妖精達と歩む大空   作:グリーン

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本当に遅くなって申し訳ありません。全ての仕事が片付いた訳ではありませんがとりあえずピークは過ぎました……


四頭の竜

 

 

-闘技場

 

スティングは高揚を抑える事ができなかった。今日の戦いで自分が憧れていた火竜(サラマンダー)と呼ばれたナツ・ドラグニルを超えた事を証明できるのだから……

 

睨み合う両チーム……そして観客達は四人の激突が始まるのを今か今かと待ちわびていた。

 

そして遂に開始の銅鑼が鳴る。

 

「行くぜぇ!!」

 

「ああ」

 

開始と同時に飛び出したスティングとローグ……より速くナツとガジルは彼らの目の前のに現れる。

 

ナツはスティングを、ガジルはローグを思いきり殴りつけた。

 

二人は止まらない。ナツはスティングをそのまま炎を纏った足で蹴り飛ばし、ガジルはローグを鉄に変化させた腕で地面に殴り倒してから蹴り飛ばす。

 

吹き飛ばされたスティングは一瞬信じられないと言うような顔をするがすぐに笑みを浮かべる。

 

「白竜の…咆哮ォ!!」

 

スティングの口から吐き出された白いレーザーがナツに襲いかかるがナツはそれを躱す。

 

「やっはぁ!!」

 

体勢を変えるとそのレーザーはなぎ払うようにガジルへと襲いかかるがガジルは体勢を崩しながらも同じように躱す。

 

「影竜の斬撃!!」

 

その隙を見逃さずにローグがガジルへと襲いかかるが……

 

「鉄竜剣!!」

 

腕を鉄の剣に変えたガジルはアッサリと返される。そのまま腕を振り抜いてローグを吹き飛ばす。……そこにいたのはナツだった。

 

ローグの顔面を掴んだままナツはスティングへと突撃する。そのまま両腕を翼のように振るう。

 

「火竜の翼撃!!」

 

ナツの両腕から発せられた炎が渦を巻き、二人を吹き飛ばした。実況のチャパテイは信じられないような声をあげる。

 

『こ…これはいったいどういう事だ~!!あのスティングとローグが…フィオーレ最強ギルドの双竜が押されている~!?』

 

会場は目の前で行われているバトルに大興奮だ。スティングとローグは何とか体勢を立て直す。

 

「やっぱ強ぇな…そうこなくっちゃな……」

 

「ガジル……」

 

「お前らその程度の力で竜を倒したのか?」

 

ナツの疑問にスティングは笑みを浮かべながら答える。

 

「倒したんじゃない。殺したのさ、この手で」

 

「自分の親じゃなかったのか?」

 

「あんたには関係ねえ事だ…そろそろ見せてやるよ。竜殺しの力を……」

 

スティングとローグの魔力が高まってそれぞれの体に光と影の衣を纏ったような姿になる。

 

「ホワイトドライブ」

 

「シャドウドライブ」

 

セイバートゥースのマスターであるジエンマは観客席にて勝利を確信する。

 

「聖なる竜の裁きを喰らいなあぁ!!」

 

「ぐっ!」

 

「サラマンダー!」

 

スピードもパワーも段違いに高まったスティングの攻撃を喰らったナツに気をとられたガジルはいつのまにか接近していたローグを攻撃するが、影のようになったローグには当たらない。

 

「影は捉えることはできない…」

 

逆に攻撃を受けるガジル。戦況は逆転してるように見える。やはりセイバートゥースは一筋縄ではいかないようだ。

 

 

 

 

 

 

-フェアリーテイル観覧席

 

押し返されるナツとガジルを見ながらツナ、エルザ、ラクサスは心配そうな顔を……全然していなかった。

 

「あのまま簡単にいくとは思わなかったけど二人共ちょっと面食らったみたいだね」

 

「あれが第三世代の力ってやつか?」

 

「確かに動きは速くなったし魔力もかなり増幅されているな……」

 

「だけど……」

 

「ああ……」

 

「そうだな……」

 

「これくらいで二人を超えたと思ったのかな?セイバーの二人は……」

 

闘技場では再び戦況が変わろうとしていた……

 

 

 

 

 

 

-闘技場

 

スティングは連撃を繰り出しながらナツに語りかける。

 

「俺はずっとアンタに憧れてた。そしてアンタを超える事を目標にしてきた…今がその時!」

 

スティングの左拳がナツのボディーに決まり、その部分に爪痕のような紋章が刻まれる。この聖痕を刻まれた者は自由を奪われるらしい。ナツは体を動かそうとするが全く動かせない。スティングは右拳に光を集め決めの一撃を放つ。

 

 

 

ガジルの攻撃を影になって躱すローグはガジルの左側から囁く。

 

「影なる竜はその姿を見せず……」

 

ガジルがそちらへ振り向くとローグは影を残してガジルの背後に移動する。

 

「確実に獲物を狩る」

 

そして右拳をガジルへと放つ……が放たれた拳は後ろを向いたままのガジルにしっかりと掴まれる。

 

「確実に獲物を…何だって?」

 

 

 

スティングはナツへ向かって走る途中でナツの口元が笑っているのに気付いた。しかし勢いは止まらず拳を繰り出す。次の瞬間動き出したナツはスティングの拳を避けると逆にカウンターをスティングの顔面に喰らわせた。

 

-何故動ける!?-

 

スティングはナツへ刻んだ聖痕に目をやると驚愕した。刻んだ聖痕が焼き消されていた。

 

「なかなかやるじゃねーか。けどまだまだだ」

 

獰猛な笑みを浮かべながらナツは炎に包まれた拳を振りかぶった。

 

 

 

「あんまり調子に乗るなよ小僧ども…フェアリーテイルをナメんな!!」

 

「ごはぁっっ!!」

 

ガジルは言葉と共に強烈な肘打ちをローグの顎へと叩き込んだ。

 

「ぐはぁっ!」

 

ナツも炎の拳をスティングに叩き込む。スティングはダメージを受けながらも笑みを浮かべる。

 

「やっぱり最高だぜアンタら。こっちも全力の全力でやらなきゃな…白き竜の拳は炎さえも灰塵と化す。滅竜奥義…ホーリーノヴァ!!」

 

今までとは比べ物にならない程の光を右拳と共にナツへ繰り出す。避ける様子もないナツはその攻撃をまともに喰らったように見えた。光がナツを中心に爆発したように広がり、大量の砂塵が舞う。

 

これで決まったとスティングだけでなく観客達もそう思っていた……が砂塵が晴れた後にはナツがスティングの右拳を炎を使わずに微動だにせず受け止めている姿だった。

 

その姿を見たスティングは激しく狼狽する。セイバートゥースのメンバー達も信じられないような目で呆然と闘技場を見ていた……

 

その後は一方的な展開となった。ナツとガジルは次々と攻撃をくり出す。加えてコンビネーションも普段の二人からは信じられない程に完璧だ。

 

スティングとローグも反撃を試みるが全く通用しない。スティングがそのスピードでナツを翻弄しようとも全てを見切り逆に痛撃を受ける。

 

ローグが影になって襲いかかってもガジルはまるで居場所が分かってるかのように反撃する。

 

『ヤジマさん!これはいったい!?』

 

『ウム…格が違いすぎる……』

 

二人が地面に倒れこむ頃には会場はフェアリーテイルを応援する声で埋め尽くされそうになっていた。

 

 

 

 

 

 

-フェアリーテイル観覧席

 

「二人とも本当に強くなったな……」

 

エルザの感慨深い声がする。二人の成長を心から喜んでいるようだ。

 

「フン……まだまだだけどな……」

 

ラクサスも嬉しそうに笑みを浮かべていた。

 

「ん…?どうやらまだ終わらないみたいだ」

 

スティングとローグが立ち上がると先程以上の光と影が二人を包む。そしてその肌にも変化が表れていた。この変化をエルザは見たことがあった。

 

「あれは!まさか…ナツが楽園の塔で見せた姿と同じなのか!?」

 

「なんだそりゃ?」

 

「…ナツが前に楽園の塔で見せたものだ。その時はエーテリオンの莫大な魔力を食べることにより発動することができた…あれは……強い」

 

「第三世代の真の切り札ってわけか……」

 

「それでも……ナツとガジルは負けない」

 

姿の変わったスティングとローグをその目にしながらもツナは一片の疑いもなく二人を信じていた……

 

 

 

 

 

-観客席

 

「ありえん!自らの意思で発動出来るのか!?」

 

観客席では変装したジェラールが驚愕していた。スティングとローグが発動させたのは間違いなくドラゴンフォースと呼ばれるものだった。応援席ではメイビスもその名を知っていたのか驚愕している。

 

「ナツが以前その姿になった時はエーテリオンや俺の全魔力を食べてその力を得た……あいつらは自らの意志でドラゴンの力を解放できるというのか……」

 

 

 

 

 

-セイバートゥース観覧席

 

「自らの意志でドラゴンの力を解放する……それが第三世代滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)……」

 

「これで決まりだな」

 

「二人がここまで追い込まれた記憶などなかったけどね」

 

「けどこれで勝ちですね!ハイ!」

 

「フローもそう思う」

 

 

 

 

 

-闘技場

 

「ローグ下がってろ。俺一人で充分だ」

 

観客達からざわめきが聞こえる。先程まで全く歯がたたなかった者の台詞ではない。

 

「なめやがって……」

 

「けどこの感じ…強ぇぞ」

 

過去に二度ドラゴンフォースを発動したナツは二人の強さを感じ取っていた。

 

「はぁっ!!」

 

スティングがナツへと突っ込んで来る。先程よりもさらに速く、重い攻撃にナツはガードする暇すらなかった。

 

ガジルも足先から鉄の剣を出現させてなぎ払うがしゃがんで躱されてカウンターの一撃を受ける。ナツは体勢を立て直して炎の拳を撃ち込むが簡単に止められて強烈な膝蹴りを喰らってしまう。

 

ガジルを吹き飛ばし間をとったスティングは飛びあがり地面に咆哮を放つ。

 

「白竜の…ホーリーブレス!!」

 

スティングの口から放たれた咆哮は闘技場の床を破壊してしまう。崩れた闘技場の地下へとナツとガジルは落ちていった……

 

試合は魔水晶映像(ラクリマビジョン)にて映されている。ナツは落ちていきながらも一緒に落ちてくる瓦礫を足場に炎を纏ってスティングへと突撃する。

 

「火竜の劍角!!」

 

全身を使った体当たりをスティングに喰らわせる。さらにいつの間にかスティングの背後に移動したガジルが追撃をかける。

 

「鉄竜の…咆哮!!」

 

強烈な咆哮に地面へと叩きつけられたスティングだったが全く堪えた様子もない。しかも両手を組んで光を集めていた。

 

「白き竜の輝きは万物を浄化せし…ホーリーレイ!!」

 

「ぐあああぁっ!」

 

「ああああぁっ!」

 

スティングが幾つもの光線を二人に放つ。放たれた光は曲線を描きながら二人に全て命中してダメージを与える。地面へ転がったナツが起き上がって見たのは自分に向かってくるスティングの右拳。とっさにガードしたが勢いは止まらない。

 

「飛べよ!」

 

スティングの宣告と共に壁に飛ばされるナツ。それからも自分達の攻撃を全て捌かれ逆に相手の攻撃を受け続けてしまう。

 

数分後ナツとガジルは倒れ立っていたのはスティング。ローグも降りてきた。スティングは拳を高々と掲げて勝利を確信した。天井からスティングに光が降り注ぎ、そこだけスポットライトが当たっているように見えていた……

 

ローグとスティングは倒れた二人に語りかける。

 

「時代は移り行く…7年の月日が俺達を真の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)へと成長させた…旧世代の時代は終わったんだ」

 

「ああ…でもやっぱり強かったよ。ナツさん、ガジルさん」

 

『両者ダウンかー!?』

 

「チョーッと待てって」

 

実況のチャパテイがセイバートゥースの勝ちを宣告しようとした時、ナツとガジルはムクリと起き上がった。

 

「いってぇー」

 

「思ったよりやるな」

 

『な…なんか意外と平気そうだ!』

 

大きなダメージを喰らった様子もない二人にスティングとローグだけでなく会場中が唖然としていた……

 

 

 

 

 

-フェアリーテイル観覧席

 

「あの程度で負ける二人じゃないよね」

 

「ああ…ナツもガジルも相手が強いほど燃えるタイプだしな……」

 

「まあこれからだろ…面白くなるのは……」

 

ラクリマビジョンにはナツとガジルが些細なことで言い争いをしているのが映っている。ナツが両手でガジルを押すとそこには何故かトロッコがありそこにスッポリとはまってしまうガジルの姿……

 

「あ……嫌な予感……」

 

ナツは躊躇うことなくレバーを引くと乗り物酔いを起こしたガジルを乗せたままトロッコは発車していった……

 

 

 

 

 

 

-闘技場

 

ガジルを乗せたトロッコを呆然と見送りながらスティングとローグは混乱していた。ナツの行動の意味が分からなかった。

 

「な…なんのマネだ……」

 

「ガジル……」

 

二人の疑問にナツは不敵な笑みを浮かべて答える。

 

「なめられた分はキッチリ返さねえとな……俺一人で充分だ!まとめてかかってこい!!」

 

絶句しているセイバートゥースの二人に対してナツは挑発するように指先から炎で『COME ON』と文字を作り出す。

 

戦いは1対2となり佳境へと突入していく……

 

 

 

 




今日は本当に久々の休みでした……

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