-7月5日 大魔闘演武最終日前日BAR SUN
王国兵にルーシィが捕まってから一夜明けてフェアリーテイル御用達のBAR SUNにツナ達は報告の為に集まっていた。昨日いなかったメンバーはマカロフ、エルザ、ラクサス、ジュビア、ミラジェーンがいる。
ルーシィが捕まった経緯をツナが代表して説明した。
「つまり何だ?大魔闘演武で優勝しなきゃルーシィを取り返せねえのか?」
「その話も信用していいのやら……」
「だからぁ!そんなことはどうでもいいからさっさと助けに行くぞ!!」
柱にぐるぐる巻きに縛られたナツが吠える。だが相手が王国なだけに無謀な突撃は論外だ。昨日の件で魔力も少ないはずなのに元気である。
極秘情報を知ってしまったツナ達を解放したのは大魔闘演武の選手だからだろう。明日出場しなかったらそこから足がつく可能性もある。
王国も魔導士ギルドを敵に回したくはないのだろう。しかも国王陛下はこの事を知らない可能性の方が高い。フェアリーテイルが出場しなかったら何故かを調べるかもしれない。
「とにかく俺達は最低条件として明日なんとしても優勝しなくてはならない……けどそれだけじゃ足りない。何らかの手は打つべきだと思う」
「そうじゃな……いつもみたいに後先考えずに突っ込む訳にもいかないからのう……」
「ダーッ!うだうだ言ってねぇでルーシィを助けに行くぞー!」
「話聞いてた!?」
ナツは縄を引きちぎりながら立ち上がる。今までの説明を全く理解していないナツにこめかみを押さえながら突っ込むツナ。マカロフが腕を巨大化させてナツを黙らせた。
その後話し合いが行われてルーシィを取り戻す為の作戦が決まった。決行は明日の大魔闘演武最終日に行うことになった。
「全ては明日だね……」
「ああ、絶対に負けられねぇな!」
そしてフェアリーテイルにとって勝負の最終日が幕を開ける……
-7月6日大魔闘演武最終日 ドムス・フラウ
『いよいよやって参りました!魔導士達の熱き祭典大魔闘演武最終日!泣いても笑っても今日…優勝するギルドが決まります!!』
解説はいつも通りヤジマそしてゲストは公式審判のマトー君が呼ばれていた。
『さあ出場ギルドが入場してきました!まずは現在6位!大逆転なるか!?猟犬改め仔犬!
バッカスを中心に大逆転を狙っている。
『続いて5位!まだまだ充分に優勝を狙えます!
全員カメラに向かってキメ顔をしている。……一夜だけはキモいが……
『続いて3位!聖十のジュラを中心に実力者揃い!
聖十大魔道のジュラを中心とした安定感のあるチーム。
『同じく3位タイ!女性の強さを見せつけるか!
女性だけということもあって結束力は高そうだ。
『そして現在2位!このまま王座を陥落か?再び最強の称号を手に入れるのか!?
何か昨日までと雰囲気が違うことに観客達も気付く者もいた。応援席の猫が一匹しかいないこともおかしいと思う観客もいた。
『そして現在1位!七年前最強と言われていたギルドの完全復活なるか!?
フェアリーテイルの入場に観客席から歓声が起こりかけるが次第にどよめきに変わっていく。
『おや?こちらは何とメンバーを入れ替えてきたー!!』
フェアリーテイルのメンバーはエルザ、ラクサス、ガジル、グレイ、……そしてツナ。タッグバトルでセイバーの双竜を圧倒したナツが欠場したのには実況や観客だけでなく選手達も驚きを隠せない。
だが貴賓席で見ていた国防大臣のダートンだけはナツがエクリプスによって魔力を吸収された為に回復が間に合わなかったのだろうと結論付けた。
-フェアリーテイル応援席
「ツナー!!お前ならやれるぞ!!」
「グレイ様ー!!頑張って下さい!!」
「エルザ!!負けんなよ!!」
「ガジル!今度は迷子になるなよ!」
「ラクサスー!雷神衆がついてるぞ!」
大声で応援するフェアリーテイルのメンバー達。それを見ながらメイビスはマカロフに話しかける。
「考えましたね。六代目」
「結局こうするしかなかったのです。初代」
大魔闘演武に優勝しても本当にルーシィを返してくれるかは分からない。その為、街中が注目するこの最終日に別働隊にルーシィを救出させることにした。
「私達はなに食わぬ顔でチームを応援する。その裏で別働隊によるルーシィ救出……二正面作戦ということですね……」
「ええ……ツナの案ですがワシもこれしかないと思います。最もツナは自分が救出側に行くつもりだったようですが……かなりごねられましたわい」
「さすがにツナが行くのはまずいですからね。今大会の最注目選手ですし……」
「ええ。ツナが出場しないとなると国防大臣は警戒を強めるでしょうからな……その点ナツはルーシィが捕まった時にエクリプスに魔力を吸収されています」
「だから欠場しても怪しまれないというわけですね。ナツは完全に回復したのですか?」
「ツナが昨日炎を大量に食べさせてましたからな。いつもより調子が良いようです」
「では私達も信じましょう。フェアリーテイルの優勝とルーシィの救出を……」
「はい……頼んだぞガキども……」
マカロフは王城の方角を見て祈るように呟く。試合に注目がいって閑散とした街の中をナツ、ミラ、ウェンディが疾走している。ハッピー、シャルル、リリーのエクシード組も遅れないように翼を出して着いていく。
フェアリーテイル起死回生の二正面作戦が始まった。ナツは突撃思考だが事前にツナに絶対にミラの作戦に従うように指示されている…というより脅されている。ナツ達はミラの立てた作戦を基に王城への侵入を試みる。
-クロッカス街中
『己が武を…魔を…仲間との絆を示せ!最終日全員参加のサバイバルゲーム!「大魔闘演武」を開始します!!』
花火と大歓声の中、最終日の種目が始まる。各ギルドは既に街中の自分達の陣地へ分散している。自由に街中を駆け巡り他のギルドのメンバーを倒すと1ptが加算される仕組みだ。
ただし、各ギルドには一人リーダーが決まっていてリーダーを倒すと5pt加算される。なおリーダーは他のギルドには分からないようになっている。最多得点の理論値は45ptなので6位のクワトロパピーにも優勝の可能性はある。
フェアリーテイルは自分達のスタート地点で円を作っていた。チームリーダーのツナが全員を見渡して口を開く。
「いいねみんな。俺達は優勝するしかないよ。ルーシィを取り戻すために……」
「サラマンダー達が無事に救出してくれりゃあ……」
「それにこしたことはないがな」
「だとしても優勝にはもう一つの目的もある」
「七年間苦い思いをした
そして開始の銅鑼が鳴る。
『栄光なる魔の頂きは誰の手に!?大魔闘演武開始です!!』
「行くぞ!!」
「「「「オオッ!!」」」」
最終試合が始まった。実力に自信のある者は単騎で、他にも二人組や三人組で行動する者もいる。
セイバートゥースは全員単独行動するようだ。既にミネルバから方針は聞いている。ミネルバはツナが最大の敵と考えていた。
確実に優勝する為にはツナを最後まで残して10ptの差をつけた状態で相対するのが理想だ。
その為には他のギルドのリーダーを打ち負かして5ptを稼ぐのがてっとり早い。だがジュラとカグラは間違いなく強敵であるので比較的倒しやすいバッカスと一夜を確実に討つようにスティングとローグに命じていた。
その時索敵していたルーファスが疑問を感じる。観客達も騒然としてきた。フェアリーテイルの全員が開始直後から目を閉じて全く動いていない。
応援席のメンバー達も焦ったように早く敵を倒しに行けと叫ぶが5人は全く動こうとしない。その間に次々とバトルが始まっていく。
「俺が魔法を封じてる隙に!」
「おおーん!!」
「二人かよ!ぐはぁっ!」
ラミアのユウカとトビーのコンビがパピーのノバーリを倒す。
「女子と当たるなんてついてない」
さらに天馬のトライメンズが人魚のアラーニャとベスを倒す。
ラミアスケイル→41pt
ブルーペガサス→32pt
『得点が動く中全くフェアリーテイルは動きません!何を考えているんでしょう!?』
続いてリオンがパピーのセムスを、ジュラがイエーガーを倒したことによりラミアスケイルは43ptとなる。マスターであるオババは高笑いをしている。
勝利を手にしようと疾走するラミアスケイルのユウカとトビーの前にバッカスが姿を見せる。そのまま戦闘に入ろうとしているところに屋根の上からスティングが不意討ちを仕掛けてバッカスを撃破した。
チームリーダーだったバッカスを倒したことでセイバートゥースに5pt追加された。
セイバートゥース→49pt
5ptを奪われたユウカとトビーはスティングを倒そうとするが突如現れたカグラに二人は一撃で倒されてしまった。
マーメイドヒール→42pt
そのままスティングを倒そうと振り返ったが既にスティングは撤退してしまった。
別の場所ではミリアーナがパピーのロッカーを倒した。この時点でクワトロパピーは全滅した。
マーメイドヒール→43pt
フェアリーテイルはまだ動かない……
-フェアリーテイル応援席
全く動こうとしないフェアリーテイルのメンバーにマカロフの怒号が飛ぶ。
「なんの真似じゃ!ルーシィを取り戻すためには勝たなきゃならんのだぞ!!」
「だからこそ冷静にならなければなりません……」
メイビスは語る。これまでの大会で敵の戦闘力や魔法行動パターンまでも頭に入れて何億通りものシミュレーションをしてきたと……そしてここまではメイビスの予想通り。
少女らしからぬ冷たい笑みを浮かべるメイビスにマカロフは鳥肌がたった。
「作戦は既に伝えてあります。仲間を必ず勝利へと導く……それが私の“戦”です。そして今こそ……妖精の星作戦発動!!」
-クロッカス街中
「時間だ!行くぞ!!」
「「「「了解!!」」」」
死ぬ気になったツナの号令と共にフェアリーテイルのメンバーが動き出す。全ては仲間と勝利の為に……
-華灯宮メルクリアス
王城ではナツとウェンディが兵士に拘束されて連行されていた。その兵士は同僚の兵士に牢の場所を確認してそのまま連れて行く。
「上手くいったな」
「さすがミラさん」
「ふふっ、ハッピー達ももう少し我慢してね」
「あい~」
……だがその兵士は変身魔法を使って兵士に化けたミラだった。ハッピー達は鎧の中に隠れている。こうしてナツ達は上手く城に潜入することに成功したのだった……
「姫様、今が好機かと……」
「そうですね……始めましょうエクリプス“2”計画を」
翡翠色の髪を持つ美女……フィオーレ王国王女、ヒスイ・E・フィオーレが動き出す……
というわけで原作通りにナツが潜入することになりました。