妖精達と歩む大空   作:グリーン

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大魔闘演武編もそろそろ佳境になってきました


竜の魂と星の扉

 

 

-大魔闘演武四日目夜 クロッカスの街中

 

大魔闘演武も残すは最終日のみとなり町民達はどこが優勝するか夜遅くまで騒いでいた。

 

「やっぱりフェアリーテイルだな!」

 

「二日目からはずっとトップだしな!」

 

「ツナヨシの乱入で10pt引かれてもまだ1位なのは半端ねぇよ!」

 

「ちょっと!あの時のツナヨシ様は傷ついた仲間を救う為に乱入したのよ!」

 

「そうよ!すごくかっこよかったわ……」

 

「あのMPFを完全にぶっ壊したしな!」

 

「初日にジュラにも勝ったし最強だな!」

 

「今日のナツもマジですごかったぜ!なんせあのセイバーの双竜を一人で倒すんだからな!」

 

「エルザの百体斬りが……」

 

「ラクサス一人でレイヴンを……」

 

町民の多くはフェアリーテイルが最有力とみている。ここまでの戦いで多くのファンがついたようだ。逆にセイバートゥースはミネルバの残虐さとナツ一人に二人がかりで敗れたことで人気を落としているようだ……

 

「いや、セイバーもこのまま終わるとは限らないんじゃ?」

 

一人の町民の言葉にラミアやマーメイドを応援する声もちらほらとあがる。街が静寂に包まれるのはまだ時間がかかりそうだ……

 

 

 

 

 

 

-クロッカスガーデン

 

ここセイバートゥースの宿であるクロッカスガーデンでは床に倒れ伏すスティングとローグを見下ろしながらマスターであるジエンマが二人にギルドの紋章を消せと怒鳴っていた。

 

想像をはるかに超えた強さを見せたナツに完敗した二人からは自信すらも奪われてジエンマの言葉に反論することすらできなかった……

 

見かねたレクターが仲裁に入ろうと言葉を投げ掛けられるが、ジエンマにとっては目の端にすら入らない存在だったようだ。

 

「誰だうぬは?」

 

ひきつった笑顔を浮かべながらセイバートゥースの紋章を見せるレクターにジエンマの怒りが爆発した。最強の名を持つギルドの紋章を猫がしているのが我慢ならなかったようだ。

 

ジエンマが放った魔力砲がレクターに直撃する。スティングは友の名を呼ぶが……

 

「スティング…く……ん」

 

レクターは跡形もなく消し去られてしまった。これには傍観していた周りのセイバートゥースのメンバーも言葉をなくした。危機を察してローグは泣き出したフロッシュを庇うように抱きしめた。

 

「あああああああっ!!」

 

スティングの慟哭が部屋に響くが、ジエンマは全く意に介さない。むしろその慟哭が耳障りだったようだ。

 

「やかましいぞスティング」

 

「なんて事を!あんたはなんて事を……」

 

「黙れぃ!たかが猫一匹!」

 

あまりの言いように怒りに我を忘れたスティングは拳より光を放った。その一撃は今までよりはるかに強力でジエンマの胴体を軽々と貫いた。

 

凍りついたように身動きを取れないセイバートゥースのメンバーの中でミネルバだけが薄ら笑いを浮かべていた……

 

 

 

 

 

 

-BAR SUN

 

セイバートゥースの宿で凶事が起こっている頃フェアリーテイルの面々はいつも通りに宴会をしていた。

 

「よっしゃあ!明日は休みだ!飲むよ!」

 

「カナはいつも飲んでるじゃない」

 

「あんまり飲み過ぎるとまたツナに制限させられるよ」

 

「う……」

 

ストラウス姉妹の言葉にあの制限の辛さを思い出したのかキョロキョロとツナを探すカナ。もっとも制限したのは1日だけだったのだが……

 

その頃ツナはルーシィとウェンディ、ナツとグレイとエクシード組ででテーブルを囲んでいた。

 

「ルーシィ寝てなくて大丈夫なの?」

 

「ありがとうツナ。でもウェンディとシェリアとポーリュシカさんのおかげでもう平気だよ」

 

「いよいよ大魔闘演武も最終日を残すのみですね」

 

「ああ!絶対に優勝するぞ!」

 

「オイ!最終日はお前かガジルのどっちかと俺が代わるんだからな!」

 

「俺は出るぞ!」

 

「ガジルも譲らんと思うぞ……」

 

「ナツも引かないと思うよ~」

 

「はぁ……まったくオスどもは……」

 

「ツナ!俺はどっちと代わるんだ!?」

 

「う~ん……ナツは今日の活躍で観客も楽しみにしてるだろうしガジルは不完全燃焼だろうしな……」

 

「おいおい……」

 

「いっそ俺と代わる?」

 

「「それはダメ(です)!!」」

 

ツナの提案にルーシィとウェンディが即座にダメ出しをする。

 

「当然ね。アンタはフェアリーテイル最強なんだから観客も一番楽しみにしてると思うわよ」

 

「それに総当たり戦みたいだしジュラとか出てきたらツナがいないと負けちゃうよ」

 

「確かにな。セイバーのミネルバやマーメイドのカグラも強敵だからな……」

 

エクシード組も二人の意見を支持する。チームリーダーであるツナは頭を悩ませる。誰を外しても文句が出そうだ……

 

そこへ神妙な顔をしたガジルが帰ってきた。試合のことでナツに文句を言うと思われたがそんなことはなく、ナツとウェンディに見せたいものがあるのでついてくるように言うのだった。

 

 

 

 

 

 

-地下洞窟

 

ガジルに連れられてやって来た洞窟には大量のドラゴンの骨があった。正にドラゴンの墓場と言うべき場所だった。ナツとウェンディそれについてきたツナ、ルーシィ、グレイとエクシード組は驚愕する。幸いなことにここにある骨は大昔に死んだものでナツ達の親のドラゴンのものではなかった……

 

「こんなにたくさん……いったい何があったんだろう……」

 

「そうだ!ミルキーウェイ!天の川へと続く竜の魂の声を聞け……てっきり攻撃魔法だと思ってたけど魂となった竜の声を聴く魔法なのかも知れません」

 

「ここに眠る竜の声を聞けば何があったのか分かるかもしれないね」

 

「俺達のドラゴンのことも分かるかもしれねぇってことか!?」

 

「やってみます!!」

 

ウェンディは魔方陣を書く。今まで攻撃用だと思っていた為に文字が違っていたようだ。そこを訂正して魔方陣が完成する。その中央にウェンディは祈るような体勢で祝詞を口にする。

 

「さまよえる竜の魂よ、そなたの声を私が受け止めよう……ミルキーウェイ」

 

集中したウェンディが魂を探すとほどなくして見つかったようだ。光が集まって形を作りだす……それはとても大きな緑色のみドラゴンの形となった。

 

驚くツナ達だが翡翠の竜・ジルコニスと名乗ったドラゴンは完全に人間をバカにしているような性格だった。

 

言葉の端々に人間を見下している感じがするがなんとかコミュニケーションをとるツナ達。そしてジルコニスは語りだした。竜の戦争と滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)の原点を……

 

かつて人間と共存することに賛成する竜と反対する竜とで戦争が起こった。ジルコニスは反対派として戦っていたらしい。やがて共存派の竜は人間に竜を滅する魔法を教えて戦争に参加させた。それが滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)の始まりだった。

 

滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)の活躍により戦況は共存派に有利となったが彼らはやがて共存派の竜をも殺すようになった。そしてその中の一人は竜の血を浴びすぎたことによって竜そのものになってしまった者がいた。

 

ここに眠る竜達もその者によって滅ぼされたとのことだ。その者は人間でありながら竜の王となった。竜の王が誕生した戦争……それは竜王祭と呼ばれるようになった。

 

そして誕生した王の名はアクノロギア……

 

「あれが!?」

 

「元々は人間だった!?」

 

ツナは見たことがないのでピンとこないが他のメンバーはかなり驚愕している。他にもまだ何か伝えようとしていたジルコニスだったが完全に思念が消えてしまった。

 

「滅竜魔法使いすぎると本物のドラゴンになっちまうのか!?」

 

「それは困る」

 

「どうしよう……」

 

3人のドラゴンスレイヤー達は冷や汗をかきながらかなり焦っていた。ツナは一人別の方を向きながら口を開く。

 

「いつまで盗み聞きしてるのかな?そろそろ出てきたら?」

 

「「「「!!」」」」

 

全員警戒しながらツナの視線の先へと目を向ける。出てきたのは男性と女性が一人ずつ。女性の方には見覚えがあった。

 

「気付いていたのか……さすがはツナヨシ・サワダ。君達が竜になることはないよ。アクノロギアはゼレフ書の悪魔と同じようなものだ……つまりはゼレフを倒すことがアクノロギア攻略の第一歩となるのだ」

 

「誰だテメェ!!」

 

「ゼレフを倒す!?」

 

「ユキノ!?」

 

女性の方は元セイバートゥースのユキノ・アグリアだった。そして白い鎧を纏った騎士……それはシャルルが予知で見た白い騎士そのものだった……

 

「私はフィオーレ王国軍クロッカス駐屯部隊桜花聖騎士団団長アルカディオス」

 

「同じく臨時軍曹のユキノ・アグリアでございます」

 

セイバートゥースをやめさせられたユキノが臨時とはいえ王国軍に入っていることに驚くが、アルカディオスより星霊魔導士の力が必要だった為力を借りていると説明された。

 

「……なるほど、大会二日目にレイヴンの仕業と偽ってルーシィ誘拐しようとしたのはお前達だな?」

 

「「「「なっ!?」」」」

 

「……何故そう思う?」

 

「あの時の状況を考えればそれが一番可能性が高いと思ってただけだ。その考えで調査していたがどうやら正解のようだ」

 

「その通りだ。もちろん危害を加えるつもりはなかったがあの時は早急に星霊魔導士が必要だと思い込み判断を誤った。申し訳ない」

 

「……なら話を聞く必要はないな。帰ろうみんな」

 

ツナがみんなを促して帰ろうとするとユキノが慌ててツナの前に回り込む。

 

「お待ちくださいツナヨシ様!どうかアルカディオス様のお話をお聞きください!ルーシィ様のお力をお借りしたいのです!」

 

「……ツナ、少なくともユキノ信用できると思う。話を聞いてみよう」

 

「そうだね……じゃあ聞くだけ聞いてみようか」

 

「ありがとうございます!…この作戦が成功すればゼレフ…そしてアクノロギアを倒すことが出来ます」

 

フェアリーテイルの面々はアクノロギアを倒せると聞いて懐疑的だがとりあえず二人について行くことにした。

 

 

 

 

 

-華灯宮メルクリアス

 

二人に案内されたツナ達は王城の中にまで案内された。その間に説明されたのは大魔闘演武は魔導士達の魔力を大量に集める為のカモフラージュであるということだった。

 

汚ない真似を平気で行うアルカディオスの信用は下がる一方だがある計画のために必要なことと言う。ツナはますます機嫌が悪くなる。

 

「大義があろうと何をやってもいいわけじゃないよ」

 

「……分かっている。世界を変える扉エクリプス、これの建造の為に大量の魔力が必要だった」

 

案内されたされた先にはとても巨大な扉が鎮座していた。

 

「太陽と月が交差する時十二の鍵を用いてその扉を開け。扉を開けば時の中。400年の時を渡り不死となる前のゼレフを討つ。それこそがエクリプス計画」

 

壮大な計画にツナ以外は言葉が見つからない。この扉は時間の流れが違う星霊界独自の次元境界線を利用して星霊魔導士の力で扉を開くとのことだ。その為にルーシィの力が必要らしい。

 

三日後の7月7日にルーシィの力を貸してほしいと頼まれる。それはドラゴンスレイヤー達のドラゴンが消えた日でもある。偶然か否か……その時ツナが口を挟む。

 

 

 

「過去のゼレフを殺してもこの世界のゼレフは消えないと思うよ」

 

唐突な言葉に全員の視線がツナに集中する。ツナはこの作戦が成功するとは全く思っていない。少々怒気をはらんだアルカディオスが聞き返す。

 

「……どういう意味かね?」

 

「過去に行ってゼレフを殺してもゼレフが生きている世界と死んだ世界に分かれると思うよ。パラレルワールドが一つできるだけだよ」

 

「何故そう言い切れるのだ!」

 

「俺は時を渡ったことがある。エクリプスではないけどね」

 

「「「「ええっ!?」」」」

 

「5年前に俺は10年後の世界に行った。そこで俺は前にいた場所で前にやっていた仕事を10年間続けていた。フェアリーテイルと出会うことはなくね」

 

ツナは14歳の時に未来の世界へと渡り、白蘭率いるミルフィオーレファミリーとの死闘を繰り広げた。その時の未来のツナはボンゴレデーチモとしてボンゴレファミリーのボスをしていた。

 

ツナがこの世界に来ることはなくマフィアをやっていた未来の世界ということだ。フェアリーテイルのみんなは理解したがアルカディオスは理解できない。それともしたくないのか……

 

「つまり今の段階で俺はかつて行った未来とは別の道を歩んでいることになる。過去に行って事を成しても現在は変わらない。現在の行動によって変えられるのは未来だけだよ」

 

「そんなはずはない!過去に行ったことがないなら分からないではないか!」

 

「あなたも行ったことはないでしょう……過去ではなく未来を変えるべきだと思うけど?」

 

 

 

「そこまでだ!」

 

狼狽するアルカディオスに諭すように言い聞かせていたツナだったが突如兵士達に周りを囲まれてしまう。兵を率いているのは国防大臣であるダートンだった。

 

ダートンは超国家機密を漏洩したとしてアルカディオスを逮捕しようとする。アルカディオスは計画に反対しているダートンがこれを機に計画を頓挫させようとしていると気付く。

 

「あなたはこの計画に反対なだけでしょう!」

 

「反対に決まっておるわ!歴史を変える危険を少しでも想像できんのか!小僧がぁ!!」

 

ツナの話を聞いていなかったらしいダートンはアルカディオスとユキノだけでなくルーシィまでも捕らえようとする。

 

「テメェら!ルーシィを巻き込むんじゃ……」

 

「ここで魔法を使ってはいかん!」

 

ナツが炎を出して王国兵を蹴散らそうとした時、アルカディオスが止めようとする。……が一足遅くナツは大量の魔力をエクリプスに吸いとられて気絶してしまう。エクリプスの近くで魔法を使うと全ての魔力を吸いとられてしまうらしい。

 

「騒ぎは起こさんでくれ。魔法の使えない魔導士など我が王国兵の敵ではないのだから……」

 

魔法を使えないグレイ達は気絶しているナツを庇う為に上手く戦えず制圧されていくがツナは違う。リボーンや拳法の達人である風にも指導されたことがあるツナは死ぬ気の炎を使わずとも充分に戦える。

 

 

 

ルーシィを後ろに庇いながら次々に兵士を蹴散らしていくツナにダートンは危機感を覚える。

 

「大人しくしてはもらえんかの?こちらは全て制圧したのだが……」

 

「ルーシィは無関係でしょう。捕まる理由もありませんよ」

 

「少なくともこの件が終わるまでは無関係とは言えん……がこちらも君達を無事に帰したい」

 

「勝手な事を……」

 

「待ってツナ!あたしが捕まれば他のみんなは解放してくれるのね?」

 

「約束しよう」

 

「ルーシィ!」

 

「大丈夫よツナ。それより最終日もあるんだからみんなを連れて帰って。ここでみんな捕まったらダメだよ」

 

「俺が全員倒すよ」

 

「そうしたらフェアリーテイルに迷惑をかけることになっちゃうよ。あたしは大丈夫だからみんなを連れて帰って。そして絶対に優勝してね」

 

 

 

ルーシィは自ら捕まりグレイ達が解放される。城の外へ追いたてられたツナ達にダートンはこれは自分の本意ではないと語る。

 

そして大魔闘演武に優勝すれば国王陛下に謁見してルーシィを解放できるかもしれないと告げる。

 

「さっきアルカディオスさんにも言ったけど国家とか大義とかの為に何をやってもいいというわけじゃないんですよ」

 

「…………」

 

ダートンはその言葉に一瞬足を止めるものの無言で城の中へと去って行く。全員がその背中を睨み付けていた。

 

「とにかく一度戻ろう。マスターにも報告しないと」

 

「ああ…すまねぇ…足を引っ張っちまって……」

 

「すみません……」

 

「仕方ないよ。魔法が封じられていたし……とにかく対策を練ろう……」

 

気絶しているナツを連れながら街へと戻って行くツナ達は絶対にルーシィを助け出すと誓うのだった……

 

 

 

 




年内に最低あと一話は更新したいです。

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