妖精達と歩む大空   作:グリーン

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少女達のバトル!


天竜と天神

-フェアリーテイルB観覧席

 

レイヴンテイルは当然失格になり、以後3年間の大会出場権が剥奪されることとなった。ラクサスは観覧席へと戻ってきた。

 

「お疲れ様。ラクサス」

 

「ああ……」

 

「5対1で勝つなんてさすがね」

 

「ギヒッ!まあアンタなら楽勝と思ってたけどよ」

 

「あれ、ガジル君幻のラクサスさんがやられてたのを見て焦ってましたよね?」

 

「それにツナから1対5で対峙してるって聞いて飛び出そうとしてなかった?」

 

「そりゃ…オメェ……あれだ」

 

「うんうん。私達Bチームの結束は固いわね」

 

「だから……そうじゃねぇって!」

 

「それを言ったらラクサスもだよ。家族の敵は俺が潰すって言ってたし」

 

「「まあっ!」」

 

ミラとジュビアが声を揃えて笑顔になる。かつてのラクサスを知ってるだけに嬉しそうだ。

 

「んなっ!!ツナ!聞こえてたのか!?」

 

「最後だけね……で?奴等の目的って何だったの?」

 

「よく分かんねぇもんだ。後でジジイに聞いてみるつもりだけどな……それよりツナはいつ幻に気付いたんだ?」

 

「え?最初からだけど?あの程度の幻覚じゃ全然効かないよ」

 

「あの程度って…マスターも見破れてませんでしたよ!?」

 

「あ~俺の昔の守護者にメチャクチャ幻覚が上手い二人がいたからね……慣れたんだ。その二人は実体を持った幻も使えたから……」

 

「ツナも規格外だけどその二人も相当ね」

 

「つかお前の世界のマフィアの強さはどうなってんだ……」

 

「いかれてるぜ」

 

「酷くない!?」

 

「まあまあ…次の試合に注目しましょう」

 

ちょうどその時、次の試合の選手が発表された。フェアリーテイルA ウェンディVS.ラミアスケイル シェリア。

 

「ウェンディの番ね」

 

「相手も随分とちっせえ奴だな」

 

「ウェンディは強いですから心配は要りませんよ」

 

「だな……」

 

「あ、こけた」

 

闘技場ではシェリアが何もないところで転んでいた。それを助けようと駆け寄ったウェンディも同じように転んでしまった。微笑ましい光景に会場から笑いが巻き起こる。

 

「似た者同士だな……」

 

「ああ……」

 

「だね……」

 

「もう!3人とも!」

 

「そうですよ!ツナさんは特にウェンディを応援して下さい!」

 

「いてて…引っ張らないで…分かったから!」

 

「じゃあ応援しましょう!」

 

ミラとジュビアに急かされて3人はウェンディを応援し始める。ガジルとラクサスはそれをやれやれといった感じで見ていた。

 

 

 

-街中

 

-これはゼレフの魔力!?-

 

「会場の方か?ウルティア、メルディはその場で待機!俺が行く!」

 

街中を調べていたジェラールは会場へと急ぐ。

 

 

 

-闘技場

 

『これは何とも可愛らしい対決となったぞー!!オジサンどっちも応援しちゃうピョーン!』

 

『あんたキャラ変わっとるよ』

 

闘技場中央にて向かい合う二人。小さな少女達ながらその表情は戦士のようだ。どうでもいいが実況のチャパティのキャラの変わりようがウザイ……

 

-ツナさんもエルザさんもラクサスさんも凄かった……私だって絶対に勝つ!-

 

試合開始の銅鑼が鳴ると同時にウェンディが仕掛ける。

 

攻撃力強化(アームズ)速度上昇(バーニア)付加(エンチャント)

 

「お」

 

自身に能力上昇の魔法を付加したウェンディが果敢に仕掛ける。

 

「天竜の翼撃!!」

 

強力な風がシェリアを襲うがシェリアは風を見極めて躱すとお返しとばかりに反撃する。

 

「天神の北風(ボレアス)!!」

 

黒い風がウェンディを包み込む前に何とか避けるがシェリアはその風に乗ってウェンディに急接近する。

 

「天神の舞!!」

 

「うああぁぁっ!!」

 

シェリアを中心に巻き起こる風がウェンディを空中へと吹き飛ばした。さらに追撃しようと飛び上がったシェリアだったがウェンディは空中で風を操って態勢を立て直す。

 

「天竜の鉤爪!!」

 

下へ叩きつけるような蹴りを放ったが着地される。地面に降りた二人は大きく息を吸い込む。

 

「天竜の……」

 

「天神の……」

 

「咆哮!!!」

 

「怒号!!!」

 

二人のブレスがぶつかり合ってほどけた風が観客席にまで届く。威力はシェリアの方が上だったようでウェンディの傷の方が深かった。膝をつき、肩で息をしている。

 

 

 

-応援席

 

「まさか……あんな少女がゼレフと関係があるというのか?」

 

会場についたジェラールはシェリアを見ながら戦慄していた。

 

 

 

-ラミアスケイル観覧席

 

「黒い風は天空の滅神魔法……すなわちシェリアは天空の滅神魔導士(ゴッドスレイヤー)ということだ」

 

 

 

-フェアリーテイルA観覧席

 

「アイツの他にもいたのか?」

 

「知り合いか?」

 

「グリモアの…シンパチロウとか言ってたか?」

 

「ザンクロウじゃなかったか?」

 

「まあ……たいしたこと……なかったな……」

 

実は大苦戦していたナツが冷や汗をかきながら強がって言う。

 

「ここからがウェンディの正念場だな」

 

 

 

-闘技場

 

「驚きました……」

 

「リオンから聞いてたんだ。フェアリーテイルにアタシと同じ魔法を使うコがいるって…ちょっとやりすぎだったかな?ゴメンね痛くなかった?」

 

「平気です…戦いですから」

 

「せっかくだからもっと楽しもっ!ね?」

 

「私…戦いを楽しむってよくわからないですけど……ギルドの為にがんばります」

 

ふらつきながらも立ち上がるウェンディ。シェリアが嬉しそうに風を纏いながら言う。

 

「うん!それでいいと思う!アタシも愛とギルドの為にがんばる!」

 

-愛と……ギルド?私も……-

 

黒い風を解き放つシェリア。防戦一方のウェンディは今までの戦いを思い出す。その中でもやはりウェンディに強く印象に残ったのは……ジュラを圧倒的な力で倒し、MPFでは物凄い威力の攻撃を見せたツナの姿。

 

以前対等な仲間と言われたが自分は守られてばかりだ。誘拐騒ぎが起こったときも助けてもらった。

 

-負けない!エルフマンさんに後を頼むって言われたんだ!ギルドの為に!ツナさんと対等な関係である為に!-

 

ウェンディは勝負をかける。空気を吸い込んで魔力を補給する。それを見たシェリアも同じように空気を食す。

 

『こ…これはウェンディたん、シェリアたん何をしているのでしょう?気のせいか酸素が少し薄くなった気がします』

 

「滅竜奥義!!」

 

ポーリュシカやナツやルーシィが驚く。ハッピーとシャルルは勝利を確信する。

 

大きな竜巻が二人を包み込む。シェリアが驚きを露にする。

 

「風の結界!?閉じ込められた!?」

 

「照破!天空穿!!」

 

束ねられた風の一撃がシェリアを貫く。シェリアは吹き飛ばされて倒れこむ。

 

-ミルキーウェイはまだ修得出来てないし…これが私の全魔力……でもこれで……-

 

ウェンディはフラフラになりながらも勝利を確信していた。

 

 

 

-フェアリーテイルB観覧席

 

「決まったわ!」

 

「やるじゃねえか!あのガキ!」

 

「ありゃすげえな」

 

「ウェンディの勝ちですね!」

 

「……」

 

「ツナ?」

 

「まだ終わってないみたいだ」

 

「アレを食らって立てるとは思えねぇぞ?」

 

闘技場を見るとマトー君がウェンディの勝ちを宣告しようとしていたが、それを遮りシェリアは立ち上がる。その体には傷一つなかった。

 

「なっ……無傷!?」

 

「どうして!?」

 

「どういうことだ?ツナ?」

 

「自分の傷を治癒したんだ」

 

「ウェンディは自分の傷は治せないのに……」

 

「彼女はできるみたいだ……ウェンディ……」

 

ツナは心配そうな目で闘技場を見る。

 

 

 

-闘技場

 

奥義を放ったウェンディはフラフラになりながらも戦う意思は消えていない。

 

「降参しないのかな?アタシ…戦うのは嫌いじゃないけど勝敗の見えてる暴力は愛がないと思うの。降参してもいいよ、ね」

 

「できません!私がここに立っているということは私にもギルドの為に戦う覚悟があるという事です。情けはいりません!私が倒れるまで全力で来てください!お願いします!」

 

ウェンディの決意にフェアリーテイルのメンバーは止めようと思えなくなった。

 

「それが礼儀だよね…じゃあ今度はアタシが大技だすよ!この一撃で楽にしてあげるからね!……滅神奥義!!」

 

 

 

-ラミアスケイル観覧席

 

「よせ!シェリア!!」

 

「それはいかん!!」

 

「バカたれが!相手を殺すつもりかい!!」

 

リオンやジュラ、マスターオーバですらシェリアを止めようとするがシェリアは止まらない。

 

 

 

-闘技場

 

「全力の気持ちには全力で応える!…それが愛!!」

 

シェリアが巻き起こした黒い風が数多の羽根の形になっていく。ものすごい魔力が集まっていく。

 

天の叢雲(アマノムラクモ)!!」

 

羽根の形をした魔力が渦を巻いてウェンディを襲う。ウェンディは手で顔を覆うがその魔法は防げそうにない。

 

しかしシェリアの魔法はウェンディに当たることはなく外れた。シェリア自身が一番驚いていた。

 

 

 

-フェアリーテイルB観覧席

 

「ギヒッ!よけたのか?いや外れた!?」

 

「シェリアの魔法は自己回復はできるみたいだけど傷は治せても体力は回復できないみたい」

 

「逆にウェンディは相手の体力を回復できる」

 

「そのせいで相手の魔法の勢いがつきすぎて外させたんですね!」

 

「ウェンディすごいな…あの状況で……」

 

闘技場ではウェンディとシェリアのバトルが続いている。どちらも己の肉体に風を纏いながら接近戦で戦っているが。

 

傷を付けてもすぐに治癒するシェリアが有利だがウェンディは諦めない。その小さな拳に想いを乗せて戦うその姿は傷だらけになりながらも美しい。

 

……そして30分が過ぎても決着はつかなかった。

 

『ここで時間切れ!試合終了!ドロー!!』

 

会場中が二人の健闘を称えて拍手と歓声をを贈る。両者共魔力を使いすぎて相当疲れている。傷だらけのウェンディの方は地面にへたりこんでいる。

 

「よくやったよ。ウェンディ……」

 

「ツナ…今日はたくさん労ってあげないとね」

 

「格上の相手に本当によくやったな」

 

「すごい試合でした!」

 

「ギヒッ!やるじゃねえか!」

 

闘技場を見るとシェリアがウェンディの傷を癒し、握手をしている。二人はいい友人になれるだろう。

 

ツナは優しげな目でその光景を見ていた。

 

三日目の結果は次の通りだ。

 

1位 フェアリーテイルB 40pt

2位 フェアリーテイルA 37pt

3位 セイバートゥース 34pt

4位 マーメイドヒール 32pt

5位 ラミアスケイル 31pt

6位 ブルーペガサス 18pt

7位 クワトロパピー 14pt

失格 レイヴンテイル

 

フェアリーテイルの快進撃は続く。

 

 

 

-応援席

 

「シェリアではなかったか……もう魔力の痕跡は消えてしまったな……しかたないな、会場を出る前にツナとエルザに……」

 

 

試合終了後、人混みの中でツナとエルザと接触したジェラールの姿を二人の憎しみに支配された少女達が目撃していた事に3人は気付いていなかった……

 

 




ジェラールは変装はしてますがミストガンの格好ではないのでドランバルドに疑われてません。

目撃者は分かると思います。

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