

「それはですね……」

 

メイビスが説明を始めるころにはツナとエルザはカグラの元へと歩みを進めていた。

 

フェアリーテイル→64pt

 

 

 

 

 

-バトルフィールド

 

エルザは気を失っているカグラに膝を貸しながら死ぬ気モードを解いたツナに話しかけている。

 

「さすがに驚いたぞ。まさかX BURNERを使うとは思わなかったからな……」

 

「ハハハ……何の説明もしなかったからね。でもよく止めずにいてくれたね」

 

「お前の瞳はどこまでも真っ直ぐだったからな……カグラを救うという想いが伝わってきた。だが一体どうやって?何故カグラは無傷なんだ?」

 

「さっきのは大空の属性である調和の炎だけを放ったんだ。調和とはバランスが取れていて綻びがないということ。だから闇に堕ちかけた心を元に戻すことができたんだ」

 

「なるほどな……ところでツナ、お前が言っていたお前の誇りとは一体何なんだ?」

 

「俺の誇りは俺にとって何よりも譲れないもの……エルザやフェアリーテイルの仲間達のこと。仲間を守り、仲間が守りたいものを守るという決意のことだよ」

 

「本当にツナは強いな……」

 

「うっ……」

 

「カグラ!目が覚めたか!」

 

「私は……そうか……負けたのか……」

 

「まだゆっくりしていろ」

 

「何故私にそう優しくする?ジェラールを殺そうとしている私に……」

 

「それとは話は別だ。私はお前を知っている。いや思い出したと言うべきか……名前は知らなかったがな」

 

カグラはエルザの顔を見上げる。エルザの夕焼けのような赤い髪に昔の記憶が蘇る……

 

「ま……まさか……」

 

「そうだ……私もローズマリー村出身だ……シモンやお前と同じ……な」

 

17年前の子供狩りの時、炎に包まれるローズマリー村で大人達は次々に殺されて子供達は拐われてゆく光景の中幼いカグラは泣きながらはぐれた兄のシモンを必死で探していた……

 

その時自分より年上の一人の少女がカグラの手を引いて自分を隠してくれた。少女は自分は他に隠れる場所を探すと言ってその場を去る……

 

「生きて」

 

そう言って笑顔を浮かべた少女の髪の色は目の前の女性と瓜二つ……

 

「あ……あの時の……」

 

ボロボロと大粒の涙を流すカグラにエルザはあの時と同じような笑顔を浮かべる。

 

「シモンからはお前の話をよく聞いた。私もずっと気がかりだった。お前の無事を願っていた……今もな」

 

「私は……どうすればいいのだ?ジェラールを憎むのをやめればいいのか?」

 

「君がジェラールを憎むのは当然のことだと思う……だからそれを止めろなんて言えない」

 

「ツナ……」

 

「ツナヨシ・サワダ……」

 

「でもきっと君のお兄さんは復讐なんかじゃなく君の幸せを一番願っていると思うよ」

 

「それは間違いない。シモンは楽園の塔を出た私を8年間ずっと信じていてくれた……優しい男だ」

 

「……さっきの炎に包まれた時、兄さんが側にいるみたいな暖かさを感じた。その暖かさが闇に塗りつぶされた私の心を救ってくれた……エルザ……そなたはジェラールを許したのか?」

 

「ああ……すまない……」

 

「私はまだジェラールを許せない……許せる時が来るのかも分からない。だから教えてくれ。ジェラールの事を……そなたの想いを……」

 

「私も聞きたいよ……エルちゃん……」

 

「ミリアーナ……」

 

「話しなよエルザ。二人は憎しみに決着をつけたいんだと思うよ」

 

「分かった……」

 

そしてエルザは語りだした……ジェラールの豹変の真実、六魔将軍(オラシオンセイス)との戦いの中での記憶を失ったジェラールとの再会とその捕縛、7年の眠りから覚めたエルザのジェラールとの邂逅、そして魔女の罪(クリムソルシエール)の存在意義……その間カグラとミリアーナは黙ってその話を聞いていた。

 

「……以上がジェラールの真実だ。そしてあいつは今もこの大会に潜むゼレフの魔力を調査している。私はそんなジェラールを応援したいと思っている」

 

「それがジェラールが己に課した贖罪か……」

 

「…………」

 

カグラは目を閉じてエルザの言葉を噛み締めている。ミリアーナはジェラールが操られていたことにショックを受けているようだ。

 

「すぐには心の整理はつきそうにない……ジェラールを前にしたら憎しみにかられてしまうかもしれない」

 

「当然だ」

 

「だが……少しは考えてみようと思う……だが!ジェラールがその道を違えるならば……」

 

「その時は私がジェラールを斬る!!」

 

エルザが迷いなくキッパリと宣言する。その心の強さにツナは感嘆し、カグラとミリアーナは驚愕する。

 

「フフ……強いな……エルザは、いやフェアリーテイルは……」

 

「ホントだね……」

 

「もう行け……そして絶対に優勝してみせろ」

 

「ガンバってねエルちゃん!ツナ!」

 

「そうだな……行こうツナ!」

 

「うん。残りはセイバートゥースのスティング一人だ。ギルドのみんなの為にも優勝しなくちゃね!」

 

ツナとエルザが走り去るのをカグラとミリアーナは見えなくなるまで見送っていた。

 

「エルザ……それにツナヨシか……」

 

「ツナの炎まともにくらってたけど大丈夫なの?」

 

「不思議なことにな……まるで兄さんみたいだった……」

 

「ニャッ!?全然似てないよ!!」

 

「そういう意味じゃない……」

 

「ところで解放された時私のマントに何か引っ付いて来たみたいなんだけど……」

 

「……動いているな」

 

ミネルバの異空間から解放された時についてきたものとは……?

 

 

 

 

 

 

 

「さっきエルザが話してた時に合図が上がってたんだ。多分スティングが俺達を呼んでるんだと思う」

 

ツナは先程暗くなりかけた空にセイバートゥースの紋章の形をした魔力が花火のように上がるのを確認していた。

 

「私達を一人で相手にするつもりか……」

 

「多分ラクサス達もあれを見てスティングの所に行こうとしてると思う。俺達も急ごう!」

 

「ああ!」

 

 

 

 

 

 

-フェアリーテイル応援席

 

会場がフェアリーテイルコールに沸き上がる中、フェアリーテイル応援席は緊張に包まれていた。フェアリーテイルの選手は全員が生き残っており、残る敵1人。しかし点差は僅か4点……

 

「な……なあ……」

 

「ああ……」

 

「後一人倒せば……」

 

「優勝……毎年最下位だった俺達が……」

 

特に7年間苦い思いをしてきたメンバー達は目に涙を浮かべながらラクリマビジョンから目を離さない。

 

『さあいよいよ……決着の刻!!フェアリーテイルがこのまま優勝してしまうのか!?点差は4点!スティングの大逆転があるのか!?』

 

「ラクサスとグレイとガジルはもうボロボロだね……」

 

「ツナとエルザはまだ元気みたいだけど……」

 

「うちのチームのリーダーがやられるとヤバイわね」

 

「逆に言えばリーダーさえ倒されなければ……」

 

「そうか!リーダーは最後に戦えばいいのか!」

 

「マスター、誰が5pt持ってるんですか?」

 

「それはワシにも分からん……ツナかエルザかラクサスだとは思うが……」

 

「ラクサスだったらマズイぜ!!」

 

「ラクサスが負けるわけがない!!」

 

「そうよ!負けないわ!!」

 

「雷神衆がついてるぜ!!」

 

「答えはすぐに出ます。今は彼らを見守りましょう……」

 

メイビスが締めた事によって再び静まり返りフェアリーテイル応援団はラクリマビジョンに目を向ける……

 

 

 

 

 

 

-華灯宮メルクリアス 上層階

 

「いよいよですな……」

 

「ええ、ここからですね。最後の勝負が始まります」

 

「はたして未来人の言うことは真実なのか……」

 

「見極めましょう。その結果がこの国の未来を決めます!」

 

ヒスイ姫とダートンは真剣な顔でラクリマビジョンを見つめるのだった……

 

 

 

 

 

 

-バトルフィールド

 

自らが決めた決戦場にスティングは待ちかまえていた。やはり最後に立ちはだかるのはフェアリーテイルの5人……誰一人脱落することなくこの最終局面まで残ったのは流石としかいえない。

 

一人……また一人と集まってくる。ラクサス、ガジル、グレイはボロボロの体を引き摺って現れ、最後にツナとエルザが走って来て全員が揃った。スティングは口を開く。

 

「壮観だねぇ。俺が7年前に憧れた魔導士ばかりだ……もっともツナヨシさんのことは知らなかったけど」

 

「御託はいい。これが最後の戦いだ」

 

「誰とやる?誰であってもお前が負けるのには変わりねぇぞ」

 

「ガジルさんもグレイさんも殆ど魔力も残ってないのに強気だねえ……」

 

「フェアリーテイルを嘗めんなよ。この程度じゃ俺らは止まらねぇぞ」

 

「嘗めるなんてとんでもないよラクサスさん……フェアリーテイルが強いのは身をもって知ってる。けどもう俺は負けない!」

 

「この状況で勝てると思っているのか?」

 

「勝つさ!俺はこの時を待っていたんだエルザさん!レクターに見せてやるんだ!俺の強さを!!」

 

「レクターに?」

 

「ああ!もう俺はツナヨシさんにも負けない!!レクターを失った絶望が俺を強くしたんだ!!想いの力を手に入れた俺は最強だ!!」

 

「……なら俺と戦おうか。点差は4点……俺を倒せば5点手にはいるよ」

 

そう言いながらツナが1歩前に出る。

 

「……?ならアンタは最後に出てきた方がいいんじゃないのか?アンタと後一人倒せばこっちの優勝確定だぜ?」

 

「勝てればね……みんな、いいかな?」

 

「異論はない」

 

「なら任せたぜ!ツナ!」

 

「ギヒッ!負けんじゃねぇぞ!」

 

「オメェが決めろ、ツナ……」

 

エルザが、グレイが、ガジルが、ラクサスが優勝をツナへ託した。その様子を見たスティングが歯軋りしながらツナを睨み付ける。

 

「ナメんなよ!今までの俺と同じと思ったら大間違いだぜ!!」

 

そう言うとスティングはドラゴンフォースを発動させる。その力はタッグマッチで見せたときよりも確かに力強さを感じる……

 

「エルザ……預かっていてくれ」

 

ツナはエルザにフェアリーリングとXグローブ、持っていたボックスを全て手渡した。エルザも驚くがツナが無意味にこんなことはしないのは分かってるので何も口を出さない。

 

「何の真似だ!?バカにしてんのか!?」

 

スティングは激昂するがツナは意に介さず目を閉じて語りかけるように口を開く。

 

「さっき言ってたね……絶望から生まれた力だと。なら希望から生まれる俺の力の全てを見せるよ……

 

 

 

 

 

 

 

……死ぬ気の到達点を」

 

そしてツナは目を見開いた……

 

 

 

 

 




長かった大魔闘演武編も次回いよいよ決着です!

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