-闘技場
ツナが放った一撃は会場を魅了し、ツナの宣言に会場の盛り上がりは最高潮に達していた。未だに歓声は鳴りやまない。
『フェアリーテイルBツナヨシ・サワダの宣言が会場を震わせる~!!本当にもう誰も止められそうにありません!!』
『スんごい一撃だったね』
『MPFが消滅するとは思いませんでしたよ』
「これは凄まじいね…さすがは僕のライバル!」
「アレを見せられた後によく言えるね……」
「ここまでやられると逆に清々しい気分じゃな」
「ニャー!アレ私の何倍!?」
「ちっ……何だよアレは……」
「……」
ここにいる選手達だけでなく観覧席にいる選手達もツナの一撃には度肝を抜かれていた。
-フェアリーテイルA観覧席
「「な…な…なんじゃあ!ありゃー!!」」
ナツとグレイの叫びが重なる。先程のジュラの一撃を見たときといいこの二人のリアクションは派手だ。
「これは…もう言葉もないな……これがツナの本気か……」
「てゆーかアレ、エドラスまで届いてたりして?」
「ハハ…まさか……」
「だ~俺もアレやりてーー!!手を後ろに向けて炎を出して…」
「おいおいこんなところで無茶はよせ…」
「そうだぞ。ツナの必殺技がテメェにできるわけねーだろ」
「なんだとこの野郎!!」
いつものように喧嘩を始めた二人だった……
-セイバートゥース観覧席
「な…んだよ…アレは……」
スティングは恐怖を感じながら呟く。初日に聖十のジュラを倒し、殴り込みでセイバーのメンバーを何人も倒したことから強いのは分かっていたが今の一撃は自分の想像を遥かに越えていた。
「こんな奴が今まで無名だったとはな……」
「MPFがあそこまで完全に消滅するなど記憶にないよ……」
オルガは肩を落としながらこちらに戻って来ている。
ミネルバは想像以上にツナの本気がセイバーのメンバーに影響を与えるのを見て考える。
-強いのは分かっていたがここまでとは…セイバートゥースの優勝の為には奴を何とかせねば……-
ミネルバの瞳に暗い輝きが灯る……
-マーメイドヒール観覧席
「ごめん!カグラちゃん!負けちゃった!」
「しかたあるまい……私でもツナヨシ・サワダや聖十のジュラには数値では勝てん。むしろあの順位はよくやったと言えるだろう」
「アレはホントに人間かい?」
「む…失礼だよ!ツナはいい人なんだから!」
「ミリアーナホントに仲良くなったね」
-ツナヨシ・サワダか……私にあれほどの力があればジェラールを……-
カグラは無意識に不倶戴天を握りしめる。
-フェアリーテイル応援席
エルザとツナのワンツーフィニッシュに応援席にいる者達ははしゃいでいた。特に炎の魔導士であるロメオは大興奮していた。
「ツナ兄すっげ~!!あんなすげぇ炎初めて見たぜ!!」
「ツナもエルザもホントにすごかったよね!私今日のことは絶対忘れないわ!!」
「レビィ落ち着いてよ~」
「確かにすごかったですね。あの威力は
「凄まじいですな。ツナは今までどんな戦いを経験してきたのでしょうな……」
シャルルは仲間の話を聞きながらも横でウンウン唸っているハッピーに話しかける。
「何唸っているのよ、ハッピー?」
「オイラそろそろツナにはいい二つ名を付けてあげようと思ったんだけどいいのが浮かばなくて…」
「なるほどな…今大会でかなり目立ったからな…必要というわけではないがあったら便利かもしれん」
「あ、それいいね!考えてあげようよ」
「面白そう!」
レビィとリサーナも乗ってきたようだ。他のメンバーも色々考えている。
「そうね…炎がメインだけど氷も使えるのよね…」
「炎帝とか?」
「いっそ魔王とか!」
「地獄の使者!」
「酒豪!」
「ハーレム王!」
後半になるほど段々と酷くなっていく。その後も話し合いが続いたが結局決まらなかった。
-フェアリーテイルBチーム観覧席
「ただいま」
「お帰りなさい!ツナ!凄かったわ!」
「凄すぎて何て言えばいいのか……」
「アレが最強の技か?ツナ?」
「……どうかな」
「ギヒッ!まだ何か隠してやがるのか?」
「そうそう使う機会もないからね」
「食えねぇ奴だな……」
「個人的にはセイバーの雷野郎に一泡ふかせてくれてスカッとしたぜ」
「あ~あの人ね…ラクサスの方がかなり強いと思うけど?」
「当然、負ける気はしねぇがな」
「ま、このままセイバーなんてぶっちぎろうよ」
「珍しく好戦的ねツナ?」
「あそこすごく嫌いなギルドだからね」
基本的に温厚なツナもセイバートゥースの所業には相当頭に来ているらしい……そして三日目バトルパートが始まる。そしてついに動き出す者達がいた。
-レイヴンテイル観覧席
「アレクセイ様、バトルの対戦表でサー」
「ようやくこの時が来たか……しっかりと準備しておけよ。我々の真の目的の為に……」
レイヴンテイルの5人はその目的を果たす為に動き出した。
-フェアリーテイルB観覧席
バトルパート第一試合はマーメイドヒール ミリアーナVS.クワトロパピー セムス。
「ミリアーナには頑張って欲しいなあ」
「アラ?ツナったらいつの間に仲良くなったの?」
「昨日の夜にちょっとね……」
「……打ち上げに来ないと思ったら…」
「まあまあミラさん。試合を観ましょうよ」
闘技場に目をやるとミリアーナは回転して体当たりしようとしているセムスをネ拘束チューブで雁字搦めにした。このチューブには捕まえられた者は魔力が封じられる。
結局抜け出すことはできずにそのままミリアーナの勝利となった。
第二試合はセイバートゥース ルーファスVS.ブルーペガサス イヴ。
開始早々に得意の雪魔法で攻めるイヴだったが攻撃が全然当たらない。逆にルーファスの記憶造形魔法によって生み出された炎の直撃を喰らい敗北した。同じ造形魔法を操るグレイとリオンは見たこともない造形魔法に対抗意識を燃やす。
「イヴ君負けちゃったか……」
「やっぱりセイバートゥースは強いですね」
「ギヒッ!妙な魔法使いやがって……」
「やっぱり私達の優勝の為にはセイバートゥースが一番の障害になるみたいね……」
「直接バトルで当たって勝つのが一番手っ取り早くていいんだがな」
第三試合はフェアリーテイルB ラクサスVS.レイヴンテイル アレクセイと発表された。
「がんばってね、ラクサス」
「何の心配もいらねーだろ」
「ジュビア何だか嫌な予感がします……」
「任せろ」
Bチームの信頼と心配を背にラクサスが闘技場に向かおうとした時、ツナが声をかける。
「任せたよ」
「ああ」
レイヴンがよからぬことを企んでいることを分かっている。二人は言葉は少なくともツナは手を出さないことを、ラクサスは自分で片を付けることを確認する。
ラクサスとアレクセイが闘技場の中央で向かい合う。応援席のメンバーはレイヴンが何をしても対応できるように準備を始めた。
ビスカは狙撃銃でマスターイワンをターゲットスコープに捉えている。雷神衆とリサーナはレイヴンテイルの他のメンバーを見張る。
一日目のルーシィの試合の際はツナが防いでくれた為に何もなかったが汚い真似を平気で行ってきた。ギルド一丸となって行動する。その行動に初代は自分の目指したギルドの究極の形が目の前にあることを喜んでいた。
…そして試合開始の銅鑼が鳴る。その直後フェアリーテイルのメンバーは信じられないものを見た。
「そんな……」
「冗談だろ?」
「信じられません……」
-下らないことを……-
ツナ以外のメンバーの顔が驚愕に染まる。マカロフや妨害阻止メンバー達の動きが慌ただしくなる。
『これはアレクセイ怒涛の攻撃!ラクサス手も足も出なーい!!』
闘技場ではラクサスが一方的に攻撃を受け続けていた……
-闘技場
ラクサスが一方的にやられている……その光景を
「何の真似だこりゃ?」
「これは幻影魔法の一種だ。周りからは我々の実体は見えず、幻の方だけ見えるというものだ。良くできているだろ?誰一人気付かない」
「誰一人ねぇ……おいおい全然意味分かんねぇぞ。幻とやらでお前が勝って何になるんだ?」
自分のチームの観覧席をチラッと見ながら問いかけるラクサス。
「我々の目的は勝利ではない。交渉次第ではお前を勝たせてやることも可能だ」
「幻なんか関係ねぇ…現実のお前を倒して終わりだ」
いい加減イライラしてきたラクサスが肩に羽織っていた上着を地面に落として構えをとりながらアレクセイに告げる。
「それは無理」
「現実は厳しいでサー」
「ククッ」
「……」
アレクセイの後ろからレイヴンテイルのメンバー達が姿を現す。当然一人を除いて周りからは見えてはいない。そしてアレクセイが仮面を外す。
「俺の強さは知ってんだろ、バカ息子ォ」
「そんなこったろうと思ったぜ、クソ親父」
「マカロフは死んでも口を割らん…だがお前は違う。教えてもらおうか、ルーメン・イストワールの在りかを」
「何の話だ?」
「とぼけるな。マカロフはお前に教えているはずだ」
「知らねぇし、知ってても教えねぇよ」
「おいおい…この状況で勝ちを譲るって言ってんだぜ?断るなら幻で負けるだけじゃすまねえぞ?」
「めんどくせぇことしやがって…ジジイが見切りをつけたのもよく分かる……まとめてかかってこいよ。マスターの敵は俺の敵だからよ」
「どうやら教えてやる必要があるみたいだな…対フェアリーテイル特化型ギルド、レイヴンテイルの真の力を……」
-フェアリーテイルB観覧席
闘技場では未だにアレクセイに蹂躙されるラクサスの姿が映し出されていた。
「ラクサス!!」
「どーなってやがんだよ!!」
「このままじゃラクサスさん……」
ツナは厳しい目で微動だにせずに闘技場を見ている。
「ツナ!このままじゃラクサスが……」
「落ち着いてみんな……今見えている光景は全て幻覚だ。まだ本体は戦ってもいないよ」
「「「なっ!!!」」」
3人は驚愕に目を見開く。骸やクロームの幻覚に比べたらこの程度の幻覚を見破ることはツナにとっては容易なことだった。
「アレが幻だってのかよ!?」
「何の為にそんなことを?」
「今……闘技場ではラクサスとアレクセイ…の仮面を取ったマスターイワンと他のレイヴンのメンバーが対峙している。さすがに声は聞こえないけどね」
「おい!じゃあ1対5かよ!!」
「そんな……イワンまで!?」
「じゃああそこにいるレイヴン達は…思念体!?」
「早く止めないと!」
「ラクサスは一人でやるつもりだよ」
「でもツナ!少なくともイワンは相当強いのよ」
「それでも自分で決着をつけたいんだと思う。それにラクサスは負けないよ」
絶対の信頼をこめた言葉にミラ達はそれ以上反対することはなかった……
-闘技場
レイヴンテイルのメンバーはフェアリーテイル主要メンバーの苦手な魔法の使い手達で構成されている。その言葉にラクサスは、マカロフはレイヴンテイルの全てを把握していることを告げる。
「ガジルだ!アイツが裏切ったんだ!」
フレアが叫ぶ。元々ガジルはマカロフの指示を受けてレイヴンテイルに二重スパイとして潜入していた。ガジルから既にマカロフは情報を受け取っている。
それでもマカロフは動かなかった。7年間ギルドに何もしなかったという理由だったが本当は親子だから信じたいという気持ちがあったことをラクサスは見抜いていた。
「それにバレてねぇと思ってるつもりだろうから言っておくが少なくとも一人この状況に気づいてる奴がいるぞ。一日目にお前らの妨害を防いだ奴がな」
「アイツか……フェアリーテイルも変わったもんだな。あんなアブねえ奴を入れるなんてな」
「フン……アイツほどフェアリーテイルに相応しい奴はいねぇよ」
「何だぁ?あんなアブねえ殺気を放つ奴は闇に生きてきた奴だぞ?現に気づいてても何もしねえじゃねえか」
「アンタには一生分かんねぇよ」
闘技場に出る前に交わした短い言葉……ラクサスはツナの自身に対する信頼を感じ取っていた。他の連中も自分の為に動いている。かつてギルドに混乱と闘争をもたらした自分の為に……
だからこそラクサスは決意したのだ。例え自分の親でも家族に手を出す者は自分の手で倒すと……
いい加減焦れてきたのかイワンが無数の人の形をした紙の嵐を放つ。激昂したイワンは執拗にルーメン・イストワールの在りかを求め、他のメンバーにも指令を下す。
「ルーメン・イストワールはどこだぁ!?言えぇぇ!!ラクサスゥ!!俺の息子だろうがぁ!!オーブラ!やれ!魔力を消せ!!」
「コイツはウェンディとシャルルをやった奴か!」
ラクサスは全身に雷を纏うと一瞬でオーブラの前に移動してそのスピードのまま蹴り飛ばす。
「赤髪!!」
「ニードルブラスト!!」
フレアの髪が生き物のようにラクサスに迫り、ナルプディングはトゲの生えた腕を振るいラクサスを狙う。後ろに下がりながら攻撃を躱していたラクサスは攻撃を見切って反撃する。
「これはグレイの分だ!」
上から叩きつけるように殴り倒してナルプディングを沈めるラクサスの腕をフレアの髪が捕らえる。
「コイツはルーシィの分!」
口から咆哮を吐きフレアに浴びせるとフレアは悲鳴をあげながら吹き飛ばされていった。その直後、砂に擬態したクロヘビが背後に現れる。
「お前は……よく分からん」
とりあえずクロヘビも一撃で吹き飛ばした。メンバーが一撃ずつで全滅したのを見てイワンは焦りながらラクサスに懇願する。
「待て!俺はお前の父親だぞ!家族だ!父を殴るというのか!!」
「俺の家族はフェアリーテイルだ……家族の敵は俺が潰す!!」
雷を纏った拳で正面からイワンを殴り飛ばすと壁に衝突して意識を失う。そして幻は解けて観客達が見たのは立っているラクサスと倒れ伏すレイヴンのメンバー5人。
「ギルドマスターカボ!アレクセイの正体はマスターイワンカボ!!」
『先程まで戦っていたラクサスとアレクセイは幻だったのか!?』
『そスて見えない所で5人がかりの攻撃……マスターの大会参戦……どー見ても反則じゃの』
『何はともあれ勝者、フェアリーテイルBラクサス!!』
「アイツ一人でレイヴンをやったのか!?」
「さっきのエルザといいツナヨシといい、バケモンだらけじゃねえか!フェアリーテイル!」
観客もレイヴン5人を一人で全滅させたラクサスに称賛を送る。フェアリーテイルのメンバーも大歓声をあげる。
闘技場を去ろうとするラクサスにイワンが声をかける。
「今回は俺の負けだ。だがこれだけは覚えておけ…ルーメン・イストワールはフェアリーテイルの闇。いずれ知る時が来る…フェアリーテイルの正体を……」
ラクサスは驚いた顔でイワンを見るがイワンは笑いながら王国兵に連行されて行く。ラクサスはイワンがそこまで固執するルーメン・イストワールとは何か、マカロフに確認してみることにした。
他のメンバーも連行される中、オーブラの使い魔のようなものが脱出していくのにツナとメイビスだけが気付いていた。
次回は少女対決です。