妖精達と歩む大空   作:グリーン

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お待たせいたしました。大魔闘演武も終わりが見えてきました。竜王祭まで後少しです。


運命を司る影

 

-バトルフィールド

 

 

「ぐはぁっ!!」

 

「その程度か?」

 

「くっ!鉄竜剣!!」

 

「無駄だ……」

 

ローグは影になってガジルの剣を躱すと突き出した剣にまとわりつくように接近してガジルの後ろで実体化する。

 

「影竜の連雀閃!!」

 

「ぐあああっ!!」

 

至近距離からの攻撃に吹き飛ばされるガジルだが、なんとか体勢を立て直して着地するがローグの姿を見失ってしまった。

 

「ちくしょう!!どこに行きやがった!?」

 

「ここだ……」

 

声はすれども姿は見えず……ガジルは辺りを見渡すがローグを見つけられない。ガジルの影の目に当たる部分がが怪しく光る。

 

ガジルの影と一体化していたローグはガジルの視線が外れた瞬間に姿を現した。

 

「影竜の斬撃!!」

 

「があっ!!」

 

姿を現したローグは連撃を加えて追いつめる。ガジルも反撃をするも影となって躱されてしまう……

 

『これはどういうことだ!?先程までとは真逆の展開!ガジルが一方的にやられているー!!』

 

『フム……この魔力は……?』

 

『すごいカボ!!』

 

 

 

そう……先程まではガジルの猛攻にドラゴンフォースを使ったローグは手も足も出ない状態だった。そして自分がガジルに勝てない事を認識したローグは過去を語りだした。

 

ローグにとってガジルはファントムロードにいた頃からの憧れでありフェアリーテイルとの抗争に敗れた後に何故よりによってフェアリーテイルに入ったのかがずっと分からなかった……

 

だが二日目の夜にユキノの為にセイバートゥースに殴り込みをかけたツナとナツにかけられた言葉や仲間の為に戦うフェアリーテイルを見てガジルが求めたものが理解できた。

 

対して自分達セイバートゥースはただの兵隊に過ぎず勝つことを強制され、たった一度の敗北で首にされる……それを他の者は嘲笑う。仲間という意識はまったくない。

 

それに気づいた時ローグは自分は何の為に戦っているのかすら分からなくなった……

 

泣き出しそうな顔でその想いを吐き出した時叱咤激励したのはガジルだった。

 

「カエルは仲間だろ?」

 

カエル……ではないが自分には信じてくれるフロッシュがいたことをローグは思い出す。そして今までの鬱屈した気持ちも消えて敗北を宣言しようとした時、聞こえてきた声と共にローグの意識は闇に呑まれた……

 

 

 

そして今、ガジルは豹変したローグに手も足も出ず追い詰められている。バトルフィールドには片手でガジルの首を持って宙吊りにするローグがいる。

 

「クク……これがあのガジルか?他愛も無い……影がお前を侵食する。そして永久に消えるのだ……眠れ、暗闇の中で……」

 

そう言ってガジルを乱暴に放して自分の影に呑み込もうとするローグ……ガジルはゆっくりとローグの影に沈んでゆく……

 

「ギヒ……サラマンダーに出来て俺に出来ない訳がねぇ」

 

そう言うとガジルはローグの影をガブガブと食べたした。驚くローグにガジルは二つの魔力を融合させながら告げる。

 

「誰だか知らねぇがソイツの体から出ていけ。俺の弟分だったライオスの体からな……」

 

ガジルはファントムロード時代に自分の後ろをちょこまかと付き従っていた坊主頭の子供を思い出していた。

 

「お前は俺に憧れてたんじゃねえ……恐れていたんだ。あの頃の俺はそんな男じゃなかったからな……忘れちまったんなら思い出させてやるよ。俺の恐怖をな!!」

 

「鉄影竜……だと!?」

 

二つの属性を完全に融合させてナツの雷炎竜と同じ境地に至ったガジルは見るものを恐怖させるような獰猛な笑みを浮かべた……

 

ガジルは影になってローグの後ろに回り込む。

 

「俺の技で俺に勝てるか!!」

 

本家本元のローグにはガジルの居場所は分かるのか振り向いたローグは驚愕する。ガジルの影から鉄の棍が迫っていた。

 

「がっ!!」

 

「ギヒッ!まだまだだぜ!!」

 

再び影になるガジルはローグの死角に回り込みながらも同時に鉄の棍でローグを殴り付ける。

 

「ぐっ!がっ!がはっ!」

 

攻撃を読みきることが出来ないローグは自分も影になってガジルから距離を離そうとするがガジルも影のまま追いかける。

 

「何!?影から引きずり出される!?」

 

「捕まえたぜぇ……オラァ!!」

 

影から引きずり出されたローグはさっきまでのお返しとばかりに一方的に殴られ続ける……そしてガジルはローグを空中へと投げ飛ばした。

 

「行くぜぇ……鉄影竜の咆哮!!!」

 

「があああああっ!!!」

 

空中へ飛ばされたローグはガジルの咆哮をまともに食らって吹き飛ばされた。長い滞空時間の後に落ちてきたローグは受け身も取れずに地面に激突して戦闘不能になった。

 

それによりガジルの勝利が宣告される。ガジルは初めて使った鉄影竜の疲労で座り込む。

 

「クク……今のローグではここまでか……」

 

「何だ?テメェはよ」

 

ローグから抜けだした闇色の影はそれには答えずに城の方へと去っていった。ガジルは疑問に思いながらもローグに視線を戻すといつの間にか現れたフロッシュがローグを守るように立ち塞がっていた。

 

「もーやめて。ローグが死んじゃうよ……」

 

ガジルは涙を流して震えながらも気丈に立ち塞がるフロッシュを安心させるようにこれ以上戦う気はないと告げた。

 

「フロッ…シュ……」

 

「ローグー!ローグ!」

 

「何故ここに……?俺は…痛っ!!負けたのか?いつの間に……?」

 

「覚えてねぇのかよ?何だったんだいったい……」

 

「何がどうなってるのか分からんがやはり強いな……ガジル……いやフェアリーテイルは」

 

「ギヒッ!今頃気づいたか?テメェそー言えば俺がサラマンダーより弱いとか言ってやがったな?今でもそう思うとか言わねぇよな?」

 

「……同じくらいじゃないのか?」

 

「フローもそう思う」

 

「テメェら……」

 

「ハハハッ!痛っ!」

 

「ローグ……」

 

「大丈夫だフロッシュ……今はとても気分がいいんだ」

 

ローグは何か吹っ切れたような笑顔でフロッシュにそう告げた。それを見ながらもガジルはやはり先程の影が気になるのかもう一度城の方へと視線を向けるのだった……

 

フェアリーテイル→53pt

 

 

 

 

 

 

 

-地下通路

 

未来ルーシィの先導で地下通路を走る潜入メンバー達。未来の対策は出来てないが何とかみんなと合流する為にいそいでいた。

 

「こっちよ!」

 

「よくこんな道知ってたなー」

 

「せめてみんなが捕まる未来は回避したかったから……こんなことしかできなかったの……」

 

「充分ですよ!!」

 

「ええ、みんなと合流出来ればなんとかなるわ」

 

「とにかく急ごうぜ!」

 

「……!止まって!みんな!」

 

ロキがメンバーを静止させると前方から大勢の人の気配がすることに気付く。

 

「王国軍!?こんな所に配置されてるなんて!!」

 

通路を埋め尽くす程の兵士の群れがナツ達の前に現れた。

 

「そこで止まれ!!」

 

「ここから先は行かせんぞ!!」

 

「ちくしょう!こんな所で時間はくえねえ!速攻で片付けるぞ!!」

 

「ここなら魔法を使えるから負けないわ!!」

 

「あ!アルカディオスさんとユキノさんが居ませんよ!!」

 

「私が探してくるわ!!あの騎士はともかくユキノを放ってはおけないわ!!」

 

「ミラさん!気をつけてね!!」

 

「そっちもね!!」

 

ミラが来た道を逆に走っていくのを見届けると兵士達の後方から見覚えのある連中が姿を現した。

 

「アイツら……もう復活したのかよ!」

 

「お前達は餓狼騎士団の名において絶対に城の外へは逃がさんぞ!」

 

大勢の兵士達と共に奈落宮で戦った餓狼騎士団まで加わって脱出はより困難なものとなった。

 

「上等だ!みんな!押し通るぞ!!」

 

ナツは大声でみんなを鼓舞すると先陣をきって兵士の群れへと飛び込んでいった……

 

 

 

 

 

 

-バトルフィールド

 

ミネルバは焦っていた。魔力はほぼ互角であるはずなのに少しずつ押され始めているのを理解していたからだ。早急に決着をつけてツナとカグラが戦っている場所へ行くつもりがとんだ計算違いだ。

 

「くっ……しつこいぞ!妖精女王(ティターニア)!!」

 

「貴様には絶対に負けん!!」

 

飛翔の鎧で速力を上げてミネルバの空間連続爆発を躱し続けるエルザはそのままミネルバの懐に飛び込む。

 

「飛翔・音速の爪(ソニッククロウ)!!」

 

「ぐううっ!!」

 

ミネルバは魔力を腕に集めてその属性を硬化に変化させて一撃を受け止めるもその衝撃までは殺しきれない。

 

「換装!明星の鎧!明星・光粒子の剣(フォトンスライサー)!!」

 

「があっ!!」

 

「言ったはずだ…お前達は一番怒らせてはいけないギルドを敵にまわしたと」

 

明星の光から目を庇ったミネルバにエルザは一瞬で煉獄の鎧に換装して巨大な剣をミネルバへと降り下ろす。

 

地面が粉々に破壊されるがミネルバは空間を入れ替えてエルザの後ろに移動すると魔力を鎖のように変化させてエルザに投げつける。

 

「読めているぞ!妖精の鎧(アルマデュラ・フェアリー)!!」

 

ピンク色の鎧に換装してその鎖のようなものを軽やかに躱すと剣で斬りかかった。

 

「ぐああああっ!!」

 

さしものミネルバもエルザの怒濤の連続攻撃に防御に徹するしかできなくて全てを躱しきることはできない……

 

「よくもルーシィを…仲間を…ミリアーナを……私は怒っているんだ……」

 

エルザは一太刀一太刀に仲間の無念を晴らすかのようにミネルバへと攻撃を仕掛ける。

 

「何故……最強の妾が!最強の魔法絶対領土(テリトリー)が!最強のセイバートゥースが!!」

 

「信念なき魔法に魂は宿らん!!」

 

「調子に乗るな!!妾は最強でなければならんのだ!でなければ……」

 

「その為にどれだけのものを傷つけてきたのだ!!」

 

「黙れ!!他者を蹴落とすのは自然の摂理だ!弱き者に価値などない!!」

 

「……それが本心ならばもはや許さん!私の怒りはギルドの怒り!第二魔法源(セカンドオリジン)開放!!天一神(なかがみ)の鎧!!」

 

エルザは切り札を切った…この鎧は装着時の魔力消耗が激しすぎるので装着出来る者がなかなか現れない。エルザですら第二魔法源(セカンドオリジン)を開放しなければ装備することはできない。

 

「これで終わりだ」

 

「っ……うるさいんだよ!!」

 

冷徹に告げるエルザに怯んだミネルバは爆発の魔力をエルザに放つがエルザはその魔力そのものを手にした薙刀で斬り裂いた。

 

「何!?……魔法を、いや空間をそのものを斬った!?」

 

「お前は私の大切な者を傷つけ過ぎた……」

 

「やめよ……妾は……妾は……!」

 

「報いを受けろ!!」

 

恐怖に支配されたミネルバは自分でも知らずに一歩また一歩と後退し、それを見たエルザが薙刀を構える。

 

天一神・星彩(なかがみ・せいさい)!!!」

 

「う……ああああっ!!」

 

エルザの強烈な一撃はミネルバの魔法的な防御を全て消し飛ばして肉体に直接ダメージを与えた。ミネルバはなすすべもなく地面を転がりながら吹き飛ばされた。ミネルバにはもう立ち上がる力も残っていなかった……

 

『エルザだぁ~!!セイバートゥースのリーダーのミネルバを圧倒!!5pt獲得!!トップのセイバートゥースに迫ってきたあ~!!』

 

「ば……ばかな……妾が……負け……た……」

 

「これが仲間を想う力だ……お前もいつか分かってくれる事を願っている……」

 

「この屈辱……忘れ……ん……」

 

そこまで言うとミネルバは意識を失った。どこか虚しさを感じつつエルザが踵を返すとそう離れていない場所で炎が舞っているのが見えた。

 

「ツナとカグラか……」

 

ジェラールを憎む少女……何故か彼女に会わなければならないと思いエルザは走り出した……

 

フェアリーテイル→58pt

 

 

 

 

 




エルザは原作のように怪我をしてないのでミネルバ相手に圧勝させました。

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