妖精達と歩む大空   作:グリーン

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いつもなかなかタイトルが思いつかないです……


虎狩り!

-クロッカスの公園

 

「じゃあまた明日ねエルちゃん!ツナも!」

 

「ああ……また明日」

 

「気をつけて帰ってね」

 

笑顔でミリアーナを見送ったツナとエルザだったがミリアーナが去った後でエルザは顔を辛そうに歪める。

 

「エルザ……」

 

「先程は助かった…上手く話を反らしてくれて…分かっていたことだったんだがな……」

 

ジェラールが例え操られていたとしても犯した罪は消えない。恨みと嘆きがそう簡単に消えることはない。

 

「恨みというのはなかなか消えないからね……それこそ代をまたいでも続いていくようなのもあるから」

 

「そういえばツナはマフィアのボスだったな……お前といると忘れそうになる」

 

「ふふっ…エルザは自分の思うままに行動すればいいと思う。そしてエルザが選んだ道を俺は……俺達フェアリーテイルは全力で支えるよ」

 

「ありがとう……そうだな。私はジェラールを許した。ならばそれを貫き通さなければな……すまないが一人にしてくれるか?」

 

「分かった。もう遅いから気をつけてね」

 

「ああ……ありがとう」

 

 

 

-街の中

 

 

ナツとハッピーは街の中を走っていた。先程ルーシィを訪ねて来たユキノを追い掛ける為だ。

 

ユキノはルーシィに対して自分の持つ天秤宮と双魚宮の鍵の譲渡を申し出てきた。自分より優れた星霊魔導士であるルーシィが持つべきだと。

 

結局ルーシィは断ったが最後まで礼儀正しかったユキノにセイバートゥースというだけで邪険にしたのは間違いだった。それを謝る為にナツは宿を飛び出した。

 

「や~でもナツがこういう気遣いをするようになるなんて……」

 

「セイバーってだけで嫌な奴って思っちまったからな~」

 

「でも良かったよ。女の子にそんな態度とったってツナが知ったらきっとまたネッチョリコースだったと思うな~オイラ」

 

「ネッチョリはいやーー!!!ハッピーこっちだ!急げ~!」

 

「アイサー!」

 

程なくユキノを見つけたナツは先程の態度について頭を下げて謝罪する。ハッピーはそれを見てツナの教育の凄さを思い知っていた。きっと以前ならゴメンなーで済ませていただろう……

 

わざわざ自分の為にナツは謝りに来てくれた。今まで自分にこんなにも気を遣ってくれた人などいなかった。特にあの場所…セイバートゥースでは……そう思うとユキノは涙を流す。

 

「な…泣かれても困るんだけどー!!」

 

「ど…どうしたのーー!?」

 

「何してるのかな?ナツ、ハッピー」

 

聞き覚えのある声に振り返るとそこには黒い笑顔のツナがいた。

 

「「ツナーー!!」」

 

「ふう……まさか二人が女の子を泣かすなんてね……」

 

「いや!違う!……違うよな?」

 

「うん……オイラ達が謝ったらユキノが泣き出したんだ」

 

「ん、もしかしてこの人セイバートゥースのユキノさん?」

 

「ツナヨシ様……」

 

「どうしたの?ナツ達に何かされたの?」

 

ユキノは首を横に振る。ナツとハッピーはホッとしている。ハッピーがユキノが宿に来た理由を話した。そして態度を邪険にしたことをナツが謝ったら泣き出したらしい。

 

「ナツ様のせいではないのです……私がこのように人に気を遣われた事がないもので……」

 

地面にへたりこんで泣きながらもユキノの独白は続いていく。

 

「私…ずっとセイバートゥースに憧れていました。去年やっと入れたのに……私はもう帰ることを許されない……」

 

「はぁ?」

 

「どういうこと?」

 

「たった1回の敗北で…やめさせられたのです……」

 

ツナとナツが顔を歪める。それからの話は酷いものだった。大勢の前で裸にされて、自らの手で紋章を消さなくてはならなかった。それを他のメンバーは無関心または嘲笑していたらしい。

 

ツナはむしろ命じたマスターもだが庇おうともしない周りにも怒りをみせる。ナツも同様だ。

 

「悪ぃけど他のギルドの事情は俺には分からねぇ……けど同じ魔導士としてなら分かるぞ。」

 

「ナツ……」

 

「辱しめられて紋章を消されて悔しいよな…仲間を泣かせるギルドなんてそんなのギルドじゃねえ!」

 

「仲間……」

 

「ツナ!ユキノを頼むぞ!行くぞハッピー!」

 

「あい~!」

 

ハッピーを連れてナツは走り去って行った。

 

「やれやれ……さ、こんなところにいつまでもいないで今日の宿は決めたの?」

 

「はい…すぐ近くです」

 

「じゃあそこまで送るよ。ほら」

 

ツナの差し出す手を顔を赤くして戸惑いながらとって立ち上がるユキノ。

 

「もう命を賭けるなんてしちゃダメだよ」

 

「ツナヨシ様……」

 

「だいたいみんなして女だヌードだと変なものばっかり賭けるんだもん。ユキノさんも引けなくなったのかもしれないけど大切な命を投げ出すようなことは今後しないこと」

 

本当に宿がすぐそこだったのでこの話は打ち切った。今の彼女にはどうせ届かないだろう。今度会った時にキチンと話そうとツナは思う。そのまま宿まで送り届けすぐにナツの後を追うのだった。

 

 

-王城

 

 

「十の鍵を持つ少女と二の鍵を持つ少女!十二の鍵は揃う!エクリプスは完全に起動する!」

 

アルカディオスは狂ったように笑い始める。

 

「ゼレフ…ゼレフ…ゼレフ!ゼレフ!ふふふふ…ハハハハ……ハーッハッハッハッ!!」

 

 

-セイバートゥースの宿 クロッカスガーデン

 

 

宿を揺るがす轟音にスティングは目を覚ました。相棒のレクターもだ。そこへローグとその相棒のフロッシュが飛び込んで来る。

 

「侵入者だ!!」

 

「侵入者ぁ!?セイバートゥースの全メンバーがいる宿だぞ!!何者だ!?」

 

「分からない……だが生きて帰る気はないんだろうな……」

 

そして喧騒の元へたどり着いたスティングとローグが見たのは……

 

「マスターはどこだあぁぁ!!」

 

セイバートゥースのメンバーを吹き飛ばしながらマスターを探し回るナツの姿だった。

 

「こちらにもいるぞ」

 

横合いから聞こえた声に振り返る二人が見たものは額に炎を灯して佇むツナとその背後に倒れている多くのメンバー達だった。こちらはナツと違って周囲は一切壊れていなかった。どうやら一撃で意識を刈り取っていったらしい……

 

「ワシに何か用か?」

 

騒ぎを聞き付けてセイバートゥースのマスタージエンマが姿を現す。ナツはジエンマを睨み付け、

 

「たった1回の敗北でクビだって?随分気合いはいってんじゃねーか、じゃあお前も俺に負けたらギルドやめんだな!!」

 

ツナとナツを前にしてセイバートゥースの大会メンバー達は驚きを隠せない。だがジエンマはナツを無視してツナを見て口を開く。

 

「フム……昨日の貴様の試合は見事だった。どうだ?クズギルドなんざ止めてうちに来ぬか?」

 

「うちのギルドがクズならそっちはカスだな…いや腑抜けの集まりと言った方がいいかな?ドカスどもが…」

 

この言葉にセイバーの連中は怒り狂う。ザンザスの口癖を真似てみたが相手を怒らせる結果になった。

 

「自分の所の仲間を仲間と思えねぇ奴は許せねえんだ」

 

「女が辱しめられてるのに何も行動しない奴等なんてドカスで充分だろう……」

 

-ユキノのことを言っているのか?-

 

-アンタ等には関係ねえだろ!そんな事で乗り込んでくるかよフツー!!-

 

ローグとスティング、他のギルドメンバー達は誰のことを言っているのか察しがついたがジエンマだけは本気で分からないようだった。それにナツはぶち切れる。

 

「ドーベンガル、相手をしてやれ」

 

「ナツ、ザコの相手は俺がまとめてしてあげるよ」

 

「サンキューツナ!」

 

その言葉を聞いたドーベンガルは怒りのままツナへ向かう。

 

「ザコとは言ってくれる!私は大会こそ出ていないがその実力は本戦メンバーにも劣ら…………」

 

「消えろ」

 

一瞬で懐に移動したツナの右の一撃でドーベンガルは壁に叩きつけられ意識を失う。

 

「ウソだろ!ドーベンガルが!?」

 

「ウチで10番以内に入る強さなんですよ!」

 

「まとめて相手をすると言っただろう……ドカスども」

 

「調子にのんなぁー!」

 

「やっちまえ!!」

 

十人程の人数がツナに向かうがツナが消えたと思ったらそのメンバーの後ろに現れる。その姿に全員が目を向けた瞬間、襲いかかった者達は全員吹き飛ばされていた。

 

大会メンバー達は目を見開いてツナを見つめるがナツはその間にジエンマへと迫る。

 

スティングが対応しようとするのを留めたジエンマはナツと相対する。

 

一度吹き飛ばされそうになったナツだがそれに耐えてジエンマに連撃を加える。その光景をセイバーの連中は呆然と眺めていた。止めとばかりにナツが魔力を漲らせる。ジエンマも攻撃に移る。

 

「雷炎竜の撃鉄!!!」

 

雷と炎が合わさった一撃が炸裂して余波で宿の一部が爆発する。

 

煙が晴れたときそこには一人の女性が両手をナツとジエンマに向けて立っていた。その手には魔力が視認できる。どうやってか二人の攻撃を受け流したようだ。

 

「ミネルバ!?」

 

「お嬢!!」

 

その女性はジエンマの娘であるミネルバだった。ミネルバは提案する。

 

「今宵の宴もここまでにしまいか?」

 

「ア?」

 

このまま続ければ父上が勝つだろうが出場者をマスターが消したとあってはこちらも立つ瀬がない。自分の顔を立てて引けば部下がやられた分も不問にしようと提案する。その腕の中にはハッピーが縄で縛られている。

 

ツナはナツの肩に手を置き諭すように言う。

 

「ナツ…残念だけどここまでだ……」

 

「分かってる……」

 

ツナがミネルバにキツい視線を向けるとミネルバは妖艶な笑みを浮かべる。

 

「フフフ……そのような瞳で見つめてくれるな……」

 

「失礼しました」

 

踵を返しナツと解放されたハッピーと共に出口へ向かう。すると背中に声が掛かる。

 

「なかなか骨のある小童どもだ」

 

「決着は大魔闘演武でつけよう。思う存分な」

 

「お前らなんかには負けねえよ、つーか俺達には追いつけねえ」

 

「ギルドなら仲間を大切にしなよ。俺達はそれが言いたかっただけだよ」

 

そう言い残してツナ達は宿を去る。ローグはツナの言う仲間という言葉について考え込み、スティングはかつて目標としたナツがこんなに強かったことに歓喜していた。

 

「ふふっ、フェアリーテイル…面白い。ツナヨシ・サワダの全力を見ることができなかったのは残念だがな……ユキノの代わりも必要か……ひとつ妾も遊ばせてもらおうか」

 

セイバートゥース最強の5人が揃ったが、その心の中には仲間という言葉はなくバラバラだった。

 

 




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