妖精達と歩む大空   作:グリーン

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連続投稿二話目です。


激闘の裏で……

 

 

-華灯宮メルクリアス、上層階

 

ヒスイ姫の傍に仕えていた兵士達は餓狼騎士団全滅の報告を受けてパニックに陥っていた。だがヒスイ姫は兵士達から見えないように安堵の笑みを浮かべている。それを見咎めたのは……

 

「いけませんな姫……そのようなお顔をされては」

 

「国防大臣!?陛下と共に闘技場へ行かれたはずでは!?」

 

国防大臣ダートンはヒスイ姫こそがエクリプス計画の責任者であること、それをアルカディオスが隠してきたこと、奈落宮に落とされたアルカディオスを救う為に侵入したフェアリーテイルを奈落宮に落としたことを見抜いていた。

 

「姫……考え直してくだされ。あれは危険なものです。世界を変えるなど……」

 

「いえ……おそらく世界は変えねばならないでしょう。あなたには話しておいた方がよいでしょう……エクリプス2計画のことを」

 

「2!?」

 

「この作戦が失敗すれば……明日この国は滅びるのです」

 

そして姫は語り出した。今まで秘密にしてきたエクリプス2計画について……その話は国防大臣の顔色を真っ青に変えることになった……

 

 

 

 

 

 

 

-バトルフィールド

 

ヒスイ姫の告白が始まった頃、最終競技『大魔闘演武』は佳境に突入していた。既に2チームが脱落して残っているのは4チームとなっていた。その内訳は、

 

セイバートゥース、54pt 残り4人

 

フェアリーテイル、51pt 残り5人

 

ラミアスケイル、44pt 残り2人

 

マーメイドヒール、43pt 残り2人

 

となっている。どのチームもリーダーは倒されていないのでまだ優勝の可能性は残っているということになる。

 

 

ルーファスを撃破したグレイが図書館の外に出ると一人の男が待ち構えていた。

 

「本当にいやがった……さすがは初代」

 

〈ルーファスを倒したとしても外に出るとすぐに戦闘になるでしょう。その相手は……〉

 

「あの妙な造形魔法を使う者を倒したか……さすがは我が弟弟子。ウルの教えを受けておいて他の造形魔導士に負ける訳にはいかんからな」

 

「同感だぜ……リオン!!」

 

図書館の外にいたのはグレイの兄弟子であるラミアスケイルのリオンだった。ルーファス戦で軽くはない傷を負っているグレイだったがその瞳に宿った闘志は熱く燃え盛っていた……

 

「さあ決着を着けよう!そしてジュビアはラミアスケイルがもらうぞ!」

 

「まだそんなことを言ってんのか……けどよ家族(なかま)は渡さねえ!!」

 

〈リオンは無理をせずに足止めをして下さいね。恐らくルーファスに勝ってもかなりの傷を負うことになります〉

 

「了解だけどよ、初代……倒しちまってもいいんだよな?」

 

二人は既に睨み合って臨戦態勢を整えている。偉大な氷の造形魔導士達の弟子たちが激突する。

 

「「アイスメイク……」」

 

 

 

 

 

-フェアリーテイル応援席

 

「グレイ様……そんな家族(つま)は渡さないなんて……まだ式も挙げてないのに……」

 

「ジュビア!ルビを捏造しちゃダメだよ!!」

 

グレイの言葉を聞いて妄想中のジュビアにリサーナが思わずツッコミをいれていた。

 

「おいおい!グレイの奴傷だらけじゃねえか!」

 

「これでいいのか!?初代!」

 

「足止めでいいのです。その間にエルザがミネルバとぶつかります」

 

マカオとワカバの疑問にドヤ顔で自分の予想を語るメイビス。彼女はグレイがリオンを倒すつもりなのを気づいていない。

 

エルザが広場にてミネルバを待っているとそこに駆けてくる人影が見えた。その姿を見たエルザの瞳が大きく見開かれる。

 

『あ~っと!!カグラだあ!!フェアリーテイルエルザとマーメイドヒールカグラが激突!!』

 

「えっ?」

 

突如切りかかってきたカグラを迎え撃つエルザ。両者共に剣の腕は超一流なのでその切り合いは観客には視認できないほどだった。

 

「し…初代……これは?」

 

ミネルバと戦う筈のエルザがカグラと戦闘を開始したことにフェアリーテイルの面々はメイビスへと視線を向ける。マカロフがおずおずと初代に尋ねると……

 

「私の計算が…ふぇ…えぐ…どこで……ぐすっ……泣いてなんかないです……全然…うえ…泣いてなんか……」

 

「誰かー!!全力で初代をあやせー!!!」

 

瞳から大量の涙を流しながらも気丈にも泣いてないと言うメイビスを何とか慰めようとマカロフからの指令が出るのだった……

 

 

 

 

-バトルフィールド

 

『これは面白い!!最強女剣士決定戦となったー!!』

 

-強い!納刀したままでこれほどとは……-

 

現在のところほぼ互角だが刀を抜いていないカグラの予想を上回る力量に感嘆するエルザ。切り合いが続くなか突然二人の前方の空間が歪みそこから人の手が現れて二人の顔を鷲掴む。

 

回転して二人を投げ飛ばして全身を現した乱入者の正体は……

 

「妾も混ぜてはくれまいか?」

 

『ミネルバ乱入ーー!!』

 

セイバートゥースのミネルバは妖しく笑みを浮かべると二人に向かってそう口にした。

 

『三つ巴の戦いになったー!!今大会屈指の女魔導士対決!!果たして誰が生き残るのか!!?』

 

「相手が誰だろうと負けはしない」

 

-エルザ…何故ジェラールを匿うのだ…そなたの受けた苦しみは許せるものではないはず……-

 

「我等がセイバートゥースも随分と信頼を落としてしまった……ユキノはカグラ…そなたに敗れ、双竜はナツ・ドラグニルに討ち取られた……」

 

そう言いながらもミネルバは笑みを崩さない。この状況を楽しんでいるかのようだ。

 

「失った信頼を回復するためにはそなたらごときはまとめて片づけてくれようか……」

 

「随分と大口を叩くものだ……」

 

「御託はいい……来い!」

 

3人は同時に走り出すとエルザとカグラは刀を降り下ろしミネルバは腕に魔力の空間を作って攻撃する。3人の中央で攻撃がぶつかり合いその衝撃が周りに拡散する。

 

エルザがミネルバに攻撃すればその隙をカグラに突かれる。カグラがエルザを吹き飛ばせばミネルバに攻撃される。吹き飛ばされたエルザは体勢を立て直してミネルバに攻撃を加える。

 

3人がほぼ互角の力量を持っている為に一人を攻撃すればもう一人に隙を突かれる状況に陥ってしまう。吹き飛ばされたミネルバが一瞬の隙を突いて聞き慣れぬ呪文を詠唱する。

 

「イ・ラーグド」

 

呪文の詠唱が始まるとエルザとカグラは歪んだ空間に捕らわれる。

 

「ネェル・ウィルグ・ミオン・デルス・エルカンティアス……ャグド・リゴォラ!!!」

 

闘神の姿が写し出されてそのオーラが天を貫く。広場は崩壊してエルザとカグラはその破壊に飲み込まれた。

 

ヤクマ十八闘神魔法……メイビスですら戦慄する魔法を受けたエルザとカグラは服こそ破れているものの無事だった。解説席や観客席は驚愕と大興奮に包まれる……

 

「なるほど……ここまでやるとは計算外。ラチがあかぬな……少し趣向を変えるとしよう……先程捕らえた子猫だ」

 

ミネルバが腕を振るうと歪んだ空間が出現してその中には捕らえられたミリアーナが拘束されている。

 

「う……ううっ……」

 

「「ミリアーナ!!」」

 

「この娘を捕らえている空間は常に魔力を奪い続けているのだ……苦しんでいるのが分かるであろう」

 

エルザとカグラの顔が憤怒に染まる。エルザにとってもカグラにとっても大切な者だ。その顔を見てさらに笑みを深めるミネルバ。

 

「ふふっ…よい顔だ……安心するがよい。人質をだしに屈伏させるつもりはない……命令だ。二人で戦え!勝った方と相手をしてやろう」

 

あまりに卑劣なミネルバに二人はさらに怒り視線を鋭くする。しかしミネルバの愉悦の笑みは崩れることになる。

 

「お前は本当に俺を怒らせるな……」

 

「なっ!!」

 

「「ミリアーナ!!」」

 

いきなりミリアーナを捕らえた空間が勢いよく燃え盛り焦るがエルザはその炎をよく知っていた。オレンジ色の大空の調和の炎……

 

炎が消えた後にはミリアーナを横抱きにしたツナがミネルバを睨みながら佇んでいた。

 

 

 

 

 

 

-華灯宮メルクリアス、上層階

 

ヒスイ姫より話を聞いたダートンは焦燥し姫に大魔闘演武の中止を求めた。だがその姫もその話を完全に信じることはできずにいたので大魔闘演武の結果で真偽を判断することを伝えた。

 

「あるギルドがあり得ない結果で優勝すると聞いています。特殊な結果なので予測は不可能……もしその結果になれば“あの方”の言うことは真実……」

 

「国の未来を大魔闘演武の結果で動かそうというのですか!?」

 

「それに足る結果なのです。私は未だにその結果を信じられないのですから……それでもその結果になるというのならば“あの方”の言う未来は真実と判断できます」

 

「姫……」

 

「その時はエクリプスの扉を開きます。そう……“あの方”は未来から来たと言っていました」

 

 

 

 

 

-奈落宮

 

奈落宮の出口で出会ったフードを被った人物が素顔を現す。その素顔に全員が信じられないものを見たように驚愕の声をあげる。

 

「なっ!!」

 

「嘘!!」

 

「えええっ!!」

 

「ル……ルーシィが……」

 

「もう一人!?」

 

素顔を現した人物はなんとルーシィだった。ルーシィは涙を流しながら視線を逸らしている。

 

「ど……どういうことですか?」

 

「ジェミニ……じゃないですよね」

 

「まさかエドラスのルーシィ?」

 

「違うわ……時空を越える扉エクリプスは知ってるよね?……未来から来たの」

 

「「「「「なーー!!」」」」」

 

「それでね……この国は……もう…すぐ……」

 

そこまで言うと未来ルーシィは力尽きたようにパタリと倒れた。

 

「おいっ!しっかりしろ!!」

 

「いったい何がどうなって……」

 

「なんか気味が悪いよ……なんであたしが……」

 

「ルーシィ……」

 

「とにかくこのルーシィも連れて脱出しよう!そしてみんなに救出成功を伝えるんだ!」

 

ナツの言葉に全員が頷くが何かが起きようとしていることを全員が感じていた……

 

 

 

 

 

-バトルフィールド

 

「ツナ!!」

 

ツナはミリアーナを抱えてエルザとカグラがいる場所まで移動した。

 

「背中を怪我してる!うつ伏せに!」

 

「この傷は……」

 

「貴様……」

 

「ふ……その子猫は既に戦闘不能だ。得点を妾に!」

 

セイバートゥースに1ptが加わりトータル55ptとなった。しかしミネルバは内心で酷く焦っている。

 

 

-どうする…ツナヨシには勝てん…ならば狙うのはエルザか?恐らく5pt持っているのはツナヨシ…エルザの可能性もないことはないが……-

 

そしてミネルバはエルザに視線を向ける。

 

-やはりエルザを連れ去り早々に片づけてツナヨシとカグラを戦わせる……ツナヨシがカグラに勝つ寸前に止めをさして得点を奪うのが最良か……-

 

「エルザ!!」

 

「なっ……」

 

エルザはミリアーナに意識を向けていた為にツナの声に対する反応が遅れる。エルザのいた場所とミネルバの目の前の空間が入れ替えられてエルザはミネルバの前に出現した。

 

「妾の相手はそなただ!妖精女王(ティターニア)よ!!」

 

そのままエルザはミネルバと共に姿を消した。どうやら別の場所で戦うようだ。残ったのはツナとカグラとリタイアしたミリアーナのみ。カグラは鋭い視線と共にツナに向きなおる。

 

「……ミリアーナを救ってくれたことには礼を言う。だが試合が続いている以上そなたと戦わねばならん……聞きたいこともあるしな」

 

「仕方がない……行くぞ」

 

「ううっ……カグラちゃん……ツナ……」

 

両者が構えると緊張感が高まっていく……そして同時に相手に向かって地を蹴った。

 

 

 

 

 

 

「飛ばされたか……」

 

エルザは状況を把握すると目の前のミネルバを睨み付ける。

 

「貴様の所業……最早許せるものではない!!」

 

「ふふっ…そなたの怒る顔も美しいがあまり時間を使うわけにもいかんのでな……早く始めようぞ」

 

「いいだろう……」

 

そう言って天輪の鎧に換装するエルザ。その周囲にはいくつもの剣が浮いているがミネルバは顔色一つ変えない。

 

「天輪!!繚乱の剣(ブルーメンブラット)!!」

 

無数の剣群がミネルバへと襲いかかった……

 

 

 

 

 

 

「はぁ……またお前かよ……」

 

ガジルは溜め息をつきながら後ろを振り返る……そこにいたのはセイバートゥースのローグだった。

 

「まだ分かんねぇのか?お前じゃ俺には勝てねーよ」

 

「俺は貴様に負けたわけじゃない。今度は最初から本気で行くぞ」

 

そう言うとローグはドラゴンフォースを発動させる。第三世代の力の全てでガジルを倒そうとする。

 

「影竜の咆哮!!」

 

「鉄竜の咆哮!!」

 

二つの咆哮がぶつかり合って勝ったのはガジルの咆哮だった。咆哮と共に打ち出された鉄の塊がローグの体を傷付けていく。

 

「まだまだぁ!!鉄竜槍・鬼薪!!」

 

「うっ……ぐっ……ぐはぁぁぁっ!!」

 

鉄を槍に変化させて高速の突きを連続で繰り出すガジルにローグは一方的に傷付いていく……

 

「がはっ!!」

 

地面に倒れたローグを一瞥するとガジルは興味を失ったように背中を向けて去って行こうとする。

 

「ま……待て……」

 

「これ以上やっても無駄だ。出直して来い」

 

ローグはこのまま何もできずに終わりたくはなかった。だからガジルを引き留める為の言葉を口にする。

 

「お前は……ナツ・ドラグニルほどではない」

 

去ろうとしたガジルの足がピタリと止まった……

 

 

 

 

 

 

これまでほぼ互角の戦いをしてきたラクサスとジュラだったが、ラクサスの猛攻を防御に徹して防いでいたジュラが攻撃の隙を突いてラクサスの足元を固めた。

 

そしてジュラはラクサスが足元に気をとられた瞬間に掌を合わせて周囲の岩をラクサスに引き寄せた。岩に集められた魔力が内部に向かって爆発する。

 

「覇王岩砕!!」

 

「ぐはぁっ!!」

 

ゆっくりと前に倒れようとするラクサス。フェアリーテイル応援席から悲痛な叫びが飛び交うなか、ラクサスは左足を踏み出して何とかこらえる。そしてジュラは目を見開いてラクサスの右拳を見た。

 

 

そこには巨大な魔力が集まっていた。岩が張り付いた直後からラクサスは防御を捨てて右拳に全魔力を集中していた。ラクサスは最後の力でジュラへと走る……

 

「滅竜奥義!!鳴御雷!!!」

 

声にならない悲鳴をあげてジュラが吹き飛ぶが大怪我を負いながらもジュラは倒れない。

 

「ハァ…ハァ……ちっ…バケモンが……もう俺の魔力は残ってねえってのに……」

 

「フゥ……それはこちらも同じ……よもやここまでやるとはのう……」

 

「それでも俺が勝つ!!」

 

「来い!!」

 

「「うおおおおっ!!」」

 

もはや魔力の残ってない二人は残された己の肉体のみで戦わなければならない。二人は殴り合う為にお互いに向かって走るが……

 

「「ぐわあああぁ!!!」」

 

突如上から黒い雷が落ちてきてラクサスとジュラに直撃する。雷の耐性を持っているラクサスは膝を付くだけで済んだがジュラは既に防ぐ魔力もなく崩れ落ちてしまう。現れたのはセイバートゥースのオルガだった。

 

「よぉ!ラクサス!悪いな!!」

 

「テメーか……よくも邪魔しやがって……」

 

「オイオイ……今はバトルロイヤルだぜ?とにかくジュラのポイントはもらったぜ」

 

セイバートゥース→60pt

 

『おおっとここでセイバートゥースのオルガが乱入して得意の黒雷でジュラを沈めたー!!リーダーなのでセイバートゥースに5ptが入ります!!』

 

『ムム……今のはアリなのかね?』

 

『アリですカボ!!バトルロイヤルですのでカボ!!』

 

「そーいうこった。しかしもうボロボロじゃねえか……フン…もう楽しめそうにねえな」

 

「ざけやがって……テメェは俺が潰してやる!」

 

ラクサスは力の入らない足に渇をいれて立ち上がった。既に魔力も残っていないがジュラとの戦いを汚した男を倒すために……

 

 

 

 

 

 

 

ツナVS.カグラ

 

グレイVS.リオン

 

エルザVS.ミネルバ

 

ガジルVS.ローグ

 

ラクサスVS.オルガ

 

五ヶ所で激闘が始まった。だがその裏では狂い始めた運命の歯車が回りだす……大魔闘演武残りは11人……

 

 

 




大魔闘演武の結末をどう纏めるかで時間をくいました。申し訳ありません。

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